ち‐てん【地点】例文一覧 30件

  1. ・・・二十日の夜行軍、翌二十一日の朝、敵陣に近い或地点に達したのやけど、危うて前進が出来ん。朝飯の際、敵砲弾の為めに十八名の死者を出した。飯を喰てたうえへ砲弾の砂ほこりを浴びたんやさかい、口へ這入るものが砂か米か分らん様であった。僕などは、もう、・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  2. ・・・××港から船に乗り込む前の二時間ばかり、××町の東三〇〇米の地点で休憩するから面会に来てくれというSの頼みをまつ迄もなく、私はSを見送る喜びに燃えた。 その前夜から、雨まじりのひどい颶風であった。面会の時間はかなりの早朝だったから、原稿・・・<織田作之助「面会」青空文庫>
  3. ・・・ かつては、この地点から、多くの酒精が、持ちこまれてきた。ウオッカの製造が禁じられていた、時代である。支那人は、錻力で特別に作らせた、コルセット様の、ぴったりと人間の胴体に合う中が空洞となった容器に、酒精を満し、身肌につけて、上から服を・・・<黒島伝治「国境」青空文庫>
  4. ・・・地図を片手に、さぐり/\進んでいた深山軍曹は、もう、命じられた地点に来たと了解した。ところどころに、黒龍江軍の造った塹壕のあとがあった。そこにもみな、土が凍っていた。彼等は、棄てられた一軒の小屋に這入って、寒さをしのぎつゝ、そこから、敵の有・・・<黒島伝治「前哨」青空文庫>
  5. ・・・敷地は、第一回の測量地点から、第二回の測量地へ変更されることになったのだ。 はじめの測量には、所有地が敷地に這入っていたのに、今度は、はずれている。そんな地主や自作農もあった。はじめは、四カ所もはいっていたのに、今度は、一坪もふれていな・・・<黒島伝治「浮動する地価」青空文庫>
  6. ・・・あの森が、約束の地点だ。 すぐつづけて原作は、『この森の直ぐ背後で、女房は突然立ち留まった。その様子が今まで人に追い掛けられていて、この時決心して自分を追い掛けて来た人に向き合うように見えた。「お互に六発ずつ打つ事にしましょうね・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  7. ・・・私は、ズボンのポケットに両手をつっこみ、同じ地点をいつまでもうろうろ歩きまわり、眼のまえの海の形容詞を油汗ながして捜査していた。ああ、作家をよしたい。もがきあがいて捜しあてた言葉は、「江の島の海は、殺風景であった」私はぐるっと海へ背をむけた・・・<太宰治「狂言の神」青空文庫>
  8. ・・・フライイング犯した罰として、他の選手よりは一米うしろの地点から走らなければならない。「用意!」審判の冷酷の声が、ふたたび発せられる。 私は、思いちがいしていた。このレエスは百米競争では、なかったのだ。千米、五千米、いやいや、もっとながい・・・<太宰治「答案落第」青空文庫>
  9. ・・・ある地点では車の窓から見下ろされる断崖の高さが六百尺だといって女車掌が紹介する。それが六百尺であることがあたかもその車掌のせいででもあるかのように、何となく得意気に聞こえて面白い。 近在の人らしい両親に連れられた十歳くらいの水兵服の女の・・・<寺田寅彦「雨の上高地」青空文庫>
  10. ・・・このような調節が出来たらこの二つの土器を、互いに通信を交わしたいと思う甲乙の二地点に一つずつ運んでおく。そこで甲地から乙地に通信をしようと思うときには先ず甲で松明を上げる。乙地でそれを認めたらすぐ返答にその松明を上げて同時に土器の底の栓を抜・・・<寺田寅彦「変った話」青空文庫>
  11. ・・・これは数年前京都大学の地球物理学者たちがここにエアトヴァスの重力偏差計をすえ付けて観測した地点を示す標柱だそうである。年々に何百人という登山者のうちで、こんな柱の立っているのに気のつく人はいくらもないかもしれない。まして、その柱の意味を知る・・・<寺田寅彦「小浅間」青空文庫>
  12. ・・・要塞というものは必ず景勝の地であり、また必ず地学的に最も興味ある地点になっているのは面白い事実であろう。大神宮のすぐ下にソビエト領事館がある。これも面白い事実である。門の鉄扉の外側に子守が二、三人立って門内の露人の幼児と何か言葉のやりとりを・・・<寺田寅彦「札幌まで」青空文庫>
  13. ・・・獄門の晒首や迷子のしるべ、御触れの掲示などにもまたしばしば橋の袂が最もふさわしい地点であると考えられた。これは云うまでもなく、橋が多くの交通路の集合点であって一種の関門となっているからである。従ってあらゆる街路よりも交通の流れの密度が大きい・・・<寺田寅彦「さまよえるユダヤ人の手記より」青空文庫>
  14. ・・・斉明天皇の御代に二艘の船に分乗して出掛けた一行が暴風に遭って一艘は南海の島に漂着して島人にひどい目に遭わされたとあり、もう一艘もまた大風のために見当ちがいの地点に吹きよせられたりしている。これは立派な颱風であったらしい。また仁明天皇の御代に・・・<寺田寅彦「颱風雑俎」青空文庫>
  15. ・・・ 台風の襲来を未然に予知し、その進路とその勢力の消長とを今よりもより確実に予測するためには、どうしても太平洋上ならびに日本海上に若干の観測地点を必要とし、その上にまた大陸方面からオホツク海方面までも観測網を広げる必要があるように思われる・・・<寺田寅彦「天災と国防」青空文庫>
  16. ・・・人間の歴史のある時期に地球上のある地点に発生した文化の産物は時間の経過とともに人為的のあらゆる障壁を無視して四方に拡散するのは当然である。永代橋から一樽の酒をこぼせば、その中の分子の少なくもある部分はいつかは、世界じゅうの海のいかなる果てま・・・<寺田寅彦「日本楽器の名称」青空文庫>
  17. ・・・新聞記事は例によってまちまちであって、感傷をそそる情的資料は豊富でも考察に必要な正確な物的資料は乏しいのであるが、内務省警保局発表と称する新聞記事によると発火地点や時刻や延焼区域のきわめてだいたいの状況を知ることはできるようである。まず何よ・・・<寺田寅彦「函館の大火について」青空文庫>
  18. ・・・ときどきつれの小娘に肩をよせてから前こごみになってひびかせる笑い声が、三吉をあわてさせるのであるが、そしてきょうもとうとう土堤道のある地点にくるまで、声をかけるどころか、歩いているかんかくをちぢめることさえ出来なかった。 彼女たちはそこ・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  19. イーハトヴは一つの地名である。しいて、その地点を求むるならば、それは、大小クラウスたちの耕していた、野原や、少女アリスがたどった鏡の国と同じ世界の中、テパーンタール砂漠のはるかな北東、イヴン王国の遠い東と考えられる。じつ・・・<宮沢賢治「『注文の多い料理店』新刊案内」青空文庫>
  20. ・・・我輩はその地点を記録する。もう一足だぞ。」大学士はいよいよ勢こんでその足跡をつけて行く。ところが間もなく泥浜は岬のように突き出した。「さあ、ここを一つ曲って見ろ。すぐ向う側にその骨がある。けれども事によったらすぐないかも・・・<宮沢賢治「楢ノ木大学士の野宿」青空文庫>
  21. ・・・をよむと、誤りをみとめつつ、なお林房雄などの卑劣さに対する本質的ないきどおりをしずめかねて、うたれつつたたかれつつ、なお自分の発言した心情の地点を譲歩しようとしていないわたしの姿が浮んでいる。 当時の運動の困難な状態が、運動に熟達してい・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」青空文庫>
  22. ・・・この大きな歴史的な課題は、それぞれの民主的な作家によって、それぞれの地点と角度から、それぞれの色あい度あいによってはたされてゆくであろう。「風知草」「播州平野」「二つの庭」「道標」それにつづいて執筆されつつある一九四五年以後の作品は、その作・・・<宮本百合子「解説(『風知草』)」青空文庫>
  23. ・・・まけおしみぬきで、事実を事実として見るならば、民主的文学運動におけるこの地点には、思いのほかの地すべりがある。 太宰治の死に際して、受動的な形であらわれた民主的批評の実質についての危機は、つづいて一昨年の初夏、多くの文学者が、反ファシズ・・・<宮本百合子「現代文学の広場」青空文庫>
  24. ・・・ すっきりとした初夏の服装で、大きめのハンド・バッグを左腕にかけ、婦人兵士の最後の列の閲兵を終ろうとしている王女エリザベスの目の下に、一人の婦人兵士が直立不動で立っていたその地点から足をはなさないまま、失神して仰向けに倒れている。白手袋・・・<宮本百合子「権力の悲劇」青空文庫>
  25. ・・・作者がこんにち立っている地点から、網がなげられるしかないのである。 ところで、わたしには問題があった。社会主義リアリズムの方法は自身の経験のうちで意識して試みられた例に乏しいばかりか、一般にその方法の機能について、更にその機能の細部につ・・・<宮本百合子「心に疼く欲求がある」青空文庫>
  26. ・・・けれども、人間性を自分の枠のなかからたたき出して、辛い旅をさせ、客観的に追いつめられるだけ追いつめて見て到達した地点へ、自分の生きかたの足場を刻みつけて進んでゆくという、アルプス登攀のような文学と生活との方法は、ざらにあるだろうか。 経・・・<宮本百合子「作品と生活のこと」青空文庫>
  27. ・・・ きょうもまた、この古き地点からそのままひきうつして世界観の問題や創作方法のことを語る若い人々がある。 プロレタリア文学の新しい民主主義文学との生けるつながりが明らかとなるにつれ、新しい民主主義がすでにその前脚をかけている社会主・・・<宮本百合子「作家の経験」青空文庫>
  28. ・・・潮のきつい海の上で当人は一生懸命こっちへ向っていい気持に漕いでいるつもりだのに、数刻経て見たら、豈計らんやかくの如き地点に押し流されて来ていた、という場合が決して少くない。昨今従来のタイプの作家が主観的であるという特質は、時代的底潮によって・・・<宮本百合子「数言の補足」青空文庫>
  29. ・・・日本と米国そのものが人民の平和より何より先に戦略的な地点として考えられるような考えかたに麻痺させられず、世界の軍備縮少を要求しアジアにおいてそれを実現させる力となって行かなければならないと思う。 去年もおしつまった十二月四日から一週間日・・・<宮本百合子「世界は求めている、平和を!」青空文庫>
  30. ・・・彼らは花園に接近した地点を撰ぶと、その腐敗した肺臓のために売れ残って腐り出しただけの魚の山を、肥料として積み上げた。忽ち蠅は群生して花壇や病舎の中を飛び廻った。病舎では、一疋の蠅は一挺のピストルに等しく恐怖すべき敵であった。院内の窓という窓・・・<横光利一「花園の思想」青空文庫>