ちゅう‐ぎ【忠義】例文一覧 30件

  1. ・・・御一同の忠義に感じると、町人百姓までそう云う真似がして見たくなるのでございましょう。これで、どのくらいじだらくな上下の風俗が、改まるかわかりません。やれ浄瑠璃の、やれ歌舞伎のと、見たくもないものばかり流行っている時でございますから、丁度よろ・・・<芥川竜之介「或日の大石内蔵助」青空文庫>
  2. ・・・そうなっては、大変である――三人の忠義の侍は、皆云い合せたように、それを未然に惧れた。 そこで、彼等は、早速評議を開いて、善後策を講じる事になった。善後策と云っても、勿論一つしかない。――それは、煙管の地金を全然変更して、坊主共の欲しが・・・<芥川竜之介「煙管」青空文庫>
  3. ・・・そうして、ヨセフは、その「多くの人々の手前、祭司たちへの忠義ぶりが見せとうござったによって、」クリストの足を止めたのを見ると、片手に子供を抱きながら、片手に「人の子」の肩を捕えて、ことさらに荒々しくこずきまわした。――「やがては、ゆるりと磔・・・<芥川竜之介「さまよえる猶太人」青空文庫>
  4. ・・・そんな忠義なポチがいなくなったのを、ぼくたちはみんなわすれてしまっていたのだ。ポチのことを思い出したら、ぼくは急にさびしくなった。ポチは、妹と弟とをのければ、ぼくのいちばんすきな友だちなんだ。居留地に住んでいるおとうさんの友だちの西洋人がく・・・<有島武郎「火事とポチ」青空文庫>
  5. ・・・私はいい加減にあしらってお前たちを寝台に近づけないようにしなければならなかった。忠義をしようとしながら、周囲の人から極端な誤解を受けて、それを弁解してならない事情に置かれた人の味いそうな心持を幾度も味った。それでも私はもう怒る勇気はなかった・・・<有島武郎「小さき者へ」青空文庫>
  6. ・・・結婚をして人一倍の忠義ができる。神様のおめぐみ、ありがたいかたじけない。この玉をみつけた上は明日にでも御婚礼をしましょう」 と喜びがこみ上げて二人とも身をふるわせて神にお礼を申します。 これを見た燕はどんなけっこうなものをもらったよ・・・<有島武郎「燕と王子」青空文庫>
  7. ・・・ ――旧藩の頃にな、あの組屋敷に、忠義がった侍が居てな、御主人の難病は、巳巳巳巳、巳の年月の揃った若い女の生肝で治ると言って、――よくある事さ。いずれ、主人の方から、内証で入費は出たろうが、金子にあかして、その頃の事だから、人買の手から・・・<泉鏡花「絵本の春」青空文庫>
  8. ・・・いえね、何も忠義だてをするんじゃないが、御新造様があんまりだからツイ私だってむっとしたわね。行がかりだもの、お前さん、この様子じゃあ皆こりゃアノ児のせいだ。小児の癖にいきすぎな、いつのまにませたろう、取っつかまえてあやまらせてやろう。私なら・・・<泉鏡花「清心庵」青空文庫>
  9. ・・・――わッと群集の騒いだ時、……堪らぬ、と飛上って、紫玉を圧えて、生命を取留めたのもこの下男で、同時に狩衣を剥ぎ、緋の袴の紐を引解いたのも――鎌倉殿のためには敏捷な、忠義な奴で――この下男である。 雨はもとより、風どころか、余の人出に、大・・・<泉鏡花「伯爵の釵」青空文庫>
  10. ・・・天子さまは、日ごろから忠義の家来でありましたから、そんなら汝にその不死の薬を取りにゆくことを命ずるから、汝は東の方の海を渡って、絶海の孤島にゆき、その国の北方にある金峰仙に登って、不死の薬を取り、つつがなく帰ってくるようにと、くれぐれもいわ・・・<小川未明「不死の薬」青空文庫>
  11. ・・・えて父の罪を償いわが祖先の名を高め候わんことを返すがえすも頼み上げ候 せめて士官ならばとの今日のお手紙の文句は未練に候ぞ大将とて兵卒とて大君の為国の為に捧げ候命に二はこれなく候かかる心得にては真の忠義思いもよらず候兄はそなたが上をうらや・・・<国木田独歩「遺言」青空文庫>
  12. ・・・十八の年まで淋しい山里にいて学問という学問は何にもしないでただ城下の中学校に寄宿している従兄弟から送って寄こす少年雑誌見たようなものを読み、その他は叔母の家に昔から在った源平盛衰記、太平記、漢楚軍談、忠義水滸伝のようなものばかり読んだのでご・・・<国木田独歩「女難」青空文庫>
  13. ・・・という美徳を人に擬えて現わしたようなものであったり、あるいは「忠義」という事を人にして現わしたようなものであったり、あるいは強くて情深くて侠気があって、美男で智恵があって、学問があって、先見の明があって、そして神明の加護があって、危険の時に・・・<幸田露伴「馬琴の小説とその当時の実社会」青空文庫>
  14. ・・・目鼻立のパラリとした人並以上の器量、純粋の心を未だ世に濁されぬ忠義一図の立派な若い女であった。然し此女の言葉は主人の昨日今日を明白にして了った。そして又真正面から見た「にッたり」の木彫に出会って、これが自分で捌き得る人物だろうかと、・・・<幸田露伴「雪たたき」青空文庫>
  15. ・・・へお頼みでござりますと月始めに魚一尾がそれとなく報酬の花鳥使まいらせ候の韻を蹈んできっときっとの呼出状今方貸小袖を温習かけた奥の小座敷へ俊雄を引き入れまだ笑ったばかりの耳元へ旦那のお来臨と二十銭銀貨に忠義を売るお何どんの注進ちぇッと舌打ちし・・・<斎藤緑雨「かくれんぼ」青空文庫>
  16. ・・・だぶだぶたまって、ああ、夕立よ、ざっと降れ、銀座のまんなかであろうと、二重橋ちかきお広場であろうと、ごめん蒙って素裸になり、石鹸ぬたくって夕立ちにこの身を洗わせたくてたまらぬ思いにこがれつつ、会社への忠義のため、炎天の下の一匹の蟻、わが足は・・・<太宰治「喝采」青空文庫>
  17. ・・・ブルウズのようなものを着てナイトキャップをかぶり、妙に若がえって出て来たが、すぐ犬の首をおさえて、この犬は、としのくれにどこからか迷いこんで来たものであるが、二三日めしを食わせてやっているうちに、もう忠義顔をしてよそのひとに吠えたててみせて・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」青空文庫>
  18. ・・・でも、あとで、あなたにお伺いして、それは、あなたの全然ご存じなかった事で、すべては但馬さんの忠義な一存からだったという事が、わかりました。但馬さんには、ずいぶんお世話になりました。いまの、あなたの御出世も、但馬さんのお蔭よ。本当に、あなたに・・・<太宰治「きりぎりす」青空文庫>
  19. ・・・そんなときにこの行燈が忠義な乳母のように自分の枕元を護っていてくれたものである。 母が頭から銀の簪をぬいて燈心を掻き立てている姿の幻のようなものを想い出すと同時にあの燈油の濃厚な匂いを聯想するのが常である。もし自分が今でもこの匂いの実感・・・<寺田寅彦「追憶の冬夜」青空文庫>
  20. ・・・ 忠義なハルメソンとその子が王の柩を船底に隠し、石ころをつめたにせの柩を上に飾って、フィヨルドの波をこぎ下る光景がありあり目に浮かんだ、そうしてこの音楽の律動が櫂の拍子を取って行くように思われた。 その後にも長女は時々同じ曲の練習を・・・<寺田寅彦「春寒」青空文庫>
  21. ・・・もし陛下の御身近く忠義こうこつの臣があって、陛下の赤子に差異はない、なにとぞ二十四名の者ども、罪の浅きも深きも一同に御宥し下されて、反省改悟の機会を御与え下されかしと、身を以て懇願する者があったならば、陛下も御頷きになって、我らは十二名の革・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  22. ・・・下女は日が暮れたと云ったら、どんな用事があっても、家の外へは一歩も踏出さなくなった。忠義一図の御飯焚お悦は、お家に不吉のある兆と信じて夜明に井戸の水を浴びて、不動様を念じた為めに風邪を引いた。田崎が事の次第を聞付けて父に密告したので、お悦は・・・<永井荷風「狐」青空文庫>
  23. ・・・徳川政府も忠義の道をもって天朝に奉じて、まことに忠義なりしかども、末年にいたり公議輿論をもってその政府を倒せば、これを倒したる者もまた、まことに忠義なり。ゆえに支那にて士人の去就を自在にすれば聖人に称せられ、日本にて同様の事を行えば聖人の教・・・<福沢諭吉「徳育如何」青空文庫>
  24. ・・・例えば忠義正直というが如き、政治上の美徳にして、甚だ大切なるものなれども、人に教うるに先ずこの公徳を以てして、居家の私徳を等閑にするにおいては、あたかも根本の浅き公徳にして、我輩は時にその動揺なきを保証する能わざるものなり。 そもそも一・・・<福沢諭吉「日本男子論」青空文庫>
  25. ・・・貧民いかに正直なりともおのれが飢える飢えぬの境に至って墓場の鴉に忠義だてするにも及ぶまい。花はとにかく、供え物を取るのは決して無理ではない。西洋の公園でも花だから誰も取らずに置くがもしパンを落して置いたらどうであろう。きっとまたたく間になく・・・<正岡子規「墓」青空文庫>
  26. ・・・これは、封建的な主従関係での忠義の感情にいきなりむすびついて「奉公」の感覚を養成する教育でした。この場合の「奉公」は、公の一存在としての人民生活、市民生活への奉仕という近代民主主義の要素とはちがったものです。「公僕」という言葉が、民主日本に・・・<宮本百合子「新しい抵抗について」青空文庫>
  27. ・・・日本文学史全巻を担当される近藤忠義が、篤学、正確な視点をもたれる学者であることは、読者にとっての幸運であるし、同時に今日の文学の諸相のみを扱う私にとって一つの幸な安心である。〔一九三七年十月〕・・・<宮本百合子「意味深き今日の日本文学の相貌を」青空文庫>
  28. ・・・和女はよも忘れはせまい、和女には実の親、おれには実の夫のあの民部の刀禰がこたび二の君の軍に加わッて、あッぱれ世を元弘の昔に復す忠義の中に入ろうとて、世良田の刀禰もろとも門出した時、おれは、こや忍藻、おれは何して何言うたぞ。おれが手ずから本磨・・・<山田美妙「武蔵野」青空文庫>
  29. ・・・いざという時には、この四、五人だけが役に立ち、平生忠義顔をしていた九十五人は影をかくしてしまう。家は滅亡のほかはないのである。 第二は、利根すぎたる大将である。利害打算にはきわめて鋭敏であるが、賢でも剛でもない。「大略がさつなるをもつて・・・<和辻哲郎「埋もれた日本」青空文庫>
  30. ・・・徳川時代の主従関係に基礎を置いた忠義の心持ちである。そうしてまた対内的である。だから自ら、身をもって、警衛したくなるのは当然である。がそう考えて来ると共に、現在の組織制度がもはや父のごとき志を実行不可能なものにしていることにも自ら気づかざる・・・<和辻哲郎「蝸牛の角」青空文庫>