ち‐かく【知覚/×智覚】例文一覧 23件

  1. ・・・ これを要するに、たゞ、吾等には、幾何の忘れられた感覚や、感情や、知覚があるということを知らなければならない。また、幾何のまさに忘れられんとしている感覚や、感情や、知覚のあることを知らなければならない。而して、現在の自分の頭を占領してい・・・<小川未明「忘れられたる感情」青空文庫>
  2. ・・・自分の掌で、明確に知覚したものだけを書いて置きたかったのです。怒りも、悲しみも、地団駄踏んだ残念な思いも。私は、嘘を書かなかった。けれども、私は、此頃ちっとも書けなくなりました。おわかりでしょうか。無学であるという事が、だんだん致命傷のよう・・・<太宰治「風の便り」青空文庫>
  3. ・・・ 痛さも、くすぐったさも、おのずから知覚の限度があると思います。ぶたれて、切られて、または、くすぐられても、その苦しさが極限に達したとき、人は、きっと気を失うにちがいない。気を失ったら夢幻境です。昇天でございます。苦しさから、きれいにのがれ・・・<太宰治「皮膚と心」青空文庫>
  4. ・・・何故と云えば、彼等は全世界を知覚し認識し呑み込まなければならないから。」「時間を減らして、その代りあまり必須でない科目を削るがいい。『世界歴史』と称するものなどがそれである。これは通例乾燥無味な表に詰め込んだだらしのないものである。これ・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  5. ・・・ とんぼがいかにして風の方向を知覚し、いかにしてそれに対して一定の姿勢をとるかということがまた単に生物学者生理学者のみならず、物理学者工学者にまでもいろいろの問題を提供するであろうと思われた。 人間をとんぼに比較するのはあまりに無分・・・<寺田寅彦「三斜晶系」青空文庫>
  6. ・・・物体が認識され、物と物、物とエネルギーとの間に起こる現象が知覚されるのはやはりこの境界面があるからである。この事は、物理学で「場」の方程式だけでは具体的の現象が規定されず、そのほかに「境界条件」を必要とする、という事に相当する。 それほ・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  7. ・・・これらの官能が刺激されたために生ずる個々の知覚が記憶によって連絡されるとこれが一つの経験になる。このような経験が幾回も幾回も繰り返されている間にそこに漠然とした知識が生じて来る。この原始的な知識がさらに経験によってだんだんに吟味され取捨され・・・<寺田寅彦「物理学と感覚」青空文庫>
  8. ・・・一つの言葉が出来る前には人間の感覚知覚は経験と記憶聯想によって結合され、悟性によって幾多の分析抽象を行った末に一つの観念なり概念なりが出来なければならない。それで云わば一つ一つの言葉の中には既にもう論理的経験的科学の卵子が含まれていることは・・・<寺田寅彦「文学の中の科学的要素」青空文庫>
  9. ・・・ 二つずつあるのは空間知覚のためであって、二つの間の距離が空間を測量するための基線になるのである。耳と目とが同じ高さにあるのは視覚空間と聴覚空間との連絡、同格化のために便利であろうと思われる。ところが光線伝播は直線的であるので二つの目が・・・<寺田寅彦「耳と目」青空文庫>
  10. ・・・一つは物の大小形状及びその色合などについて知覚が明暸になりますのと、この明暸になったものを、精細に写し出す事が巧者にかつ迅速にできる事だと信じます。二はこれを描き出すに当って使用する線及び点が、描き出される物の形状や色合とは比較的独立して、・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  11. ・・・なぜなら学者の説によれば、方角を知覚する特殊の機能は、耳の中にある三半規管の作用だと言うことだから。 余事はとにかく、私は道に迷って困惑しながら、当推量で見当をつけ、家の方へ帰ろうとして道を急いだ。そして樹木の多い郊外の屋敷町を、幾度か・・・<萩原朔太郎「猫町」青空文庫>
  12. ・・・子供のぱっちりした体をそっと抓みよせて見ても、このように指先に皮膚と筋肉との境は知覚されないだろう。「なるほどね――私なんぞひどい」とYが感服した。「年のせいもあるわ」 三人が抓みっこをしていたテーブルに、夕刊が一枚あった。・・・<宮本百合子「九月の或る日」青空文庫>
  13. ・・・ ジイドも、彼の細君の発熱についてはそういう本質の差を知っており、又当然知ろうとするであろうのに、芸術家の死命を制する人間的叡智の根源において、歴史の相貌の質的相異の知覚を失っているばかりか、それを自ら恐怖しもしないというのは、何という・・・<宮本百合子「こわれた鏡」青空文庫>
  14. ・・・性的交渉にたいして精神の燃焼を知覚しえない男・女のいきさつのなかに、この雄大な二十世紀の実質を要約してしまうことは理性にとって堪えがたい不具です。文学の世界、芸術の世界では、どうして、こういう人間性の崩壊が、あやしまれず、かえって文学的だと・・・<宮本百合子「一九四六年の文壇」青空文庫>
  15. ・・・体は安らかで知覚なく、僅に遺った燼のように仄温いうちに、魂が無碍に遠く高く立ち去って行く。決して生と死との争闘ではなかった。充分生きた魂の自然な離脱、休安という感に打れた。八十四歳にもなると、人はあのように安らかに世を去るものなのだろうか。・・・<宮本百合子「祖母のために」青空文庫>
  16. ・・・そしてそのういういしく漲るエネルギーによって人間生活のありかたが改めて知覚され、探究され必ず何かの新しい可能もそこに芽生えていて、社会のうちに行為されてゆく。このことは、限りなく美しく、厳粛な事実だと思う。言葉を加えて云えば、わたしたちが二・・・<宮本百合子「小さい婦人たちの発言について」青空文庫>
  17. ・・・自分が椽近く座っている、その位置の知覚が妙に錯倒する心持がした。金色夜叉の技巧的美文が出来ざるを得ない自然だ。――都会人の観賞し易い傾向の勝景――憎まれ口を云えば、幾らか新派劇的趣味を帯びた美観だ。小太郎ケ淵附近の楓の新緑を透かし輝いていた・・・<宮本百合子「夏遠き山」青空文庫>
  18. ・・・というとき、この文学者は、仮りでない美が人類のうちにあることを知覚しているのだ。こんにちの世界文学の状況において、「仮りの調和体」とことなった強壮な、人類に根ざした美は、外国作家の文学の中にしかあり得ないとするならば、それは、日本という島の・・・<宮本百合子「人間性・政治・文学(1)」青空文庫>
  19. ・・・ おいおい知覚されて来た刺戟によってピリピリと瞼や唇が顫動する。 やがて、ちょうど深い眠りから、今薄々と覚めようとする人のように、二三度唇をモグモグさせ、手足を動かすかと思うと、瞬きもしないで見守っていた禰宜様宮田の、その眼の下には・・・<宮本百合子「禰宜様宮田」青空文庫>
  20. ・・・ 意識するということは、生理的に知覚すること――ただある音がきこえた、ただあることがみえた、そして、きこえた音、見えたものごとから人間の神経がそれに応じる一定の反射作用をおこした、ということではない。意識するということは、知覚されたもの・・・<宮本百合子「文学と生活」青空文庫>
  21. ・・・ 誰が与えられた時を知り、その動揺を知覚し得よう。けれども在る事は事実である。無くては居られない。持たずには居られない。その、神秘的な液体と倶に、人を産んだ「祖国の気分」も生きて居るのではないだろうか、私は、今更に背後の重さを感じずには・・・<宮本百合子「無題」青空文庫>
  22. ・・・それと同じように、余所目には痩せて血色の悪い秀麿が、自己の力を知覚していて、脳髄が医者の謂う無動作性萎縮に陥いらねば好いがと憂えている。そして思量の体操をする積りで、哲学の本なんぞを読み耽っているのである。お母あ様程には、秀麿の健康状態に就・・・<森鴎外「かのように」青空文庫>
  23. ・・・我々は外形に現われたものを感覚し、知覚するとともに、この外形を象徴として現われて来る内部の生命を感得する。我々が自然を認識するのはこの両様の意味を含んでいる。すなわち外形はそれと全然似よりのない、性質の違ったものを我々に認識させるのである。・・・<和辻哲郎「「自然」を深めよ」青空文庫>