ちゃく‐しゅ【着手】例文一覧 30件

  1. ・・・いよいよ着手してから描き終るまでは誰にも会わないで、この画のために亡師椿年から譲られた応挙伝来の秘蔵の大明墨を使用し尽してしまったそうだ。椿岳が一生の大作として如何にこの画に精神を注いだかは想像するに余りがある。幸いこの画は地震の禍いをも受・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  2. ・・・之を重視するのが誤まっておるのだが、二十五六年前には全然社会から無視せられていた文芸の存在を政府が認めて文芸審査に着手したのは左も右くも時代の大進歩である。 文学も亦一つの職業である。世間には往々職業というと賤視して顰蹙するものもあるが・・・<内田魯庵「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」青空文庫>
  3. ・・・の長者に取って代って陪臣内閣を樹立したのは、無爵の原敬が野人内閣を組織したよりもヨリ以上世間の眼をらしたもんで、この新鋭の元気で一足飛びに欧米の新文明を極東日本の蓬莱仙洲に出現しようと計画したその第一着手に、先ず欧化劇の本舞台として建設した・・・<内田魯庵「四十年前」青空文庫>
  4. ・・・いや、それどころか、坂田は花田八段の第一手七六歩を受けた第一着手に、再び端の歩を一四歩と突いたのである。さきには右の端を九四歩と突き、こんどは左の端を一四歩と突く。九四歩は最初に蛸を食った度胸である。一四歩はその蛸の毒を知りつつ敢て再び食っ・・・<織田作之助「勝負師」青空文庫>
  5. ・・・これは長いものになるが、今年中か来年のはじめには着手するつもりだ。僕の小説に思想がないとか、真実がないとか言っている連中も、これを読めば、僕が少くとも彼等よりもギリギリの人生を考えて来た男であることは判るはずだ。 人間的にいわゆる大・・・<織田作之助「文学的饒舌」青空文庫>
  6. ・・・ この日、兄の貫一その他の人々は私塾設立の着手に取りかかり、片山という家の道場を借りて教場にあてる事にした。この道場というは四間と五間の板間で、その以前豊吉も小学校から帰り路、この家の少年を餓鬼大将として荒れ回ったところである。さらに維・・・<国木田独歩「河霧」青空文庫>
  7. ・・・サアこれからだ、所謂る額に汗するのはこれからだというんで直に着手したねエ。尤も僕と最初から理想を一にしている友人、今は矢張僕と同じ会社へ出ているがね、それと二人で開墾事業に取掛ったのだ、そら、竹内君知っておるだろう梶原信太郎のことサ……」・・・<国木田独歩「牛肉と馬鈴薯」青空文庫>
  8. ・・・そしてその具体的研究の第一着手は倫理的な問いから発足しなければならぬ。問いはすべての初めである。しかもまた問いはその解決でさえもあるのだ。ハイデッガーが「問いは何ものかへの問いとして『問われているもの』を持っている」といってるように、問いの・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  9. ・・・その計画し、もしくは着手した事業を完成せず、中道にして廃するのを遺憾とするのもある。子孫の計がいまだならず、美田をいまだ買いえないで、その行く末を憂慮する愛着に出るのもあろう。あるいは単に臨終の苦痛を想像して、戦慄するのもあるかも知れぬ。・・・<幸徳秋水「死刑の前」青空文庫>
  10. ・・・るのである、来世の迷信から其妻子・眷属に別れて独り死出の山、三途の川を漂泊い行く心細さを恐るるのもある、現世の歓楽・功名・権勢、扨は財産を打棄てねばならぬ残り惜しさの妄執に由るのもある、其計画し若くば着手せし事業を完成せず、中道にして廃する・・・<幸徳秋水「死生」青空文庫>
  11. ・・・私は、あのじぶんには、ずいぶん重大な研究に着手していたんだぜ。おまえには、そんなこと、ちっともわかってやしない。ただ、もう、私のチョッキのボタンがどうのこうの煙草の吸殻がどうのこうの、そんなこと、朝から晩まで、がみがみ言って、おかげで私は、・・・<太宰治「愛と美について」青空文庫>
  12. ・・・私は日本の一流の映画家、音楽家、俳人が力を合わせて、西洋人に先鞭をつけられないうちに、一日も早くオリジナルで芸術的でしかも大衆的におもしろい俳諧連句的映画の創作に着手する事を切望するものである。・・・<寺田寅彦「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」青空文庫>
  13. ・・・委細かまわず着手してみると存外指摘された難関は楽に始末がついて、指摘されなかった意外な難点に出会うこともある。 頭のよい人は、あまりに多く頭の力を過信する恐れがある。その結果として、自然がわれわれに表示する現象が自分の頭で考えたことと一・・・<寺田寅彦「科学者とあたま」青空文庫>
  14. ・・・今度の火災については消防方面の当局者はもちろん、建築家、百貨店経営者等直接利害を感ずる人々の側ではすぐに徹底的の調査研究に着手して取りあえず災害予防方法を講究しておられるようであるが、何よりもいちばんだいじと思われる市民の火災訓練のほうがい・・・<寺田寅彦「火事教育」青空文庫>
  15. ・・・の効能に関する本格的な研究に着手し、ある黒焼きを家兎に与えると血液の塩基度が増し諸機能が活発になるが、西洋流のいわゆる薬用炭にはそうした効果がないという結果を得たということが新聞で報ぜられた。自分の夢の実現される日が近づいたような喜びを感じ・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  16. ・・・これに対しては出来るだけの応急救済法を講じなければならないことは勿論であるが、同時にまた将来いつかは必ず何度となく再起するにきまっているこの凶変に備えるような根本的研究とそれに対する施設を、この機会に着手することが更に一層必要であろうと思わ・・・<寺田寅彦「新春偶語」青空文庫>
  17. ・・・事によると自分が家の始末に帰る前にもう取り片付けに着手していた母の手で何かといっしょに倉の中へしまい込まれて今でもどこかに自分の所有物として現存しているのか、それとも雑品の中に交じってくず屋の手に渡ってしまったのかもしれない。郷里の家は人に・・・<寺田寅彦「青衣童女像」青空文庫>
  18. ・・・ あるいはもう疾にこういう研究に着手しておられる方があるかも知れないが、自分は未だそういう方面に関する面白い発見等の話を聞いたことがない。それでこの甚だ杜撰な比較が万一この方面の専門家の真面目な研究のヒントにでもならばと思って、思い付い・・・<寺田寅彦「短歌の詩形」青空文庫>
  19. ・・・ わたくしはこれに因って、初めて放水路開鑿の大工事が、既に荒川の上流において着手せられていることを知ったのである。そしてその年を最後にして、再び彼岸になっても六阿弥陀に詣でることを止めた。わたくしは江戸時代から幾年となく、多くの人々の歩・・・<永井荷風「放水路」青空文庫>
  20. ・・・しかし疎懶なるわたくしは今日の所いまだその蒐集に着手したわけではない。折々の散歩から家に帰った後唯机辺に散乱している二、三の雑著を見て足れりとしている。これら座右の乱帙中に風俗画報社の明治三十一年に刊行した『新撰東京名所図会』なるものがある・・・<永井荷風「向嶋」青空文庫>
  21. ・・・一事に功を奏すれば、したがってまた一事に着手し、次第に進みてやむことなくば、政府の政は日に簡易に赴き、人民の政は月に繁盛をいたし、はじめて民権の確乎たるものをも定立するを得べきなり。余輩、つねに民権を主張し、人民の国政にかかわるべき議論を悦・・・<福沢諭吉「学者安心論」青空文庫>
  22. ・・・而してその変革に着手せんとするも、今日の勢において、よく導きて古に復するを得べきや。今の法律を改めて旧套に返るべきや。平民の乗馬を禁ずべきや。次三男の自主独立をとどむべきや。 これを要するに、開進の今日に到着して、かえりみて封建世禄の古・・・<福沢諭吉「徳育如何」青空文庫>
  23. ・・・故に今後は、我輩の筆力のあらん限り、読者と共にこの消防法に従事して、先ず婦人の居を安からしめ、漸くその改良に着手せんと欲するものなり。<福沢諭吉「日本男子論」青空文庫>
  24. ・・・満州侵略に着手した田中義一の内閣に外交官であった吉田茂が、この減刑運動を、国内の民主勢力にたいする一つの均衡物として利用しようとするなら、それは一つの国際的な民主主義にたいする罪悪であるとおもう。          三 こう・・・<宮本百合子「新しい潮」青空文庫>
  25. ・・・ 一九二八―二九年、ソヴェト生産拡張五ヵ年計画が着手されてから、社会主義社会建設に向って躍進しはじめたのは、直接生産に従事している労働者ばかりではない。画家も、作家も、キネマの製作者も総動員を受けた。彼等芸術労働者は、新しいソヴェト生産・・・<宮本百合子「新しきシベリアを横切る」青空文庫>
  26. ・・・方では、前年ヴェノスアイレスの国際ペンクラブ大会に日本代表として出席した島崎藤村が、大会の反ファッシズムに高まった雰囲気から、彼独特の用心ぶかさで日本の立場を守ってかえって来て、日本ペンクラブの創立に着手しはじめている時であった。また他の一・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」青空文庫>
  27. ・・・インガは、この三月内に托児所を設けることを決定し、それは着手されている。「私はあなたの自尊心のために、そこいら中の壁をこわしてはいられない。換気設置は次の四半期にします。もう決定していることですよ。」「俺をやっつけることをやめたくな・・・<宮本百合子「「インガ」」青空文庫>
  28. ・・・ 宮本顕治があのように不自由して獄外に生活していたころ着手して、未完成のままにおかれた「乳房」を宮本が生きて、これから先何年もそこですごさなければならない見当さえつかない未決にまわった記念のために、ちゃんとした小説に書き上げたいと思う熱・・・<宮本百合子「解説(『風知草』)」青空文庫>
  29. ・・・ 同じ三・一五の被告であった徳田球一、志賀義雄などの人々が、永い獄中生活にもかかわらず、一九四五年十月に解放されてからすぐ共産党の合法的活動に着手したことを思いあわせると、私たちは同じ共産党員といわれる人々の中に、非常な大きい差別がある・・・<宮本百合子「共産党とモラル」青空文庫>
  30. ・・・ ブルジョア文化史のある一定段階の現象として過去三、四年来の日本の作家の間に著しく現れた文章道への関心・熱中にともなわれ、心理学者がその分析・整理・理論づけに着手されるようになった一例として、私は、この著者の努力に冷淡であり得ないのであ・・・<宮本百合子「芸術が必要とする科学」青空文庫>