ちゅう‐しゃく【注釈/×註釈】例文一覧 30件

  1. ・・・などと註釈めいたことをつけ加えていました。僕も幽霊を信じないことはチャックとあまり変わりません。けれども詩人のトックには親しみを感じていましたから、さっそく本屋の店へ駆けつけ、トックの幽霊に関する記事やトックの幽霊の写真の出ている新聞や雑誌・・・<芥川竜之介「河童」青空文庫>
  2. ・・・ 彼は時々話の合い間にこう言う註釈も加えたりした。僕も勿論僕自身に何の損害も受けない限り、決して土匪は嫌いではなかった。が、いずれも大差のない武勇談ばかり聞かせられるのには多少の退屈を感じ出した。「そこであの女はどうしたんだね?」・・・<芥川竜之介「湖南の扇」青空文庫>
  3. ・・・が、爰に一つ註釈を加えねばならないのは元来江戸のいわゆる通人間には情事を風流とする伝襲があったので、江戸の通人の女遊びは一概に不品行呼ばわりする事は出来ない。このデカダン興味は江戸の文化の爛熟が産んだので、江戸時代の買妓や蓄妾は必ずしも淫蕩・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  4. ・・・この十八歳の娘さんのいじらしいばかりに健気な気持については、註釈めいたものは要らぬだろう。ひとはしばらく眼をつぶって、この娘さんの可憐な顔を想像してくれるがよい。<織田作之助「十八歳の花嫁」青空文庫>
  5. ・・・かず枝は傍から註釈した。 酔っていた。笑い笑い老妻とわかれ、だらだら山を下るにしたがって、雪も薄くなり、嘉七は小声で、あそこか、ここか、とかず枝に相談をはじめた。かず枝は、もっと水上の駅にちかいほうが、淋しくなくてよい、と言った。やがて・・・<太宰治「姥捨」青空文庫>
  6. ・・・私は、これから六回、このわずか十三ページの小品をめぐって、さまざまの試みをしてみるつもりなのであるが、これが若し HOFFMANN や KLEIST ほどの大家なら、その作品に対して、どんな註釈もゆるされまい。日本にも、それら大家への熱愛者・・・<太宰治「女の決闘」青空文庫>
  7. ・・・よい加減なひとり合点の註釈をつけることでしょう? いやですよ。私は創るのだ。」「なにをつくるのです。発明かしら?」 青扇はくつくつと笑いだした。黄色いジャケツを脱いでワイシャツ一枚になり、「これは面白くなったですねえ。そうですよ・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」青空文庫>
  8. ・・・一こと理窟を言いだしたら最後、あとからあとから、まだまだと前言を追いかけていって、とうとう千万言の註釈。そうして跡にのこるものは、頭痛と発熱と、ああ莫迦なことを言ったという自責。つづいて糞甕に落ちて溺死したいという発作。 私を信じなさい・・・<太宰治「玩具」青空文庫>
  9. ・・・どんな素晴らしいフェノメンも愛のほんの一部分の註釈にすぎません。ああ、またもや甘ったるい事を言いました。お笑い下さいませ。愛は、人を無能にいたします。私は、まけました。 教養と、理智と、審美と、こんなものが私たちを、私を、懊悩のどん底の・・・<太宰治「古典風」青空文庫>
  10. ・・・けれども、家の者は、何やら小さい手帖に日記をつけている様子であるから、これを借りて、それに私の註釈をつけようと決心したのである。「おまえ、日記をつけているようだね。ちょっと貸しなさい。」と何気なさそうな口調で言ったのであるが、家の者は、・・・<太宰治「作家の像」青空文庫>
  11. ・・・あれは学者と言って、死んだ天才にめいわくな註釈をつけ、生れる天才をたしなめながらめしを食っているおかしな奴だが、おれはあれを見るたびに、なんとも知れず眠たくなるのだ。あれは女優と言って、舞台にいるときよりも素面でいるときのほうが芝居の上手な・・・<太宰治「猿ヶ島」青空文庫>
  12. ・・・山岸さんは註釈を加えて、「僕のうちでも、林檎と駒下駄をもらった。林檎はまだ少しすっぱいようだから、二、三日置いてたべるといいかも知れない。駒下駄は僕と君とお揃いのを一足ずつ。気持のいいお土産だろう?」 弟さんは遺稿集に就いての相談も・・・<太宰治「散華」青空文庫>
  13. ・・・私は、その少数の友人にも、自作の註釈をした事は無い。発表しても、黙っている。あそこの所には苦心をしました、など一度も言った事が無い。興覚めなのである。そんな、苦心談でもって人を圧倒して迄、お義理の喝采を得ようとは思わない。芸術は、そんなに、・・・<太宰治「自作を語る」青空文庫>
  14. ・・・   古池や蛙とびこむ水の音    音の聞えてなほ静かなり これ程ひどくもないけれども、とにかく蛇足的註釈に過ぎないという点では同罪である。御師匠も、まずい附けかたをしたものだ。つき過ぎてもいかん、ただ面影にして附くべし、なんて・・・<太宰治「天狗」青空文庫>
  15. ・・・ 時々アインシュタインに会って雑談をする機会があるので、その時々の談片を題目とし、それの注釈や祖述、あるいはそれに関する評論を書いたものが纏まった書物になったという体裁である。無論記事の全責任は記者すなわち著者にあることが特に断ってある・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  16. ・・・ 写実主義、自然主義といったような旗じるしのもとに書かれた作品については別に注釈を加える必要はない。すでにそれらのものは心理学者の研究資料となり彼らの論文に引用されるくらいである。 一見非写実的、非自然的な文学であってもよくよく考え・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  17. ・・・その度ごとに本屋の書架から手頃らしいと思われる註釈本を物色しては買って来て読みかけるのであるが、第一本文が無闇に六かしい上にその註釈なるものが、どれも大抵は何となく黴臭い雰囲気の中を手捜りで連れて行かれるような感じのするものであった。それら・・・<寺田寅彦「変った話」青空文庫>
  18. ・・・演芸風聞録の頭のいい記者はたぶんこの意味で書いたに相違ないのであるが、これにこれだけの注釈をつけることも出来るのである。      二 玉虫 夏のある日の正午駕籠町から上野行の電車に乗った。上富士前の交叉点で乗込んだ人々の中・・・<寺田寅彦「さまよえるユダヤ人の手記より」青空文庫>
  19. ・・・ われわれの子供の時分にはおとぎ話はおとぎ話としてなんらの注釈なしに教わった。そうして実に同じ話を何十回何百回も繰り返して教わったものである。そうしてそれらの話の中に含まれている事実と方則とがいつとなく自然自然と骨肉の間にしみ込んでしま・・・<寺田寅彦「さるかに合戦と桃太郎」青空文庫>
  20. ・・・を白日の明るみに引きずり出してすみからすみまで注釈し敷衍することは曲斎的なるドイツ人の仕事であったのである。芸術のほうでもマチスの絵やマイヨールの彫刻にはどこかにわれわれの俳諧がある。これがドイツへはいると、たちまちに器械化数学化した鉄筋式・・・<寺田寅彦「連句雑俎」青空文庫>
  21. ・・・わたくしがこの文についてここに註釈を試みたくなったのも、滄桑の感に堪えない余りである。「忍ヶ岡」は上野谷中の高台である。「太郎稲荷」はむかし柳河藩主立花氏の下屋敷にあって、文化のころから流行りはじめた。屋敷の取払われた後、社殿とその周囲・・・<永井荷風「里の今昔」青空文庫>
  22. ・・・という註釈が加えてあるところをもって見ると、自分でもそう旨いとは考えていなかったのだろう。子規がこの画を描いた時は、余はもう東京にはいなかった。彼はこの画に、東菊活けて置きけり火の国に住みける君の帰り来るがねと云う一首の歌を添えて、熊本まで・・・<夏目漱石「子規の画」青空文庫>
  23. ・・・めか、昨日から人と車を天然自然ところがすべく特にこの地を相し得て余を連れだしたのである、 人の通らない馬車のかよわない時機を見計ったる監督官はさあ今だ早く乗りたまえという、ただしこの乗るという字に註釈が入る、この字は吾ら両人の間にはいま・・・<夏目漱石「自転車日記」青空文庫>
  24. ・・・私の頃は高校ではドイツ語を少ししかやらなかったので、最初の一年は主として英語の注釈の附いたドイツ文学の書を読んだ。 その頃の哲学科は、井上哲次郎先生も一両年前に帰られ、元良、中嶋両先生も漸く教授となられたので、日本人の教授が揃うたのだが・・・<西田幾多郎「明治二十四、五年頃の東京文科大学選科」青空文庫>
  25. ・・・誦するにも堪えぬ芭蕉の俳句を註釈して勿体つける俳人あれば、縁もゆかりもなき句を刻して芭蕉塚と称えこれを尊ぶ俗人もありて、芭蕉という名は徹頭徹尾尊敬の意味を表したる中に、咳唾珠を成し句々吟誦するに堪えながら、世人はこれを知らず、宗匠はこれを尊・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  26. ・・・つけ加えて、社会主義的リアリズムというのは、一定のグループが自説を押しつける強制的なものではないし、それぞれの国がそれぞれの社会の現実に即して、人民が人民のための文学をつくってゆくことを意味するという註釈をくりかえした。質問者は、シーモノフ・・・<宮本百合子「作家の経験」青空文庫>
  27. ・・・ Y、問答をきいて居て、註釈を加えた。「御堂ですよ」「ああ御堂!」 すっかり笑い乍ら、近路を行く。暫くすると右手の高台に、まだ新しく、壮大な堂が見えて来た。この堂の建設のために、信徒は三十年も応分の寄附を怠らず、或者は子を大・・・<宮本百合子「長崎の一瞥」青空文庫>
  28. ・・・と、註釈を加えた。――少女は育ちのよい娘らしく、わだかまりない容子で、「ああ、御堂!」と叫んだ。御堂なら、橋を渡った方が近いのだそうだ。 赤土の泥濘を過ぎ、短い村落の家並にさしかかった。道のところどころに、雨あがりの大きい泥・・・<宮本百合子「長崎の印象」青空文庫>
  29. ・・・しかしながら、歴史上権威ある人々の書簡には或る場合註釈が必要とされるように、現段階にたってエンゲルスのこの書簡が読まれるについては矢張り幾つかの短い脚註の必要がさけ難いと思われる。 例えばエンゲルスは、この手紙において、バルザックが「真・・・<宮本百合子「バルザックに対する評価」青空文庫>
  30. ・・・と思うと、跡から大きな盥が運ばれた。中には鮓が盛ってある。道行触のおじさんが、「いや、これは御趣向」と云うと、傍にいた若い男が「湯灌の盥と云う心持ですね」と注釈を加えた。すぐに跡から小形の手桶に柄杓を投げ入れたのを持って出た。手桶からは湯気・・・<森鴎外「百物語」青空文庫>