ちゅう‐し【注視】例文一覧 15件

  1. ・・・私は昂然と頭を挙げて、まるで別人を見るようにあの小娘を注視した。小娘は何時かもう私の前の席に返って、相不変皸だらけの頬を萌黄色の毛糸の襟巻に埋めながら、大きな風呂敷包みを抱えた手に、しっかりと三等切符を握っている。………… 私はこの時始・・・<芥川竜之介「蜜柑」青空文庫>
  2. ・・・博士はマッチの火で、とろとろ辻占の紙を焙り、酔眼をかっと見ひらいて、注視しますと、はじめは、なんだか模様のようで、心もとなく思われましたが、そのうちに、だんだん明確に、古風な字体の、ひら仮名が、ありありと紙に現われました。読んでみます。・・・<太宰治「愛と美について」青空文庫>
  3. ・・・池を隔てた本館前の広場で盆踊りが行なわれて、それがまさにたけなわなころ、私の二人の子供がベランダの籐椅子に腰かけて、池の向こうの植え込みのすきから見える踊りの輪の運動を注視していた。ベランダの天井の電燈は消えていたが上がり口の両側の柱におの・・・<寺田寅彦「人魂の一つの場合」青空文庫>
  4. ・・・尚前方を注視しつつ草履を穿くだけの余裕が其時彼の心に存在した。彼は蓆を押して外へ出た。棍棒が彼の足に触れた。彼はすぐにそれを手にした。そうしていきなり盗人に迫った。其時は既に盗ではなかった其不幸な青年は急遽其蜀黍の垣根を破って出た。体は隣の・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  5. ・・・余は息を凝らして両人を注視する。女はなお説明をつづける。「この紋章を刻んだ人はジョン・ダッドレーです」あたかもジョンは自分の兄弟のごとき語調である。「ジョンには四人の兄弟があって、その兄弟が、熊と獅子の周囲に刻みつけられてある草花でちゃんと・・・<夏目漱石「倫敦塔」青空文庫>
  6. ・・・これまで文化反動に対して私がいろんな場面でどのようにたたかってきているか、また現在小説・評論などによってどんなにたたかいつつあるかということは、日本の民主化にまじめな関心をもって注視している人々ならば見おとしてはいないのである。最近『思想と・・・<宮本百合子「河上氏に答える」青空文庫>
  7. ・・・そして、世界の平和と民主を欲する数千万人の注視のもとに。 日本の新首相が施政方針演説もしないで公務員法案を押しきろうとすることは、古い政治家の厚顔な腹の力かもしれないけれども、アメリカの大統領選挙の生々しい教訓は、日本のわたしたちにも少・・・<宮本百合子「現代史の蝶つがい」青空文庫>
  8. ・・・ 一九三〇年の冬、世界じゅうの注視の的となったソヴェト同盟内の重要な地位にある技師、学者、役人等による大反革命陰謀、産業党の例を見ても、プロレタリア階級の技術家がどんなに大事かは明瞭だ。 ロシア共産党は大会において、生産組合、労働組・・・<宮本百合子「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」青空文庫>
  9. ・・・特高は自分の横顔をしきりに注視しているが、自分は今度のことを機会に自分達の全生活が全くこれまでと違う基調の上に立てられるようになるものだということは知っているのだ。 自分は、立ったままテーブルの上にあった硯箱を引きよせ、墨をすりおろして・・・<宮本百合子「刻々」青空文庫>
  10. ・・・一九四六年にはあのように日本民主化のキー・ポイントとして内外から注視された婦人の団体があげられていないのはどうしたわけであろう。日本の青年のこんにちの生活内容は日本の民主化と世界平和のために、彼らに豊富な発言の要求を感じさせている。その青年・・・<宮本百合子「今日の日本の文化問題」青空文庫>
  11. ・・・ヴェトナムでも、人間関係方面は刻々に変化しつつあり、朝鮮における人間関係方面は、こんにち世界の注視をあつめた変動のもとにおかれている。 国連参加国の内部で、公然と科学の暴力を使用せよと叫んでいる者たちがあることは、もはやかくしようのない・・・<宮本百合子「「人間関係方面の成果」」青空文庫>
  12. ・・・菅季通の自殺は、太宰治の死、田中英光の死にまさって、こんにちのすべての良心に、人間としていかに生きるかの表現としての政治と文学の関係、そのなりゆきを注視させている。 こんにちプロレタリア文学史をよむひとは、一つの不便にめぐりあっている。・・・<宮本百合子「人間性・政治・文学(1)」青空文庫>
  13. ・・・それを念頭において今日の政治を観察し、ポツダム宣言に誓われた日本の民主化が巧妙に内外のファシズム勢力の増殖にすりかえられてゆく過程を注視すると、便乗というものの最悪の典型がそこに発見される。日本の小規模な独占資本は、より強大な国外の独占資本・・・<宮本百合子「便乗の図絵」青空文庫>
  14. ・・・を作家的特質として認めているこの婦人作家の今後の動きは注視される。 佐多稲子は「私の東京地図」をもって新しい出発に踏みだした。この連作で作者は戦災によってすっかり面がわりした東京の下街のあすこここを回想的に描き出しながら、そこを背景とし・・・<宮本百合子「婦人作家」青空文庫>
  15. ・・・と国際的な注視をあびているとき、現内閣はまっさきに婦人少年局を廃止しようとした。これはさわがれて、目的を果さなかった。大学法案というものを出して、これもごうごうの非難をあびている。大学法案は日本の学問が自主的に発展してゆく道を失わせるために・・・<宮本百合子「平和をわれらに」青空文庫>