ち‐せい【知性】例文一覧 30件

  1. ・・・ちょっともあれしませんの。これが私の夫ですというて、ひとに紹介も出来しませんわ。字ひとつ書かしても、そらもう情けないくらいですわ。ちょっとも知性が感じられしませんの。ほんまに、男の方て、筆蹟をみたらいっぺんにその人がわかりますのねえ」 ・・・<織田作之助「秋深き」青空文庫>
  2. ・・・彼等の文学は、ただ俳句的リアリズムと短歌的なリリシズムに支えられ、文化主義の知性に彩られて、いちはやく造型美術的完成の境地に逃げ込もうとする文学である。そして、彼等はただ老境に憧れ、年輪的な人間完成、いや、渋くさびた老枯を目標に生活し、そし・・・<織田作之助「可能性の文学」青空文庫>
  3. ・・・しかし吉田にとって別にそれは珍しいことではなかったし、無躾けなことを聞く人間もあるものだとは思いながらも、その女の一心に吉田の顔を見つめるなんとなく知性を欠いた顔付きから、その言葉の次にまだ何か人生の大事件でも飛び出すのではないかという気持・・・<梶井基次郎「のんきな患者」青空文庫>
  4. ・・・それがやがてはまことの知性の母なのだ。 天地の大道に則した善き人間となりたいという願い、『教養と倫理学』――の中に私が書いたような青春のなくてならぬもひとつの要請と、やむにやまれぬこの恋のあくがれとを一つに燃えさしめよ。 善によって・・・<倉田百三「学生と生活」青空文庫>
  5. ・・・ 読書とは単なる知性の領域にある事柄ではない。それは情意と、実践との世界に関連しているのである。特に東洋においては、それはむしろ実践のためにあるものなのであった。 しかしながら前にも述べた如く、良書とは自分の抱く生の問いにこたえ得る・・・<倉田百三「学生と読書」青空文庫>
  6. ・・・何故なら深い別れというものは涙を噛みしめ、この生のやむなき事実に忍従したもので、そこには知性も意志も働いた上のことだからである。 人間が合いまた離れるということは人生行路における運命である。そしてこれは心に沁みる切実なことである。世の中・・・<倉田百三「人生における離合について」青空文庫>
  7. ・・・私の知性は、死ぬる一秒まえまで曇らぬ。けれどもひそかに、かたちのことを気にしていたのだ。清潔な憂悶の影がほしかった。私の腕くらいの太さの枝にゆらり、一瞬、藤の花、やっぱりだめだと望を捨てた。憂悶どころか、阿呆づら。しかも噂と事ちがって、あま・・・<太宰治「狂言の神」青空文庫>
  8. ・・・『新ロマン派』も十月号より購読致し、『もの想う葦』を読ませて戴き居候。知性の極というものは、……の馬場の言葉に、小生……いや、何も言うことは無之候。映画ファンならば、この辺でプロマイドサインを願う可きと存候え共、そして小生も何か太宰治さま、・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  9. ・・・「ええ、好きですよ。なによりも、怪談がいちばん僕の空想力を刺激するようです」「こんな怪談はどうだ」馬場は下唇をちろと舐めた。「知性の極というものは、たしかにある。身の毛もよだつ無間奈落だ。こいつをちらとでも覗いたら最後、ひとは一こともも・・・<太宰治「ダス・ゲマイネ」青空文庫>
  10. ・・・理性や知性の純粋性など、とうに見失っているらしく、ただくらげのように自分の皮膚感触だけを信じて生きている人間たちにとっては、なかなか有り難い認識論である。ひとつ研究会でも起すか。私もいれてもらいます。 自分の世界観をはっきり持っていなく・・・<太宰治「多頭蛇哲学」青空文庫>
  11. ・・・私は霊感を信じない。知性の職人。懐疑の名人。わざと下手くそに書いてみたりわざと面白くなく書いてみたり、神を恐れぬよるべなき子。判り切っているほど判っているのだ。ああ、ここから見おろすと、みんなおろかで薄汚い。」などと賑やかなことであるが、お・・・<太宰治「もの思う葦」青空文庫>
  12. ・・・ 新鮮な階級的な知性と実践的な生の脈うちとで鳴っていた「敗北の文学」「過渡期の道標」の調子は、そのメロディーを失って熱いテムポにかわった。情感へのアッピールの調子から理性への説得にうつった。 この時期の評論が、どのように当時の世界革・・・<宮本百合子「巖の花」青空文庫>
  13. ・・・かぞえつくせない青春がきずつけられ、殺戮された。知性もうちひしがれた。民主の夜あけがきたとき、すぐその理性の足で立って、嬉々と行進しはじめられなかったほど日本の知性は、うちひしがれていたのであった。 日本にエリカ・マンはありえなかった。・・・<宮本百合子「明日の知性」青空文庫>
  14. ・・・民主的文化確立の道は、この社会的基盤の分析という段階から既に文学そのものの創造によって、人民の哲学そのものの確立によって、新しい知性と美の流露によって、知的に心情的に、「しかし」の谷間まであふれてゆかなければならない段階にきていると信じます・・・<宮本百合子「新しい抵抗について」青空文庫>
  15. ・・・軍国主義の餌じきとされて来ていた日本人民の人間性・知性が重圧をとりのぞかれてむら立つように声をあげはじめたとき、自我の確立とか自意識とかいうことが言われはじめたとき、そういう角度を手がかりとして自分の人生を見なおしはじめた若い人たちのうちで・・・<宮本百合子「生きつつある自意識」青空文庫>
  16. ・・・この人生に明らかな知性と豊かで健全な人間的情熱の発動を熱望する一人の作家が、今日の現実を見る勉強としてやって見るつもりである。日本文学史全巻を担当される近藤忠義が、篤学、正確な視点をもたれる学者であることは、読者にとっての幸運であるし、同時・・・<宮本百合子「意味深き今日の日本文学の相貌を」青空文庫>
  17. ・・・の世界で、それぞれの女性たちは、その優れた美しさや知性や熱情にかかわらず、これまでどおり、社会関係の中では男に対する女としての角度からよろこび、悲しみ、波瀾にもまれている。彼女たちはジャン・クリストフの感性から働きかけるだけの存在であった。・・・<宮本百合子「彼女たち・そしてわたしたち」青空文庫>
  18. ・・・むしろ、こういう作品との関係でその作家の生きつつある現実の生きようを見きわめようとするところに、血と肉のある現代人の知性が発揮されるのであろうと思う。〔一九三九年六月〕<宮本百合子「観念性と抒情性」青空文庫>
  19. ・・・では、当時文壇や一般知識人の間に問題とされていた思想の諸課題、例えばヒューマニズムの問題、知性の問題、科学性の問題などをそのまま職場へ携帯して行って、そこでの現実の見聞、情景、插話の中から、携帯して行った観念を背負わせるにふさわしいと思われ・・・<宮本百合子「「結婚の生態」」青空文庫>
  20. ・・・明治から大正初頭にかけて、日本の知性の確立を欲することの熱烈であった作家の一人夏目漱石も、イギリスへ行ってからはとくに個々人の見識、人格としてそれをはっきり主張した。しかし、支配権力の歴史的な性格が、国の文化と知性との基盤にあって、どう作用・・・<宮本百合子「現代の主題」青空文庫>
  21. ・・・彼の知性が、よりひろく、強靭であろうと欲している、その角度から少くとも、私小説的な要素を否定している意味での中間小説に対して、単純な断定をさけさせたのであったと考えられる。 昨年十二月号『群像』の月評座談会で、林房雄は、宇野浩二の書いた・・・<宮本百合子「現代文学の広場」青空文庫>
  22. ・・・けれども、いまの日本が、若い知性として小器用さばかりかきたてる社会しかもっていないことについて、あなたがたはどんな抗議をおもちですか。真白なきれいな小さいカラーのように、若々しさによく似合って清潔などんな正義感を、おもちでしょうか。〔一・・・<宮本百合子「光線のように」青空文庫>
  23. ・・・こんにちでは、昔ながらの日本のコンプレックスが解かれきっていない上に舶来のファクターが重って来て、日本の知性、良心のコンプレックスは実に圧の高いものになった。 第一次大戦から第二次大戦までの文学に、フロイドが与えた影響は非常に広汎であっ・・・<宮本百合子「心に疼く欲求がある」青空文庫>
  24. ・・・などでは、当時文壇や一般に課題とされていた知性の問題、科学性の問題、ヒューマニズムの問題などを、ちゃんと携帯して現地へ出かけて行って、そこでの見聞と携帯して行った思想とを一つの小説の中に溶接して示そうとした。 この作品は他の理由から物議・・・<宮本百合子「今日の読者の性格」青空文庫>
  25. ・・・は日本的なるものとして又人間の知性の完全無欠な形として、封建時代の義理人情を随喜渇仰する小説であって、常識ある者を驚かしたが、当時にあっては、彼の復古主義も情勢の在りように従って「紋章」の中に茶道礼讚として萌芽を表しているに止った。 か・・・<宮本百合子「今日の文学の鳥瞰図」青空文庫>
  26. ・・・時代の知性の特色は帰趨を失った知識人の不安であるとされ、不安を語らざる文学、混迷と否定と懐疑の色を漉して現実を見ない文学は、時代の精神に鈍感な馬鹿者か公式主義者の文学という風になった。そして、この不安の文学の主唱者たちは、不安をその解決の方・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  27. ・・・そして、この場合教養と呼ばれるのは、今日ひととおり教養があるとか知性的だとか云われる文学作品の真の生活的・文学的価値を、再評価してゆく生活的・社会的洞察であり、文学的教養と云う意味は、或る作家の作品中の文句を会話の中に自由にとりいれて来るこ・・・<宮本百合子「作家と教養の諸相」青空文庫>
  28. ・・・ 今日我々がうけついでいる文化、感情、知性は、社会の歴史に制せられてその本質に様々の矛盾、撞着、蒙昧をもっていることは認めなければならない事実である。科学者が科学を見る態度にもこれをおのずから反映している。特に、今日の科学では未だ現実の・・・<宮本百合子「作家のみた科学者の文学的活動」青空文庫>
  29. ・・・従って、近代のヨーロッパの知性をうけいれている文学精神は、日本の社会感覚、文学感覚との間に、忍耐をもって埋めてゆかなければならないくいちがいを生じている、というようなことについて、こんにちでは知っていないものもないし、自覚していないものもな・・・<宮本百合子「「下じき」の問題」青空文庫>
  30. ・・・こういう社会的真実にたいする追求の怠慢は、知性そのものの不純潔性である。 私自身の生活の経験を考えてみて、身辺のたれそれの生活を考えてみて、ハウスキーパーの「制度」などは決してなかった。ハウスキーパーという名のもとに女性を全く非人間的に・・・<宮本百合子「社会生活の純潔性」青空文庫>