ちょう‐こく〔テウ‐〕【彫刻】例文一覧 30件

  1. ・・・大川に臨んだ仏蘭西窓、縁に金を入れた白い天井、赤いモロッコ皮の椅子や長椅子、壁に懸かっているナポレオン一世の肖像画、彫刻のある黒檀の大きな書棚、鏡のついた大理石の煖炉、それからその上に載っている父親の遺愛の松の盆栽――すべてがある古い新しさ・・・<芥川竜之介「開化の良人」青空文庫>
  2. ・・・と思うとその元禄女の上には、北村四海君の彫刻の女が御隣に控えたベエトオフェンへ滴るごとき秋波を送っている。但しこのベエトオフェンは、ただお君さんがベエトオフェンだと思っているだけで、実は亜米利加の大統領ウッドロオ・ウイルソンなのだから、北村・・・<芥川竜之介「葱」青空文庫>
  3. ・・・ 操は二人とも守り得た。彫刻師はその夜の中に、人知れず、暗ながら、心の光に縁側を忍んで、裏の垣根を越して、庭を出るその後姿を、立花がやがて物語った現の境の幻の道を行くがごとくに感じて、夫人は粛然として見送りながら、遥に美術家の前程を祝し・・・<泉鏡花「伊勢之巻」青空文庫>
  4. ・・・――この蝶が、境内を切って、ひらひらと、石段口の常夜燈にひたりと附くと、羽に点れたように灯影が映る時、八十年にも近かろう、皺びた翁の、彫刻また絵画の面より、頬のやや円いのが、萎々とした禰宜いでたちで、蚊脛を絞り、鹿革の古ぼけた大きな燧打袋を・・・<泉鏡花「貝の穴に河童の居る事」青空文庫>
  5. ・・・そして、レオナドその人は国籍もなく一定の住所もなく、きのうは味方、きょうは敵国のため、ただ労働神聖の主義をもって、その科学的な多能多才の応ずるところ、築城、建築、設計、発明、彫刻、絵画など――ことに絵画はかれをして後世永久の名を残さしめた物・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  6. ・・・トーヴァルセンを出して世界の彫刻術に一新紀元を劃し、アンデルセンを出して近世お伽話の元祖たらしめ、キェルケゴールを出して無教会主義のキリスト教を世界に唱えしめしデンマークは、実に柔和なる牝牛の産をもって立つ小にして静かなる国であります。・・・<内村鑑三「デンマルク国の話」青空文庫>
  7. ・・・そして、鳥の性質について若者に教えましたから、若者は、人間や、自然を彫刻したり、また焼き画に描いたりしましたが、鳥の姿をいちばんよく技術に現すことができたのであります。 しかし、二人は、幾年かの後に、また別れなければなりませんでした。子・・・<小川未明「あほう鳥の鳴く日」青空文庫>
  8. ・・・似顔絵描き、粘土彫刻屋は今夜はどうしているだろうか。 しかし、さすがに流川通である。雪の下は都会めかしたアスファルトで、その上を昼間は走る亀ノ井バスの女車掌が言うとおり「別府の道頓堀でございます」から、土産物屋、洋品屋、飲食店など殆んど・・・<織田作之助「雪の夜」青空文庫>
  9. ・・・ 男爵加藤が、いつもどなる、なんと言うてどなる「モー一本」と言うてどなる。 彫刻家の中倉の翁が、なんと言うて、その太い指を出す、「一本」 ことごとく飲み仲間だ。ことごとく結構! 今夜も「加と男」がノッソリ御出張になりました。・・・<国木田独歩「号外」青空文庫>
  10. ・・・それで古来木理の無いような、粘りの多い材、白檀、赤檀の類を用いて彫刻するが、また特に杉檜の類、刀の進みの早いものを用いることもする。御前彫刻などには大抵刀の進み易いものを用いて短時間に功を挙げることとする。なるほど、火、火とのみ云って、火の・・・<幸田露伴「鵞鳥」青空文庫>
  11. ・・・す、大雅堂や竹田ばたけにも鍬を入れたがる、運が好ければ韓幹の馬でも百円位で買おう気でおり、支那の笑話にある通り、杜荀鶴の鶴の画なんという変なものをも買わぬと限らぬ勢で、それでも画のみならまだしもの事、彫刻でも漆器でも陶器でも武器でも茶器でも・・・<幸田露伴「骨董」青空文庫>
  12. ・・・水の底には、泥を被った水草の葉が、泥へ彫刻したようになっている。ややあって、ふと、鮒子の一隊が水の色とまぎれたと思うと、底の方を大きな黒いのがうじゃうじゃと通る。「大きなのもいるんですね。あ、あそこに」と指すと、「どこに」と藤さんが・・・<鈴木三重吉「千鳥」青空文庫>
  13. ・・・かれは上野の美術学校の彫刻科にはいっていたのであるが、彫刻よりも文学のほうが好きなようで、「十字街」という同人雑誌の同人になって、その表紙の絵をかいたり、また、創作も発表していた。しかし、私は、兄の彫刻も絵も、また創作も、あまり上手だとは思・・・<太宰治「『井伏鱒二選集』後記」青空文庫>
  14. ・・・中学時代の夏冬の休暇には、自分の生家でごろごろしていて、兄たちの蔵書を手当り次第読みちらし、どこへ旅行しようともしなかったし、また高等学校時代の休暇には、東京にいる彫刻家の、兄のところへ遊びに行き、ほとんど生家に帰らず、東京の大学へはいるよ・・・<太宰治「十五年間」青空文庫>
  15. ・・・一昨年来急に世界的に有名になってから新聞雑誌記者は勿論、画家彫刻家までが彼の門に押しよせて、肖像を描かせろ胸像を作らしてくれとせがむ。講義をすまして廊下へ出ると学生が押しかけて質問をする。宅へ帰ると世界中の学者や素人から色々の質問や註文の手・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  16. ・・・ 彫刻部の列品は、もしか貰ったらさぞや困ることだろうと思うものが大部分であるが、工芸品の部には、もし沢山に金があったら買いたいと思うものが少しはある。 来年あたりから試しに帝展の各室に投票函を置き、「いけない」と思う絵を観客に自由に・・・<寺田寅彦「異質触媒作用」青空文庫>
  17. ・・・私がもし古美術の研究家というような道楽をでももっていたら、煩いほど残存している寺々の建築や、そこにしまわれてある絵画や彫刻によって、どれだけ慰められ、得をしたかしれなかったが――もちろん私もそういう趣味はないことはないので、それらの宝蔵を瞥・・・<徳田秋声「蒼白い月」青空文庫>
  18. ・・・公衆のために設けられたる料理屋の座敷に上っては、掛物と称する絵画と置物と称する彫刻品を置いた床の間に、泥だらけの外套を投げ出し、掃き清めたる小庭に巻煙草の吸殻を捨て、畳の上に焼け焦しをなし、火鉢の灰に啖を吐くなぞ、一挙一動いささかも居室、家・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  19. ・・・ 伝説によれば水戸黄門が犬を斬ったという寺の門だけは、幸にして火災を逃れたが、遠く後方に立つ本堂の背景がなくなってしまったので、美しく彎曲した彫刻の多いその屋根ばかりが、独りしょんぼりと曇った空の下に取り残されて立つ有様かえって殉死の運・・・<永井荷風「伝通院」青空文庫>
  20. ・・・先生の生活はそっと煤煙の巷に棄てられた希臘の彫刻に血が通い出したようなものである。雑鬧の中に己れを動かしていかにも静かである。先生の踏む靴の底には敷石を噛む鋲の響がない。先生は紀元前の半島の人のごとくに、しなやかな革で作ったサンダルを穿いて・・・<夏目漱石「ケーベル先生」青空文庫>
  21. ・・・これは友人滝君が京都大学で本邦美術史の講演を依託された際、聴衆に説明の必要があって、建築、彫刻、絵画の三門にわたって、古来から保存された実物を写真にしたものであるから、一枚一枚に観て行くと、この方面において、わが日本人が如何なる過去をわれわ・・・<夏目漱石「『東洋美術図譜』」青空文庫>
  22. ・・・この種々な物を彫刻家が刻んだ時は、この種々な物が作者の生々した心持の中から生れて来て、譬えば海から上った魚が網に包まれるように、芸術の形式に包まれた物であろう。己はお前達の美に縛せられて、お前達を弄んだお蔭で、お前達の魂を仮面を隔てて感じる・・・<著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外「痴人と死と」青空文庫>
  23. ・・・ もしもほんの少しのはり合で霧を泳いで行くことができたら一つの峯から次の巌へずいぶん雑作もなく行けるのだが私はやっぱりこの意地悪い大きな彫刻の表面に沿ってけわしい処ではからだが燃えるようになり少しの平らなところではほっと息をつきながら地・・・<宮沢賢治「マグノリアの木」青空文庫>
  24. ・・・ フランス現代美術展覧会に陳列されたロダンの彫刻数点、クローデル嬢の作品も、深い感激を与えたものです。 読んだものの中では、「神曲」、ゲーテの作品数種。 印象の種類から云えば、まるで其等のものとは異いますが、先達て中、二科にあっ・・・<宮本百合子「外来の音楽家に感謝したい」青空文庫>
  25. ・・・ 現実のその苦しさから、意識を飛躍させようとして、たとえばある作家の作品に描かれているように、バリ島で行われている原始的な性の祭典の思い出や南方の夜のなかに浮きあがっている性器崇拝の彫刻におおわれた寺院の建物の追想にのがれても、結局・・・<宮本百合子「傷だらけの足」青空文庫>
  26. ・・・彼は高価な寝台の彫刻に腹を当てて、打ちひしがれた獅子のように腹這いながら、奇怪な哄笑を洩すのだ。「余はナポレオン・ボナパルトだ。余は何者をも恐れぬぞ、余はナポレオン・ボナパルトだ」 こうしてボナパルトの知られざる夜はいつも長く明けて・・・<横光利一「ナポレオンと田虫」青空文庫>
  27. ・・・翌朝眼が醒めてから子はその夢の中の顔をどうかして彫刻したくなって来た。そこで二ヶ月もかかって漸く彫刻仕上げたとき、父親に見つけられて了った。父は子の造ったその仮面を見ると実に感心をしたのである。「これはよく出来とる。」 そこで、子は・・・<横光利一「夢もろもろ」青空文庫>
  28. ・・・と徳蔵おじにいわれて、オジオジしながら二タ足三足、奥さまの御寝なってるほうへ寄ますと、横になっていらっしゃる奥様のお顔は、トント大理石の彫刻のように青白く、静な事は寝ていらっしゃるかのようでした。僕はその枕元にツクネンとあっけにとられて眺め・・・<若松賤子「忘れ形見」青空文庫>
  29. ・・・そこの小家はいずれも惚れ惚れするような編み細工や彫刻で構成せられた芸術品であった。男は象眼のある刃や蛇皮を巻いたの鉄の武器、銅の武器を持たぬはなかった。びろうどや絹のような布は至る処で見受けられた。杯、笛、匙などは、どこで見ても、ヨーロッパ・・・<和辻哲郎「アフリカの文化」青空文庫>
  30. ・・・暇さえあると古い彫刻と対坐していつまでもいつまでもじっとしている。 一八七九年、ようやく二十を越したばかりのデュウゼは旅役者の仲間に加わってナポリへ行き、初めてテレエゼの役をつとめたが、二三日たつと彼女の名はすでに全イタリーに広まってい・・・<和辻哲郎「エレオノラ・デュウゼ」青空文庫>