ち‐い〔‐ヰ〕【地位】例文一覧 30件

  1. ・・・のみならず彼女の服装とか、或は彼女の財産とか、或は又彼女の社会的地位とか、――それらも長所にならないことはない。更に甚しい場合を挙げれば、以前或名士に愛されたと云う事実乃至風評さえ、長所の一つに数えられるのである。しかもあのクレオパトラは豪・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  2. ・・・家族とか財産とか社会的地位とか云うことには自然と冷淡になっているのです。おまけに一番悪いことはその人としてだけ考える時でもいつか僕自身に似ている点だけその人の中から引き出した上、勝手に好悪を定のみならずこの奥さんの気もちに、――S君の身もと・・・<芥川竜之介「手紙」青空文庫>
  3. ・・・――こういうことは詩を既定のある地位から引下すことであるかもしれないが、私からいえば我々の生活にあってもなくても何の増減のなかった詩を、必要な物の一つにするゆえんである。詩の存在の理由を肯定するただ一つの途である。 以上のいい方はあまり・・・<石川啄木「弓町より」青空文庫>
  4. ・・・この言をしてもし平生にあらしめば必ず一条の紛紜を惹き起こすに相違なきも、病者に対して看護の地位に立てる者はなんらのこともこれを不問に帰せざるべからず。しかもわが口よりして、あからさまに秘密ありて人に聞かしむることを得ずと、断乎として謂い出だ・・・<泉鏡花「外科室」青空文庫>
  5. ・・・ 景物なしの地位ぐらいに、句が抜けたほど、嬉しがったうちはいい。 少し心安くなると、蛇の目の陣に恐をなし、山の端の霧に落ちて行く――上じょうろうのような優姿に、野声を放って、「お誓さん、お誓さん。姉さん、姐ご、大姐ご。」 立・・・<泉鏡花「燈明之巻」青空文庫>
  6. ・・・それにしても岡村の家は立派な士族で、此地にあっても上流の地位に居ると聞いてる。こんな調子で土地の者とも交際して居るのかしらなど考える。百里遠来同好の友を訪ねて、早く退屈を感じたる予は、余りの手持無沙汰に、袂を探って好きもせぬ巻煙草に火をつけ・・・<伊藤左千夫「浜菊」青空文庫>
  7. ・・・文人の社会的地位が今一層高くなければならぬ事を痛切に感ずる。 有体に言うと今の文人の多くは各々蝸牛の殻を守るに汲々として互いに相褒め合ったり罵り合ったりして聊かの小問題を一大事として鎬を削ってる。毎日の新聞、毎月の雑誌に論難攻撃は絶えた・・・<内田魯庵「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」青空文庫>
  8. ・・・もし私に金がたくさんあって、地位があって、責任が少くして、それで大事業ができたところが何でもない。たとい事業は小さくても、これらのすべての反対に打ち勝つことによって、それで後世の人が私によって大いに利益を得るにいたるのである。種々の不都合、・・・<内村鑑三「後世への最大遺物」青空文庫>
  9. ・・・特に、今日の資本主義に反抗して、芸術を本来の地位に帰す戦士でなければなりません。かゝる芸術の受難時代が、いつまでつゞくか分りませんが、考えようによって、アムビシャスな作家には、興味ある時代であります。・・・<小川未明「作家としての問題」青空文庫>
  10. ・・・一つ会社に十何年間かこつこつと勤め、しかも地位があがらず、依然として平社員のままでいる人にあり勝ちな疲労がしばしばだった。橋の上を通る男女や荷馬車を、浮かぬ顔して見ているのだ。 近くに倉庫の多いせいか、実によく荷馬車が通る。たいていは馬・・・<織田作之助「馬地獄」青空文庫>
  11. ・・・むしろ宗教との対決、作家が神の地位を奪おうとした時に、大文学が生れた。と、こんなことを言っても、何にもならない。ただ、僕はこの国に宗教のないことを、文学のためにそんなに悲しまないが、宗教との対決にまで行く作家のいないことは悲しむ。やはり、宗・・・<織田作之助「文学的饒舌」青空文庫>
  12. ・・・前は青田、青田が尽きて塩浜、堤高くして海面こそ見えね、間近き沖には大島小島の趣も備わりて、まず眺望には乏しからぬ好地位を占むるがこの店繁盛の一理由なるべし。それに町の出口入り口なれば村の者にも町の者にも、旅の者にも一休息腰を下ろすに下ろしよ・・・<国木田独歩「置土産」青空文庫>
  13. ・・・ 私の知ってるある文筆夫人に、女学校へも行かなかった人だが、事情あって娘のとき郷里を脱け出て上京し、職業婦人になって、ある新聞記者と結婚し、子どもを育て、夫を助けて、かなり高い社会的地位まで上らせ、自分も独学して、有名な文筆夫人になって・・・<倉田百三「愛の問題(夫婦愛)」青空文庫>
  14. ・・・彼らが社会的に輝やかしい地位をかち得ないのは当然である。 汚れた快楽を追うことの今ひとつの害毒は浪費である。このことは卒業後の生活の物質的計画をきわめて困難な、不可能に近いものに考えさせるようになる。物質的清貧の中で精神的仕事に従うとい・・・<倉田百三「学生と生活」青空文庫>
  15. ・・・併し、近頃になるに従って、百姓の社会的地位、経済的地位が不利になって生活が行きつまって苦るしくなって来ている。それを親爺は理論的に説明することはよくしないが、具体的な実例によって、知っている僕は、たびたび親爺の話をきいたものだ。親爺も、僕達・・・<黒島伝治「小豆島」青空文庫>
  16. ・・・うまい口上を並べて自分に投票させ、その揚句、議員である地位を利用して、自分が無茶な儲けをするばかりであることを、百姓達は、何十日となく繰返えして見せつけられて来た。 だから、投票してやるからには、いくらでも、金を取ってやらなければ損だ、・・・<黒島伝治「選挙漫談」青空文庫>
  17. ・・・たような世話焼が二三人――それは即ち塾生中の先輩でして、そして別に先生から後輩の世話役をしろという任命を受けて左様いう事を仕て居るというのでも無いのですが、長らく先生の教を受けて居る中に自然と左様いう地位に立たなければならぬように、自然と出・・・<幸田露伴「学生時代」青空文庫>
  18. ・・・お前さんだって、わたしがあの地位に坐ったのを怨まないわけにはいかないでしょう。それはわたしのせいじゃないのだけれど。事によったらお前さんのあの座から出て行くようになったのを、わたしのした事だとお思いかも知れないが、それは違ってよ。お前さんは・・・<著:ストリンドベリアウグスト 訳:森鴎外「一人舞台」青空文庫>
  19. ・・・その、あいつというのは、博士と高等学校、大学、ともにともに、机を並べて勉強して来た男なのですが、何かにつけて要領よく、いまは文部省の、立派な地位にいて、ときどき博士も、その、あいつと、同窓会などで顔を合せることがございまして、そのたびごとに・・・<太宰治「愛と美について」青空文庫>
  20. ・・・そうして、結城孫三郎やダークのマリオネット、ないしはギニョールのパンチとジュデーなどに対する独特の地位を全然喪失してしまうことは明白である。従って、チャンバレーンにも、メートル、ペリーにも、クーシューにもわからなかったこの東洋日本特産芸術が・・・<寺田寅彦「生ける人形」青空文庫>
  21. ・・・彼らは皆なこの土地において、有数な地位を占めている人たちであった。中には三十年ぶりに逢う顕官もあった。 私はY氏に桂三郎を紹介することを、兄に約しておいたが、桂三郎自身の口から、その問題は一度も出なかった。彼が私の力を仮りることを屑よし・・・<徳田秋声「蒼白い月」青空文庫>
  22. ・・・当局者の苦心はもとより察せねばならぬ。地位は人を縛り、歳月は人を老いしむるものである。廟堂の諸君も昔は若かった、書生であった、今は老成人である。残念ながら御ふるい。切棄てても思想はきょうきょうたり。白日の下に駒を駛せて、政治は馬上提灯の覚束・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  23. ・・・丁度、西南戦争の後程もなく、世の中は、謀反人だの、刺客だの、強盗だのと、殺伐残忍の話ばかり、少しく門構の大きい地位ある人の屋敷や、土蔵の厳めしい商家の縁の下からは、夜陰に主人の寝息を伺って、いつ脅迫暗殺の白刄が畳を貫いて閃き出るか計られぬと・・・<永井荷風「狐」青空文庫>
  24. ・・・しかしながら彼ら学者にはすべてを統一したいという念が強いために、出来得る限り何でもかでも統一しようとあせる結果、また学者の常態として冷然たる傍観者の地位に立つ場合が多いため、ただ形式だけの統一で中味の統一にも何にもならない纏め方をして得意に・・・<夏目漱石「中味と形式」青空文庫>
  25. ・・・その瞬間、磁石の針がくるりと廻って、東西南北の空間地位が、すっかり逆に変ってしまった。同時に、すべての宇宙が変化し、現象する町の情趣が、全く別の物になってしまった。つまり前に見た不思議の町は、磁石を反対に裏返した、宇宙の逆空間に実在したので・・・<萩原朔太郎「猫町」青空文庫>
  26. ・・・依て窃に案ずるに、本文の初に子なき女は去ると先ず宣言して、文の末に至り、妾に子あれば去るに及ばずと前後照応して、男子に蓄妾の余地を与え、暗々裡に妻をして自身の地位を固くせんが為め、蓄妾の悪事たるを口に言わずして却て之を夫に勧めしむるの深意な・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  27. ・・・それはどんな社会だと云うと、国家枢要の地位を占めた官吏の懐抱している思想と同じような思想を懐抱して、著作に従事している文士の形づくっている一階級である。こう云う文士はぜひとも上流社会と同じような物質的生活をしようとしている。そしてその目的を・・・<著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外「田舎」青空文庫>
  28. ・・・居留民はそこにおける地位、財産を守ろうとする一致した目標をもってがんばっている。士卒は兵士としての絶対の避くべからざる任務に服している。その間へ、銃をとって絶対に戦わなければならないでもない作家、一面には社と社との激烈な競争によって刺戟され・・・<宮本百合子「明日の言葉」青空文庫>
  29. ・・・そして殉死者の遺族が主家の優待を受けるということを考えて、それで己は家族を安穏な地位において、安んじて死ぬることが出来ると思った。それと同時に長十郎の顔は晴れ晴れした気色になった。 四月十七日の朝、長十郎は衣服を改めて母の前に出て、・・・<森鴎外「阿部一族」青空文庫>
  30. ・・・しかしそういう地位からばかりでなく、その学識の点において、応永、永享の時代を代表するに足りるであろう。彼の眼界は、日本、シナ、インドの全体にわたり、仏教哲学、程朱の学、日本の古典などにすべて通じている。著書も多く、当時の学問の集大成の観があ・・・<和辻哲郎「埋もれた日本」青空文庫>