ちゅう‐さん【中産】例文一覧 20件

  1. ・・・僕はこの心もちの中に中産下層階級を感じている。今日でも中産下層階級の子弟は何か買いものをするたびにやはり一円持っているものの、一円をすっかり使うことに逡巡してはいないであろうか?     四二 虚栄心 ある冬に近い日の暮れ、・・・<芥川竜之介「追憶」青空文庫>
  2. ・・・を手にとった時さえ、畢竟僕自身も中産階級のムッシウ・ボヴァリイに外ならないのを感じた。…… 日の暮に近い丸善の二階には僕の外に客もないらしかった。僕は電燈の光の中に書棚の間をさまよって行った。それから「宗教」と云う札を掲げた書棚の前に足・・・<芥川竜之介「歯車」青空文庫>
  3. ・・・ 今日の女の運動は社交の一つであって、貴婦人階級は勿論だが、中産以下、プロ階級の女の集まりでもとかくに着物やおつくりの競争場になりがちであるが、その頃のキリスト教婦人は今の普通の婦人は勿論、教会婦人と比べても数段ピューリタニックであって・・・<内田魯庵「三十年前の島田沼南」青空文庫>
  4. ・・・ が、それはそれでよいとして、年寄でもなく、二才でもなく、金持でもなく、文無しでもない、いわゆる中年中産階級の者でも骨董を好かぬとは限らない。こういう連中は全く盲人というでもなく、さればといって高慢税を進んで沢山納め奉るほどの金も意気も・・・<幸田露伴「骨董」青空文庫>
  5. ・・・人間の中の貴族でも、金持でも、又私のような、中産階級でも、それからごくつまらない乞食でもね。」「はあ、」豚は声が咽喉につまって、はっきり返事ができなかった。「また人間でない動物でもね、たとえば馬でも、牛でも、鶏でも、なまずでも、バク・・・<宮沢賢治「フランドン農学校の豚」青空文庫>
  6. ・・・大戦後の混乱は有名なマークの暴落をひきおこし、一方にすさまじい成りあがりを生み出しながら、中産階級は没落して、エリカ・マンさえ靴のない春から秋までをすごさねばならぬ状態におちいった。絶望し、分別を失ったドイツの民衆は、それがなんであろうと目・・・<宮本百合子「明日の知性」青空文庫>
  7. ・・・当時日本の資本主義は小規模ながら興隆期にさしかかっていて、日本の中産階級が経済能力を増してきていた頃、福沢諭吉がいうとおり、今日のブルジョア民法としての民法改正が行われ封建差別がとりはらわれたのならば、たしかに今のままの条文を適用されるよう・・・<宮本百合子「明日をつくる力」青空文庫>
  8. ・・・の境地においておやである。中産階級の急速な貧困化、それにともなって起っている深刻な失業、インテリゲンツィアの経済的、精神的苦悩は、実際にあたって、恋愛や結婚問題解決の根蔕をその時代的な黒い爪でつかんでいるのである。この事実を痛切に自覚しない・・・<宮本百合子「新しい一夫一婦」青空文庫>
  9. ・・・日本の中産階級は戦争によって、最も生活の安定を失いました。日本の女子教育はおくれているから、専門学校程度の勉強をするのは、これまでは中産階級の娘さんたちでした。本年ぐらいから、統計の上にもはっきり、専門学校を受験する女子学生の層がかわって、・・・<宮本百合子「新しい卒業生の皆さんへ」青空文庫>
  10. ・・・こういうテーマに熱中していたのは中産階級の作家であり、文学であり、またその読者であったのだが、今日、日本の中産階級というものの実態はどうだろう。経済的に破滅した。経済上、精神上の闇が洪水のように、最もよわいこの社会層をつきくずしている。戦争・・・<宮本百合子「新しい文学の誕生」青空文庫>
  11. ・・・―― 作者は、この社会に階級の存在するという事実や、自分が生れてそこに育った中産階級というものの歴史的な本質について当時は知っていなかった。したがって、「伸子」は、階級的意識によって分析批判されていない。けれども、こんにち日本がやっと人・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」青空文庫>
  12. ・・・ヨーロッパの中産階級はそのころから急速に経済能力の不安を感じはじめていた。特権階級の者は、当時なお強固な基礎を失っていなかったし、労働者階級は失業や賃下げに対して闘って、労働して生きてゆく大衆としての力をもっている。ノッティンガムの礦夫の息・・・<宮本百合子「傷だらけの足」青空文庫>
  13. ・・・にあるすべては、それらの問題をわりきってしまった者として生きる作家としての自分、などという風な高邁な気風に立って、蜿蜒としてよこたわる中産階級の崩壊の過程と人間変革のテーマを扱う能力は文学的にないし、人間的にない。わたしは、これから担ぎ出し・・・<宮本百合子「心に疼く欲求がある」青空文庫>
  14. ・・・この船出は、地理上の旅行であるばかりでなく、フランス中産階級の生活の中でも特別な生い立ちをもったジイドにとっては全く幼年時代からの訣別であった。アフリカという未知の地方への出発は、ジイドにとってはとりも直さず未知な生活、未知な自己の個性、未・・・<宮本百合子「ジイドとそのソヴェト旅行記」青空文庫>
  15. ・・・ 第二次大戦後の世界は、一層深い傷と破滅を経験して、中産階級の没落はもとより民族そのものの自立性さえもファシズムの暴力に対する抵抗の過程でおびやかされました。しかも日本・イタリー・ドイツのように三国連盟して、東洋と西洋の平和を攪乱したフ・・・<宮本百合子「討論に即しての感想」青空文庫>
  16. ・・・ 当時、フランスは、将に「中産階級が歴史の舞台へ決定的にのり出して来た」一大時代であった。工業が発達し、商業が自由になり「ナポレオンによって全ヨーロッパに及ぼされた国富の新しい配分が、特にフランスにおいてその実を結びはじめ」ると同時に、・・・<宮本百合子「バルザックに対する評価」青空文庫>
  17. ・・・この長篇は日本の中産階級の崩壊の過程と、その旧い歴史の中から芽ばえのびてくる次代の精神としての女主人公の階級的人間成長を辿りながら、一九二七―三〇年ごろのソヴェト同盟の社会主義の達成とするどく対比されるヨーロッパ諸国のファシズムへの移行など・・・<宮本百合子「婦人作家」青空文庫>
  18. ・・・ 封建のしきたりと無権利とに苦しんでいた勤労大衆、中産階級、知識人、婦人などの生活は実にこの勤労階級を主軸として進展する日本の新民主主義の完成がなければ、幸福は決して約束されない。婦人の解放などは実現しない。 婦人民主クラブは、日本・・・<宮本百合子「三つの民主主義」青空文庫>
  19. ・・・芸術論の中に云われているとおり、芸術はあるものを写すものではなくって、あるべきものを描き出すのであるとすれば、氏の芸術が中産階級の生活を描いた時、その思想や感情が現在あるもののみを写す限度に止るようなことは、決して作者としての自己に許し得な・・・<宮本百合子「山本有三氏の境地」青空文庫>
  20. ・・・この原因は主として戦争によって女子人口が増加したことと、それまで生活の安定をもっていた中産階級の経済基礎がくずれ、勤労する男女が多くなったことにあった。ジェーン・オースティンの小説や「嵐ケ丘」でブロンテが書いたような、イギリスの中産階級の人・・・<宮本百合子「離婚について」青空文庫>