ちょこ‐ちょこ例文一覧 20件

  1. ・・・鼠は慣れていると見えて、ちょこちょこ、舞台の上を歩きながら、絹糸のように光沢のある尻尾を、二三度ものものしく動かして、ちょいと後足だけで立って見せる。更紗の衣裳の下から見える前足の蹠がうす赤い。――この鼠が、これから雑劇の所謂楔子を演じよう・・・<芥川竜之介「仙人」青空文庫>
  2. ・・・尾で立ってちょこちょこ歩行いて、鰭で棹を持つのかよ、よう、姉さん。」「そりゃ鰹や、鯖が、棹を背負って、そこから浜を歩行いて来て、軒へ踞むとはいわないけれど、底の知れない海だもの、どんなものが棲んでいて、陽気の悪い夜なんぞ、浪に乗って来よ・・・<泉鏡花「海異記」青空文庫>
  3. ・・・ と軽い返事で、身軽にちょこちょこと茶の間から出た婦は、下膨れの色白で、真中から鬢を分けた濃い毛の束ね髪、些と煤びたが、人形だちの古風な顔。満更の容色ではないが、紺の筒袖の上被衣を、浅葱の紐で胸高にちょっと留めた甲斐甲斐しい女房ぶり。些・・・<泉鏡花「国貞えがく」青空文庫>
  4. ・・・おります、秋からはこうやって棄てられたも同然、私も姨捨山に居ります気で巣守をしますのでざいましてね、いいえ、愚痴なことを申上げますのではございませんが、お米もそこを不便だと思ってくれますか、間を見てはちょこちょこと駆けて来て、袂からだの、小・・・<泉鏡花「政談十二社」青空文庫>
  5. ・・・遣放しに手入れをしないから、根まわり雑草の生えた飛石の上を、ちょこちょことよりは、ふよふよと雀が一羽、羽を拡げながら歩行いていた。家内がつかつかと跣足で下りた。いけずな女で、確に小雀を認めたらしい。チチチチ、チュ、チュッ、すぐに掌の中に入っ・・・<泉鏡花「二、三羽――十二、三羽」青空文庫>
  6. ・・・一ツ目小僧の豆腐買は、流灌頂の野川の縁を、大笠を俯向けて、跣足でちょこちょこと巧みに歩行くなど、仕掛ものになっている。……いかがわしいが、生霊と札の立った就中小さな的に吹当てると、床板ががらりと転覆って、大松蕈を抱いた緋の褌のおかめが、とん・・・<泉鏡花「伯爵の釵」青空文庫>
  7. ・・・ とちと粘って訛のある、ギリギリと勘走った高い声で、亀裂を入らせるように霧の中をちょこちょこ走りで、玩弄物屋の婦の背後へ、ぬっと、鼠の中折を目深に、領首を覗いて、橙色の背広を着、小造りなのが立ったと思うと、「大福餅、暖い!」 ま・・・<泉鏡花「露肆」青空文庫>
  8. ・・・そこへお米の姿が、足袋まで見えてちょこちょこと橋がかりを越えて渡ると、三人の懐へ飛び込むように一団。「御苦労様。」 わがために、見とどけ役のこの人数で、風呂を検べたのだと思うから声を掛けると、一度に揃ってお時儀をして、屋根が萱ぶきの・・・<泉鏡花「眉かくしの霊」青空文庫>
  9. ・・・ 駒下駄のちょこちょこあるきに、石段下、その呉羽の神の鳥居の蔭から、桃割ぬれた結立で、緋鹿子の角絞り。簪をまだささず、黒繻子の襟の白粉垢の冷たそうな、かすりの不断着をあわれに着て、……前垂と帯の間へ、古風に手拭を細く挟んだ雛妓が、殊勝に・・・<泉鏡花「みさごの鮨」青空文庫>
  10. ・・・清さんはチンチンと手鼻をかんでちょこちょこ歩きをする。おとよさんは不興な顔をして横目に見るのである。 今年の稲の出来は三、四年以来の作だ。三十俵つけ一まちにまとまった田に一草の晩稲を作ってある。一株一握りにならないほど大株に肥えてる。穂・・・<伊藤左千夫「隣の嫁」青空文庫>
  11. ・・・ 茶店を出ると、蝉の声を聴きながら私はケーブルの乗場へ歩いて行ったが、ちょこちょこと随いてくる父の老妻の皺くちゃの顔を見ながら、ふとこの婆さんに孝行してやろうと思った。そして、気がつくと、私は「今日も空には軽気球……」とぼそぼそ口ずさん・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  12. ・・・ それはもう式も間近かに迫ったある日のこと、はたの人にすすめられて、美粧院へ行ったかえり、心斎橋筋の雑閙のなかで、ちょこちょここちらへ歩いて来るあの人の姿を見つけ、あらと立ちすくんでいると、向うでも気づき、えへっといった笑い顔で寄って来・・・<織田作之助「天衣無縫」青空文庫>
  13. ・・・荒木はその家の遠縁に当る男らしく、師匠に用事のある顔をして、ちょこちょこ稽古場へ現われては、美しい安子に空しく胸を焦していたが、安子が稽古に通い出して一月許りたったある日、町内に不幸があって師匠がその告別式へ顔出しするため、小一時間ほど留守・・・<織田作之助「妖婦」青空文庫>
  14. ・・・言い終えたら、鼠のような身軽さでちょこちょこ走り去った。「ちえっ! 菊ちゃん、ビイルをおくれ。おめえの色男がかえっちゃった。佐野次郎、呑まないか。僕はつまらん奴を仲間にいれたなあ。あいつは、いそぎんちゃくだよ。あんな奴と喧嘩したら、倒立・・・<太宰治「ダス・ゲマイネ」青空文庫>
  15. ・・・人間が蟻か何かのように妙にちょこちょこと動くのが滑稽でおもしろい。 千篇一律で退屈をきわめる切り合いや追っ駆けのこんなに多く編入されているわけが自分には了解できない。あるいは、これがいちばん費用がかからないためかとも思う。 こういう・・・<寺田寅彦「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」青空文庫>
  16. ・・・幼い岸田劉生氏があるいはそのころ店先をちょこちょこ歩いていたかもしれないという気がする。 新橋詰めの勧工場がそのころもあったらしい。これは言わば細胞組織の百貨店であって、後年のデパートメントストアの予想であり胚芽のようなものであったが、・・・<寺田寅彦「銀座アルプス」青空文庫>
  17. ・・・その中に、数人の浪士が、ちょこちょこと駆けずり回る場面がなんべんとなく繰り返される。なぜああいうふうにぎくしゃくした運動をしなければならないものかと思って見ているうちに、ふいと先刻見た熱帯魚を思い出した。スクリーンの長方形の格好もほぼあのガ・・・<寺田寅彦「試験管」青空文庫>
  18. ・・・ちび猫は三毛を自分の親とでも思いちがえたものか、なつかしそうにちょこちょこ近寄って行って、小さな片方の前足をあげて三毛にさわろうとする。三毛は毒虫にでもさわられたかのように、驚いて尻込みする。それを追いすがって行ってはまた片足を上げる。この・・・<寺田寅彦「ねずみと猫」青空文庫>
  19. ・・・何だかちょこちょことやって、もうそれでいいの」「まあね」「まだ何か食べたいものはないんですか」「もう食べあきた。どこへ行っても同じものばかりで。女を買おうと思えば、少しいいのは皆んな封鎖だろう」「そういったような工合だけれど・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  20. ・・・「まあとんでもございません。ちょこちょこと致せば何のこともありは致しません。――私も北海道なぞとあんな遠いところへつれてっていただきましたが、東海道は始めてでございますから――こんな結構なところ拝見させていただきまして」 佐和子は、・・・<宮本百合子「海浜一日」青空文庫>