だ‐とう〔‐タウ〕【妥当】例文一覧 30件

  1. ・・・して見れば菊池寛の作品を論ずる際、これらの尺度にのみ拠ろうとするのは、妥当を欠く非難を免れまい。では菊池寛の作品には、これらの割引を施した後にも、何か著しい特色が残っているか? 彼の価値を問う為には、まず此処に心を留むべきである。 何か・・・<芥川竜之介「「菊池寛全集」の序」青空文庫>
  2. ・・・詩を書く人を他の人が詩人と呼ぶのは差支ないが、その当人が自分は詩人であると思ってはいけない、いけないといっては妥当を欠くかもしれないが、そう思うことによってその人の書く詩は堕落する……我々に不必要なものになる。詩人たる資格は三つある。詩人は・・・<石川啄木「弓町より」青空文庫>
  3. ・・・ たゞ然し、最も妥当なる順序は、われ/\の現在生息しつゝある現代の文学書に親しみ、次第に過去時代の産物に遡ることを以て、効果多い方法と信ずる。たとえばルソーの『懺悔録』あたりから、近代精神の何ものであるかを知って、更にわれ/\の時代に近・・・<小川未明「文章を作る人々の根本用意」青空文庫>
  4. ・・・その全き悲しみのために、この結末の妥当であるかどうかということさえ、私にとっては問題ではなくなってしまう。しかし、はたして、爪を抜かれた猫はどうなるのだろう。眼を抜かれても、髭を抜かれても猫は生きているにちがいない。しかし、柔らかい蹠の、鞘・・・<梶井基次郎「愛撫」青空文庫>
  5. ・・・る腐儒的道学者の感がなく、それかといって芸術的交感と社会的趨勢とに気をひかれすぎて、内面的自律の厳粛性の弱くなったきらいがなく意志の自律性を強靭に固守する点で形式的主観的でありながら、人間行為の客観的妥当性を強調して、主観的制約を脱せしめよ・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  6. ・・・普通妥当の真理への忠実公正というだけでなく、同時代への愛、――実にそのためにニイチェのいわゆる没落を辞さないところの、共存同胞のための自己犠牲を余儀なくせしめらるる「熱き腸」を持たねばならない。彼は永遠の真理よりの命令的要素のうながしと、こ・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  7. ・・・さいわい、山崎氏には、浅見、尾崎両氏の真の良友あり、両氏共に高潔俊爽の得難き大人物にして帷幕の陰より機に臨み変に応じて順義妥当の優策を授け、また傍に、宮内、佐伯両氏の新英惇徳の二人物あり、やさしく彼に助勢してくれている様でありますから、まず・・・<太宰治「砂子屋」青空文庫>
  8. ・・・しかし科学者としては事がらの可能不可能や蓋然性の多少を既成科学の系統に照らして妥当に判断を下すほかはないので、もし万に一つその判断がはずれれば、それは真に新しい発見であって科学はそのために著しい進歩をする。しかしそのような場合があっても、判・・・<寺田寅彦「案内者」青空文庫>
  9. ・・・もちろんその省略が妥当であったかどうかを、最後にもう一度吟味しある程度まで実証的に判定し得られる場合もあるが、必ずしもそうでない場合がはなはだ多いのである。 この自然現象の表示としての微分方程式の本質とその役目とをこういうふうに考えてみ・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  10. ・・・ こういう考えが妥当であるかないかを決するには、次のような実験をやってみればよいと思われる。人間の言葉の音波列を分析して、その組成分の中からその基音ならびに低いほうの倍音を除去して、その代わりに、もとよりはずっと振動数の大きい任意の音を・・・<寺田寅彦「疑問と空想」青空文庫>
  11. ・・・しかし実際の科学の通俗的解説には、ややもするとほんとうの科学的興味は閑却されて、不妥当な譬喩やアナロジーの見当違いな興味が高調されやすいのは惜しい事である。そうなっては科学のほうは借りもので、結果はただ誤った知識と印象を伝えるばかりである。・・・<寺田寅彦「断水の日」青空文庫>
  12. ・・・北海道や朝鮮台湾は除外するとしても、たとえば南海道九州の自然と東北地方の自然とを一つに見て論ずることは、問題の種類によっては決して妥当であろうとは思われない。 こう考えて来ると、今度はまた「日本人」という言葉の内容がかなり空疎な散漫なも・・・<寺田寅彦「日本人の自然観」青空文庫>
  13. ・・・これは普通字句の簡潔とか用語の選択の妥当性によるものと解釈されるようであるが、しかしそれよりも根本的なことは、書く事の内容の取捨選択について積まれた修業の効果によるのではないかと思われる。俳句を作る場合のおもなる仕事は不用なものをきり捨て切・・・<寺田寅彦「俳句の精神」青空文庫>
  14. ・・・そして、関係要素の数が多くて、それら相互の交渉が複雑であればあるほど、かえってこの方法の妥当性がよくなるという点である。 それで、この方法を真に有効ならしむるには、むしろあらゆる独断、偏見、臆説をも初めから排する事なく、なるべくちがった・・・<寺田寅彦「比較言語学における統計的研究法の可能性について」青空文庫>
  15. ・・・あるいは新聞の存在を余儀なくし、新聞の内容を供給している現代文化そのものがこれらの原因になっていると言ったほうが妥当かもしれないが、それはいずれにしても、私はあらゆる日刊新聞を全廃する事によって、この世の中がもう少し住みごこちのいいものにな・・・<寺田寅彦「一つの思考実験」青空文庫>
  16. ・・・少なくともそういう風に考える方が自然科学者の今日の立場としてむしろ妥当ではあるまいか。しかしこの疑問以上に立ち入る事は科学者の領域以外に踏み出すと思う。 こんな事を書いて公にしようというについて一つ考えなければならぬ事がある。すなわちか・・・<寺田寅彦「方則について」青空文庫>
  17. ・・・浅学にて古代騎士の状況に通ぜず、従って叙事妥当を欠き、描景真相を失する所が多かろう、読者の誨を待つ。 遠き世の物語である。バロンと名乗るものの城を構え濠を環らして、人を屠り天に驕れる昔に帰れ。今代の話しではない。 何時の頃とも知・・・<夏目漱石「幻影の盾」青空文庫>
  18. ・・・訳語あらず、今ここに掲げたる訳語はわれの創意に係る。訳語妥当ならざるは自らこれを知るといえども匆卒の際改竄するに由なし。君子幸に正を賜え。升  附記<正岡子規「ベースボール」青空文庫>
  19. ・・・『くにのあゆみ』が日本の歴史学的な根拠もとぼしい皇紀をやめて、西暦に統一して書かれたことは、この将来の展望の上からも妥当である。〔一九四六年十月〕<宮本百合子「『くにのあゆみ』について」青空文庫>
  20. ・・・こと等が、諸方面から明かにされたのは、極めて妥当なことであったと云える。        今日の文学の諸経験          ――明日の文学への流れ―― さて、遂に我々の前には、将に暮れようとしている一九三七年の頁が現れ・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  21. ・・・としたものであって、私は北氏の解釈の中に妥当を欠くと思われる幾ヵ所かを見出したのであった。日本のプロレタリア文学運動が新しい道を見出して発展しようとする困難な今日の段階にあって、蔵原その他の人々の過去における活動が、正しい歴史的展望に立って・・・<宮本百合子「新年号の『文学評論』その他」青空文庫>
  22. ・・・そのような文化上の責任に対して、直接党にむすばれている学者・芸術家はまず自分たちの生きかたと仕事のやりかたそのもので、よりひろい一般的な可能が開かれ、その具体的で妥当な前進の方法が普遍化されるために骨を折らなければならないのだと思う。 ・・・<宮本百合子「孫悟空の雲」青空文庫>
  23. ・・・ 併し、一国の文化、社会状態を観察した場合に、何時も、その裏面、消極的方面のみに注目するのは、果して妥当な態度でしょうか。 他人の話を聞き、他人に会い、その言動の裡から欠点ばかりを摘発するとしたら、結局自分は、今在るだけの自己を肯定・・・<宮本百合子「男女交際より家庭生活へ」青空文庫>
  24. ・・・誰でも感じなければならないこの不調和は、主観のみの世界に閉じこもって、客観的な妥当性をまるで具備しない魂の燃え上るがまま、美点も欠点も自分の傾向の赴くままに従っていた彼女の上において、特に著しかったのである。 けれども、生れたばかりの赤・・・<宮本百合子「地は饒なり」青空文庫>
  25. ・・・それらが、美化された労働・労働を眺めるもののロマンティシズムにたって謳われていることだけを云々するのは妥当を欠くであろう。藤村の歴史性、個人の境遇的な特質が、こういう風に積極的に人間と自然との結びつきを謳ってもなお歴然たるところに、未来の詩・・・<宮本百合子「藤村の文学にうつる自然」青空文庫>
  26. ・・・このことは誰の眼にも妥当な法律の適用でないという感情をもたせた事実を語っている。前後二十余回に亙って宮本が病苦をおして「懇々」という形容詞をつけてよいほどスパイ摘発の意味と事実を論告したにもかかわらず、主文にあらわれた判決理由は十一年前宮本・・・<宮本百合子「年譜」青空文庫>
  27. ・・・これは妥当な註解であると思われる。然しながら、エンゲルスの手紙からの上記の引用を基礎として、エンゲルスは、「バルザックのリアリズムは革命的であると見ているのである」とやつぎ早に結論しているのは、理解に或る困難を引おこされる。ゾラのバルザック・・・<宮本百合子「バルザックに対する評価」青空文庫>
  28. ・・・その理由が現在の事情で客観的にも妥当性をもっていることは、教育委員会の選挙のとき来訪された方も理解されていました。  わたしの文学的活動の階級性についてもこまかく説明したとおりです。もとより、わたし一人の作品が民主主義文学の全部を代表す・・・<宮本百合子「文学について」青空文庫>
  29. ・・・ 今日ソ同盟の社会的業績に対する関心の中には、この極端な一つの実例が暗示しているような感情の方向をも包括していると見るのが妥当なのだろう。 ジャーナリズムのこの流行の潮にのって『文芸』八月号に勝野金政なる人物の「モスクワ」という一文・・・<宮本百合子「文芸時評」青空文庫>
  30. ・・・だが、そこに横たわった変化について、理論的形式をとってより明確な妥当性を与えなければならないとなると、これは少なからざる面倒なことである。先ず少くとも一応は客観的形式なるものの範疇を分析し、主観的形式の範疇分析をした結果の二形式の内容の交渉・・・<横光利一「新感覚論」青空文庫>