ちょく‐せん【直線】例文一覧 30件

  1. ・・・同時にネットの右や左へ薄白い直線を迸らせる。あれは球の飛ぶのではない。目に見えぬ三鞭酒を抜いているのである。そのまた三鞭酒をワイシャツの神々が旨そうに飲んでいるのである。保吉は神々を讃美しながら、今度は校舎の裏庭へまわった。 裏庭には薔・・・<芥川竜之介「保吉の手帳から」青空文庫>
  2. ・・・蛇行して達しうる人間の実際の方向を、直線によって描き直すことである。もし社会主義の思想が真理であったとしても、もし実行という視角からのみ論ずるならば、その思想の実現に先だって、多くの中間的施設が無数に行なわれねばならぬ。いわゆる社会政策と称・・・<有島武郎「広津氏に答う」青空文庫>
  3. ・・・時々ぽつりと来るのは――樹立は暗いほどだけれど、その雫ばかりではなさそうで、鎮守の明神の石段は、わくら葉の散ったのが、一つ一つ皆蟹になりそうに見えるまで、濡々と森の梢を潜って、直線に高い。その途中、処々夏草の茂りに蔽われたのに、雲の影が映っ・・・<泉鏡花「貝の穴に河童の居る事」青空文庫>
  4. ・・・ 早く解いて流した紅の腹帯は、二重三重にわがなって、大輪の花のようなのを、もろ翼を添えて、白鷺が、すれすれに水を切って、鳥旦那の来り迫る波がしらと直線に、水脚を切って行く。その、花片に、いやその腹帯の端に、キラキラと、虫が居て、青く光っ・・・<泉鏡花「神鷺之巻」青空文庫>
  5. ・・・尤もこういう痼癖がしばしば大きな詩や哲学を作り出すのであるが、二葉亭もまたこの通有癖に累いされ、直線に屈曲を見出し平面に凹凸を捜し出して苦んだり悶いたりした。坦々砥の如き何間幅の大通路を行く時も二葉亭は木の根岩角の凸凹した羊腸折や、刃を仰向・・・<内田魯庵「二葉亭追録」青空文庫>
  6. ・・・ 第四角まで後方の馬ごみに包まれて、黒地に白い銭形紋散らしの騎手の服も見えず、その馬に投票していた少数の者もほとんど諦めかけていたような馬が、最後の直線コースにかかると急に馬ごみの中から抜け出してぐいぐい伸びて行く。鞭は持たず、伏せをし・・・<織田作之助「競馬」青空文庫>
  7. ・・・林の一角、直線に断たれてその間から広い野が見える、野良一面、糸遊上騰して永くは見つめていられない。 自分らは汗をふきながら、大空を仰いだり、林の奥をのぞいたり、天ぎわの空、林に接するあたりを眺めたりして堤の上を喘ぎ喘ぎ辿ってゆく。苦しい・・・<国木田独歩「武蔵野」青空文庫>
  8. ・・・ 線路を、どうしてわざと曲りくねらすのか、それが変だった。直線が一番いゝ筈じゃないか。一寸、そんな気がした、すると、誰れかゞ、「今度ア、伊三郎の田を入れるとて、わざと、あんな青大将のようにうね/\とうねらしてしまったんだぞ。」 ・・・<黒島伝治「浮動する地価」青空文庫>
  9. ・・・どうも凡人は困りますよ、社会を直線ずくめに仕たがるのには困るよ。チト宇宙の真理を見ればよいのサ。政事家は政事家で、自己の議論を実行して世界を画一のものにしようなんという馬鹿気ているのが有るし。文人は文人で自己流の文章を尺度にしてキチンと文体・・・<幸田露伴「ねじくり博士」青空文庫>
  10. ・・・を向いて坐っていたのでは話にもならないが、各々内側に向い合って腰を掛け、作者は語り、読者は聞き、評者は、或いは作者の話に相槌を打ち、或いは不審を訊この頃、馬鹿教授たちがいやにのこのこ出て来て、例えば、直線上に二点を置き、それが作者と読者だと・・・<太宰治「如是我聞」青空文庫>
  11. ・・・その線がふとい鋼鉄の直線のように思われた。その他は誰もない。」「死して、なおすすむ。」「長生をするために生きて居る。」「蹉跌の美。」「Fact だけを言う。私が夜に戸外を歩きまわると、からだにわるいのが痛快にからだにこたえて、よくわかるのだ・・・<太宰治「めくら草紙」青空文庫>
  12. ・・・ 音が空間を描き出すのは、音の伝播が空間的であって光のごとく直線的でないためである。それがためにまたわれわれは音の来る角度を制限することができない。広い視野のうちから一定のわくによって限られた部分だけを切り取って映出するという光学的技法・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  13. ・・・ ロスの方は体躯も動作も曲線的弾性的であるのに対してマックの方は直線的機械的なように見え、また攻勢防勢の駈引も前者の方がより多く複雑なように見えたので、自分は前に見たベーアとカルネラとの試合と比較して、ロスが最後の勝利を占めるのではない・・・<寺田寅彦「映画雑感6[#「6」はローマ数字、1-13-26]」青空文庫>
  14. ・・・下のほうからカメラを上向けに、対眼点を高くしてとったために三人の垂直線が互いに傾き合って天の一方に集中しようとした形に現われ、しかも三人の頭が画面の上端に接近しているのでいっそう不思議な効果を呈するのである。これが単にちょっと一風変わった構・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  15. ・・・ 第二のテーマでは鉛直な直線の断片が自身に並行にS字形の軌跡を描いて動く。トリオの部分は概して水平な短い直線の断片が現われてそれがちょうど編隊飛行の飛行機が風に吹き散らされてでもいるような運動をする。これを見ながら同時にこの曲を聞いてい・・・<寺田寅彦「踊る線条」青空文庫>
  16. ・・・ これらと少し種類はちがうが、紙上に水平に一直線を描いて、その真中から上に垂直に同長の直線を立てると、その垂直線の方が長く見える。顔の長い人が鳥打帽を冠ると余計に顔が長く見えるという説があるが、これもなんだか関係がありそうである。 ・・・<寺田寅彦「観点と距離」青空文庫>
  17. ・・・見下すと河岸の石垣は直線に伸びてやがて正しい角度に曲っている。池かと思うほど静止した堀割の水は河岸通に続く格子戸づくりの二階家から、正面に見える古風な忍返をつけた黒板塀の影までをはっきり映している。丁度汐時であろう。泊っている荷舟の苫屋根が・・・<永井荷風「深川の唄」青空文庫>
  18. ・・・その高低を線で示せば平たい直線では無理なので、やはり幾分か勾配のついた弧線すなわち弓形の曲線で示さなければならなくなる。こんなに説明するとかえって込み入ってむずかしくなるかも知れませんが、学者は分った事を分りにくく言うもので、素人は分らない・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  19. ・・・ 普通犬の鳴き声というものは、後も先も鉈刀で打ち切った薪雑木を長く継いだ直線的の声である。今聞く唸り声はそんなに簡単な無造作の者ではない。声の幅に絶えざる変化があって、曲りが見えて、丸みを帯びている。蝋燭の灯の細きより始まって次第に福や・・・<夏目漱石「琴のそら音」青空文庫>
  20. ・・・二本の足を硬く揃えて、胴と直線に伸ばしていた。自分は籠の傍に立って、じっと文鳥を見守った。黒い眼を眠っている。瞼の色は薄蒼く変った。 餌壺には粟の殻ばかり溜っている。啄むべきは一粒もない。水入は底の光るほど涸れている。西へ廻った日が硝子・・・<夏目漱石「文鳥」青空文庫>
  21. ・・・模様は蝦夷人の着る半纏についているようなすこぶる単純の直線を並べて角形に組み合わしたものに過ぎぬ。彼は時として槍をさえ携える事がある。穂の短かい柄の先に毛の下がった三国志にでも出そうな槍をもつ。そのビーフ・イーターの一人が余の後ろに止まった・・・<夏目漱石「倫敦塔」青空文庫>
  22. ・・・我皇室が万世一系として永遠の過去から永遠の未来へと云うことは、単に直線的と云うことではなく、永遠の今として、何処までも我々の始であり終であると云うことでなければならない。天地の始は今日を始とするという理も、そこから出て来るのである。慈遍は神・・・<西田幾多郎「世界新秩序の原理」青空文庫>
  23. ・・・ 陰鬱の直線の生活! 監獄には曲線がない。煉瓦! 獄舎! 監守の顔! 塀! 窓! 窓によって限られた四角な空! 夜になると浅い眠りに、捕縛される時の夢を見る。眠りが覚めると、監獄の中に寝てるくせに、――まあよかった――と思う。引・・・<葉山嘉樹「牢獄の半日」青空文庫>
  24. ・・・ 直線いほ及びいへは無限に延長せられたるものとし直角ほいへの内は無限大の競技場たるべし。但し実際は本基にて打者の打ちたる球の達する処すなわち限界となる。いろはには正方形にして十五間四方なり。勝負は小勝負九度を重ねて完結する者にして小・・・<正岡子規「ベースボール」青空文庫>
  25. ・・・ 宇宙の真、美が、すべて直線で定規で引いた様には出来て居ない。         ――○―― 自分の専門以外の事について、あまり明らからしい批評的な又、断定的な言葉を放つものではない。 大抵の時には、悪い結果のみを多く得るもの・・・<宮本百合子「雨滴」青空文庫>
  26.   海辺の五時夕暮が 静かに迫る海辺の 五時白木の 質素な窓わくが室内に燦く電燈とかわたれの銀色に隈どられて不思議にも繊細な直線に見える。黝みそめた若松の梢にひそやかな濤のとどろきが通いもしよ・・・<宮本百合子「海辺小曲(一九二三年二月――)」青空文庫>
  27. ・・・ごく曲線的な薄田の演技は、本間教子のどちらかというと直線的なしかも十分ふくらみのあるつよい芸と調和して生かされているので、友代が、あれだけの真情を流露させる力をもたなかったら、おそらくあの芝居全体が、ひどくこしらえもののようにあらわれ、久作・・・<宮本百合子「「建設の明暗」の印象」青空文庫>
  28. ・・・名を忘れたけれども二人の女優のどちらもカスリン・ヘップバーンをもっと鋭角的に直線的に削ったような顔だちであった。一見中性的で、或るかたさ、つめたさが漂っていながら、しかもどっかに激しい女の情慾を感じさせる種類の顔であった。女のようでない、だ・・・<宮本百合子「昨今の話題を」青空文庫>
  29. ・・・両端の丸らかに刳上った幅狭の独木舟が、短かい只一本の櫂を運ぶ双手の直線的な運動につれて、スー、スーと湖面を走る様子は真個に素晴らしゅうございます。私は其の軽快な舸と人との姿を如何那に愛しますでしょう。太陽の明るみが何時か消えて、西岸に聳える・・・<宮本百合子「C先生への手紙」青空文庫>
  30. ・・・丘は街の三条の直線に押し包まれた円錐形の濃密な草原で、気流に従って草は柔かに曲っていた。彼はこの草の中で光に打たれ、街々の望色から希望を吸い込もうとして動かなかった。 彼は働くことが出来なかった。働くに適した思考力は彼の頭脳を痛めるのだ・・・<横光利一「街の底」青空文庫>