ちゃ‐ばん【茶番】例文一覧 15件

  1. ・・・ 私はちょっかいを出すように、面を払い、耳を払い、頭を払い、袖を払った。茶番の最明寺どののような形を、更めて静に歩行いた。――真一文字の日あたりで、暖かさ過ぎるので、脱いだ外套は、その女が持ってくれた。――歩行きながら、「……私は虫・・・<泉鏡花「小春の狐」青空文庫>
  2. ・・・というと、洒落気と茶番気タップリの椿岳は忽ち乗気となって、好きな事仕尽して後のお堂守も面白かろうと、それから以来椿岳は淡島堂のお堂守となった。 淡島堂というは一体何を祀ったもの乎祭神は不明である。彦少名命を祀るともいうし、神功皇后と応神・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  3. ・・・生も死も、宇宙万般の現象も尋常茶番となって了う。哲学で候うの科学で御座るのと言って、自分は天地の外に立ているかの態度を以てこの宇宙を取扱う。Full soon thy soul shall have her earthly frei・・・<国木田独歩「牛肉と馬鈴薯」青空文庫>
  4. ・・・実に悲惨な、愚かしい茶番狂言を見ているような気がして、ああ、もう、この人も落目だ。一日生き延びれば、生き延びただけ、あさはかな醜態をさらすだけだ。花は、しぼまぬうちこそ、花である。美しい間に、剪らなければならぬ。あの人を、一ばん愛しているの・・・<太宰治「駈込み訴え」青空文庫>
  5. ・・・いかなる名優の活劇でも、これに比べてはおそらく茶番のようなものである。それからの後の場面で荒涼たる大雪原を渡ってくるトナカイの大群の実写は、あれは実に驚くべき傑作である。理屈なし説明なしに端的にすべての人の心を奪う種類のフィルムであり、活動・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  6. ・・・たとえばド・ヴァレーズ伯爵がけしからぬ犯行の現場から下着のままで街頭に飛び出し、おりから通りかかったマラソン競走の中に紛れ込み、店先の値段札を胸におっつけて選手の番号に擬するような、卑猥であくどい茶番はヤンキー王国の顧客にはぜひとも必要なも・・・<寺田寅彦「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」青空文庫>
  7. ・・・あらゆる新聞講談から茶番狂言からアリストファーネスのコメディーに至るまでがそうである。笑わせ怒らせ泣かせうるのはただ実験が自然の方則を啓示する場合にのみ起こりうる現象である。もう少し複雑な方則が啓示されるときにわれわれはチェホフやチャプリン・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  8. ・・・一景平均五分程度という急速なテンポで休止なしに次から次へと演ぜられる舞台や茶番や力技は、それ自身にはほとんど何の意味もないようなものでありながらともかくも観客をおしまいまであまり退屈させないで引きずって行くから不思議なものである。 昔見・・・<寺田寅彦「マーカス・ショーとレビュー式教育」青空文庫>
  9. ・・・ 戦争後に流行した茶番じみた滑稽物は漸くすたって、闇の女の葛藤、脱走した犯罪者の末路、女を中心とする無頼漢の闘争というが如きメロドラマが流行し、いずこの舞台にもピストルの発射されないことはないようになった。 戦争前の茶番がかった芝居・・・<永井荷風「裸体談義」青空文庫>
  10. ・・・ば、第一幕で、楽屋番の豊吉と蛇使いの女の一人とが長火鉢を挾んで説明、批評したことの内容を、お絹と林之助が第二幕二場でやって見せ、三幕目では、ちゃんと、菓子売の勘蔵が、前もって予告した通りのことが、やや茶番じみた台所の物音を先立てて起る。幕と・・・<宮本百合子「気むずかしやの見物」青空文庫>
  11. ・・・ ニッポン・タイムスは、これらの状況を「茶番になった第二回公判」として、「法廷は小型の議会になった」と書いている。 午後、川口検事によって起訴状が読上げられた。その起訴状の内容がどういうものであるかということは、公判速記がありのまま・・・<宮本百合子「それに偽りがないならば」青空文庫>
  12. ・・・ モスクワ全市の労働者クラブで、夜あけ頃まで反宗教の茶番や音楽やダンスがあった。 五ヵ年計画がソヴェト同盟に実行されはじめて、教会と坊主は、プロレタリアートと農民の社会主義社会建設の実践からすっかりボイコットされてしまった。・・・<宮本百合子「モスクワの姿」青空文庫>
  13. ・・・高いガラス天井の下やしゅろの鉢植のまわりを雀が二羽飛び廻っていた。茶番の年とった女がいるだけだ。日本女は英領オーストラリア産小鳥の剥製を眺めながら宏大な空気中で三ペンスのパン菓子を食った。そうしたら雀がその粉をついばもうとしてテーブルのまわ・・・<宮本百合子「ロンドン一九二九年」青空文庫>
  14. ・・・と、茶番めいた口上を言った。親戚は笑い興じて、只一人打ち萎れているりよを促し立てて帰った。 寺に一夜寝て、二十九日の朝三人は旅に立った。文吉は荷物を負って一歩跡を附いて行く。亀蔵が奉公前にいたと云うのをたよりにして、最初上野国高崎をさし・・・<森鴎外「護持院原の敵討」青空文庫>
  15. ・・・そうでない限りいわゆる街路樹なるものは、松並み木、杉並み木などと呼ばれる古来の街路樹に対して、比較にさえもならないお茶番に過ぎぬ。そうして松並み木や杉並み木の街路樹としての壮大さを讃美することは、封建時代を呼び返そうとすることなどでは決して・・・<和辻哲郎「城」青空文庫>