ち‐じょく【恥辱】例文一覧 30件

  1. ・・・だが甚太夫ほどの侍も、敵打の前にはうろたえて、旅籠の勘定を誤ったとあっては、末代までの恥辱になるわ。その方は一足先へ参れ。身どもは宿まで取って返そう。」――彼はこう云い放って、一人旅籠へ引き返した。喜三郎は甚太夫の覚悟に感服しながら、云われ・・・<芥川竜之介「或敵打の話」青空文庫>
  2. ・・・これは両親たる責任上、明らかに恥辱と云わなければならぬ。しかし我々の両親や教師は無邪気にもこの事実を忘れている。尊徳の両親は酒飲みでも或は又博奕打ちでも好い。問題は唯尊徳である。どう云う艱難辛苦をしても独学を廃さなかった尊徳である。我我少年・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  3. ・・・「ここに起立しているのは恥辱であります。」 下士は低い声に頼みつづけた。「それはお前の招いたことだ。」「罰は甘んじて受けるつもりでおります。ただどうか起立していることは」「ただ恥辱と云う立てまえから見れば、どちらも畢竟同・・・<芥川竜之介「三つの窓」青空文庫>
  4. ・・・「だって、こんな池で助船でも呼んでみたが可い、飛んだお笑い草で末代までの恥辱じゃあないか、あれお止しよ。」 と言うのに、――逆について船がぐいと廻りかけると、ざぶりと波が立った。その響きかも知れぬ。小さな御幣の、廻りながら、遠くへ離・・・<泉鏡花「伯爵の釵」青空文庫>
  5. ・・・「こんな立派な建築を雨晒しにして置くはひどいなあ、近郷に人のない証拠だ、この郡の恥辱だ、随分思い切ったもんだ、県庁あたりでもどうにかしそうなもんだ、つまり千葉県人の恥辱だ、ひどいなあ」 省作はこんなことをひとりで言って、待ち合せる恋・・・<伊藤左千夫「春の潮」青空文庫>
  6. ・・・恋、惑、そして恥辱、夢にも現にもこの苦悩は彼より離れない。 或時は断然倉蔵に頼んで窃かに文を送り、我情のままを梅子に打明けんかとも思い、夜の二時頃まで眠らないで筆を走らしたことがある、然し彼は思返してその手紙を破って了った。こういう風で・・・<国木田独歩「富岡先生」青空文庫>
  7. ・・・彼らは各自の境遇から、天寿をたもち、もしくは病気で死ぬことすらも恥辱なりとして戦死をいそいだ。そして、ともに幸福・満足を感じて死んだ。そしてまた、いずれも真にいわゆる「名誉の戦死」であった。 もし赤穂浪士をゆるして死をたもうことがなかっ・・・<幸徳秋水「死刑の前」青空文庫>
  8. ・・・が其を忌わしく恐るべしとするのは何故ぞや、言う迄もなく死刑に処せられるのは必ず極悪の人、重罪の人たることを示す者だと信ずるが故であろう、死刑に処せらるる程の極悪・重罪の人たることは、家門の汚れ、末代の恥辱、親戚・朋友の頬汚しとして忌み嫌われ・・・<幸徳秋水「死生」青空文庫>
  9. ・・・何事に於いても負けたくない先生のことだから、あの水族館に於ける恥辱をすすごうとして、暮夜ひそかに動物学の書物など、ひもどいてみた様子である。私の顔を見るなり、「なんだ、こないだの一物は、あれは両棲類中の有尾類。」わかり切ったような事を、・・・<太宰治「黄村先生言行録」青空文庫>
  10. ・・・私は、ひとの恥辱となるような感情を嗅ぎわけるのが、生れつき巧みな男であります。自分でもそれを下品な嗅覚だと思い、いやでありますが、ちらと一目見ただけで、人の弱点を、あやまたず見届けてしまう鋭敏の才能を持って居ります。あの人が、たとえ微弱にで・・・<太宰治「駈込み訴え」青空文庫>
  11. ・・・それゆえ人に笑われても恥辱とは思わぬ。けれども、ああ、信じて成功したいものだ。この歓喜! だまされる人よりも、だます人のほうが、数十倍くるしいさ。地獄に落ちるのだからね。 不平を言うな。だまって信じて、ついて行け。オアシスあ・・・<太宰治「かすかな声」青空文庫>
  12. ・・・けれども君の手紙に依れば、君は散々の恥辱を与えられたという事になって居りました。嘘ばかり言っている。君は、ことさらに自分を惨めに書く事を好むようですね。やめるがよい。貯金帳を縁の下に隠しているのと同じ心境ですよ。あの、蔵の中の娘さんとも、君・・・<太宰治「風の便り」青空文庫>
  13. ・・・もすこし売りたく、二号には古屋信子の原稿もらって、私、末代までの恥辱、逢う人、逢う人に笑われるなどの挿話まで残して、三号出し、損害かれこれ五百円、それでも三号雑誌と言われたくなくて、ただそれだけの理由でもって、むりやり四号印刷して、そのとき・・・<太宰治「喝采」青空文庫>
  14. ・・・未遂で人に見とがめられ、縄目の恥辱を受けたくなかった。それからどれほど歩いたのか。百種にあまる色さまざまの計画が両国の花火のようにぱっとひらいては消え、ひらいては消え、これときまらぬままに、ふらふら鎌倉行の電車に乗った。今夜、死ぬのだ。それ・・・<太宰治「狂言の神」青空文庫>
  15. ・・・しかしそのような場合があっても、判断がはずれた事は必ずしもその科学者の科学者としての恥辱にはならない。その場合には要するに科学が一歩を進めたという事になる。そういうふうにして進歩するのが科学ではあるまいか。むしろ見当のはずれるほうが科学者と・・・<寺田寅彦「案内者」青空文庫>
  16. ・・・場合によっては芸術を愛する事が科学者としての堕落であり、また恥辱であるように考えている人もあり、あるいは文芸という言葉からすぐに不道徳を連想する潔癖家さえまれにはあるように思われる。 科学者の天地と芸術家の世界とはそれほど相いれぬもので・・・<寺田寅彦「科学者と芸術家」青空文庫>
  17. ・・・しかし私はこの臆病者であったということを今では別に恥辱だとは思っていない。むしろかえってそうであったことが私には幸運であったと思っている。 子供の時分にこの臆病な私の胆玉を脅かしたものの一つは雷鳴であった。郷里が山国で夏中は雷雨が非常に・・・<寺田寅彦「家庭の人へ」青空文庫>
  18. ・・・ いずれにしても今回のような大火は文化をもって誇る国家の恥辱であろうと思われる。昔の江戸でも火事の多いのが自慢の「花」ではなくて消防機関の活動が「花」であったのである。とにかくこのたびの災害を再びしないようにするためには単に北海道民のみ・・・<寺田寅彦「函館の大火について」青空文庫>
  19. ・・・たとえ省察の結果が誤っていて、そのために流言が実現されるような事があっても、少なくも文化的市民としての甚だしい恥辱を曝す事なくて済みはしないかと思われるのである。<寺田寅彦「流言蜚語」青空文庫>
  20. ・・・現今の教育の結果は自分の特点をも露骨に正直に人の前に現わす事を非常なる恥辱とはしないのであります。これは事実という第一の物が一元的でないという事を予め許すからである。私の家へよく若い者が訪ねて参りますがその学生が帰って手紙を寄こす。その中に・・・<夏目漱石「教育と文芸」青空文庫>
  21. ・・・養家に行きて気随気儘に身を持崩し妻に疏まれ、又は由なき事に舅を恨み譏りて家内に風波を起し、終に離縁されても其身の恥辱とするに足らざるか。ソンナ不理窟はなかる可し。女子の身に恥ず可きことは男子に於ても亦恥ず可き所のものなり。故に父母の子を教訓・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  22. ・・・ ゆえに、貿易に不正あれば、商人の恥辱なり、これによりて利を失えば、その愚なり。学芸の上達せざるは、学者の不外聞なり、工業の拙なるは、職人の不調法なり。智力発達せずして品行の賤しきは、士君子の罪というべし。昔日鎖国の世なれば、これらの諸・・・<福沢諭吉「学者安心論」青空文庫>
  23. ・・・夫婦正しく一身同体、妻の病気には夫の身を苦しめ、夫の恥辱には妻の心を痛ましめ、其感ずる所に些少の相違あることなし。世の男女或は此賭易き道理を知らずして、結婚は唯快楽の一方のみと思い却て苦労の之に伴うを忘れて、是に於てか男子が老妻を捨てゝ妾を・・・<福沢諭吉「新女大学」青空文庫>
  24. ・・・こう云ういやなものが町の中を勝手に歩くということはおれの恥辱だ。いいからひっくくってしまえ。」とペンネンネンネンネン・ネネムは部下の検事に命令しました。一人の検事がすぐ進んで行ってタン屋の店から出て来るばかりのそのいやなものをくるくる十重ば・・・<宮沢賢治「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」青空文庫>
  25. ・・・愛する自分の国の科学力の発達が、人畜を殲滅する能力などという点でほこられるとしたら、それは、よろこびよりも苦痛と恥辱を感じさせるのが自然です。 では、どうして、日本の新聞は、そういう誇るべからざる誇りを、毒々しく報道したりするのでしょう・・・<宮本百合子「新しい卒業生の皆さんへ」青空文庫>
  26. ・・・無論は、女性が昔の偏狭な、恥辱的な性的差別に支配、圧迫された生活から脱して、一箇の尊敬すべき独立的人格者として生活すべき事を他人にも我にも承認させた。 人として更たまった、身も震うような新鮮な意気と熱情とを以て人として生き抜こう為に、箇・・・<宮本百合子「概念と心其もの」青空文庫>
  27. ・・・青年からその申し出をきいて、老牧師は、自分と娘とにとってまことに思いもかけない恥辱からの救い手と、おどろいた。「あなたは、何という聖者だ!」青年は、ひそかな苦々しさをかくして答える。「僕はただ人間であるにすぎません」 ゴールスワアジーら・・・<宮本百合子「傷だらけの足」青空文庫>
  28. ・・・ノーベル賞を与えられた彼等は科学者として最高の名誉の席につかせられ、学界からおくられる称号、学位の数々は、まるでそういう名誉でキュリー夫妻を飾ることを怠れば、その国々の恥辱となるとでも云いそうな勢でした。もしキュリー夫妻の艱難と堅忍と努力と・・・<宮本百合子「キュリー夫人の命の焔」青空文庫>
  29. ・・・ 主婦は、斯うしたかなりの家から駒込送りの病人を出した事を非常に恥辱の様に思い、子供達は気味も悪がり、女中共は涙をこぼし、主は、「道徳だの頭の程度の違うものと生活するのはよくない事だ。と云って居た。 斯うした種々の気・・・<宮本百合子「黒馬車」青空文庫>
  30. ・・・意外であり乍ら、而も、途方もない事だと、其人の為、又自分達の為に恥辱を感じることもなく、二人の第一連想が期せずして其点に一致したのは何故だろう。「――生憎、私が此辺を昨夜は片づけたんでね、一素何処にあったかまるっきり知らなければ却ってよ・・・<宮本百合子「斯ういう気持」青空文庫>