たん‐じかん【短時間】例文一覧 18件

  1. ・・・しかしこのカッフェは短時間の間にすっかり容子を改めていた。就中僕を不快にしたのはマホガニイまがいの椅子やテエブルの少しもあたりの薔薇色の壁と調和を保っていないことだった。僕はもう一度人目に見えない苦しみの中に落ちこむのを恐れ、銀貨を一枚投げ・・・<芥川竜之介「歯車」青空文庫>
  2. ・・・御前彫刻などには大抵刀の進み易いものを用いて短時間に功を挙げることとする。なるほど、火、火とのみ云って、火の芸術のみを難儀のもののように思っていたのは浅はかであったと悟った。「なるほど。何の道にも苦しい瀬戸はある。有難い。お蔭で世界を広・・・<幸田露伴「鵞鳥」青空文庫>
  3. ・・・祖母が糸車で一生涯かかって紡ぎ得たであろうと思う糸の量が数え切れない機械の紡錘から短時間に一度に流れ出していた。そこにはあのゆるやかな抑揚ある四拍子の「子守り歌」の代わりに、機械的に調律された恒同な雑音と唸り音の交響楽が奏せられていた。・・・<寺田寅彦「糸車」青空文庫>
  4. ・・・それが実に呼吸をつく間もない短時間に交互錯綜してスクリーンの上に現滅するのである。 昨年見た「流行の王様」という映画にも黒白の駝鳥の羽団扇を持った踊り子が花弁の形に並んだのを高空から撮影したのがあり、同じような趣向は他にもいくらもあった・・・<寺田寅彦「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」青空文庫>
  5. ・・・この現象は短時間で消え馬はたおれるというのである。この二説は磯氏も注意されたように相互に類似している。これを科学的な目で見ると要するに馬の頭部の近辺に或る異常な光の現象が起こるというふうに解釈される。 次に注意すべきは、この怪異の起こる・・・<寺田寅彦「怪異考」青空文庫>
  6. ・・・一秒の五十分の一くらいな短時間にでもあらゆるものをすっかり認めて一度に覚え込んでしまうのである。 その上にわれわれの二つの目の網膜には映じていながら心の目には少しも見えなかったものをちゃんとこくめいに見て取って細かに覚えているのである。・・・<寺田寅彦「カメラをさげて」青空文庫>
  7. ・・・例えば短時間の強い光源としてのアンダーソンの針金の電気爆発を使う代りに水銀のフィラメントの爆発を使ったり、また電扇の研究と聯関して気流の模様を写真するために懐炉灰の火の子を飛ばせるといったようなことも試みた。無闇に読みもしない書物を並べ立て・・・<寺田寅彦「工学博士末広恭二君」青空文庫>
  8. ・・・稲妻のぴかりとする時間は一秒の百万分一という短時間で、これに照らして見れば砲丸でも止まって見える。あまり時間が短いから左程強く目には感ぜぬが、その実、月の光などに比べては比較にならぬほど強い光である。時としては天の真上で稲光がしてやはり音の・・・<寺田寅彦「歳時記新註」青空文庫>
  9. ・・・できるだけ短時間に、できるだけ少しの力学的仕事を費やして、与えられた面積を刈り終わるという数学的の問題もあった。刈りかけた中途で客間から見た時になるべく見にくくないようにという審美的の要求もあった。いちばん延び過ぎた所から始めるという植物の・・・<寺田寅彦「芝刈り」青空文庫>
  10. ・・・これらの記事を日蝕に比べる説もあったようであるが、日蝕のごとき短時間の暗黒状態としては、ここに引用した以外のいろいろな記事が調和しない。神々が鏡や玉を作ったりしてあらゆる方策を講じるという顛末を叙した記事は、ともかくも、相当な長い時間の経過・・・<寺田寅彦「神話と地球物理学」青空文庫>
  11. ・・・しかし現象の性質上から通例狭い区域に短時間だけしか降らないものだとすれば、降るには降っても気象学者の耳目に触れない場合もかなりあるかもしれない。それで読者のうちで過去あるいは将来に類似の現象を実見された場合には、その時日、継続時間、降水の形・・・<寺田寅彦「凍雨と雨氷」青空文庫>
  12. ・・・しかし一つの分子の通過したくらいでは、おそらくその径路への影響は短時間に消滅してしまうであろうと考え、ただ同種の分子が種々の径路を通ってある地域に到着し、ある時点におけるその密度が相当の大きさに達した場合にのみ、その地点の国語に固定的の影響・・・<寺田寅彦「比較言語学における統計的研究法の可能性について」青空文庫>
  13. ・・・しかし実際はこの火花放電の経過は一秒の百万分一ぐらいの短時間に終了するという事が実験によって確かめられたので、到底肉眼でその火花の生長を認識することは不可能なはずである。それだのにそれが移動するように「見える」というのは、全くわれわれの眼底・・・<寺田寅彦「人魂の一つの場合」青空文庫>
  14. ・・・これは極めて短時間の意識を学者が解剖して吾々に示したものでありますが、この解剖は個人の一分間の意識のみならず、一般社会の集合意識にも、それからまた一日一月もしくは一年乃至十年の間の意識にも応用の利く解剖で、その特色は多人数になったって、長時・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  15. ・・・そして、現在一年余の結婚生活の経験に於て、其は仮令非常に短時間ではあっても、最初の自分の考えは、全然間違って居たものではない事を認めて来た。 人は、自分の裡に未だ顕われずに潜む多くの力の総てを出し切る機会を持たなければ、其等力の実値を体・・・<宮本百合子「黄銅時代の為」青空文庫>
  16. ・・・        第二日 多忙な永山氏を煩すことだから、大奮発で七時起床。短時間の滞在だから永山氏に大体観るべきところの教示を受けたいと、昨日電話して置いたのだ。紹介状には、私共二人の名が連ねてある。ところが、Y、昨晩床に入る・・・<宮本百合子「長崎の一瞥」青空文庫>
  17. ・・・ 生活の実感は短波が日常に及ぼす速報につれて短時間に拡大し、複雑化し、手に負えないほどになっているのに、文学の創作方法は、その実感の大きさ、ひろさ、量感をそのままとらえて再現するだけに拡大されていない。ここに、こんにちの日本の文学の深刻・・・<宮本百合子「文学と生活」青空文庫>
  18. ・・・ 大衆の組織が、短時間の活動経験を持ったばかりで、私たちの日常の耳目の表面から退潮を余儀なくされて後、その干潟にはさまざまの残滓や悪気流やが発生した。いかにも若い、しかしながらその価値は滅すべくもない経験の慎重な発展的吟味のかわりに、敗・・・<宮本百合子「若き世代への恋愛論」青空文庫>