だっ‐せん【脱線】例文一覧 19件

  1. ・・・だから江口の批評は、時によると脱線する事がないでもない。が、それは大抵受取った感銘へ論理の裏打ちをする時に、脱線するのだ。感銘そのものの誤は滅多にはない。「技巧などは修辞学者にも分る。作の力、生命を掴むものが本当の批評家である。」と云う説が・・・<芥川竜之介「江口渙氏の事」青空文庫>
  2. ・・・が、幕府が瓦解し時勢が一変し、順風に帆を揚げたような伊藤の運勢が下り坂に向ったのを看取すると、天性の覇気が脱線して桁を外れた変態生活に横流した。椿岳の生活の理想は俗世間に凱歌を挙げて豪奢に傲る乎、でなければ俗世間に拗ねて愚弄する乎、二つの路・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  3. ・・・なという固着観念を、猫も杓子も持っていて、私はそんな定評を見聴きするたびに、ああ大阪は理解されていないと思うのは、実は大阪人というものは一定の紋切型よりも、むしろその型を破って、横紙破りの、定跡外れの脱線ぶりを行う時にこそ真髄の尻尾を発揮す・・・<織田作之助「大阪の可能性」青空文庫>
  4. ・・・とその当時私は友人の顔を見るたび言っていたが、無論お定の事件からこんな文学論を引き出すのは、脱線であったろう。 が、とにかく私は笑えばいいと思った。女の生理の悲しさについて深刻に悩むことなぞありゃしない、俺を驚かせた照井静子の奔放な性生・・・<織田作之助「世相」青空文庫>
  5. ・・・ 地震のために脱線したり、たおれこわれたりした列車は、全被害地にわたって四十四列車もあります。東京から地方へのがれ出るには、関西方面行の汽車は箱根のトンネルがこわれてつうじないので、東京湾から船で清水港へわたり、そこから汽車に乗るのです・・・<鈴木三重吉「大震火災記」青空文庫>
  6. ・・・ おや、脱線している。こんな出鱈目な調子では、とても紀元二千七百年まで残るような佳い記録を書き綴る事は出来ぬ。出直そう。 十二月八日。早朝、蒲団の中で、朝の仕度に気がせきながら、園子に乳をやっていると、どこかのラジオが、はっきり聞え・・・<太宰治「十二月八日」青空文庫>
  7. ・・・人間は、好むところのものを行うのが一ばんいいのさ。脱線を致しました。僕は、精神的だの、理解だのの恋愛を考えられないだけの事です。王子の恋愛は正直です。王子のラプンツェルに対する愛情こそ、純粋なものだと思います。王子は、心からラプンツェルを愛・・・<太宰治「ろまん燈籠」青空文庫>
  8. ・・・話は脱線するが、最近に見た新発明の方法によると称する有色発声映画「クカラッチャ」のあの「叫ぶがごとき色彩」などと比べると、昔の手織り縞の色彩はまさしく「歌う色彩」であり「思考する色彩」であるかと思われるのである。 化学的薬品よりほかに薬・・・<寺田寅彦「糸車」青空文庫>
  9. ・・・「藤沢江の島間電車九月一日開通、衝突脱線等あり、負傷者数名を出す」という文句の脇に「藤沢停車場前角若松の二階より」とした実に下手な鉛筆のスケッチがある。 逗子養神亭から見た向う岸の低い木柵に凭れている若い女の後姿のスケッチがある。鍔・・・<寺田寅彦「海水浴」青空文庫>
  10. ・・・ また少し脱線ではあるが雲紋竹と称して、竹の表面に褐色の不規則な輪紋を呈したものがある。これは人工的加工でこしらえたものも多いようであるが、もとはやはり天然の植物黴菌か何かでできたものがあるのではないかと思われる。そう言えば培養された黴・・・<寺田寅彦「自然界の縞模様」青空文庫>
  11. ・・・ 以上は新春の屠蘇機嫌からいささか脱線したような気味ではあるが、昨年中頻発した天災を想うにつけても、改まる年の初めの今日の日に向後百年の将来のため災害防禦に関する一学究の痴人の夢のような無理な望みを腹一杯に述べてみるのも無用ではないであ・・・<寺田寅彦「新春偶語」青空文庫>
  12. ・・・ついでにもう一歩脱線すると、相撲の元祖と言われる野見宿禰の「スクネ」とよく似たヘブライ語の「ズケヌ」は「長老」の意味があるのである。 このヤコブと天使との相撲の話は、私にはまた子供の時分に郷里の高知でよく聞かされた怪談を思い出させる。・・・<寺田寅彦「相撲」青空文庫>
  13. ・・・という意味の言葉に似ており、もう一つ脱線すると源頼光の音読がヘラクレースとどこか似通ってたり、もちろん暗合として一笑に付すればそれまでであるが、さればと言って暗合であるという科学的証明もむつかしいような事例はいくらでもある。ともかくも世・・・<寺田寅彦「化け物の進化」青空文庫>
  14. ・・・ レビュー見学のノートから脱線してつい平生胸に溜まっていた教科書の不平をこぼしてしまったが、こういう脱線もまた一つのレビュー的随感録の一様式中の一景として読者の寛容を願いたいと思う。 政府の統制の下に組織された教育のプログラムがレビ・・・<寺田寅彦「マーカス・ショーとレビュー式教育」青空文庫>
  15. ・・・何の事はない、脱線して斜になった機関車が、惰力で二十間も飛んだ、と云った風な歩きっ振りであった。 小林が彼と肩を並べようとする刹那、彼は押し潰した畳みコップのように、ペシャッとそこへ跼った。 小林はハッとした。 と、同時に川上の・・・<葉山嘉樹「坑夫の子」青空文庫>
  16. ・・・又異教派の方にも大分諸方から鉄道などでお出でになった方もあるようでありますが鉄道で一番自然なこと則ちなるべく人力を加えないようにしまするならば衝突や脱線や人を轢いたりするなどがいいようであります。そんならそれでいいではないかポイントマンだの・・・<宮沢賢治「ビジテリアン大祭」青空文庫>
  17. ・・・特に少女の脱線ぶりがひどい。一斉検挙をするということが出て居ります。それを読んで私は非常に悲しく思いました。なぜならば、この数年の間、若い者の生命は、どう大切にされたでしょう。若い者の純な心からの正義心や、若い者の伸びようとする希いや、そう・・・<宮本百合子「美しく豊な生活へ」青空文庫>
  18. ・・・「私は運転手を五、六年した経験で、あの電車は当時の状況からみて、『一たん停止』の辺で脱線すると信じ、本線その他に危害がおこるとは考えていませんでした。」この面会で、竹内被告は一人の労働者として、また妻の心を思いやり、五人の子供たちの将来を考・・・<宮本百合子「それに偽りがないならば」青空文庫>
  19. ・・・「私の肉体は少しも私の精神の脱線を諾わなかったのです」そして、彼女はそういう自分の肉体の行儀よさに立腹したりした。現実の感覚を知らぬジュネヴィエヴは、非常に率直に、具体的な言葉で問題を出すが、情熱がさめているアンネットの方は、すべてをもっと・・・<宮本百合子「未開の花」青空文庫>