たばね【束ね】例文一覧 30件

  1. ・・・また平生見かける相撲が――髪を藁束ねにした褌かつぎが相撲膏を貼っていたためかもしれない。     一九 宇治紫山 僕の一家は宇治紫山という人に一中節を習っていた。この人は酒だの遊芸だのにお蔵前の札差しの身上をすっかり費やして・・・<芥川竜之介「追憶」青空文庫>
  2. ・・・ん私の父の勤労や投入資金の利子やが計上された結果として、価格の高まったことになったには違いありませんが、そればかりが唯一の原因と考えるのは大きな間違いであって、外界の事情が進むに従って、こちらでは手を束ねているうちに、いつか知らず地価が高ま・・・<有島武郎「小作人への告別」青空文庫>
  3. ・・・さしたての潮が澄んでいるから差し覗くとよく分かった――幼児の拳ほどで、ふわふわと泡を束ねた形。取り留めのなさは、ちぎれ雲が大空から影を落としたか、と視められ、ぬぺりとして、ふうわり軽い。全体が薄樺で、黄色い斑がむらむらして、流れのままに出た・・・<泉鏡花「海の使者」青空文庫>
  4. ・・・―― 雀を見ても、燕を見ても、手を束ねて、寺に籠ってはいられない。その日の糧の不安さに、はじめはただ町や辻をうろついて廻ったが、落穂のないのは知れているのに、跫音にも、けたたましく驚かさるるのは、草の鶉よりもなお果敢ない。 詮方なさ・・・<泉鏡花「瓜の涙」青空文庫>
  5. ・・・大女の、わけて櫛巻に無雑作に引束ねた黒髪の房々とした濡色と、色の白さは目覚しい。「おやおや……新坊。」 小僧はやっぱり夢中でいた。「おい、新坊。」 と、手拭で頬辺を、つるりと撫でる。「あッ。」と、肝を消して、「ま・・・<泉鏡花「絵本の春」青空文庫>
  6. ・・・……しかも真中に、ズキリと庖丁目を入れた処が、パクリと赤黒い口を開いて、西施の腹の裂目を曝す…… 中から、ずるずると引出した、長々とある百腸を、巻かして、束ねて、ぬるぬると重ねて、白腸、黄腸と称えて売る。……あまつさえ、目の赤い親仁や、・・・<泉鏡花「茸の舞姫」青空文庫>
  7. ・・・ と軽い返事で、身軽にちょこちょこと茶の間から出た婦は、下膨れの色白で、真中から鬢を分けた濃い毛の束ね髪、些と煤びたが、人形だちの古風な顔。満更の容色ではないが、紺の筒袖の上被衣を、浅葱の紐で胸高にちょっと留めた甲斐甲斐しい女房ぶり。些・・・<泉鏡花「国貞えがく」青空文庫>
  8. ・・・わずかに束ねたる頭髪は、ふさふさと枕に乱れて、台の上にこぼれたり。 そのかよわげに、かつ気高く、清く、貴く、うるわしき病者の俤を一目見るより、予は慄然として寒さを感じぬ。 医学士はと、ふと見れば、渠は露ほどの感情をも動かしおらざるも・・・<泉鏡花「外科室」青空文庫>
  9. ・・・幾日も放ったらかしてあった七つになる長女の髪をいゝ加減に束ねてやって、彼は手をひいて、三人は夜の賑かな人通りの繁しい街の方へと歩いて行った。彼はひどく疲労を感じていた。そしてまだ晩飯を済ましてなかったので、三人ともひどく空腹であった。 ・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  10. ・・・ 初年兵の後藤が束ねた枯木を放り出して、頭をあげるか、あげないうちに、犬の群は突撃を敢行する歩兵部隊のように三人をめがけて吠えついてきた。浜田は、すぐ銃を取った。川井と、後藤とは帯剣を抜いた。小牛のように大きい、そして闘争的な蒙古犬は、・・・<黒島伝治「前哨」青空文庫>
  11. ・・・ 薄筵の一端を寄せ束ねたのを笠にも簑にも代えて、頭上から三角なりに被って来たが、今しも天を仰いで三四歩ゆるりと歩いた後に、いよいよ雪は断れるナと判じたのだろう、「エーッ」と、それを道の左の広みの方へかなぐり捨てざまに抛って了った・・・<幸田露伴「雪たたき」青空文庫>
  12. ・・・たがそもそもの端緒一向だね一ツ献じようとさされたる猪口をイエどうも私はと一言を三言に分けて迷惑ゆえの辞退を、酒席の憲法恥をかかすべからずと強いられてやっと受ける手頭のわけもなく顫え半ば吸物椀の上へ篠を束ねて降る驟雨酌する女がオヤ失礼と軽く出・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  13. ・・・ お新は髪を束ね直した後のさっぱりとした顔付で母の方へ来た。その時、おげんは娘に言いつけて、お新が使った後の鏡を自分の方へ持って来させた。「お父さんが亡くなってから、お母さんは一度も鏡を見ない。今日は蜂谷さんにもよく診察して貰うで、・・・<島崎藤村「ある女の生涯」青空文庫>
  14. ・・・よくよく見ているとその中のある物は状袋のたばを束ねてある帯紙らしかった。またある物は巻煙草の朝日の包紙の一片らしかった。マッチのペーパーや広告の散らし紙や、女の子のおもちゃにするおすべ紙や、あらゆるそう云った色刷のどれかを想い出させるような・・・<寺田寅彦「浅草紙」青空文庫>
  15. ・・・それがちょうど中元の頃で、この土地の人々は昔からの風習に従って家々で草を束ねた馬の形をこしらえ、それを水辺に持出しておいてから、そこいらの草を刈ってそれをその馬に喰わせる真似をしたりしていた。この草で作った馬の印象が妙になまなましく自分のこ・・・<寺田寅彦「海水浴」青空文庫>
  16. ・・・ この蒲の穂を二三十本ぐらい一束ねにしたのをそっくりそのままにA君が買おうとして価を聞くと、売り手のおかみさんが少し困ったような顔をした。「みなさん、たいてい二本ずつお買いになりますが」という。すると、他の客を相手にしていた亭主が聞きつ・・・<寺田寅彦「試験管」青空文庫>
  17. ・・・このあいだまで青かったはずの芋の葉は数日来の霜に凍ててすっかりうだったようになったのが一つ一つ丁寧に結び束ねてあった。 成増でおりて停車場の近くをあてもなく歩いた。とある谷を下った所で、曲がりくねった道路と、その道ばたに榛の木が三四本ま・・・<寺田寅彦「写生紀行」青空文庫>
  18. ・・・ 肉桂の根を束ねて赤い紙のバンドで巻いたものがあった。それを買ってもらってしゃぶったものである。チューインガムよりは刺激のある辛くて甘い特別な香味をもったものである。それから肉桂酒と称するが実は酒でもなんでもない肉桂汁に紅で色をつけたの・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  19. ・・・五六人の女婢手を束ねて、ぼんやり客俟の誰彼時、たちまちガラ/\ツとひきこみしは、たしかに二人乗の人力車、根津の廓からの流丸ならずば権君御持参の高帽子、と女中はてん/″\に浮立つゝ、貯蓄のイラツシヤイを惜気もなく異韻一斉さらけだして、急ぎいで・・・<永井荷風「上野」青空文庫>
  20. ・・・、長襦袢の袖口はこの時下へと滑ってその二の腕の奥にもし入黒子あらば見えもやすると思われるまで、両肱を菱の字なりに張出して後の髱を直し、さてまた最後には宛ら糸瓜の取手でも摘むがように、二本の指先で前髪の束ね目を軽く持ち上げ、片手の櫛で前髪のふ・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  21. ・・・春といっても横にひろがった薺が、枝を束ねた桑畑の畝間にすっと延び出して僅かに白い花が見え出してまだ麦が首を擡げない頃は其短い麦の間に小さな体にしては恐ろしげな毛を頭に立てた雲雀がちょろちょろと駈け歩いて居る。赤は雲雀を見つけるとすぐ其後に土・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  22. ・・・カーライルは書物の上でこそ自分独りわかったような事をいうが、家をきめるには細君の助けに依らなくては駄目と覚悟をしたものと見えて、夫人の上京するまで手を束ねて待っていた。四五日すると夫人が来る。そこで今度は二人してまた東西南北を馳け廻った揚句・・・<夏目漱石「カーライル博物館」青空文庫>
  23. ・・・爛々たる騎士の眼と、針を束ねたる如き女の鋭どき眼とは鏡の裡にてはたと出合った。この時シャロットの女は再び「サー・ランスロット」と叫んで、忽ち窓の傍に馳け寄って蒼き顔を半ば世の中に突き出す。人と馬とは、高き台の下を、遠きに去る地震の如くに馳け・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  24. ・・・内懐からクララのくれた一束ねの髪の毛を出して見る。長い薄色の毛が、麻を砧で打って柔かにした様にゆるくうねってウィリアムの手から下がる。ウィリアムは髪を見詰めていた視線を茫然とわきへそらす。それが器械的に壁の上へ落ちる。壁の上にかけてある盾の・・・<夏目漱石「幻影の盾」青空文庫>
  25. ・・・ 今一個の抽匣から取り出したのは、一束ねずつ捻紙で絡げた二束の文である。これはことごとく平田から来たのばかりである、捻紙を解いて調べ初めて、その中から四五本選り出して、涙ながら読んで涙ながら巻き納めた。中には二度も三度も読み返した文もあ・・・<広津柳浪「今戸心中」青空文庫>
  26. ・・・ 岡本が、蒼白い平らな顔に髪を引束ねた姿で紅茶を運んで来た。彼女は、今日特別陰気で、唇をも動かさず口の中で、「いらっしゃいまし」と挨拶した。「岡本さんも一緒に召し上れよ」「はあ、私あちらでいただきますから」 陽子の部・・・<宮本百合子「明るい海浜」青空文庫>
  27. ・・・ 長い間の親しい友達として私は只手を束ねて傍観する事は出来ない事である。 親しい友達と云うものの心をつくづく考えて見れば、なまなかの兄弟よりもたのもしいものである。 幸福な境遇にあるものと、不幸な身上のものと、 よく斯うした・・・<宮本百合子「M子」青空文庫>
  28. ・・・紅玉色の硝子は、濃い黒い束ね髪の上にあった。髪の下に、生え際のすんなりした低い額と、心持受け口の唇とがある。納戸の着物を着た肩があって、そこには肩あげがある。 目で見る現在の景色と断れ断れな過去の印象のジグザグが、すーっとレンズが過去に・・・<宮本百合子「毛の指環」青空文庫>
  29. ・・・髪なども長くして、それを紫の紐で束ねて後へ下げ、古い枝ぶりの好い松の樹が見える部屋で、幼い藤村に「大学」や「論語」の素読を教えた。その父の案で、藤村は僅か九歳のとき、兄と一緒に東京の姉の家へ、勉強によこされたのであった。 そのときから、・・・<宮本百合子「藤村の文学にうつる自然」青空文庫>
  30. ・・・もう物蔭は少し薄暗くなっていて、物置の奥がはっきり見えないのを、覗き込むようにして見ると、髪を長く垂れた、等身大の幽霊の首に白い着物を着せたのが、萱か何かを束ねて立てた上に覗かせてあった。その頃まで寄席に出る怪談師が、明りを消してから、客の・・・<森鴎外「百物語」青空文庫>