ち‐みつ【緻密】例文一覧 16件

  1. ・・・ 鳴きだしたこおろぎの声にまじって、質の緻密な玉を硬度の高い金属ではじくような虫も鳴き出した。 彼はまだ熱い額を感じながら、城を越えてもう一つ夕立が来るのを待っていた。<梶井基次郎「城のある町にて」青空文庫>
  2. ・・・ 以上述べて来ただけのことから考えても映画の制作には、かなり緻密な解析的な頭脳と複雑な構成的才能とを要することは明白であろう。道楽のあげくに手を着けるような仕事では決してないのである。「分析」から「総合」に移る前に行なわるる過程は「・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  3. ・・・ 論理の連鎖のただ一つの輪をも取り失わないように、また混乱の中に部分と全体との関係を見失わないようにするためには、正確でかつ緻密な頭脳を要する。紛糾した可能性の岐路に立ったときに、取るべき道を誤らないためには前途を見透す内察と直観の力を・・・<寺田寅彦「科学者とあたま」青空文庫>
  4. ・・・多稜形をした外面が黒く緻密な岩はだを示して、それに深い亀裂の入った麺麭殻型の火山弾もある。赤熱した岩片が落下して表面は急激に冷えるが内部は急には冷えない、それが徐々に冷える間は、岩質中に含まれたガス体が外部の圧力の減った結果として次第に泡沫・・・<寺田寅彦「小浅間」青空文庫>
  5. ・・・二葉亭の『浮雲』や森先生の『雁』の如く深刻緻密に人物の感情性格を解剖する事は到底わたくしの力の能くする所でない。然るに、幸にも『深川の唄』といい『すみだ川』というが如き小作を公にするに及んで、忽江戸趣味の鼓吹者と目せられ、以後二十余年の今日・・・<永井荷風「正宗谷崎両氏の批評に答う」青空文庫>
  6. ・・・ 同時に多くのイズムは、零砕の類例が、比較的緻密な頭脳に濾過されて凝結した時に取る一種の形である。形といわんよりはむしろ輪廓である。中味のないものである。中味を棄てて輪廓だけを畳み込むのは、天保銭を脊負う代りに紙幣を懐にすると同じく小さ・・・<夏目漱石「イズムの功過」青空文庫>
  7. ・・・之に処するに智恵を要するは無論、その緻密微妙の辺に至りては、口以て言う可らず、筆以て記す可らず、全く婦人の方寸に存することにして、男子の想像にも叶わず真似も出来ぬことなり。是等の点より見れば男子は愚なり智恵浅きものなりと言わざるを得ず。され・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  8. ・・・いまはすっかり青ぞらに変ったその天頂から四方の青白い天末までいちめんはられたインドラのスペクトル製の網、その繊維は蜘蛛のより細く、その組織は菌糸より緻密に、透明清澄で黄金でまた青く幾億互に交錯し光って顫えて燃えました。「ごらん、そら、風・・・<宮沢賢治「インドラの網」青空文庫>
  9. ・・・日本の社会がこの先どうなって行くだろうかと訊かれて、簡単に答え得る人は、寧ろ今日の現実の裡で十分緻密な生活感情をもって複雑な日々の経験をとり入れている人であるとは云い難い実情である。現実は益々複雑な面を露出している。文学の歩みがその社会的相・・・<宮本百合子「明日の言葉」青空文庫>
  10. ・・・マーニャが、天性の勤勉さ、緻密で、敏活な頭脳を、こうしてごく若いころから自分の功名のためだけに使おうなどとは思いもしなかった気質こそ、後年キュリー夫人として科学者、人間としての彼女の真価をきめるものとなったと思います。 姉のブローニャが・・・<宮本百合子「キュリー夫人の命の焔」青空文庫>
  11. ・・・評伝は十二月初旬小説が終ってから再びつづけて、前半のように緻密にして生活的であり、生活と芸術とその歴史性の掘下げでユニークなものを完結します。小説もそのように生活のディテールと活力の横溢したものにしたいと思います。「乳房」を書いているから、・・・<宮本百合子「獄中への手紙」青空文庫>
  12. ・・・そして、緻密な理論的考察と、自由な心の持つ新鮮な覇気とは、アメリカを毒す、余りに群衆的な輿論から毅然として、彼女の道をよき改革へ進めますでしょう。 斯ういう婦人の裡には、真個に跪拝すべきよき力が漲って居ると思います。時には、うんざりさせ・・・<宮本百合子「C先生への手紙」青空文庫>
  13. ・・・そしてまた、この長編が極めて緻密に史実を調べられ、思想的背景をさぐられ、人物の配置も客観的にされながら、窮極には作者藤村の内面的なムードで統一されていて、その意味からはやはり主観的な写実を脱していないということも面白い。 人道的な感情で・・・<宮本百合子「昭和の十四年間」青空文庫>
  14. ・・・ 横光利一という作家は、頭脳のある程度の緻密さと、作家として大切な生理的気力を持ち、そうざらにはない男というべきであろう。その横光にして、久内によって代表されるインテリゲンチアというものがなぜ常に自分たちの「思うことと実行することが・・・<宮本百合子「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」青空文庫>
  15. ・・・の驚くべき冷静、緻密な描写を運びつつ、小説を書いていると塵っぽくてやり切れない、だから詩をつくると云い、日に数首ずつの漢詩をつくっている。私に漢詩を味う力はないが、卒読したところ、それらの詩は、どれも所謂仙境に遊ぶ的境地を詠ったものが多い。・・・<宮本百合子「文学における今日の日本的なるもの」青空文庫>
  16. ・・・ 社会問題にいくら高尚な理論があっても、いくら緻密な研究があっても、己は己の意志で遣る。職工にどれだけのものを与えるかは、己の意志でその度合が極まるのである。東京化学製造所長になって、二十五年の間に、初め基礎の危かった工場を、兎に角今の・・・<森鴎外「里芋の芽と不動の目」青空文庫>