た・てる【建てる】例文一覧 30件

  1. ・・・一方はその鐘楼を高く乗せた丘の崖で、もう秋の末ながら雑樹が茂って、からからと乾いた葉の中から、昼の月も、鐘の星も映りそうだが、別に札を建てるほどの名所でもない。 居まわりの、板屋、藁屋の人たちが、大根も洗えば、菜も洗う。葱の枯葉を掻分け・・・<泉鏡花「夫人利生記」青空文庫>
  2. ・・・それでね、ここのお寺でも、新規に、初路さんの、やっぱり記念碑を建てる事になったんです。」「ははあ、和尚さん、娑婆気だな、人寄せに、黒枠で……と身を投げた人だから、薄彩色水絵具の立看板。」「黙って。……いいえ、お上人よりか、檀家の有志・・・<泉鏡花「縷紅新草」青空文庫>
  3. ・・・女の写真屋を初めるというのも、一人の女に職業を与えるためというよりは、救世の大本願を抱く大聖が辻説法の道場を建てると同じような重大な意味があった。 が、その女は何者である乎、現在何処にいる乎と、切込んで質問すると、「唯の通り一遍の知り合・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  4. ・・・バラックを出ると、一人の男があのカレー屋ははじめ露天だったが、しこたま儲けたのか二日の間にバラックを建ててしまった、われわれがバラックの家を建てるのには半年も掛るが、さすがは闇屋は違ったものだと、ブツブツ話し掛けて来たので相手になっていると・・・<織田作之助「世相」青空文庫>
  5. ・・・空地では家を建てるのか人びとが働いていた。 川上からは時どき風が吹いて来た。カサコソと彼の坐っている前を、皺になった新聞紙が押されて行った。小石に阻まれ、一しきり風に堪えていたが、ガックリ一つ転ると、また運ばれて行った。 二人の子供・・・<梶井基次郎「ある心の風景」青空文庫>
  6. ・・・夫婦道も母性愛も打ち建てるべき土台を失うわけである。その人の子を産みたいような男子、すなわち恋する男の子を産まないでは、家庭のくさびはひびが入っているではないか。ことに結婚生活に必ずくる倦怠期に、そのときこそ本当の夫婦愛が自覚されねばならな・・・<倉田百三「女性の諸問題」青空文庫>
  7. ・・・ もっと隅ッこの人目につかんところへ建てるとか、お屋敷からまる見えだし、景色を損じて仕様がない!」「チッ! くそッ!」 自分の住家の前に便所を建てていけないというに到っては、別荘も、別邸もあったもんじゃなかった。国立公園もヘチマもな・・・<黒島伝治「名勝地帯」青空文庫>
  8. ・・・そりゃ、お前さま、ここの家を建てるだけでも、どのくらいよく働いたかしれずか。」 炉ばたでの話は尽きなかった。 三日目には私は嫂のために旧いなじみの人を四方木屋の二階に集めて、森さんのお母さんやお菊婆さんの手料理で、みんなと一緒に久し・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  9. ・・・大きい大きい沼を掻乾して、その沼の底に、畑を作り家を建てると、それが盆地だ。もっとも甲府盆地くらいの大きい盆地を創るには、周囲五、六十里もあるひろい湖水を掻乾しなければならぬ。 沼の底、なぞというと、甲府もなんだか陰気なまちのように思わ・・・<太宰治「新樹の言葉」青空文庫>
  10.  先日、竹村書房は、今官一君の第一創作集「海鴎の章」を出版した。装幀瀟洒な美本である。今君は、私と同様に、津軽の産である。二人逢うと、葛西善蔵氏の碑を、郷里に建てる事に就いて、内談する。もう十年経って、お互い善蔵氏の半分も偉・・・<太宰治「パウロの混乱」青空文庫>
  11. ・・・ここへ茶店を建てるときにも、ずいぶん烈しい競争があったと聞いている。東京からの遊覧の客も、必ずここで一休みする。バスから降りて、まず崖の上から立小便して、それから、ああいいながめだ、と讃嘆の声を放つのである。 遊覧客たちの、そんな嘆声に・・・<太宰治「富士に就いて」青空文庫>
  12. ・・・映画の使命は単に大衆のスター崇拝の礼拝堂を建てるのみではないであろう。 はなはだ無意味でつまらないようである意味で非常に進歩しているのはアメリカのナンセンス映画やミュージカル・コメディの類である。ある人の説のごとく、芸術は在るところのも・・・<寺田寅彦「映画時代」青空文庫>
  13. ・・・液体力学を持ち出すまでもなく、こういう所へ家を建てるのは考えものである。しかしあるいは家のほうが先に建っていたので切り通しのほうがあとにできたかもしれない。そうだとすると電車の会社はこの家の持ち主に明白な損害を直接に与えたものだという事が科・・・<寺田寅彦「写生紀行」青空文庫>
  14. ・・・西欧科学を輸入した現代日本人は西洋と日本とで自然の環境に著しい相違のあることを無視し、従って伝来の相地の学を蔑視して建てるべからざる所に人工を建設した。そうして克服し得たつもりの自然の厳父のふるった鞭のひと打ちで、その建設物が実にいくじもな・・・<寺田寅彦「日本人の自然観」青空文庫>
  15.        一 今の住宅を建てる時に、どうか天井にねずみの入り込まないようにしてもらいたいという事を特に請負人に頼んでおいた。充分に注意しますとは言っていたが、なお工事中にも時々忘れないようにこの点を主張しておいた・・・<寺田寅彦「ねずみと猫」青空文庫>
  16. ・・・それほど大仕掛の手数を厭う位なら、ついでに文芸院を建てる手数をも厭った方が経済であると考える。国家を代表するかの観を装う文芸委員なるものは、その性質上直接社会に向って、以上のような大勢力を振舞かねる団体だからである。 もし文芸院がより多・・・<夏目漱石「文芸委員は何をするか」青空文庫>
  17. ・・・下らない家を建てるより文学者になれといいました。当人が文学者になれといったのはよほどの自信があったからでしょう。私はそれで建築家になる事をふっつり思い止まりました。私の考は金をとって、門前市をなして、頑固で、変人で、というのでしたけれども、・・・<夏目漱石「無題」青空文庫>
  18. ・・・石を建てるのはいやだがやむなくば沢庵石のようなごろごろした白い石を三つか四つかころがして置くばかりにしてもらおう。もしそれも出来なければ円形か四角か六角かにきっぱり切った石を建ててもらいたい。彼自然石という薄ッぺらな石に字の沢山彫ってあるの・・・<正岡子規「墓」青空文庫>
  19. ・・・てぐすも飼えないところにどうして工場なんか建てるんだ。飼えるともさ。現におれをはじめたくさんのものが、それでくらしを立てているんだ。」 ブドリはかすれた声で、やっと、「そうですか。」と言いました。「それにこの森は、すっかりおれが・・・<宮沢賢治「グスコーブドリの伝記」青空文庫>
  20. ・・・取れもしないところにどうして工場なんか建てるんだ。取れるともさ。現におれはじめ沢山のものがそれでくらしを立てているんじゃないか。」 ネネムはかすれた声でやっと「そうですか。おじさん。」と云いました。「それにこの森はすっかりおれの・・・<宮沢賢治「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」青空文庫>
  21. ・・・左官屋といっても、ドイツではただ壁をぬるばかりが仕事ではなくて、煉瓦を積んで家を建てる仕事や、その家々の装飾の浮彫石膏細工をつくるという風な美術的技量のいることも、やはり左官の職分にこめていたものらしく思われる。 カールのそのようなはっ・・・<宮本百合子「ケーテ・コルヴィッツの画業」青空文庫>
  22. ・・・それで江井も大いに頭をしぼり、向島の西村の土地のがら空きのところへアパートを建てることになり、それで江井の安定の手段とすることになりました。私はやっと肩の重荷をおろしました。何しろ、こういう話、スエ子の話、皆、百合子様、お姉様なのです。この・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  23. ・・・何処かで人間らしいあったかい人づきあいを欠いて、やっとこさと金を溜めて、どうやら家を建てるより子供の教育だ、立派な子孫を残すために、小さい碌でもない財産を置くより子供の体にかけようと熱心に貯金していたら、それがどうでしょう、このごろは金の値・・・<宮本百合子「社会と人間の成長」青空文庫>
  24. ・・・月賦で家を建てる方法。そんな風な経済記事が扱われ、政治にしろ、そのときの大臣連の出世物語、政界内幕話という工合であった。戦争がはじまったとき、すべての浪花節、すべての映画、すべての流行唄、いわゆる大衆娯楽の全部が戦争宣伝に動員された。大衆文・・・<宮本百合子「商売は道によってかしこし」青空文庫>
  25. ・・・天幕を建てる場所は海でも山でも、その土地の所有者に断れば殆ど自由ですから、毎年変った土地へ、思うさまに行くことが出来るわけです。 日本ではまさか女ばかりでそんなことも出来ますまいが、罐詰にバタその他必要な程度のものの入った小さなバスケッ・・・<宮本百合子「女学生だけの天幕生活」青空文庫>
  26. ・・・ 育児教育の方を見れば、一例としては新しい住宅建築共同組合で建てる建物の中には付属托児所を造るのを理想としてやっている。それでそういうものは最近非常に多くなって、多いところになると区の中にいくつもある。また工場では工場が托児所をもってい・・・<宮本百合子「ソヴェト・ロシアの素顔」青空文庫>
  27. ・・・ 小屋を移すと云っても只オイソレとするのではなく、水排けがどう云う風になってるかの、光線の射入が完全に出来てなく風の強くあたる処はいけないのと云って、到々自分共の遊び場になって居る広っぱの隅に建てる事になった。 植木屋を呼んで、朝早・・・<宮本百合子「二十三番地」青空文庫>
  28. ・・・○隣の大工仕事、 こわした家、新しく建てる家 六月二十五日から林町に来る スーラーブ進む 七月七日 妙に寒い日 腸をこわす、下痢疲れ。仕事出来ず 七月八日 朝食堂にゆく 有島氏の死 四十六・・・<宮本百合子「「伸子」創作メモ(二)」青空文庫>
  29. ・・・ お霜は何か考えているらしく黙っていたが、「お前、小屋建てるなら組で建てて貰うまいか?」と云い出した。「組が建ててくれりゃ結構やけどなア。」「そりゃ建てるわさ。いっぺん組長さんに相談してみよまいか?」「どうなと勝手にせ!・・・<横光利一「南北」青空文庫>
  30. ・・・彼はそういう住居を建てる資力を持っているかもしれない、しかしそれは彼自身が自分の仕事から得た資力ではないであろう、それならば彼は世間の手前そういう家に住むのを恥ずべきである。そう藤村は考えたのであろう。美しい住居そのものが無意義なのではない・・・<和辻哲郎「藤村の個性」青空文庫>