ちつ‐じょ【秩序】例文一覧 30件

  1. ・・・兄夫婦や満蔵はほとんど、活きた器械のごとく、秩序正しく動いている。省作の目には、太陽の光が寸一寸と歩を進めて動く意味と、ほとんど同じようにその調子に合わせて、家の人たちが働いてるように見える。省作はもうただただ愉快である。 東京の物の本・・・<伊藤左千夫「隣の嫁」青空文庫>
  2. ・・・ 二葉亭時代の人は大抵国漢文の秩序的教育を受けたから、国漢文の課題文章の習練にはかなり苦まされて文学即文章の誤った考を吹込まれていた。当時の文章教育というのは古文の摸倣であって、山陽が項羽本紀を数百遍反覆して一章一句を尽く暗記したという・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  3. ・・・後の『小説神髄』はこれを秩序的に纏めたものだが、この評論は確かに『書生気質』などよりは重かった。世間を敬服さした。これも私は丁度同時にバージーンの修辞学を或る外国人から授かって、始終講義を聞いていた故、確かにその一部をバージーンから得たらし・・・<内田魯庵「明治の文学の開拓者」青空文庫>
  4. ・・・そればかりか、若い人々にとっては、経験はあまりに生々しく不秩序的に見えることさえ多い。これを冷静に批評し得るほどの観察力観照力は、長い月日の間に、遅々として獲得するよりほかに方法はない。 こゝに初めて読書するということが有効になって来る・・・<小川未明「文章を作る人々の根本用意」青空文庫>
  5. ・・・、絵草紙、メンコ、びいどろのおはじき、花火、河豚の提灯、奥州斎川孫太郎虫、扇子、暦、らんちゅう、花緒、風鈴……さまざまな色彩とさまざまな形がアセチリン瓦斯やランプの光の中にごちゃごちゃと、しかし一種の秩序を保って並んでいる風景は、田舎で育っ・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  6. ・・・とは純粋になればなるほど形式が不純になり、複雑になり、構成は何重にも織り重って遠近法は無視され、登場人物と作者の距離は、映画のカメラアングルのように動いて、眼と手は互いに裏切り、一元描写や造形美術的な秩序からますます遠ざかるものであると考え・・・<織田作之助「可能性の文学」青空文庫>
  7. ・・・選択愛憎等の情緒的な心情もアプリオリの内容を持ち、「心情の秩序」が存在する。道徳価値の把握は知的作用によらず、情緒的な直覚によって価値感知されるのである。これがシェーラーのいわゆる情緒的直覚主義の立場である。シェーラーはさらに価値の等級を直・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  8. ・・・それは見知らぬ大衆が法によっておのずと統一されて、秩序を失わず、霊の勝利と生気との気魄がみなぎりあふれているからである。 日蓮の張り切った精神と、高揚した宗教的熱情とは、その雰囲気をおのずと保って、六百五十年後の今日まで伝統しているのだ・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  9. ・・・完成と秩序をこそあこがれた。そうして、芸術は枯れてしまった。サンボリスムは、枯死の一瞬前の美しい花であった。ばかどもは、この神棚の下で殉死した。私もまた、おくればせながら、この神棚の下で凍死した。死んだつもりでいたのだが、この首筋ふとき北方・・・<太宰治「一日の労苦」青空文庫>
  10. ・・・撃してね、民衆がね、あちらからもこちらからも立ち上って、それ以来、フランスの、春こうろうの花の宴が永遠に、永遠にだよ、永遠に失われる事になったのだけどね、でも、破壊しなければいけなかったんだ、永遠に新秩序の、新道徳の再建が出来ない事がわかっ・・・<太宰治「おさん」青空文庫>
  11. ・・・此の喜劇を読んでゆくと、秩序も構図もなく寄せ集められた「雑多な事実」に満ちている新聞にでも眼を通してゆくような印象を受ける。ここに支配しているものは偶然であり、偶然があらゆる一般的な概念に抗して戦っているのである。』これを写しながら、給仕君・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  12. ・・・こせこせした秩序に構わないで、住心地の好いようにしてくれる。それになかなか品位を保っている。なんの役も勤まる女である。 二人きりで寂しくばかり暮しているというわけではない。ドリスの方は折々人に顔を見せないと、人がどうしたかと思って、疑っ・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  13. ・・・ この家を訪問してから、『田舎教師』における私の計画は、やや秩序正しい形を取って来た。日記に書いてあることがすべてはっきりと私の眼に映って見えた。で、さらに行田から弥勒に行く道、かれの毎日通った路を歩いてみることにした。 私はいろい・・・<田山花袋「『田舎教師』について」青空文庫>
  14. ・・・それともまたこのようなものを作りあげるに必要な秩序や理法が人間の方に備わっているので、われわれはただ自己の内にある理法の鏡に映る限りにおいて自己以外と称するものを認めるのであろうか。これは六かしい問題である。そして科学者にとっても深く考えて・・・<寺田寅彦「言語と道具」青空文庫>
  15. ・・・学者は科学を成立さする必要上、自然界に或る秩序方則の存在を予想す。従ってある現象を定むる因子中より第一にいわゆる偶発的突発的なるものを分離して考うれども、世人はこの区別に慣れず。一例を挙ぐれば、学者は掌中の球を机上に落す時これが垂直に落下す・・・<寺田寅彦「自然現象の予報」青空文庫>
  16. ・・・大まかに不ぞろいに刈り散らして虎斑をこしらえる者もあれば、一方から丁寧に秩序正しく、蚕が桑の葉を食って行くように着々進行して行くものもあった。ある者は根もとまでつめて刈り込まないと承知しないし、またある者はある長さの緑を残すように骨を折って・・・<寺田寅彦「芝刈り」青空文庫>
  17. ・・・先生は女が髪を直す時の千姿万態をば、そのあらゆる場合を通じて尽くこれを秩序的に諳じながら、なお飽きないほどの熱心なる観察者である。まず、忍び逢いの小座敷には、刎返した重い夜具へ背をよせかけるように、そして立膝した長襦袢の膝の上か、あるいはま・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  18. ・・・この寺の墓地と六間堀の裏河岸との間に、平家建の長屋が秩序なく建てられていて、でこぼこした歩きにくい路地が縦横に通じていた。長屋の人たちはこの処を大久保長屋、また湯灌場大久保と呼び、路地の中のやや広い道を、馬の背新道と呼んでいた。道の中央が高・・・<永井荷風「深川の散歩」青空文庫>
  19. ・・・まずその汁の実を何に致しましょうと聞かれると、実になり得べき者を秩序正しく並べた上で選択をしなければならんだろう。一々考え出すのが第一の困難で、考え出した品物について取捨をするのが第二の困難だ」「そんな困難をして飯を食ってるのは情ない訳・・・<夏目漱石「琴のそら音」青空文庫>
  20.  ただいまは牧君の満洲問題――満洲の過去と満洲の未来というような問題について、大変条理の明かな、そうして秩序のよい演説がありました。そこで牧君の披露に依ると、そのあとへ出る私は一段と面白い話をするというようになっているが、な・・・<夏目漱石「道楽と職業」青空文庫>
  21. ・・・これは人間の歴史的発展の終極の理念であり、而もこれが今日の世界大戦によって要求せられる世界新秩序の原理でなければならない。我国の八紘為宇の理念とは、此の如きものであろう。畏くも万邦をしてその所を得せしめると宣らせられる。聖旨も此にあるかと恐・・・<西田幾多郎「世界新秩序の原理」青空文庫>
  22. ・・・ 人或は言わん、右に論ずる所、道理は則ち道理なれども、一方より見れば今日女権の拡張は恰も社会の秩序を紊乱するものにして遽に賛成するを得ずとて、躊躇する者もあらんかなれども、凡そ時弊を矯正するには社会に多少の波瀾なきを得ず。其波瀾を掛念と・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  23. ・・・下等士族もまた給人分の輩は知らぬことなれども彼の一条は云々、とて、互に竊に疑うこともあり憤ることもありて、多年苦々しき有様なりしかども、天下一般、分を守るの教を重んじ、事々物々秩序を存して動かすべからざるの時勢なれば、ただその時勢に制せられ・・・<福沢諭吉「旧藩情」青空文庫>
  24. ・・・例の秩序なしであるから、そのつもりで読んで貰いたい。○僕も昔は少し気取て居った方で、今のように意気地なしではなかった。一口にいうとやや悟って居る方だと自惚れて居た。ところが病気がだんだん劇しくなる。ただ身体が衰弱するというだけではないの・・・<正岡子規「病牀苦語」青空文庫>
  25. ・・・医師ラヴィックの生活をとおして全面に描き出されている旧いヨーロッパの秩序の崩壊に対するやきつくように鋭い意識とその意識につらぬかれつつそれをもちこたえてゆくダイナミックで強靭な感覚と神経。「凱旋門」が日本の若い人々を魅した秘密はそこにあるの・・・<宮本百合子「偽りのない文化を」青空文庫>
  26. ・・・ 若い娘たちの行進の美しさと心をたかめる力は、そこに肉体の若さが溢れているというばかりでなく、希望をもって、秩序をもって日々に生かされている新しい生活の輝きがてりはえるからこそであると思う。背景をなして、若い人々の生活の満ち漲った熱意と・・・<宮本百合子「女の行進」青空文庫>
  27. ・・・「こないだ太陽を見たら、君の役所での秩序的生活と芸術的生活とは矛盾していて、到底調和が出来ないと云ってあったっけ。あれを見たかね。」「見た。風俗を壊乱する芸術と官吏服務規則とは調和の出来ようがないと云うのだろう。」「なるほど、風・・・<森鴎外「あそび」青空文庫>
  28. ・・・その趣意は、あんな消極的思想は安寧秩序を紊る、あんな衝動生活の叙述は風俗を壊乱するというのであった。 丁度その頃この土地に革命者の運動が起っていて、例の椰子の殻の爆裂弾を持ち廻る人達の中に、パアシイ族の無政府主義者が少し交っていたのが発・・・<森鴎外「沈黙の塔」青空文庫>
  29. ・・・そうして大きい、よく組織された国家の、すみずみまで行き届いた秩序があり、権力の強い支配者があり、豊富な産業がある。骨までも文化が徹っている。東海岸の国土、たとえばモザンビクの海岸においても状態は同じであった。 十五世紀から十七世紀へかけ・・・<和辻哲郎「アフリカの文化」青空文庫>
  30. ・・・、永享の土一揆は彼の三十歳近いころの出来事であり、嘉吉の土一揆、民衆の強要による一国平均の沙汰は、彼の三十九歳の時のことで、民衆の運動は彼の熟知していたところであるが、彼にとってはそれはただ悲しむべき秩序の破壊にすぎなかったであろう。今やそ・・・<和辻哲郎「埋もれた日本」青空文庫>