ちぐ‐はぐ例文一覧 18件

  1. ・・・同時にまたちぐはぐな彼等の話にある寂しさを感じていた。「兄さんはどんな人?」「どんな人って……やっぱり本を読むのが好きなんですよ。」「どんな本を?」「講談本や何かですけれども。」 実際その家の窓の下には古机が一つ据えてあ・・・<芥川竜之介「彼」青空文庫>
  2. ・・・ だから僕に云わせると、氏の人物と氏の画とは、天岡の翁の考えるように、ちぐはぐな所がある訳ではない。氏の画はやはり竹のように、本来の氏の面目から、まっすぐに育って来たものである。 小杉氏の画は洋画も南画も、同じように物柔かである。が・・・<芥川竜之介「小杉未醒氏」青空文庫>
  3. ・・・はきものも、襦袢も、素足も、櫛巻も、紋着も、何となくちぐはぐな処へ、色白そうなのが濃い化粧、口の大きく見えるまで濡々と紅をさして、細い頸の、真白な咽喉を長く、明神の森の遠見に、伸上るような、ぐっと仰向いて、大きな目を凝とみはった顔は、首だけ・・・<泉鏡花「売色鴨南蛮」青空文庫>
  4. ・・・     三 ライオンを出てからは唐物屋で石鹸を買った。ちぐはぐな気持はまたいつの間にか自分に帰っていた。石鹸を買ってしまって自分は、なにか今のは変だと思いはじめた。瞭然りした買いたさを自分が感じていたのかどうか、自分にはど・・・<梶井基次郎「泥濘」青空文庫>
  5. ・・・ 海岸に戯れる裸体の男女と、いろいろな動物の一対との交錯的羅列的な編集があるが、すべてが概念的の羅列であって、感じの連続はかなりちぐはぐであり、従って、自分のいわゆる俳諧的編集の場合に起こるような愉快な感じは起こらない。人間も動物も同じ・・・<寺田寅彦「映画雑感(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」青空文庫>
  6. ・・・このレヴューからあらゆる不純なものをことごとく取り去ってしまったもの、ちぐはぐな踊り子の個性のしみを抜き、だらしのない安っぽい衣装や道具立てのじじむささを洗い取ったあとに残る純粋の「線の踊り」だけを見せるとすれば、それは結局このフィッシンガ・・・<寺田寅彦「踊る線条」青空文庫>
  7. ・・・このちぐはぐな凹凸は「近代的感覚」があってパリの大通りのような単調な眠さがない。うっかりすると目を突きそうである。また雑草の林立した廃園を思わせる。蟻のような人間、昆虫のような自動車が生命の営みにせわしそうである。 高い建物の出現するの・・・<寺田寅彦「銀座アルプス」青空文庫>
  8. ・・・とにかく歯は各個人にとってはそれぞれ年齢をはかる一つの尺度にはなるが、この尺度は同じく年を計る他の尺度と恐ろしくちぐはぐである。自分の知っている老人で七十余歳になってもほとんど完全に自分の歯を保有している人があるかと思うと四十歳で思い切りよ・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  9. ・・・「朝 ヌク飯三ワン 佃煮 梅干 牛乳一合ココア入リぐようなあさましい人間の寄り合いを尋ね歩いて、ちぐはぐな心の調律をして回るような人はないものであろうか。 物語に伝えられた最明寺時頼や講談に読まれる水戸黄門は、おそらく自分では一種の・・・<寺田寅彦「備忘録」青空文庫>
  10. ・・・しかし家庭の日常生活の中へ突然に、全く不連続的にそういう異分子が飛込んで来るときに、われわれはやはりそういうちぐはぐを感じない訳には行かないであろう。もっとも従来蓄音機などで始終こういうものに馴れていれば何でもないであろうが、自分の場合はそ・・・<寺田寅彦「ラジオ雑感」青空文庫>
  11. ・・・ それでも酒の器などには、ちょっと古びのついたものがまだ残っていて、ぎやまんの銚子に猪口が出たり、ちぐはぐな南京皿に茄子のしんこが盛られたりした。 お絹は蔭でそうは言っても、面と向かうと当擦りを言うくらいがせいぜいであった。少し強く・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  12. ・・・しかも、おくれた日本の覚醒をめぐる情勢の流れは迅くて、内部にちぐはぐなものを感じ、善意の焦点を見いだしかねているままに、現実は、むき出しな推移で私たちの日常をこづいて、ゆっくり考えてみるために止まる時間さえ与えない。体が、混んだプラットフォ・・・<宮本百合子「現代の主題」青空文庫>
  13. ・・・ 竹刀で床を突いては、テラテラ髪を分けた下の顔をつくって呶鳴る縞背広の存在とガラス一重外のそのようなあたり前の風景の対照はちぐはぐで自分の心に深く刻みつけられるのであった。 ケイ紙に書きつけた一項一項について、嘘を云っては、「云・・・<宮本百合子「刻々」青空文庫>
  14. ・・・良いもの、纏ったものは皆東京にうつされ此方に遺っているのは、ちぐはぐな叢書の端本、一寸した単行本等に過ない筈である。 ひどくこの地方名物の風が吹き荒んで、おちおちものも書けない或る日、私は埃くさい三畳で古本箱やその囲りに散っている本等を・・・<宮本百合子「蠹魚」青空文庫>
  15. ・・・離れて考えると全体が何だか可哀そうで心配しずにいられないのに、顔を見るとちぐはぐで――もう少し素直な方がいいのに、ね」 そのうち、国から母親が上京し、千鶴子は家を持った。はる子は心から、「まあよかってね」と云った。「今ま・・・<宮本百合子「沈丁花」青空文庫>
  16. ・・・秋来見レ月多二帰思一自起開レ籠放二白一 今は春だし、文鳥だし、連想はちぐはぐなようだが、私にとって或る切なものがあった。思い出。二年前、或る秋偶然この詩を読んだ。私は更に繰返して幾度もよみ、終に涙を流した。ああ「・・・<宮本百合子「春」青空文庫>
  17. ・・・と作者の腹のなかとが実はちぐはぐで、「私」の内省と苦悩とが真に読者の肺腑をつく態の真摯な人間的情熱を欠いているところに、この作品の稀薄さが在るのである。 人道主義的なセンチメンタリズムを蹴たおして、仮借なく現実を踏み越えて生きようとする・・・<宮本百合子「文芸時評」青空文庫>
  18. ・・・ 活気のある無頓着さで、父は晩年になっても身なりなどちぐはぐの儘でいた。私や妹等がお父様折角この服を着たのならネクタイはああいう色だといいのに、と云ったりした。お前たちは、さすが俺の子だね。なかなか趣味がいい。そう云って大層御機嫌である・・・<宮本百合子「わが父」青空文庫>