だら‐だら例文一覧 30件

  1. ・・・道は庭先をだらだら下りると、すぐに浜へつづいていた。「泳げるかな?」「きょうは少し寒いかも知れない。」 僕等は弘法麦の茂みを避け避け、(滴をためた弘法麦の中へうっかり足を踏み入れると、ふくら脛の痒そんなことを話して歩いて行った。・・・<芥川竜之介「海のほとり」青空文庫>
  2. ・・・「さて、夜がふけてから、御寺を出て、だらだら下りの坂路を、五条へくだろうとしますと、案の定後から、男が一人抱きつきました。丁度、春さきの暖い晩でございましたが、生憎の暗で、相手の男の顔も見えなければ、着ている物などは、猶の事わかりませぬ・・・<芥川竜之介「運」青空文庫>
  3. ・・・その内にもう二人は、約束の石河岸の前へ来かかりましたが、お敏は薄暗がりにつくばっている御影の狛犬へ眼をやると、ほっと安心したような吐息をついて、その下をだらだらと川の方へ下りて行くと、根府川石が何本も、船から挙げたまま寝かしてある――そこま・・・<芥川竜之介「妖婆」青空文庫>
  4. ・・・坊主は開いた目も閉じて、ぼうとした顔色で、しっきりもなしに、だらだらと涎を垂らす。「ああ、手がだるい、まだ?」「いま一息。」―― 不思議な光景は、美しき女が、針の尖で怪しき魔を操る、舞台における、神秘なる場面にも見えた。茶店の娘とその父・・・<泉鏡花「伯爵の釵」青空文庫>
  5. ・・・ 行くことおよそ二里ばかり、それから爪先上りのだらだら坂になった、それを一里半、泊を急ぐ旅人の心には、かれこれ三里余も来たらうと思うと、ようやく小川の温泉に着きましてございまする。 志す旅籠屋は、尋ねると直ぐに知れた、有名なもので、・・・<泉鏡花「湯女の魂」青空文庫>
  6. ・・・ 町はだらだらとして、平地の上に横たわっているばかりであります。しかるに、どうしてこの町を「眠い町」というかといいますと、だれでもこの町を通ったものは、不思議なことには、しぜんと体が疲れてきて眠くなるからでありました。それで日に幾人とな・・・<小川未明「眠い町」青空文庫>
  7. ・・・はいつもの饒舌癖がかえって大阪の有閑マダムがややこしく入り組んだ男女関係のいきさつを判らせようとして、こまごまだらだらと喋っているという効果を出しているし、大阪弁も女専の国文科を卒業した生粋の大阪の娘を二人まで助手に雇って、書いたものだけに・・・<織田作之助「大阪の可能性」青空文庫>
  8. ・・・私の純粋戯曲理論から見ると、小説本など形式がだらだらして、なんだか汚らわしいように思われた。高等学校時代のことである。 高等学校は三高、山本修二先生、伊吹武彦先生など劇に関係のある先生がいて、一緒に脚本朗読会をやって変な声をだしていた。・・・<織田作之助「わが文学修業」青空文庫>
  9. ・・・ 音が近づくにつけて大きくなる、下草や小藪を踏み分ける音がもうすぐ後ろで聞こえる、僕の身体は冷水を浴びたようになって、すくんで来る、それで腋の下からは汗がだらだら流れる、何のことはない一種の拷問サ。 僕はただ夢中になって画いていたが・・・<国木田独歩「郊外」青空文庫>
  10. ・・・足元からすこしだらだら下がりになり萱が一面に生え、尾花の末が日に光っている、萱原の先きが畑で、畑の先に背の低い林が一叢繁り、その林の上に遠い杉の小杜が見え、地平線の上に淡々しい雲が集まっていて雲の色にまがいそうな連山がその間にすこしずつ見え・・・<国木田独歩「武蔵野」青空文庫>
  11. ・・・作者としては不平だらだらだった。しかし舞台協会の諸君は人間として純情な人たちばかりで、私とも精神的な交感が通っていた。 映画にとりたいという申込みはそのころよくあったが私はことわってきた。そのころの映画はまだ幼稚だったし、トーキーもなか・・・<倉田百三「『出家とその弟子』の追憶」青空文庫>
  12. ・・・て坐り、祖母、母、長兄、次兄、三兄、私という順序に並び、向う側は、帳場さん、嫂、姉たちが並んで、長兄と次兄は、夏、どんなに暑いときでも日本酒を固執し、二人とも、その傍に大型のタオルを用意させて置いて、だらだら流れる汗を、それでもって拭い拭い・・・<太宰治「兄たち」青空文庫>
  13. ・・・笑い笑い老妻とわかれ、だらだら山を下るにしたがって、雪も薄くなり、嘉七は小声で、あそこか、ここか、とかず枝に相談をはじめた。かず枝は、もっと水上の駅にちかいほうが、淋しくなくてよい、と言った。やがて、水上のまちが、眼下にくろく展開した。・・・<太宰治「姥捨」青空文庫>
  14. ・・・ だらだら勝手な事ばかり書いて来ました。いちいちお読み下さったとしたら恐縮です。でも、もう怒らないで下さい。あなたは、すぐ怒るからいけません。もう、あんな長い堂々のお手紙ばかりはごめんですよ。 ご存じですか? 私は、あなたとこんな手・・・<太宰治「風の便り」青空文庫>
  15. ・・・思い出せば私が三つのとき、というような書きだしから、だらだらと思い出話を書き綴っていって、二歳一歳、しまいにはおのれの誕生のときの思い出を叙述し、それからおもむろに筆を擱いたら、それでよいのである。けれどもここに、姿勢の完璧を示そうか、情念・・・<太宰治「玩具」青空文庫>
  16. ・・・はッと思って見ると、血がだらだらと暑い夕日に彩られて、その兵士はガックリ前にった。胸に弾丸があたったのだ。その兵士は善い男だった。快活で、洒脱で、何ごとにも気が置けなかった。新城町のもので、若い嚊があったはずだ。上陸当座はいっしょによく徴発・・・<田山花袋「一兵卒」青空文庫>
  17. ・・・ この男はどこから来るかと言うと、千駄谷の田畝を越して、櫟の並木の向こうを通って、新建ちのりっぱな邸宅の門をつらねている間を抜けて、牛の鳴き声の聞こえる牧場、樫の大樹に連なっている小径――その向こうをだらだらと下った丘陵の蔭の一軒家、毎朝か・・・<田山花袋「少女病」青空文庫>
  18. ・・・たぶん食いつこうとしてどうかされたものと見えて口から白いよだれのようなものをだらだらたらしながら両方の前足で自分の口をもぎ取りでもするような事をして苦しんでいた。蛙が煙草をなめた時の挙動とよく似た事をやっていた。それ以来はもう口をつけないで・・・<寺田寅彦「ねずみと猫」青空文庫>
  19. ・・・ただ宇治川の流れと、だらだらした山の新緑が、幾分私の胸にぴったりくるような悦びを感じた。 大阪の町でも、私は最初来たときの驚異が、しばらく見ている間に、いつとなしにしだいに裏切られてゆくのを感じた。経済的には膨脹していても、真の生活意識・・・<徳田秋声「蒼白い月」青空文庫>
  20.    一 ――ほこりっぽい、だらだらな坂道がつきるへんに、すりへった木橋がある。木橋のむこうにかわきあがった白い道路がよこぎっていて、そのまたむこうに、赤煉瓦の塀と鉄の門があった。鉄の門の内側は広大な熊本煙草専売局工・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  21. ・・・冴返るなどと云う時節でもないに馬鹿馬鹿しいと外套の襟を立てて盲唖学校の前から植物園の横をだらだらと下りた時、どこで撞く鐘だか夜の中に波を描いて、静かな空をうねりながら来る。十一時だなと思う。――時の鐘は誰が発明したものか知らん。今までは気が・・・<夏目漱石「琴のそら音」青空文庫>
  22. ・・・ 土塀の続いている屋敷町を西へ下って、だらだら坂を降り尽くすと、大きな銀杏がある。この銀杏を目標に右に切れると、一丁ばかり奥に石の鳥居がある。片側は田圃で、片側は熊笹ばかりの中を鳥居まで来て、それを潜り抜けると、暗い杉の木立になる。それ・・・<夏目漱石「夢十夜」青空文庫>
  23. ・・・ 処が、日本の文章にはこの調子がない、一体にだらだらして、黙読するには差支えないが、声を出して読むと頗る単調だ。啻に抑揚などが明らかでないのみか、元来読み方が出来ていないのだから、声を出して読むには不適当である。 けれども、苟くも外・・・<二葉亭四迷「余が翻訳の標準」青空文庫>
  24. ・・・ 右の方の象の頭のかたちをした灌木の丘からだらだら下りになった低いところを一寸越しますと、又窪地がありました。 木霊はまっすぐに降りて行きました。太陽は今越えて来た丘のきらきらの枯草の向うにかかりそのななめなひかりを受けて早くも一本・・・<宮沢賢治「若い木霊」青空文庫>
  25. ・・・―― だらだら坂を海岸の方へ下る。倉庫が並んでいる。レールが敷いてある。馬糞がごろた石の間にある。岸壁へ出て、半分倉庫みたいな半分事務所のような商船組合の前で荷馬車がとまった。目の前に、古びた貨物船が繋留されている。それが我等を日本へつ・・・<宮本百合子「新しきシベリアを横切る」青空文庫>
  26. ・・・そこも門から八ツ手などの植った玄関までだらだら下りになっていて、横手に見える玄関の格子はいつもしまっている。細長い踏み石がしいてあるその門と玄関との間のところに、犬小舎が置かれていて、そこに一匹の洋犬が鎖でつながれて暮しているのであった。・・・<宮本百合子「犬三態」青空文庫>
  27. ・・・動物園から帰って来るとき、谷中のお寺の多いだらだら坂を下りて、惰力のついた足どりでその石橋をわたると、暫く平地で、もう一つ団子坂をのぼらなければ林町の通りへ来られなかった。 藍染川と団子坂との間の右側に、「菊見せんべい」の大きな店があっ・・・<宮本百合子「菊人形」青空文庫>
  28. ・・・入口は植木屋のようで、短いだらだら坂を数歩下ると開いた地面がある。支那鉢や普通の木の箱があって、いろんな種類の金魚が泳いでいた。或る箱の葭簀の下では支那らんちゅうの目の醒めるようなのが魁偉な尾鰭を重々しく動かしていた。葭簀を洩れた日光が余り・・・<宮本百合子「高台寺」青空文庫>
  29. ・・・前にはまたのぼるべきだらだら坂がある。――この時、突然私を捕えて私の心を急用から引き放すものがあった。私は坂の上に見える深い空をながめた。小径を両側から覆うている松の姿をながめた。何という微妙な光がすべての物を包んでいることだろう。私は急に・・・<和辻哲郎「創作の心理について」青空文庫>
  30. ・・・牛込柳町の電車停留場から、矢来下の方へ通じる広い通りを三、四町行くと、左側に、自動車がはいれるかどうかと思われるくらいの狭い横町があって、先は少しだらだら坂になっていた。その坂を一町ほどのぼりつめた右側が漱石山房であった。門をはいると右手に・・・<和辻哲郎「漱石の人物」青空文庫>