ちか‐てつ【地下鉄】例文一覧 18件

  1. ・・・エグジスタンシアリスムという言葉は、巴里では地下鉄の中でも流行語になっているということだが、日本では本屋の前に行列が作られるのは、老大家をかかえた岩波アカデミズム機関誌の発売日だけである。日本もフランスも共に病体であり、不安と混乱の渦中にあ・・・<織田作之助「可能性の文学」青空文庫>
  2. ・・・ 当てもないままに、赤井はひょこひょことさまようていたが、やがて耳の千切れるような寒さにたまりかねたのか、わずかの温みを求めて、足は自然に難波駅の地下鉄の構内に向いた。 そして構内に蠢いている浮浪者の群れの中にはいった赤井は、背中に・・・<織田作之助「昨日・今日・明日」青空文庫>
  3. ・・・新吉は地下鉄の構内なら夕刊を売っているかも知れないと思い、階段を降りて行った。 阪急百貨店の地下室の入口の前まで降りて行った時、新吉はおやっと眼を瞠った。 一人の浮浪者がごろりと横になっている傍に、五つ六つ位のその浮浪者の子供らしい・・・<織田作之助「郷愁」青空文庫>
  4. ・・・ 大鉄百貨店の前のコンクリートの広い坂道を、地下鉄の動物園前の方へ降りて行くと、ホテルや旅館がぼつりぼつりあった。 一軒ずつ当ってみたが、みな断られた。「だめだね」 もう地下鉄の中ででも夜を明かすより方法がない、と娘の方へ半・・・<織田作之助「夜光虫」青空文庫>
  5. ・・・それでも松本は、大阪は変ったぜ、地下鉄出来たん知ってるな。そんなら、赤玉のムーラン・ルージュが廻らんようになったんは知らんやろなどと、黙っているわけにもいかず、喋っていた。そうでっか、わても一ぺん大阪へ帰りたいと思てまんねんと、坂田も話を合・・・<織田作之助「雪の夜」青空文庫>
  6. ・・・ 渋谷から地下鉄。新橋下車。銀座のほうに歩きかけて、やめて、川の近くのバラックの薬局から眠り薬ブロバリン、二百錠入を一箱買い求め、新橋駅に引きかえし、大阪行きの切符と急行券を入手した。大阪へ行ってどうするというあても無いのだが、汽車に乗・・・<太宰治「犯人」青空文庫>
  7. ・・・「わたくし、うちへ帰りますの、地下鉄で。新聞社にちょっと用事があったもので、……」 何の用事だろう。嘘だ。男と逢って来たんじゃないか? 新聞社に用事とは、大きく出たね。どうも女の社会主義者は、虚栄心が強くて困る。「講演ですか?」・・・<太宰治「渡り鳥」青空文庫>
  8. ・・・一度影を隠した銀座の柳は、去年の夏ごろからまた街頭にたおやかな緑の糸をたれたが、昔の夢の鉄道馬車の代わりにことしは地下鉄道が開通して、銀座はますます立体的に生長することであろう。百歳まで生きなくとも銀座アルプスの頂上に飛行機の着発所のできる・・・<寺田寅彦「銀座アルプス」青空文庫>
  9. ・・・日曜の午後に谷中へ行ってみると寛永寺坂に地下鉄の停車場が出来たりしてだいぶ昔と様子がちがっている。昔の御院殿坂を捜して墓地の中を歩いているうちに鉄道線路へ出たがどもう見覚えがない。陸橋を渡るとそこらの家の表札は日暮里となっている。昨日の雨で・・・<寺田寅彦「子規自筆の根岸地図」青空文庫>
  10. ・・・ またある日、地下鉄からおりて歩きだすと同時に車も動きだして、ポーッと圧搾空気の汽笛を鳴らす、すると左の手に持っているふろしき包みの中の書物が共鳴して振動する。その振動が手の指先に響いてびりびりとしびれるように感じられた。 研究室へ・・・<寺田寅彦「試験管」青空文庫>
  11. ・・・ 新しい交通機関、例えば地下鉄や高架線が開通すると、誰よりも先に乗ってみないと気のすまないという人がある。つい近ごろ、上野公園西郷銅像の踏んばった脚の下あたりの地下に停車場が出来て、そこから成田行、千葉行の電車が出るようになった。その開・・・<寺田寅彦「猫の穴掘り」青空文庫>
  12. ・・・ 廊下から中央階段を降りようとする途中で窓越しに東を見ると、地下鉄ビルの照明が見える。サッポロビールの活動照明、ビール罎の中から光の噴泉が花火のように迸しる。 靴が見えない。玄関の隅々をのぞき廻る。「××さん、靴はあちらですよ」。白・・・<寺田寅彦「病院風景」青空文庫>
  13. ・・・それから帰宿の途中、地下鉄の昇降器の中で卒倒したが、その時はすぐに回復した。 一九一九年五月十八日の日曜、例の通り教会へ行ったが気分が悪いと云って中途で帰宅し、午後中ソファで寝ていた。翌朝は臥床を離れる元気がなかった。五月二十七日と二十・・・<寺田寅彦「レーリー卿(Lord Rayleigh)」青空文庫>
  14. ・・・「ハイドパークに面し地下電気へ三分地下鉄道へ五分、貴女と交際の便利あり」なんと云うのがある。「球突随意ピヤノあり gay society, late dinner」これも珍らしくない。「レートジンナー」と云うのはこの頃の流行なのだ。我輩など・・・<夏目漱石「倫敦消息」青空文庫>
  15. ・・・ ふたむかし前のモスクワといえば地下鉄さえなかった。ナチスが侵略して来たとき、雄々しく闘って、世界の民主主義と自分たちの社会を守った青年や少女はやっと生れたばかりであったろう。五ヵ年計画はその第一次が完成したところで、わたしの紹介も終っ・・・<宮本百合子「あとがき(『モスクワ印象記』)」青空文庫>
  16. ・・・ 丁度座敷の正面の河中に地下鉄道の工事で出る泥を運搬する棧橋がかかっているのであった。そこへ人が立って時々此方の座敷を見る。「――いつか可笑しなことがありましたよ、もう八九年も前になるな。T子さんと粕壁へ藤見に行ったことがあるんです・・・<宮本百合子「九月の或る日」青空文庫>
  17. ・・・「つとめですか?」「ええ」「会社?」「地下鉄なんです」「……ストアですか?」「いいえ。――出札」「…………」 自分は異常な注意をよびおこされてそれきり暫く黙っていた。地下鉄ではついこの三月二十日から三日間従業・・・<宮本百合子「刻々」青空文庫>
  18. ・・・彼は、警察署に行くと、捕えられて来ていたその男を死ぬ程擲きのめし、自分は程近い地下鉄道に轢かれて命を落してしまったのです。 ああ神様。ロザリーは良人に云いました。「子供達が悪かったのではありません。私が天の命に背いたのでした」 ・・・<宮本百合子「「母の膝の上に」(紹介並短評)」青空文庫>