たっ・する【達する】例文一覧 30件

  1. ・・・ 天文学者の説によれば、ヘラクレス星群を発した光は我我の地球へ達するのに三万六千年を要するそうである。が、ヘラクレス星群と雖も、永久に輝いていることは出来ない。何時か一度は冷灰のように、美しい光を失ってしまう。のみならず死は何処へ行って・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  2. ・・・が、泰さんは存外驚かずに、しばらくはただ軒先の釣荵が風にまわるのを見ていましたが、ようやく新蔵の方へ眼を移すと、それでもちょいと眉をひそめて、「つまり君が目的を達するにゃ、三重の難関がある訣だね。第一に君はお島婆さんの手から、安全にだね、安・・・<芥川竜之介「妖婆」青空文庫>
  3. ・・・ 農場の事務所に達するには、およそ一丁ほどの嶮しい赤土の坂を登らなければならない。ちょうど七十二になる彼の父はそこにかかるとさすがに息切れがしたとみえて、六合目ほどで足をとどめて後をふり返った。傍見もせずに足にまかせてそのあとに※いて行・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  4. ・・・知識階級の人が長く養われたブルジョア文化教養をもって、その境界に到達することができるであろうか。これを私は深く疑問とするのである。単なる理知の問題として考えずに、感情にまで潜り入って、従来の文化的教養を受け、とにもかくにもそれを受けるだけの・・・<有島武郎「想片」青空文庫>
  5. ・・・ されば夜となく、昼となく、笛、太鼓、鼓などの、舞囃子の音に和して、謡の声起り、深更時ならぬに琴、琵琶など響微に、金沢の寝耳に達する事あり。 一歳初夏の頃より、このあたりを徘徊せる、世にも忌わしき乞食僧あり、その何処より来りしやを知・・・<泉鏡花「妖僧記」青空文庫>
  6. ・・・いま五、六寸で床に達する高さである。 もう畳を上げた方がよいでしょう、と妻や大きい子供らは騒ぐ。牛舎へも水が入りましたと若い衆も訴えて来た。 最も臆病に、最も内心に恐れておった自分も、側から騒がれると、妙に反撥心が起る。殊更に落ちつ・・・<伊藤左千夫「水害雑録」青空文庫>
  7. ・・・この問題が定まれば乃ちその目的を達するに最も近い最も適する文章が自ずから将来の文体となるのである――」という趣旨であった。 この答には私は意外の感に打たれた。当時私はスペンサーの文体論を初め二、三の著名な文章説を読んでいたが、こういう意・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  8. ・・・ 天国から、下界に達する道はいくつかありました。赤い船に乗って、雲の間や、波の間を分けてから、怖ろしい旋風に、体をまかせて二日二晩も長い旅をつづけてから、ようやく、下界の海の上に静かに、降りることも、その一つであれば、また、体を雲と化し・・・<小川未明「海からきた使い」青空文庫>
  9. ・・・けれども此の死を讃美し此れを希うという事は既に或る解決であって、最早煩悶の時代を去った、そして宗教に合致したのであって真のもだえというべきは此に達する間の苦しみでなくてはならぬ。 今一つ言うべきは、現実という事である。此れも極めて物質的・・・<小川未明「絶望より生ずる文芸」青空文庫>
  10. ・・・すべて当然のことであり、誰が考えても食糧の三合配給が先決問題であるという結論に達する。三歳の童子もよくこれを知っているといいたいところである。円い玉子はこのように切るべきだと、地球が円いという事実と同じくらい明白である。しかし、この明白さに・・・<織田作之助「郷愁」青空文庫>
  11. ・・・ いったいどんな樹の花でも、いわゆる真っ盛りという状態に達すると、あたりの空気のなかへ一種神秘な雰囲気を撒き散らすものだ。それは、よく廻った独楽が完全な静止に澄むように、また、音楽の上手な演奏がきまってなにかの幻覚を伴うように、灼熱・・・<梶井基次郎「桜の樹の下には」青空文庫>
  12. ・・・ かつ拙者は貴所の希望の成就を欲する如く細川の熱望の達することを願う、これに就き少も偏頗な情を持ていない。貴所といえども既に細川の希望が達したと決定れば細川の為めに喜こばれるであろう。又梅子嬢の為にも、喜ばれるであろう。 そして拙者・・・<国木田独歩「富岡先生」青空文庫>
  13. 一、堅く堅く志を立てること。およそ一芸に秀で一能に達するには、何事によらず容易なことではできない。それこそ薪に臥し胆を嘗めるほどの苦心がいるものと覚悟せねばならない。昔から名人の域に達した人が、どれほど苦しんだかとい・・・<倉田百三「芸術上の心得」青空文庫>
  14. ・・・ 副官が、命令を達するために、次の部屋へ引き下ると、彼はまた叫んだ。「副官!」「はい。」「この点呼に、もしもおくれる者があったら、その中隊を、第一中隊の代りに、イイシ守備に行かせること、そうしてくれ、罰としてここには置かない・・・<黒島伝治「渦巻ける烏の群」青空文庫>
  15. ・・・今後、幾百年かの星霜をへて、文明はますます進歩し、物質的には公衆衛生の知識がいよいよ発達し、一切の公共の設備が安固なのはもとより、各個人の衣食住もきわめて高等・完全の域に達すると同時に、精神的にもつねに平和・安楽であって、種々の憂悲・苦労の・・・<幸徳秋水「死刑の前」青空文庫>
  16. ・・・長いこと親戚のほうに預けてあった娘が学齢に達するほど成人して、また親のふところに帰って来たということは、私に取っての新しいよろこびでもあった。そのころの末子はまだ人に髪を結ってもらって、お手玉や千代紙に余念もないほどの小娘であった。宿屋の庭・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  17. ・・・その南伊豆の温泉に達するには、東京から五時間ちかくかかるようだったが、井伏さんは女将にそう言われて、ただ、「はあ。」 とおっしゃっただけで、またも釣竿をかつぎ、そのまま真直に東京の荻窪のお宅に帰られたことがある。 なかなか出来な・・・<太宰治「『井伏鱒二選集』後記」青空文庫>
  18. ・・・しかしこれらの特殊な目的で作られた映画でも、それが広義における芸術的価値のないものであれば、それは決してその目的を達することができない。そういう意味においてすべての種類の映画の制作はやはり広義における映画芸術の領域に属するものと思われるから・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  19. ・・・しかしながら一刹那でも人類の歴史がこの詩的高調、このエクスタシーの刹那に達するを得ば、長い長い旅の辛苦も償われて余あるではないか。その時節は必ず来る、着々として来つつある。我らの衷心が然囁くのだ。しかしながらその愉快は必ずや我らが汗もて血も・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  20. ・・・ 戸田橋から水流に従って北方の堤を行くと、一、二里にして新荒川橋に達する。堤の下の河原に朱塗の寺院が欝然たる松林の間に、青い銅瓦の屋根を聳かしている。この処は、北は川口町、南は赤羽の町が近いので、橋上には自転車と自動車の往復が烈しく、わ・・・<永井荷風「放水路」青空文庫>
  21. ・・・しかし今日より六年後に、小生の趣味が現今の花袋君の趣味に達すると、達せざるとも固より小生の自由である。これも疎忽ものが読むと、花袋君と小生の嗜好が一直線の上において六年の相違があるように受取られるから、御断りを致しておきたい。 花袋君が・・・<夏目漱石「田山花袋君に答う」青空文庫>
  22. ・・・ ベルが段々調子を上げ、全で余韻がなくなるほど絶頂に達すると、一時途絶えた。 五人の坑夫たちは、尖ったり、凹んだりした岩角を、慌てないで、然し敏捷に導火線に火を移して歩いた。 ブスッ! シュー、と導火線はバットの火を受けると、細・・・<葉山嘉樹「坑夫の子」青空文庫>
  23. ・・・改進は上流にはじまりて下流に及ぼすものなれば、今の日本国内において改進を悦ぶ者は上流の一方にありて、下流の一方は未だこれに達すること能わず。すなわち廃藩置県を悦ばざる者なり、法律改定を好まざる者なり、新聞の発行を嫌う者なり、商売工業の変化を・・・<福沢諭吉「学者安心論」青空文庫>
  24. ・・・これが己の求める物に達する真直な道を見る事の出来ない時、厭な間道を探し損なった記念品だ。この十字架に掛けられていなさる耶蘇殿は定めて身に覚えがあろう。その疵のある象牙の足の下に身を倒して甘い焔を胸の中に受けようと思いながら、その胸は煖まる代・・・<著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外「痴人と死と」青空文庫>
  25. ・・・その目的は実に複雑であって、そうして一日の記事を凡そ新聞の一欄位に書きつめてしまわねばならぬので、普通の者ならばとてもこの目的を達する事は困難であるべきのを楽天は平気で遣ってのけて居る。よし辛うじてこの目的を達したところで最早その上に面白く・・・<正岡子規「徒歩旅行を読む」青空文庫>
  26. ・・・けれどもそれでも探求の目的を達することは達するな。少し歩きにくいだけだ。さあもう斯うなったらどこまでだって追って行くぞ。」学士はいよいよ大股にその足跡をつけて行った。どかどか鳴るものは心臓ふいごのようなものは呼吸、そんな・・・<宮沢賢治「楢ノ木大学士の野宿」青空文庫>
  27. ・・・たとえ労働条件が男と同じになったとしても、女が子を生むためのものである以上、男と同じ水準に達する余力をもたないというのである。 賃銀さえ男と同じになれば婦人労働者の生活が幸福となり、内容において高まると観るのはもちろん皮相でもあるし、非・・・<宮本百合子「新しい婦人の職場と任務」青空文庫>
  28. ・・・ わたくしは源氏物語を読むたびに、いつも或る抗抵に打ち勝った上でなくては、詞から意に達することが出来ないように感じます。そしてそれが単に現代語でないからだというだけではないのでございます。或る時故人松波資之さんにこのことを話しました。そ・・・<森鴎外「『新訳源氏物語』初版の序」青空文庫>
  29. ・・・このようなことは、禅機に達することだとは思わないが、カルビン派のように、知識で信仰にはいろうとしなければならぬ近代作家の生活においては、孝道氏の考え方は迷いを退けるには何よりの近道ではないかと思う。 他人のことは私は知らないが自分一人で・・・<横光利一「作家の生活」青空文庫>
  30. ・・・万民志を遂ぐるという理想的な境地に達するためには、どの階級も多少ずつは犠牲を払わなくてならぬ。しかし公平に言って、特権階級が特に多くの犠牲を払わなくては、万民志を遂ぐる境に達しがたいことも事実である。そうしてその犠牲を払うことが聖旨を奉戴し・・・<和辻哲郎「蝸牛の角」青空文庫>