ちゅう‐い【注意】例文一覧 46件

  1. ・・・ しかし、内蔵助の笑わなかったのは、格別二人の注意を惹かなかったらしい。いや、人の好い藤左衛門の如きは、彼自身にとってこの話が興味あるように、内蔵助にとっても興味があるものと確信して疑わなかったのであろう。それでなければ、彼は、更に自身・・・<芥川竜之介「或日の大石内蔵助」青空文庫>
  2. ・・・スコッチの旅行服の襟が首から離れるほど胸を落として、一心不乱に考えごとをしながらも、気ぜわしなくこんな注意をするような父だった。 停車場には農場の監督と、五、六人の年嵩な小作人とが出迎えていた。彼らはいずれも、古手拭と煙草道具と背負い繩・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  3. ・・・と題する魚住氏の論文は、今日における我々日本の青年の思索的生活の半面――閑却されている半面を比較的明瞭に指摘した点において、注意に値するものであった。けだし我々がいちがいに自然主義という名の下に呼んできたところの思潮には、最初からしていくた・・・<石川啄木「時代閉塞の現状」青空文庫>
  4.        一 婦人は、座の傍に人気のまるでない時、ひとりでは按摩を取らないが可いと、昔気質の誰でもそう云う。上はそうまでもない。あの下の事を言うのである。閨では別段に注意を要するだろう。以前は影絵、うつし絵などで・・・<泉鏡花「怨霊借用」青空文庫>
  5. ・・・忠実な老爺は予の身ぶりに注意しているとみえ、予が口を動かすと、すぐに推測をたくましくして案内をいうのである。おかしくもあるがすこぶる可憐に思われた。予がうしろをさすと、「ヘイあの奥が河口でございます。つまらないところで、ヘイ。晴れてれば・・・<伊藤左千夫「河口湖」青空文庫>
  6. ・・・と、奥へ注意してから、「女房は弱いし、餓鬼は毎日泣きおる、これも困るさかいなア。」「それはお互いのことだア。ね」と、僕が答えるとたん、から紙が開いて、細君が熱そうなお燗を持って出て来たが、大津生れの愛嬌者だけに、「えろうお気の毒さま・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  7. ・・・私は昔から人の反駁なぞは余り気に掛けない方で、大抵は雲煙過眼してしまうし、鴎外の気質はおおよそ呑込んでるから、威丈高に何をいおうと格別気にも留めなかったが、誰だか鴎外に注意したものがあったと見えて、その後偶然フラリと鴎外を尋ねると、私の顔を・・・<内田魯庵「鴎外博士の追憶」青空文庫>
  8. ・・・との慰安に富める三十二節、三十三節に注意せよ。人は悔改めずば皆な尽く亡ぶべしとの警告。十三章一節より五節まで。救わるる者は少なき乎との質問に答えて。同十三章二十二節より三十節まで。天国への招待。十四章十五節―二十四節。天国実・・・<内村鑑三「聖書の読方」青空文庫>
  9. ・・・年子は、話しかけられて、はじめて注意しておばあさんを見ました。なんだかあわれな人のようにも見え、また気味悪いようにも感じられたのです。「東京から乗ったのです。そして、つぎのつぎの、停車場で下りますの。」「着くと暗くなりますの。」・・・<小川未明「青い星の国へ」青空文庫>
  10. ・・・     三「実は、この間うちからどうもそんなような徴候が見えたから、あらかじめ御注意はしておいたのだが、今日のようじゃもう疑いなく尿毒性で……どうも尿毒性となると、普通の腎臓病と違ってきわめて危険な重症だから……どうです、・・・<小栗風葉「深川女房」青空文庫>
  11. ・・・との事だ。こんな事のあったとは、彼は夢にも知らなかった、相変らず旅廻りをしながら、不図或宿屋へ着くと、婢女が、二枚の座蒲団を出したり、お膳を二人前据えたりなどするので「己一人だよ」と注意をすると、婢女は妙な顔をして、「お連様は」というのであ・・・<小山内薫「因果」青空文庫>
  12. ・・・私は療養書の注意を守って、食後の安静に、畳の上に寝そべっていた。 虫の声がきこえて来た。背中までしみ透るように澄んだ声だった。 すっと、衣ずれの音がして、襖がひらいた。熱っぽい体臭を感じて、私はびっくりして飛び上った。隣室の女がはい・・・<織田作之助「秋深き」青空文庫>
  13. ・・・ 彼は手を附けたらば、手の汗でその快よい光りが曇り、すぐにも錆が附きやしないかと恐るるかのように、そうっと注意深く鑵を引出して、見惚れたように眺め廻した。……と彼は、ハッとした態で、あぶなく鑵を取落しそうにした。そして忽ち今までの嬉しげ・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  14. ・・・僕はよくそこから崖路を通る人を注意しているんですが、元来めったに人の通らない路で、通る人があったって、全く僕みたいにそこでながい間町を見ているというような人は決してありません。実際僕みたいな男はよくよくの閑人なんだ」「ちょっと君。そのレ・・・<梶井基次郎「ある崖上の感情」青空文庫>
  15. ・・・育ちしただの女が初めて子を持ちしまでゆえ、無論小児を育てる上に不行き届きのこと多きに引き換え、母上は例の何事も後へは退かぬご気性なるが上に孫かあいさのあまり平生はさまで信仰したまわぬ今の医師及び産婆の注意の一から十まで真っ正直に受けたもうて・・・<国木田独歩「初孫」青空文庫>
  16. ・・・めに、一方では人格主義の、いわゆる人格の意味を、個人主義的な桎梏から解放して、これは社会的人間に鋳直すことにより、人格主義と社会幸福主義とを、本質的に止揚して調和せしめんとする傾向を帯び来たったことに注意すべきである。 すなわち人格とは・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  17. ・・・形而上的なものを追おうとしていた眼と、強そうな両手は、注意力を老人の背後の一点に集中した。 老人はびく/\動いた。 氷のような悪寒が、電流のように速かに、兵卒達の全身を走った。彼等は、ヒヤッとした。栗島は、いつまでも太股がブル/\慄・・・<黒島伝治「穴」青空文庫>
  18. ・・・材料も吟味し、木理も考え、小刀も利味を善くし、力加減も気をつけ、何から何まで十二分に注意し、そして技の限りを尽して作をしても、木の理というものは一々に異う、どんなところで思いのほかにホロリと欠けぬものでは無い。君の熔金の廻りがどんなところで・・・<幸田露伴「鵞鳥」青空文庫>
  19. ・・・なんとなれば、これがためには、すべての疾病をふせぎ、すべての災禍をさけるべき完全な注意と方法と設備とを要するからである。今後、幾百年かの星霜をへて、文明はますます進歩し、物質的には公衆衛生の知識がいよいよ発達し、一切の公共の設備が安固なのは・・・<幸徳秋水「死刑の前」青空文庫>
  20. ・・・ 龍介は街を歩く時いつも注意をした。恵子と似た前からくる女を恵子と思い、友だちといっしょに歩いていたときでもよくきゅうに引き返して、小路へ入った。恵子は大柄な、女にはめずらしく前開きの歩き方をするので、そんな特徴の女に会うと、そのたびに・・・<小林多喜二「雪の夜」青空文庫>
  21. ・・・なぞと末子に話したり、帯で形をつけることは東西の風俗ともに変わりがないと言い聞かせたりして、初めて着せて見る娘の洋服には母親のような注意を払った。十番で用の足りないものは、銀座まで買いにお徳を娘につけてやった。それほどにして造りあげた帽子も・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  22. ・・・犬は肉屋の注意を引くように、ときどきくんくん鼻をならしてはこっちを見ます。そのうちに肉屋はほうちょうをとぎおえて、刃先をためすために、そばの大きな肉のはしの、ざらざらになったところを、少しばかり切り落しました。そして、「ほら。」と言って・・・<鈴木三重吉「やどなし犬」青空文庫>
  23. ・・・ 彼は、スバーの涙に特別な注意を払い、彼女が優しい心を持っているに違いないと思いました。今日、両親と別れるのが辛くて歎いている心は、やがて、自分の為になる財産の一つとなるだろうと考えたので、彼は、それをも、スバーに対する信用の一つに加え・・・<著:タゴールラビンドラナート 訳:宮本百合子「唖娘スバー」青空文庫>
  24. ・・・耳を澄まして注意をしていると、夏になると同時に、虫が鳴いているのだし、庭に気をくばって見ていると、桔梗の花も、夏になるとすぐ咲いているのを発見するし、蜻蛉だって、もともと夏の虫なんだし、柿も夏のうちにちゃんと実を結んでいるのだ。 秋は、・・・<太宰治「ア、秋」青空文庫>
  25. ・・・ 中にもどこへ顔を出しても、人の注意を惹くのは、竜騎兵中尉の方である。画にあるような美男子である。人を眩するような、生々とした気力を持っている。馬鹿ではない。ただ話し振りなどがひどくじだらくである。何をするにも、努力とか勉強とか云うこと・・・<著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外「世界漫遊」青空文庫>
  26. ・・・おれは右党の席を一しょう懸命注意して見た。 そしてこう決心した。「どうもこいつの方が信用が置けそうだ。この卓や腰掛が似ているように、ここに来て据わる先生達が似ているなら、おれは襟に再会することは断じて無かろう。」 こう思って、あたり・・・<著:ディモフオシップ 訳:森鴎外「襟」青空文庫>
  27. ・・・寺塔を指してその高さ、その影の長さ、太陽の高度に注意を促す。こうすれば、言葉と白墨の線とによって、大きさや角度や三角函数などの概念を注ぎ込むよりも遥かに早く確実に、おまけに面白くこれらの数学的関係を呑み込ませる事が出来る。一体こういう学問の・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  28. ・・・雪江は私に注意した。釣をする人たちによって置かれた綸であった。松原が浜の突角に蒼く煙ってみえた。昔しの歌にあるような長閑さと麗かさがあった。だがそれはそうたいした美しさでもなかった。その上防波堤へ上がって、砂ぶかい汽車や電車の軌道ぞいの往来・・・<徳田秋声「蒼白い月」青空文庫>
  29. ・・・木戸松菊がいたらば――明治の初年木戸は陛下の御前、三条、岩倉以下卿相列座の中で、面を正して陛下に向い、今後の日本は従来の日本と同じからず、すでに外国には君王を廃して共和政治を布きたる国も候、よくよく御注意遊ばさるべくと凜然として言上し、陛下・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  30. ・・・もちろん私はお勝手口の方へその小さい菜園の茄子や胡瓜にこんにゃく桶をぶっつけぬように注意しながらいったのであるが、気がつくと、お勝手口の入口へ、大きな犬がねているのであった。黒白斑らの、仔馬ほどもあるのが、地べたへなげだした二本の前脚に大き・・・<徳永直「こんにゃく売り」青空文庫>