だん‐こ【断固/断×乎】例文一覧 22件

  1. ・・・ 吾人はかかる疑問の前に断乎として否と答うるものなり。試みに天下の夫にして発狂する権利を得たりとせよ。彼等はことごとく家族を後に、あるいは道塗に行吟し、あるいは山沢に逍遥し、あるいはまた精神病院裡に飽食暖衣するの幸福を得べし。然れども世界に・・・<芥川竜之介「馬の脚」青空文庫>
  2. ・・・「拝啓、貴下の夫人が貞操を守られざるは、再三御忠告……貴下が今日に至るまで、何等断乎たる処置に出でられざるは……されば夫人は旧日の情夫と共に、日夜……日本人にして且珈琲店の給仕女たりし房子夫人が、……支那人たる貴下のために、万斛の同情無・・・<芥川竜之介「影」青空文庫>
  3. ・・・ここで私は、ついに断乎たる処置を執る事に、致したのでございます。 そう云う必要に迫られて、これを書いた私が、どうして、狂人扱いをされて、黙って居られましょう。私はもう一度、ここに改めてお願い致します。閣下、どうか私の正気だと云う事を御信・・・<芥川竜之介「二つの手紙」青空文庫>
  4. ・・・しかもわが口よりして、あからさまに秘密ありて人に聞かしむることを得ずと、断乎として謂い出だせる、夫人の胸中を推すれば。 伯爵は温乎として、「わしにも、聞かされぬことなんか。え、奥」「はい。だれにも聞かすことはなりません」 夫・・・<泉鏡花「外科室」青空文庫>
  5. ・・・ かくは断乎として言放ち、大地をひしと打敲きつ、首を縮め、杖をつき、徐ろに歩を回らしける。 その背後より抜足差足、密に後をつけて行く一人の老媼あり。これかのお通の召使が、未だ何人も知り得ざる蝦蟇法師の居所を探りて、納涼台が賭物したる・・・<泉鏡花「妖僧記」青空文庫>
  6. ・・・離れ難い愛着を感じる愛欲の男女がこの上の結合が相互の運命を破壊しつくすことが見通されるとき、その絆を断固として断たねばならないことは少なくない。たいていの妻子ある男性との結合は女性にとって、それが素人の娘であるにせよ、あるいはいわゆる囲い者・・・<倉田百三「人生における離合について」青空文庫>
  7. ・・・「もちろん、皆さんにお逢い出来ます。」断乎たる口調だった。ひどくたのもしく見えた。 こんどの帰郷がだんだん楽しいものに思われて来た。次兄の英治さんにも逢いたかったし、また姉たちにも逢いたかった。すべて、十年振りなのである。そうして私・・・<太宰治「帰去来」青空文庫>
  8. ・・・私の仕事は、訪問客を断乎として追い返し得るほどの立派なものではない。その訪問客の苦悩と、私の苦悩と、どっちが深いか、それはわからぬ。私のほうが、まだしも楽なのかも知れない。「なんだい、あれは。趣味でキリストごっこなんかに、ふけっていやがって・・・<太宰治「新郎」青空文庫>
  9. ・・・そうして帰途は必ず、何くそ、と反骨をさすり、葛西善蔵の事が、どういうわけだか、きっと思い出され、断乎としてこの着物を手放すまいと固執の念を深めるのである。 単衣から袷に移る期間はむずかしい。九月の末から十月のはじめにかけて、十日間ばかり・・・<太宰治「服装に就いて」青空文庫>
  10. ・・・これを聞いて、僕は春浪さんとは断乎として交を絶ったのみならず、カッフェープランタンにも再び出入しなかった。尾張町の四辻にカッフェーライオンの開店したのも当時のことであったが、僕はプランタンの遭難以来銀座辺の酒肆には一切足を踏み入れないように・・・<永井荷風「申訳」青空文庫>
  11. ・・・空気――風――と光線とは誰の所有に属するかは、多分、典獄か検事局かに属するんだろう――知らなかったが、私達の所有は断乎として禁じられていた。 それが今、声帯は躍動し、鼓膜は裂けるばかりに、同志の言葉に震え騒いでいる。 ――この上に、・・・<葉山嘉樹「牢獄の半日」青空文庫>
  12. ・・・し、これに反するものは必ず害を被りて免るべからざること、既に明らかなれば、理論上の正邪はともかくも、一国人民として自国自家のために、決して軽んずべからざるの大義にして、即ち我輩がいかなる事情に逢うも、断乎として一毫をも仮さざる由縁なり。・・・<福沢諭吉「日本男子論」青空文庫>
  13. ・・・しかしキュリー夫人はあたりの動乱に断乎として耳をかさず、憂いと堅忍との輝いている独特な灰色の眼で、日光をあびたフランス平野の景色を眺めていた。ボルドーには避難して来た人々があふれていて、キュリー夫人では重くて運びきれない百万フランの価格を持・・・<宮本百合子「キュリー夫人」青空文庫>
  14. ・・・「断乎処断する」というような意気ごみの、最初の実例とされることに抗議します。なぜなら、起訴は、実際上もうおくれた時機であって、こんどのやりかたは、「石中先生」「裸者と死者」で達せられなかった「法の威力」をしめそうとする目的に立っていることが・・・<宮本百合子「「チャタレー夫人の恋人」の起訴につよく抗議する」青空文庫>
  15. ・・・代のアグネスの内部に常に対立していて激しく噛みあっていた女としての本来は健全な性的欲求と、女がこの社会で女であるために受けて行かなければならない常套的な結婚生活における様々の半奴隷的事情、因習に対する断乎たる闘争の決心との間の心理的な相剋葛・・・<宮本百合子「中国に於ける二人のアメリカ婦人」青空文庫>
  16. ・・・そして文学運動における左傾と右傾の両偏向に対しては、従来の断乎たる態度をもって、闘争を継続しなければならない。 確乎たる指導、一切の偏向及び歪曲との断乎たる闘争、文学における真に正しいプロレタリア的方針の確立、これらが国際局の前に横たわ・・・<宮本百合子「ニッポン三週間」青空文庫>
  17. ・・・ そのことは、日本画家の一種の紊風を示す話でもあり、又母が実際家であって、利害を守るにも鋭く、そういう点でも断乎としていたことをも示す面白い話だが、当時母はそんな事情はちっとも云わなかった。ただ、あの何とかさんの筆は死んでるからおやめだ・・・<宮本百合子「母」青空文庫>
  18. ・・・ろしい無秩序と官僚風のしみとおったスクータリーへ、新しい敷布を一とおり行きわたらせるためにでもナイチンゲールは、厳格な方法、きっちりした規律、些事をゆるがせにしない厳密な注意、不断の努力、不屈の意志と断乎とした決心が入用であった。彼女の平静・・・<宮本百合子「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」青空文庫>
  19. ・・・これは労働組合法によって、ストライキの権利を持ち、集団的行動の自由を獲得した勤労大衆を威嚇しようとして「暴行脅迫又は所有権の侵害の虞ある場合にはそれを不法行為として断乎取締る。」という声明が、内務、司法、商工、厚生四人の大臣によって、発せら・・・<宮本百合子「私たちの建設」青空文庫>
  20. ・・・ 床前に端座した栖方は、いつもの彼には見られぬ上官らしい威厳で首を横に振った。断乎とした彼の即決で、句会はそのまま続行された。高田の披講で一座の作句が読みあげられていくに随い、梶と高田の二作がしばらく高点を競りあいつつ、しだいにまた高田・・・<横光利一「微笑」青空文庫>
  21. ・・・その他正直者の重用を説き、理非を絶対に曲げてはならないこと、断乎たる処分も結局は慈悲の殺生であることなどを力説しているのも、目につく点である。我々はそこに、精神の自由さと道義的背景の硬さとを感じ得るように思う。 やや時代の下るもののうち・・・<和辻哲郎「埋もれた日本」青空文庫>
  22. ・・・宗教の信仰に救われて全能者の存在を霊妙の間に意識し断乎たる歩武を進めて Im schnen, Im guten, Im ganzen, に生くべく猛進するわが理想であると言ったら、ある人は嘲笑した。我れに取っては最も明白合理なる信念である。・・・<和辻哲郎「霊的本能主義」青空文庫>