だんじ‐て【断じて】例文一覧 30件

  1. ・・・いや、断じて道徳的ではない。彼はただ粟野さんの前に彼自身の威厳を保ちたいのである。もっとも威厳を保つ所以は借りた金を返すよりほかに存在しないと云う訣ではない。もし粟野さんも芸術を、――少くとも文芸を愛したとすれば、作家堀川保吉は一篇の傑作を・・・<芥川竜之介「十円札」青空文庫>
  2. ・・・成程、二度目に第二の私を見て以来、稍ともすると、ものに驚き易くなって居りますが、これはあの奇怪な現象に接した結果であって、断じて原因ではございません。私はどうしても、この存在以外の存在を信じなければならないようになったのでございます。 ・・・<芥川竜之介「二つの手紙」青空文庫>
  3. ・・・悪魔また性善なり。断じて一切諸悪の根本にあらず。 ああ、汝、提宇子、すでに悪魔の何たるを知らず、況やまた、天地作者の方寸をや。蔓頭の葛藤、截断し去る。咄。<芥川竜之介「るしへる」青空文庫>
  4. ・・・そんな時が来ても、私がこの農場を解放したのを悔いるようなことは断じてないつもりです。昔なつかしさに、たまに遊びにでもやって来た時、諸君が私に数日の宿を惜しまれなかったら、それは私にとって望外の喜びとするところです。 この上いうことはない・・・<有島武郎「小作人への告別」青空文庫>
  5. ・・・私はそうした態度を採ることは断じてできない。 もし階級争闘というものが現代生活の核心をなすものであって、それがそのアルファでありオメガであるならば、私の以上の言説は正当になされた言説であると信じている。どんな偉い学者であれ、思想家であれ・・・<有島武郎「宣言一つ」青空文庫>
  6. ・・・……可愛いにつけて、断じて籠には置くまい。秋雨のしょぼしょぼと降るさみしい日、無事なようにと願い申して、岩殿寺の観音の山へ放した時は、煩っていた家内と二人、悄然として、ツィーツィーと梢を低く坂下りに樹を伝って慕い寄る声を聞いて、ほろりとして・・・<泉鏡花「二、三羽――十二、三羽」青空文庫>
  7. ・・・ 湖は知らず、海に小さなのといっては断じてあるまい。何しろ、話だけでも東京が好きで、珍らしく土地自慢をしない娘も、対手が地方だけに、ちょっと反感を持ったらしい。 いかにも、湖は晃々と見える。が、水が蒼穹に高い処に光っている。近い山も・・・<泉鏡花「古狢」青空文庫>
  8. ・・・鶫を過食したためでは断じてない。二ぜん分を籠みにした生がえりのうどん粉の中毒らない法はない。お腹を圧えて、饂飩を思うと、思う下からチクチクと筋が動いて痛み出す。――もっとも、戸外は日当りに針が飛んでいようが、少々腹が痛もうが、我慢して、汽車・・・<泉鏡花「眉かくしの霊」青空文庫>
  9. ・・・「予は自ら誓えり、世を終るまで鏡を見じと、然り断じて鏡を見まじ。否これを見ざるのみならず、今思出したる鏡という品の名さえ、務めて忘れねばならぬなり。」       三 蝦蟇法師がお通に意あるが如き素振を認めたる連中は、こ・・・<泉鏡花「妖僧記」青空文庫>
  10. ・・・味に刺激せられて容易に寐ることが出来ない、故に茶趣味あるものに体屈ということはない、極めて細微の事柄にも趣味の刺激を受くるのであるから、内心当に活動して居る、漫然昼寝するなどということは、茶趣味の人に断じてないのである、茶の湯を単に静閑なる・・・<伊藤左千夫「茶の湯の手帳」青空文庫>
  11. ・・・いや、そんなわけでは……。いや、断じて……」「べつに構いませんわ」 白崎が狼狽しているので、彼女はふっと微笑した。すると、白崎はますます狼狽して、「困ったなア。いや、けっしていやな奴では……。いや、全くいい道連れでしたよ。しかし・・・<織田作之助「昨日・今日・明日」青空文庫>
  12. ・・・ところが闇市でこっそり拡げた風呂敷包にはローソクが二三十本、俺だけは断じて闇屋じゃないと言うたちゅう、まるで落し話ですな。ローソクでがすから闇じゃないちゅう訳で……。けッけッけッ……」 自分で洒落を説明すると、まず私の顔色をうかがってこ・・・<織田作之助「世相」青空文庫>
  13. ・・・「出来ませんな、断じて出来るこっちゃありません!」 斯う呶鳴るように云った三百の、例のしょぼ/\した眼は、急に紅い焔でも発しやしないかと思われた程であった。で彼はあわてて、「そうですか。わかりました。好ござんす、それでは十日には・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  14. ・・・そして其所らを夢中で往きつ返りつ地を見つめたまま歩るいて『決してそんなことはない』『断じてない』と、魔を叱するかのように言ってみたが、魔は決して去らない、僕はおりおり足を止めて地を凝視ていると、蒼白い少女の顔がありありと眼先に現われて来る、・・・<国木田独歩「牛肉と馬鈴薯」青空文庫>
  15. ・・・それにくらべて青扇は、どうやら、けたがはずれているようではないか。断じてよい市民ではないようである。僕は青扇の家主として、彼の正体のはっきり判るまではすこし遠ざかっていたほうがいろいろと都合がよいのではあるまいか、そうも考えられて、それから・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」青空文庫>
  16. ・・・死ぬるがいいとすすめることは、断じて悪魔のささやきでないと、立証し得るうごかぬ哲理の一体系をさえ用意していた。そうして、その夜の私にとって、縊死は、健康の処生術に酷似していた。綿密の損得勘定の結果であった。私は、猛く生きとおさんがために、死・・・<太宰治「狂言の神」青空文庫>
  17. ・・・いやしくも、なすあるところの人物は、今日此際、断じて酒杯を粉砕すべきである。 日頃酒を好む者、いかにその精神、吝嗇卑小になりつつあるか、一升の配給酒の瓶に十五等分の目盛を附し、毎日、きっちり一目盛ずつ飲み、たまに度を過して二目盛飲んだ時・・・<太宰治「禁酒の心」青空文庫>
  18. ・・・知識も、自由思想も、断じて自然の産物じゃない。自然は自由でもなく自然は知識の味方をするものでもないと言うんだ。知識は、自然と戦って自然を克服し、人為を建設する力だ。謂わば、人工の秩序への努力だ。だから、どうしても、秩序とは、反自然的な企画な・・・<太宰治「乞食学生」青空文庫>
  19. ・・・この卓や腰掛が似ているように、ここに来て据わる先生達が似ているなら、おれは襟に再会することは断じて無かろう。」 こう思って、あたりを見廻わして、時分を見計らって、手早く例の包みを極右党の卓の中にしまった。 そこでおれは安心した。しか・・・<著:ディモフオシップ 訳:森鴎外「襟」青空文庫>
  20. ・・・ 誤った無理な似て非なる類推は断じて許されないとしても、このような想起者として科学は意外に重要な役目を人間の今日の生活のいろいろな場面に対して申し出しているように思われるのである。 これは決して偶然なことではないのである。いったい、・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  21. ・・・御愛憎があったか。断じて然ではない――たしかに輔弼の責である。もし陛下の御身近く忠義こうこつの臣があって、陛下の赤子に差異はない、なにとぞ二十四名の者ども、罪の浅きも深きも一同に御宥し下されて、反省改悟の機会を御与え下されかしと、身を以て懇・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  22. ・・・からして情の活動に反する程度までにこの関係を新にしてしまうのは、文芸家の断じてやらぬ事であります。松の傍に石を添える事はあるでしょうが、松を切って湯屋に売払う事はよほど貧乏しないとできにくい。せっかくの松を一片の煙としてしまうともう、情を働・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  23. ・・・そこではどんな他人の表装も――恐らくは雪舟自身の表装も――断じて許すことができないのである。 それ故西洋諸国の出版業者が、著者に対する尊敬と読者に対する愛敬とからして、やや高尚なる文学書類を多くパンフレツトで出版するのは、さもあるべき筈・・・<萩原朔太郎「装幀の意義」青空文庫>
  24. ・・・我輩の断じて許さゞる所なり。今の日本の習俗に於て、仕官又は商売等、戸外百般の営業は男子の任ずる所にして、一家の内事を経営するは妻の職分なり。衣服飲食を調え家の清潔法に注意し又子供を養育する等は都て人生居家の大事、之を男子戸外の業務に比して難・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  25. ・・・余輩断じてその然らざるを証す。結局双方の智力たがいに相頡頏するに非ざれば、その交際の権利もまた頡頏すべからざるなり。交際の難きものというべし。而してその難きとは、何事に比すれば難く、何物に比すれば易きや。今の日本の有様にては、これを至難にし・・・<福沢諭吉「学者安心論」青空文庫>
  26. ・・・また、学事会なるものが、かく文事の一方について全権を有するその代りには、これをして断じて政事に関するを得せしめず、如何なる場合においても、学校教育の事務に関する者をして、かねて政事の権をとらしむるが如きは、ほとんどこれを禁制として、政権より・・・<福沢諭吉「学問の独立」青空文庫>
  27. ・・・「うん探して来たよ、僕は一ぺん山へ出かけるともうどんなもんでも見附からんと云うことは断じてない、けだしすべての宝石はみな僕をしたってあつまって来るんだね。いやそれだから、此度なんかもまったくひどく困ったよ。殊に君注文が割合に柔らかな蛋白・・・<宮沢賢治「楢ノ木大学士の野宿」青空文庫>
  28. ・・・このような不当なものをわれわれは断じて容認できないのであります。」ついで午後の法廷で、わかわかしい学生服の彼は一時間にわたって検事の取調べに苦しめられた状態をのべた。「われわれは決して空虚な根拠をもって公判取消を要求するわけではない。」と、・・・<宮本百合子「それに偽りがないならば」青空文庫>
  29. ・・・暗く、重く、うごめく姿があるけれども、そこには、「人間は断じて自滅すべきものではない」という彼女の人民的なつよい生活力が燃えさかっている。「渇いている時に水などほしくないといったような嘘まで、わたしにはとても書けそうもないのです。」「煉瓦女・・・<宮本百合子「婦人作家」青空文庫>
  30. ・・・「我輩の断じて許さざるところなり」「婦人をして柔和忍辱の此頂上にまで至らしめたるは上古蛮勇時代の遺風、殊に女大学の教訓その頂上に達したるの結果に外ならず」夫婦の生活で夫が妻を扶養するのは当然の義務だのに、妻たるものがわずかの美衣美食に飼い馴・・・<宮本百合子「三つの「女大学」」青空文庫>