た‐ぶん【多分】例文一覧 32件

  1. ・・・彼の復讐の挙も、彼の同志も、最後にまた彼自身も、多分このまま、勝手な賞讃の声と共に、後代まで伝えられる事であろう。――こう云う不快な事実と向いあいながら、彼は火の気のうすくなった火鉢に手をかざすと、伝右衛門の眼をさけて、情なさそうにため息を・・・<芥川竜之介「或日の大石内蔵助」青空文庫>
  2. ・・・それを知りたいと望む多数の人の一人として私もそれから多分の示唆を受けうるであろうから。 従来の言説においては私の個性の内的衝動にほとんどすべての重点をおいて物をいっていた。各自が自己をこの上なく愛し、それを真の自由と尊貴とに導き行くべき・・・<有島武郎「想片」青空文庫>
  3. ・・・ 多分罪人はもう少しも体を動かすことは出来ないのであろう。首も廻らないのであろう。それに目だけは忙しく怪しげな様子で、あちこちを見廻している。何もかも見て置いて、覚えていようとでも思うように、またある物を捜しているかと思うように。 ・・・<著:アルチバシェッフミハイル・ペトローヴィチ 訳:森鴎外「罪人」青空文庫>
  4. ・・・ つれは、毛利一樹、という画工さんで、多分、挿画家協会会員の中に、芳名が列っていようと思う。私は、当日、小作の挿画のために、場所の実写を誂えるのに同行して、麻布我善坊から、狸穴辺――化けるのかと、すぐまたおなかまから苦情が出そうである。・・・<泉鏡花「木の子説法」青空文庫>
  5. ・・・四 狂歌師岡鹿楼笑名 前記の報条は多分喜兵衛自作の案文であろう。余り名文ではないが、喜兵衛は商人としては文雅の嗜みがあったので、六樹園の門に入って岡鹿楼笑名と号した。狂歌師としては無論第三流以下であって、笑名の名は狂歌の専門・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  6. ・・・とパウロは曰うた(哥林多、清き人は其の時に神を見ることが出来るのである、多分万物の造主なる霊の神を見るのではあるまい、其の栄の光輝その質の真像なる人なるキリストイエスを見るのであろう、而して彼を見る者は聖父を見るのであれば、心の清き者は天に・・・<内村鑑三「聖書の読方」青空文庫>
  7. ・・・いつも女房の方が一足先に立って行く。多分そのせいで、女学生の方が何か言ったり、問うて見たりしたいのを堪えているかと思われる。 遠くに見えていた白樺の白けた森が、次第にゆるゆると近づいて来る。手入をせられた事のない、銀鼠色の小さい木の幹が・・・<著:オイレンベルクヘルベルト 訳:森鴎外「女の決闘」青空文庫>
  8. ・・・ しかし、科学的知識のみを基礎とした読物は、たとえ好奇心と興味とを多分に持たせることはできても、個性や、特質や、体験ということを無視するが故に、いまだこれをもって真の理解に到達したとはいえないのであります。そしてその暁は、かの架空的なお・・・<小川未明「新童話論」青空文庫>
  9. ・・・そう云えばソレ彼処に橋代に架した大きな砂岩石の板石も見える。多分是を渡るであろう。もう話声も聞えぬ。何国の語で話ていたか、薩張聴分られなかったが、耳さえ今は遠くなったか。己れやれ是が味方であったら……此処から喚けば、彼処からでもよもや聴付け・・・<著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷「四日間」青空文庫>
  10. ・・・何故と言って、自分の見ている薄暗い窓のなかが、自分の思っているようなものでは多分ないことが、僕にはもう薄うすわかっているんです。それでいて心を集めてそこを見ているとありありそう思えて来る。そのときの心の状態がなんとも言えない恍惚なんです。い・・・<梶井基次郎「ある崖上の感情」青空文庫>
  11.  今度の戦で想い出した、多分太沽沖にあるわが軍艦内にも同じような事があるだろうと思うからお話しすると、横須賀なるある海軍中佐の語るには、 わが艦隊が明治二十七年の天長節を祝したのは、あたかも陸兵の華園口上陸を保護するため・・・<国木田独歩「遺言」青空文庫>
  12. ・・・「お母が多分内所で入れてくれたんだ。」「それをまた今まで知らなかったとは間がぬけとるな。……全く儲けもんだ。」「うむ、儲けた。……半分わけてやろう。」 吉永は、自分が少くとも、明後日は、イイシへ行かなければならないことを思っ・・・<黒島伝治「渦巻ける烏の群」青空文庫>
  13. ・・・その後になっても外法頭という語はあって、福禄寿のような頭を、今でも多分京阪地方では外法頭というだろう、東京にも明治頃までは、下駄の形の称に外法というのがあった。竹斎だか何だったか徳川初期の草子にも外法あたまというはあり、「外法の下り坂」とい・・・<幸田露伴「魔法修行者」青空文庫>
  14. ・・・その時、多分いま前を横切ってゆく子供に、奥の方でコックがものを云っているのが聞えた。「オヤ、この子供は今ンちから豆ッて云うと、夢中になるぜ。いやだなア!」 そんなことを云った。 すると、一緒にめしを食っていた女の人が、プッと笑い・・・<小林多喜二「独房」青空文庫>
  15. ・・・患者の中で、奥様が一番こわい人だぞや。多分お前も廊下で見掛けただらず。奥様が犬を連れていて、その犬がまた気味の悪い奴よのい。誰の部屋へでも這入り込んで行く。この部屋まで這入って来る。何か食べる物でも置いてやらないと、そこいら中あの犬が狩りか・・・<島崎藤村「ある女の生涯」青空文庫>
  16. ・・・いつも女房の方が一足先に立って行く。多分そのせいで、女学生の方が、何か言ったり、問うて見たりしたいのを堪えているかと思われる。 遠くに見えている白樺の白けた森が、次第にゆるゆると近づいて来る。手入をせられた事の無い、銀鼠色の小さい木の幹・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  17. ・・・ そのうちある時、いつも話の受け手にばかりなっていた、このチルナウエルが忽ち話題になった。多分当人も生涯この事件を唯一の話の種にすることであろう。それをなんだと云うと、この男は世界を一周した。そこで珍らしい人物ばかり来るこの店でさえ、珍・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  18. ・・・ 死んだ白猫の母は宅の飼猫で白に雉毛の斑点を多分にもっていたが、ことによると前の白猫と今度の「白」とは父親がおなじであるか、ことによると「白」が「ボーヤ」の子であるかもしれないと思われた。それについて思い当るのは、一と頃ときどき宅へ忍び・・・<寺田寅彦「ある探偵事件」青空文庫>
  19. ・・・十二名――諸君、今一人、土佐で亡くなった多分自殺した幸徳の母君あるを忘れてはならぬ。 かくのごとくして彼らは死んだ。死は彼らの成功である。パラドックスのようであるが、人事の法則、負くるが勝である、死ぬるが生きるのである。彼らはたしかにそ・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  20. ・・・人力車を挽く方が汗がよほど多分に出るでしょう。自動車の御者になってお客を乗せれば――もっとも自動車をもつくらいならお客を乗せる必要もないが――短い時間で長い所が走れる。糞力はちっとも出さないですむ。活力節約の結果楽に仕事ができる。されば自動・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  21. ・・・ニイチェほどに、矛盾を多分に有した複雑の思想家はなく、ニイチェほどに、残忍辛辣のメスをふるつて、人間心理の秘密を切りひらいた哲学者はない。ニイチェの深さは地獄に達し、ニイチェの高さは天に届く。いかなる人の自負心をもつてしても、十九世紀以来の・・・<萩原朔太郎「ニイチェに就いての雑感」青空文庫>
  22. ・・・ 私はどこからか、その建物へ動力線が引き込まれてはいないかと、上を眺めた。多分死なない程度の電流をかけて置いて、ピクピクしてる生き胆を取るんだろう。でないと出来上った六神丸の効き目が尠いだろうから、だが、――私はその階段を昇りながら考え・・・<葉山嘉樹「淫賣婦」青空文庫>
  23. ・・・しかも、河豚は二匹しか釣れず、その一匹を私がせしめたというわけである。多分、腕よりも偶然だったのであろう。エビのエサを使って、深い海底に、オモリのついた糸をおろした。底についたらしく手に感じたとき、すぐにグイグイと引っぱられ、あわてて引きあ・・・<火野葦平「ゲテ魚好き」青空文庫>
  24. ・・・薄絹が少し動いたようではあるが、何も見えない。多分風であっただろう。 オオビュルナンは口の内でつぶやいた。「これでは余り優待せられると云うものではないな。もうかれこれ二十分から待たせられている。どうしたと云うのだろう。事によったら馬鹿な・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  25. ・・・殊に荷物を皆持って上れという命令があったので多分放免になるのであろうと勇みに勇んで上陸した。湯に入って(自分は拭折詰の御馳走を喰うて、珍しく畳の上に寐て待って居ると午後三時頃に万歳万歳、という声が家を揺かして響いた。これは放免になった歓びの・・・<正岡子規「病」青空文庫>
  26. ・・・ 稀薄な空気がみんみん鳴っていましたがそれは多分は白磁器の雲の向うをさびしく渡った日輪がもう高原の西を劃る黒い尖々の山稜の向うに落ちて薄明が来たためにそんなに軋んでいたのだろうとおもいます。 私は魚のようにあえぎながら何べんもあたり・・・<宮沢賢治「インドラの網」青空文庫>
  27. ・・・は、まだ多分に、この作者が幼時の環境からしみこまされていたアナーキスティックな爆発があった。しかし、少女時代の労働のために健康を失ったこの作者が、妻、母として、党員として東北の小さい町に負担の多い生活とたたかいながら一つ一つ作品を重ねて来て・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」青空文庫>
  28. ・・・径二寸もあろうかと思われる、小さい急須の代赭色の膚に Pemphigus という水泡のような、大小種々の疣が出来ている。多分焼く時に出来損ねたのであろう。この蝦蟇出の急須に絹糸の切屑のように細かくよじれた、暗緑色の宇治茶を入れて、それに冷ま・・・<森鴎外「カズイスチカ」青空文庫>
  29. ・・・顔形、それは老若の違いこそはあるが、ほとほと前の婦人と瓜二つで……ちと軽卒な判断だが、だからこの二人は多分母子だろう。 二人とも何やら浮かぬ顔色で今までの談話が途切れたような体であッたが、しばらくして老女はきッと思いついた体で傍の匕首を・・・<山田美妙「武蔵野」青空文庫>
  30. ・・・未来派は心象のテンポに同時性を与える苦心に於て立体的な感覚を触発させ、従って立体派の要素を多分に含み、立体派は例えば川端康成氏の「短篇集」に於けるが如く、プロットの進行に時間観念を忘却させ、より自我の核心を把握して構成派的力学形式をとること・・・<横光利一「新感覚論」青空文庫>