ちょう‐へい【徴兵】例文一覧 15件

  1. ・・・我々青年は誰しもそのある時期において徴兵検査のために非常な危惧を感じている。またすべての青年の権利たる教育がその一部分――富有なる父兄をもった一部分だけの特権となり、さらにそれが無法なる試験制度のためにさらにまた約三分の一だけに限られている・・・<石川啄木「時代閉塞の現状」青空文庫>
  2. ・・・ 謙三郎もまた我国徴兵の令に因りて、予備兵の籍にありしかば、一週日以前既に一度聯隊に入営せしが、その月その日の翌日は、旅団戦地に発するとて、親戚父兄の心を察し、一日の出営を許されたるにぞ、渠は父母無き孤児の、他に繋累とてはあらざれども、・・・<泉鏡花「琵琶伝」青空文庫>
  3. ・・・「今の僕なら、どうせ、役場の書記ぐらいで満足しとるのやもの、徴兵の徴の字を見ても、ぞッとする程の意気地なしやけど、あの時のことを思うたら、不思議に勇気が出たもんや。それも大勢のお立て合う熱に浮されたと云うたら云えんこともなかろう。もう、死ん・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  4. ・・・      三 学校をやめたので、私は間もなく徴兵検査を受けねばならなかった。 私は洋服を持たなかったので、和服のまま検査場へ行った。髪の毛は依然として長く垂れたままであったことは勿論である。丸刈りにしていった方がよかろ・・・<織田作之助「髪」青空文庫>
  5.  全国の都市や農村から、約二十万の勤労青年たちが徴兵に取られて、兵営の門をくゞる日だ。 都市の青年たちは、これまでの職場を捨てなければならない。農村の青年たちは、鍬や鎌を捨て、窮乏と過労の底にある家に、老人と、幼い弟や妹・・・<黒島伝治「入営する青年たちは何をなすべきか」青空文庫>
  6.       一 丁度九年になる。九年前の今晩のことだ。その時から、私はいくらか近眼だった。徴兵検査を受ける際、私は眼鏡をかけて行った。それが却って悪るかった。私は、徴兵医官に睨まれてしまった。 その医官は、頭をく・・・<黒島伝治「入営前後」青空文庫>
  7. ・・・ちょうど、私の家では次郎が徴兵適齢に当たって、本籍地の東京で検査を受けるために郷里のほうから出て来ていた時であった。次郎も兄の農家を助けながら描いたという幾枚かの習作の油絵を提げて出て来たが、元気も相変わらずだ。亡くなった本郷の甥とは同い年・・・<島崎藤村「分配」青空文庫>
  8. ・・・堤さんも、めでたく卒業なさって、徴兵検査を受けられたのだそうだが、第三乙とやらで、残念でしたと言って居られた。佐藤さんも、堤さんも、いままで髪を長く伸ばして居られたのに、綺麗さっぱりと坊主頭になって、まあほんとに学生のお方も大変なのだ、と感・・・<太宰治「十二月八日」青空文庫>
  9.  大学生、三浦憲治君は、ことしの十二月に大学を卒業し、卒業と同時に故郷へ帰り、徴兵検査を受けた。極度の近視眼のため、丙種でした、恥ずかしい気がします、と私の家へ遊びに来て報告した。「田舎の中学校の先生をします。結婚するか・・・<太宰治「律子と貞子」青空文庫>
  10. ・・・ 徴兵検査のときに係りの軍医が数えて帳面に記入したむし歯の数が自分のあらかじめ数えて行った数よりずっと多かったのでびっくりした。それが徴兵検査であっただけにそのびっくりはかなり複雑な感情の笹縁をつけたびっくりであったのである。 とう・・・<寺田寅彦「自由画稿」青空文庫>
  11. ・・・東京に帰ればやがて徴兵検査も受けなければならず。また高等学校にでも入学すれば柔術や何かをやらなければならない。わたくしにはそれが何よりもいやでならなかったのである。しかしわたくしの望みは許されなかった。そしてその年の冬、母の帰京すると共に、・・・<永井荷風「十九の秋」青空文庫>
  12. ・・・』『だけども、徴兵で為方がなしになった軍人よ。月給を貰って妻子を養ってる、軍人とは違うんでしょう。貴方は家の相続人ですわ。お国には阿母さんが唯ッた一人、兄さんを楽しみにして待ってらッしゃるでしょう。仙台は仙台で、三歳になる子まである嫂さ・・・<広津柳浪「昇降場」青空文庫>
  13. ・・・中国地方の或る工業地帯が故郷である若い人が、この間の徴兵検査で、一年前肺炎をやっている体で甲種になって、おどろいている。自分がその体で甲種になったおどろきは、同じとき裸になって並んだ工場の青年たちが余りひどい体をしていたこととの対比で、一層・・・<宮本百合子「若きいのちを」青空文庫>
  14. ・・・ ニューヨークなどを通りますと、よく自動車に乗って旗をふりかざして行く、徴兵募集の示威運動になどあったものでした。 アメリカの少女達はそりゃ可愛いんですよ。そして活溌ですの。私達日本の少女のように臆病なほどはにかむようなことは決して・・・<宮本百合子「わたくしの大好きなアメリカの少女」青空文庫>
  15. ・・・木村は病気というものをしたことがないが、小男で痩せているので、徴兵に取られなかった。それで戦争に行ったことはない。しかし人の話に、壮烈な進撃とは云っても、実は土嚢を翳して匍匐して行くこともあると聞いているのを思い出す。そして多少の興味を殺が・・・<森鴎外「あそび」青空文庫>