ちゅう‐と【中途】例文一覧 30件

  1. ・・・今までも中途で切った方が、遥に好かったと思いますが、――とにかくこの小品は貰いますから、そのつもりでいて下さい。小説家 そこで切られては困るのですが、――編輯者 おや、もうよほど急がないと、五時の急行には間に合いませんよ。原稿の事な・・・<芥川竜之介「奇遇」青空文庫>
  2. ・・・その誘惑を意識しつつ、しかもその誘惑に抵抗しない、たとえば中途まで送って来た妓と、「何事かひそひそ囁き交したる後」莫迦莫迦しさをも承知した上、「わざと取ってつけたように高く左様なら」と云い合いて、別れ別れに一方は大路へ、一方は小路へ、姿を下・・・<芥川竜之介「久米正雄」青空文庫>
  3. ・・・そこで仕方がございませんから、まず一休み休むつもりで、糸の中途にぶら下りながら、遥かに目の下を見下しました。 すると、一生懸命にのぼった甲斐があって、さっきまで自分がいた血の池は、今ではもう暗の底にいつの間にかかくれて居ります。それから・・・<芥川竜之介「蜘蛛の糸」青空文庫>
  4. ・・・あの青年たちはもう立止る頃だとクララが思うと、その通りに彼らは突然阪の中途で足をとめた。互に何か探し合っているようだったが、やがて彼らは広場の方に、「フランシス」「ベルナルドーネの若い騎士」「円卓子の盟主」などと声々に叫び立てながら、はぐれ・・・<有島武郎「クララの出家」青空文庫>
  5. ・・・ 松野謹三、渠は去年の秋、故郷の家が焼けたにより、東京の学校を中途にして帰ったまま、学資の出途に窮するため、拳を握り、足を爪立てているのである。 いや、ただ学資ばかりではない。……その日その日の米薪さえ覚束ない生活の悪処に臨んで、―・・・<泉鏡花「瓜の涙」青空文庫>
  6. ・・・ 途中で見た上阪の中途に、ばりばりと月に凍てた廻縁の総硝子。紅色の屋号の電燈が怪しき流星のごとき光を放つ。峰から見透しに高い四階は落着かない。「私も下が可い。」「しますると、お気に入りますかどうでございましょうか。ちとその古びて・・・<泉鏡花「革鞄の怪」青空文庫>
  7. ・・・……巫山戯た爺が、驚かしやがって、頭をコンとお見舞申そうと思ったりゃ、もう、すっこ抜けて、坂の中途の樫の木の下に雨宿りと澄ましてけつかる。 川端へ着くと、薄らと月が出たよ。大川はいつもより幅が広い、霧で茫として海見たようだ。流の上の真中・・・<泉鏡花「茸の舞姫」青空文庫>
  8. ・・・ 壱岐殿坂の中途を左へ真砂町へ上るダラダラ坂を登り切った左側の路次裏の何とかいう下宿へ移ってから緑雨は俄に落魄れた。落魄れたといっては語弊があるが、それまでは緑雨は貧乏咄をしても黒斜子の羽織を着ていた。不味い下宿屋の飯を喰っていても牛肉・・・<内田魯庵「斎藤緑雨」青空文庫>
  9. ・・・ちょうどこの百七十七回の中途で文字がシドロモドロとなって何としても自ら書く事が出来なくなったという原稿は、現に早稲田大学の図書館に遺存してこの文豪の悲痛な消息を物語っておる。扇谷定正が水軍全滅し僅かに身を以て遁れてもなお陸上で追い詰められ、・・・<内田魯庵「八犬伝談余」青空文庫>
  10. ・・・桜井女学校の講師をしていた時分、卒業式に招かれて臨席したが、中途にピアノの弾奏が初まったので不快になって即時に退席したと日記に書いてある。晩年にはそれほど偏意地ではなかったが、左に右く洋楽は嫌いであった。この頃の洋楽流行時代に居合わして、い・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  11. ・・・もっとも、奴さんはその工場でたった一人の大学出だということも社長のお眼鏡に適ったらしいんだが、なに、奴さん大学は中途退学で、履歴書をごまかして書いたんですよ。いまじゃ社長の女婿だというんで、工場長というのに収まってしまって、ついこの間までは・・・<織田作之助「天衣無縫」青空文庫>
  12. ・・・と鳴きやんでしまう。中途に横から「チュクチュク」とはじめるのが出て来る。するとまた一つのは「スットコチーヨ」を終わって「ジー」に移りかけている。三重四重、五重にも六重にも重なって鳴いている。 峻はこの間、やはりこの城跡のなかにある社の桜・・・<梶井基次郎「城のある町にて」青空文庫>
  13. ・・・何をやりはじめてもそういうふうに中途半端中途半端が続くようになって来た。またそれが重なってくるにつれてひとりでに生活の大勢が極ったように中途半端を並べた。そんなふうで、自分は動き出すことの禁ぜられた沼のように淀んだところをどうしても出切って・・・<梶井基次郎「泥濘」青空文庫>
  14. ・・・壜の内側を身体に付著した牛乳を引き摺りながらのぼって来るのであるが、力のない彼らはどうしても中途で落ちてしまう。私は時どきそれを眺めていたりしたが、こちらが「もう落ちる時分だ」と思う頃、蠅も「ああ、もう落ちそうだ」というふうに動かなくなる。・・・<梶井基次郎「冬の蠅」青空文庫>
  15. ・・・別に、崖の中途に小屋を建てて、鉱泉に老を養おうとする隠居さん夫婦もあった。 春の新学年前から塾では町立の看板を掛けた。同時に、高瀬という新教員を迎えることに成った。学年前の休みに、先生は東京から着いた高瀬をここへ案内して来た。岡の上から・・・<島崎藤村「岩石の間」青空文庫>
  16. ・・・小伝馬町の店でも、孫の子息さんの代にはだんだんちいさくなって、家族も一人亡くなり、二人亡くなり、最後に残ったその子息さんまでも震災の当時には大火に追われ、本郷の切通し坂まで病躯を運んで行って、あの坂の中途で落命してしまった……「お母さん・・・<島崎藤村「食堂」青空文庫>
  17. ・・・帝大の経済科を中途退学して、そうして、何もしない。月々、田舎から充分の仕送りがあるので、四畳半と六畳と八畳の、ひとり者としては、稍や大きすぎるくらいの家を借りて、毎晩さわいでいる。もっとも、騒ぐのは、男爵自身ではなかった。訪問客が多いのであ・・・<太宰治「花燭」青空文庫>
  18. ・・・底のない墜落、無間奈落を知って居るか、加速度、加速度、流星と同じくらいのはやさで、落下しながらも、少年は背丈のび、暗黒の洞穴、どんどん落下しながら手さぐりの恋をして、落下の中途にて分娩、母乳、病い、老衰、いまわのきわの命、いっさい落下、死亡・・・<太宰治「創生記」青空文庫>
  19. ・・・大学へはいった頃には、小説家になるつもりで勉強して、先輩のひとたちにも期待されていたのに、わるい友達がいた為に、いけなくなって大学も中途でよしてしまったのだ、と母から聞かされた事があります。日本の小説でも、外国の小説でも、ずいぶんたくさん読・・・<太宰治「千代女」青空文庫>
  20. ・・・しかし観客は盛んに拍手を送った。中途から退席して表へ出で入り口を見ると「満員御礼」とはり札がしてあった。「唐人お吉」にしても同様であった。 これらの邦劇映画を見て気のつくことは、第一に芝居の定型にとらわれ過ぎていることである、書き割りを・・・<寺田寅彦「映画時代」青空文庫>
  21. ・・・そうしてその二枚が必ずしも茎の上端とか下端でなく、中途の高さにあるのは全く不可思議である。そうしていっそうおもしろいのはこの草の花である。地上からまっすぐに三尺ぐらいの高さに延び立ったただ一本の茎の回りに、柳のような葉が輪生し、その頂上に、・・・<寺田寅彦「沓掛より」青空文庫>
  22. ・・・長野は演説するとき、かならず菜ッ葉服を着るが、そのときは興ざめたように、中途でかえってしまった。前座には深水と高坂がしゃべった。浪花ぶし語りみたい仙台平の袴をつけた深水の演説のつぎに、チョッキの胸に金ぐさりをからませた高坂が演壇にでて、永井・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  23. ・・・一たび伝統の外に出たいと願ったこともあったが、中途にしてその不可能であることを知った。わたくしをして過去の感化を一掃することの不可能たるを悟らしめたものは、学理ではなくして、風土気候の力と過去の芸術との二ツであった。この経験については既に小・・・<永井荷風「西瓜」青空文庫>
  24. ・・・ わたしは筆を中途に捨てたわが長編小説中のモデルを、しばしば帝国劇場に演ぜられた西洋オペラまたはコンセールの聴衆の中に索めようと力めた。また有楽座に開演せられる翻訳劇の観客に対しては特に精細なる注意をなした。わたしは漸くにして現代の婦人・・・<永井荷風「十日の菊」青空文庫>
  25. ・・・ 夢の話しはつい中途で流れた。三人は思い思いに臥床に入る。 三十分の後彼らは美くしき多くの人の……と云う句も忘れた。ククーと云う声も忘れた。蜜を含んで針を吹く隣りの合奏も忘れた、蟻の灰吹を攀じ上った事も、蓮の葉に下りた蜘蛛の事も忘れ・・・<夏目漱石「一夜」青空文庫>
  26. ・・・彼はむしろ懸崖の中途が陥落して草原の上に伏しかかったような容貌であった。細君は上出来の辣韮のように見受けらるる。今余の案内をしている婆さんはあんぱんのごとく丸るい。余が婆さんの顔を見てなるほど丸いなと思うとき婆さんはまた何年何月何日を誦し出・・・<夏目漱石「カーライル博物館」青空文庫>
  27. ・・・ されば今、日本国中に小学の生徒は必ず中途にて廃学すること多き者と認めざるをえず。すでに廃学に決してとどむべからざる者なれば、たとい廃学するも、その廃学の日までに学び得たることをもって、なおその者の生涯の利益となすべき工夫なかるべからず・・・<福沢諭吉「小学教育の事」青空文庫>
  28. ・・・その中途から頼まれてのせてやった娘とそう話すのである。 我々の列車もモスクワを出て九日目。ハバロフスクの手前を走っている。 ある小さい駅を通過した時、女がにない棒の両端へ木の桶をつって、水汲みに来たのを見た。駅の横手の広っぱに井戸が・・・<宮本百合子「新しきシベリアを横切る」青空文庫>
  29. ・・・という題の三冊目はまだ読んでいないから、私の内でアンネットの人格は全く発展の中途にあるのです。 大体、外国の本当に偉い作家たちはよく女性を描いているので感心します。トルストイも実に生きた女を描いたし、このロマン・ローランもジャン・クリス・・・<宮本百合子「アンネット」青空文庫>
  30. ・・・ この時突然お松の立っている処と、上がり口との中途あたりで、「お松さん、待って頂戴、一しょに行くから」と叫ぶように云った女中がある。 そう云う声と共に、むっくり島田髷を擡げたのは、新参のお花と云う、色の白い、髪のちぢれた、おかめのよ・・・<森鴎外「心中」青空文庫>