だんな【×檀那/旦那】例文一覧 33件

  1. ・・・「もう八日経てば、大檀那様の御命日でございます。御命日に敵が打てますのも、何かの因縁でございましょう。」――喜三郎はこう云って、この喜ばしい話を終った。そんな心もちは甚太夫にもあった。二人はそれから行燈を囲んで、夜もすがら左近や加納親子の追・・・<芥川竜之介「或敵打の話」青空文庫>
  2. ・・・「旦那、お前さん手合は余り虫が宜過ぎまさあ。日頃は虫あつかいに、碌々食うものも食わせ無えで置いて、そんならって虫の様に立廻れば矢張り人間だと仰しゃる。己れっちらの境涯では、四辻に突っ立って、警部が来ると手を挙げたり、娘が通ると尻を横目で・・・<有島武郎「かんかん虫」青空文庫>
  3. 一 襖を開けて、旅館の女中が、「旦那、」 と上調子の尻上りに云って、坐りもやらず莞爾と笑いかける。「用かい。」 とこの八畳で応じたのは三十ばかりの品のいい男で、紺の勝った糸織の大名縞の袷に、浴衣を襲ねたは、今しが・・・<泉鏡花「縁結び」青空文庫>
  4. ・・・「や、これや旦那はえいことをいわっしゃった。おはまさんは何でも旦那に帯でも着物でもどしどし買ってもらうんだよ」 省作はただ笑う仲間にばかりなって一向に話はできない。満蔵はもう一俵の米を搗き上げてしまった。兄は四俵の俵をあみ上げる。省・・・<伊藤左千夫「隣の嫁」青空文庫>
  5. ・・・そうするともとからいたずらものなので奥様の手前もはばからないで旦那様にじょうだんしかけいつともなく我物にしてしまった。けれ共奥方は武士の娘なので世に例のある事だからと知らぬ振してすぎて居た。それだのに小吟はいいきになってやめないので家も乱れ・・・<著:井原西鶴 訳:宮本百合子「元禄時代小説第一巻「本朝二十不孝」ぬきほ(言文一致訳)」青空文庫>
  6. ・・・「もとの旦那に出来た娘なの」「いくつ?」「十二」「意気地なしのお前が子までおッつけられたんだろう?」「そうじゃアない、わ。青森の人で、手が切れてからも、一年に一度ぐらいは出て来て、子供の食い扶持ぐらいはよこす、わ。――そ・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  7. ・・・儀御進物にはけしくらゐほどのいもあとも残り不申候やうにぞんじけしをのぞき差上候処文政七申年はしか流行このかた御用重なる御重詰御折詰もふんだんに達磨の絵袋売切らし私念願かな町のお稲荷様の御利生にて御得意旦那のお子さまがた疱瘡はしかの軽々焼と御・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  8. ・・・毎月三日月様になりますと私のところへ参って「ドウゾ旦那さまお銭を六厘」という。「何に使うか」というと、黙っている。「何でもよいから」という。やると豆腐を買ってきまして、三日月様に豆腐を供える。後で聞いてみると「旦那さまのために三日月様に祈っ・・・<内村鑑三「後世への最大遺物」青空文庫>
  9. ・・・あとできけば、浜子はもと南地の芸者だったのを、父が受けだした、というより浜子の方で打ちこんで入れ揚げたあげく、旦那にあいそづかしをされたその足で押しかけ女房に来たのが四年前で、男の子も生れて、その時三つ、新次というその子は青ばなを二筋垂らし・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  10. ・・・お正さんは二十四でも未だ若い盛で御座いますが、旦那は五十幾歳とかで、二度目だそうで御座いますから無理も御座いませんよ。」 大友は心に頗る驚いたが別に顔色も変ず、「それは気の毒だ」と言いさま直ぐ起ち上って、「大きにお邪魔をした」とばかり、・・・<国木田独歩「恋を恋する人」青空文庫>
  11. ・・・「国主の御用ひなき法師なれば、あやまちたりとも科あらじとや思ひけん、念仏者並びに檀那等、又さるべき人々も同意したりとぞ聞えし、夜中に日蓮が小庵に数千人押し寄せて、殺害せんとせしかども、いかんがしたりけん、其夜の害も免れぬ。」 このさ・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  12. ・・・「庄屋の旦那が、貧乏人が子供を市の学校へやるんをどえらい嫌うとるんじゃせにやっても内所にしとかにゃならんぜ。」と、彼は、声を低めて、しかも力を入れて云った。「そうかいな。」「誰れぞに問われたら、市へ奉公にやったと云うとくがえいぜ・・・<黒島伝治「電報」青空文庫>
  13. ・・・「旦那、つきました」と言うと、竿をまた元へ戻して狙ったところへ振込むという訳であります。ですから、客は上布の着物を着ていても釣ることが出来ます訳で、まことに綺麗事に殿様らしく遣っていられる釣です。そこで茶の好きな人は玉露など入れて、茶盆を傍・・・<幸田露伴「幻談」青空文庫>
  14. ・・・見廻りの途中、時々寄っては話し込んで行く赫ら顔の人の好い駐在所の旦那が、――「世の中には恐ろしい人殺しというものがある、詐偽というものもある、強盗というものもある。然し何が恐ろしいたって、この日本の国をひッくり返そうとする位おそろしいものが・・・<小林多喜二「争われない事実」青空文庫>
  15. ・・・当坐の謎俊雄は至極御同意なれど経験なければまだまだ心怯れて宝の山へ入りながらその手を空しくそっと引き退け酔うでもなく眠るでもなくただじゃらくらと更けるも知らぬ夜々の長坐敷つい出そびれて帰りしが山村の若旦那と言えば温和しい方よと小春が顔に花散・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  16. ・・・ちょうど歳暮のことで、内儀「旦那え/\」七「えゝ」内儀「貴方には困りますね」七「何ぞというとお前は困るとお云いだが何が困ります」内儀「何が困るたって、あなた此様に貧乏になりきりまして、実に世間体も恥かしい事で、斯様な裏長・・・<著:三遊亭円朝 校訂:鈴木行三「梅若七兵衞」青空文庫>
  17. ・・・「旦那さん。もうお帰りですか。」 と言って、下女のお徳がこの私を玄関のところに迎えた。お徳の白い割烹着も、見慣れるうちにそうおかしくなくなった。「次郎ちゃんは?」「お二階で御勉強でしょう。」 それを聞いてから、私は両手に・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  18. ・・・「父やん、はあ止めにしなんせ」と常吉が鉢巻を取った時には、もう馬の影も地に写らなかった。自分は何時間おったか知らぬ。鳥貝の白帆もとくにいなくなっている。「旦那は先い往んなんせ。お初やんが尋ねに出ましょうに」と母親がいう。自分は初めて・・・<鈴木三重吉「千鳥」青空文庫>
  19. ・・・こないだ、あなたの未来の旦那さんに逢ったよ。」「そう? どうでした? すこうし、キザね。そうでしょう?」「まあ、でも、あんなところさ。そりゃもう、僕にくらべたら、どんな男でも、あほらしく見えるんだからね。我慢しな。」「そりゃ、そ・・・<太宰治「朝」青空文庫>
  20. ・・・「そんなら出しておいてくれい。あとで一しょに勘定して貰うから。」 襟は丁寧に包んで、紐でしっかり縛ってある。おれはそれを提げて、来合せた電車に乗って、二分間ほどすると下りた。「旦那。お忘れ物が。」車掌があとからこう云った。 ・・・<著:ディモフオシップ 訳:森鴎外「襟」青空文庫>
  21. ・・・ひやかしていると、「ドクトルの旦那さん、降誕祭贈物はいかがです」と呼びかけるのもありました。町の店屋へ買い物に行くと、お前さんの故国でもワイナハトを祝うかなぞときくのがだいぶありました。 降誕祭の初めの日には、主婦さんが、タンネンバウム・・・<寺田寅彦「先生への通信」青空文庫>
  22. ・・・「いったん人手に渡ったのを、京ちゃんの旦那が買ったんです。あの人はここへお金をかけるのは損だから、売ってしまおうと言っているんですけれど、何しろお母さんが長くやっていた所ですから」「じゃ絹ちゃんが借りてやっているわけだね」「ここ・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  23. ・・・こんにゃく屋さん、これはうちの旦那さまが丹精していらッしゃるお菜園だよ、ホンとにまァ」 奥さんは、私の足もとから千切れた茄子の枝をひろいあげると、いたましそうにその紫色の花をながめている。私もほんとに申訳ないことをしたと思った。私も子供・・・<徳永直「こんにゃく売り」青空文庫>
  24. ・・・ 逢うごとにいつもその悠然たる貴族的態度の美と洗錬された江戸風の性行とが、そぞろに蔵前の旦那衆を想像せしむる我が敬愛する下町の俳人某子の邸宅は、団十郎の旧宅とその広大なる庭園を隣り合せにしている。高い土塀と深い植込とに電車の響も自ずと遠・・・<永井荷風「銀座」青空文庫>
  25. ・・・あれでも万事整頓していたら旦那の心持と云う特別な心持になれるかも知れんが、何しろ真鍮の薬缶で湯を沸かしたり、ブリッキの金盥で顔を洗ってる内は主人らしくないからな」と実際のところを白状する。「それでも主人さ。これが俺のうちだと思えば何とな・・・<夏目漱石「琴のそら音」青空文庫>
  26. ・・・五六人は、旦那衆がいるからな。ヘン。俺には分ってるんだよ。お前さんたちがどんなに田舎者見てえな恰好をしてたって、番頭に化けたって、腰弁に化けて居たって、第一、おめえさんなんぞ、上はアルパカだが、ズボンがいけねえよ。晒しでもねえ、木綿の官品の・・・<葉山嘉樹「乳色の靄」青空文庫>
  27. ・・・管を巻かれちゃア、旦那様がまたお困り遊ばさア」「いつ私が管を巻いたことがあります」と、小万は仰山らしく西宮へ膝を向け、「さアお言いなさい。外聞の悪いことをお言いなさんなよ」「小万さん、お前も酔ッておやりよ。私ゃ管でも巻かないじゃアや・・・<広津柳浪「今戸心中」青空文庫>
  28. ・・・主人は以前の婢僕を誉め、婢僕は先の旦那を慕う。ただに主僕の間のみならず、後妻をめとりて先妻を想うの例もあり。親愛尽きはてたる夫婦の間も、遠ざかればまた相想うの情を起すにいたるものならん。されば今、店子と家主と、区長と小前と、その間にさまざま・・・<福沢諭吉「学者安心論」青空文庫>
  29. ・・・あれは人間ではございませんぜ。旦那様、お怒なすってはいけません。わたくしは何と仰ゃっても彼奴のいる傍へ出て行く事は出来ません。もしか明日の朝起きて見まして彼奴が消えて無くなっていれば天の助というものでございます。わたくしは御免を蒙りまして、・・・<著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外「痴人と死と」青空文庫>
  30. ・・・さあ、まるっきり、血の気も失せてかけ込んで、「旦那あ、象です。押し寄せやした。旦那あ、象です。」と声をかぎりに叫んだもんだ。 ところがオツベルはやっぱりえらい。眼をぱっちりとあいたときは、もう何もかもわかっていた。「おい、象のや・・・<宮沢賢治「オツベルと象」青空文庫>