たね‐ばん【種版/種板】例文一覧 5件

  1. ・・・赤い絞り染めの兵古帯すがたのあなたのお供、その日、樹蔭でそっとネガのプレートあけて見て、そこには、ただ一色の乳白、首ふって不満顔、知らぬふりしてもとの鞘におさめていたのに、その夜の現像室は、阿鼻叫喚、種板みごとに黒一色、無智の犯人たちまちば・・・<太宰治「二十世紀旗手」青空文庫>
  2. ・・・ その時の映画の種板はたいてい一枚一枚に長方形の桐製のわくがついていて、映画の種類は東京名所や日本三景などの彩色写真、それから歴史や物語からの抜萃の類であった。そのほかに活動映画の先祖とも言われるべき道化人形の踊る絵があった。目をあいた・・・<寺田寅彦「映画時代」青空文庫>
  3. ・・・また写真の種板に感ずるのも照射の時間によって色々になるものである。それで問題も物理的に明白な意味のあるものにするには、例えば海面における光度の百分一とか千分一に減ずる深さ幾何とかいう事にしなければならぬ。このように問題の分析が出来てしまえば・・・<寺田寅彦「物理学の応用について」青空文庫>
  4. ・・・そして、その動きは、二枚の種板が一つの暗箱の中でずって動くように、上層官吏と下級官吏との間で、いくらかずつ異った利害をもっているのだろうとも、推察される。しかし、概括して、民主的方向へ、といわれている。民主的というのは、どういうことだろう。・・・<宮本百合子「石を投ぐるもの」青空文庫>
  5. ・・・そして、乱れた白髪を撫でつけてあげながら少し大きな声で、「おばあちゃま、謡の種板を買って来たのだけれど、おききになりますか」と訊いた。祖母は、暫く考えていたが、穏やかな口調で、「謡はいいなあ、おら地言は判らないでも、音をきくだけ・・・<宮本百合子「祖母のために」青空文庫>