ちょ‐しゃ【著者】例文一覧 30件

  1.  これは自分より二三年前に、大学の史学科を卒業した本間さんの話である。本間さんが維新史に関する、二三興味ある論文の著者だと云う事は、知っている人も多いであろう。僕は昨年の冬鎌倉へ転居する、丁度一週間ばかり前に、本間さんと一し・・・<芥川竜之介「西郷隆盛」青空文庫>
  2. ・・・聞説す、かのガリヴァアの著者は未だ論理学には熟せざるも、議論は難からずと傲語せしと。思うにスヰフトも親友中には、必恒藤恭の如き、辛辣なる論客を有せしなるべし。 恒藤は又謹厳の士なり。酒色を好まず、出たらめを云わず、身を処するに清白なる事・・・<芥川竜之介「恒藤恭氏」青空文庫>
  3. ・・・単に著者の個人性が明らかに印象せられたというに止まりはしないだろうか。 私は年長の人と語るごとにその人のなつかしい世なれた風に少からず酔わされる。文芸の上ばかりでなく温かき心をもってすべてを見るのはやがて人格の上の試錬であろう。世なれた・・・<芥川竜之介「日光小品」青空文庫>
  4. ・・・ その時分クララは著者の知れないある古い書物の中に下のような文句を見出した。「肉に溺れんとするものよ。肉は霊への誘惑なるを知らざるや。心の眼鈍きものはまず肉によりて愛に目ざむるなり。愛に目ざめてそを哺むものは霊に至らざればやまざ・・・<有島武郎「クララの出家」青空文庫>
  5. ・・・ひそかに思うに、著者のいわゆる近代の御伽百物語の徒輩にあらずや。果してしからば、我が可懐しき明神の山の木菟のごとく、その耳を光らし、その眼を丸くして、本朝の鬼のために、形を蔽う影の霧を払って鳴かざるべからず。 この類なおあまたあり。しか・・・<泉鏡花「遠野の奇聞」青空文庫>
  6. ・・・軍記物語の作者としての馬琴は到底『三国志』の著者の沓の紐を解くの力もない。とはいうものの『八犬伝』の舞台をして規模雄大の感あらしめるのはこの両管領との合戦記であるから、最後の幕を飾る場面としてまんざら無用でないかも知れない。 が、『八犬・・・<内田魯庵「八犬伝談余」青空文庫>
  7. ・・・平たくいうと、当時は硯友社中は勿論、文学革新を呼号した『小説神髄』の著者といえども今日のように芸術を深く考えていなかった。ましてや私の如きただの応援隊、文壇のドウスル連というようなものは最高文学に対する理解があるはずがなかった。面白ずくに三・・・<内田魯庵「二葉亭余談」青空文庫>
  8. ・・・そこには、著者の個性があり、また感情があります。従って、これを好むと好まざるとは、互の素質に因らなければなりません。殊に、文学や、芸術に関するものに於て、このことがいわれます。 ある種の文体は、それを好む人達にとって魅力があるにしても、・・・<小川未明「書を愛して書を持たず」青空文庫>
  9. ・・・しかしすぐれた倫理学を熟読するならば、いかに著者の人間が誠実に、熱烈に、条理をつくして、その全容を表現しているかを見出して、敬慕の念を抱かずにはいられないであろう。それは文芸の傑作に触れた感動にも劣るものではない。そしてその感染性とわれわれ・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  10. ・・・そしてそのような他人の労作の背後には人間共存の意識が横たわっているのであり、著者たちはその共生の意識から書を共存者へと贈ったものである。 したがって、書を読むとはかような共存感からの他人の贈る物を受けることを意味する。 人間共存のシ・・・<倉田百三「学生と読書」青空文庫>
  11. ・・・ら出発して、名高いアルプスのマッターホルンを世界始まって以来最初に征服致しましょうと心ざし、その翌十四日の夜明前から骨を折って、そうして午後一時四十分に頂上へ着きましたのが、あの名高いアルプス登攀記の著者のウィンパー一行でありました。その一・・・<幸田露伴「幻談」青空文庫>
  12. ・・・という川端康成氏の短篇集の扉には、夢川利一様、著者、と毛筆で書かれて在って、それは兄が、伊豆かどこかの温泉宿で川端さんと知り合いになり、そのとき川端さんから戴いた本だ、ということになっていたのですが、いま思えば、これもどうだか、こんど川端さ・・・<太宰治「兄たち」青空文庫>
  13. ・・・が新潮社から出版せられて、私はその頃もう高等学校にはいっていたろうか、何でも夏休みで、私は故郷の生家でそれを読み、また、その短篇集の巻頭の著者近影に依って、井伏さんの渋くてこわくて、にこりともしない風貌にはじめて接し、やはり私のかねて思いは・・・<太宰治「『井伏鱒二選集』後記」青空文庫>
  14. ・・・あなたは黄表紙の作者でもあれば、ユリイカの著者でもある。『殴られる彼奴』とはあなたにとって薄笑いにすぎない。あなたがあやつる人生切り紙細工は大南北のものの大芝居の如く血をしたたらせている。あまり、煩さい無駄口はききますまい。ヴァレリイが俗っ・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  15. ・・・彼の日常生活はおそらく質素なものであろう。学者の中に折々見受けるような金銭に無関心な人ではないらしい。彼の著者の翻訳者には印税のかなりな分け前を要求して来るというような噂も聞いた。多くの日本人には多少変な感じもするが、ドイツ人という者を知っ・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  16. ・・・無論記事の全責任は記者すなわち著者にあることが特に断ってある。 一体人の談話を聞いて正当にこれを伝えるという事は、それが精密な科学上の定理や方則でない限り、厳密に云えばほとんど不可能なほど困難な事である。たとえ言葉だけは精密に書き留めて・・・<寺田寅彦「アインシュタインの教育観」青空文庫>
  17. ・・・明治七年に刊行せられた東京新繁昌記中に其の著者服部撫松は都下の温泉場を叙して、「輓近又処々ニ温泉場ヲ開クモノアリ。各諸州有名ノ暄池ヲ以テ之ニ名ク。曰ク伊豆七湯、曰ク有馬温泉、曰ク何、曰ク何ト。蓋シ其温泉或ハ湯花ヲ汲来ツテ之ヲ湯中ニ和スト云フ・・・<永井荷風「上野」青空文庫>
  18. ・・・尤も日本の女が外から見える処で行水をつかうのは、『阿菊さん』の著者を驚喜せしめた大事件であるが、これはわざわざ天下堂の屋根裏に登らずとも、自分は山の手の垣根道で度々出遇ってびっくりしているのである。この事を進めていえば、これまで種々なる方面・・・<永井荷風「銀座」青空文庫>
  19. ・・・つまりああいう著者には人間がたいてい同様にぼうっと見えたのでありましょう。分化作用の発展した今日になると人間観がそう鷹揚ではいけない。彼らの精神作用について微妙な細い割り方をして、しかもその割った部分を明細に描写する手際がなければ時勢に釣り・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  20. ・・・が果してそれ丈の価値があるかないかは著者の分として言うべき限りでないと思う。ただ自分の書いたものが自分の思う様な体裁で世の中へ出るのは、内容の価値如何に関らず、自分丈は嬉しい感じがする。自分に対しては此事実が出版を促がすに充分な動機である。・・・<夏目漱石「『吾輩は猫である』上篇自序」青空文庫>
  21. ・・・ それ故西洋諸国の出版業者が、著者に対する尊敬と読者に対する愛敬とからして、やや高尚なる文学書類を多くパンフレツトで出版するのは、さもあるべき筈のことではないか。この仕方で出版された書物は、その特種なる国民的趣味を代表する表紙の一色によ・・・<萩原朔太郎「装幀の意義」青空文庫>
  22. ・・・だがその二つの資格をもつ読者にとつて、ニイチェほど興味が深く、無限に深遠な魅力のある著者は外にない。ニイチェの驚異は、一つの思想が幾つも幾つもの裏面をもち、幾度それを逆説的に裏返しても、容易に表面の絵札が現れて来ないことである。我々はニイチ・・・<萩原朔太郎「ニイチェに就いての雑感」青空文庫>
  23. ・・・その趣は、著者と読者との間に誤解を生じ、教育と学者との間に意味の通ぜざるが如し。すでに誤解を生じて意味の通ぜざることあれば、その本意の性質にかかわらず、これを不十分なりといわざるをえず。 然りといえども世の中の事はすべて平均をもって成る・・・<福沢諭吉「小学教育の事」青空文庫>
  24. ・・・じつにこれは著者の心象中に、このような状景をもって実在したドリームランドとしての日本岩手県である。そこでは、あらゆることが可能である。人は一瞬にして氷雲の上に飛躍し大循環の風を従えて北に旅することもあれば、赤い花杯の下を行く蟻と語る・・・<宮沢賢治「『注文の多い料理店』新刊案内」青空文庫>
  25. ・・・治安維持法と戦争との長い年月の間はじめの二冊の文芸評論集は発禁になっていた。著者が十二年間の獄中生活から解放されてから、『敗北の文学』『人民の文学』が出版された。著者が序文でいっているように「敗北の文学」は一九二九年に二十三歳でかかれたもの・・・<宮本百合子「巖の花」青空文庫>
  26.  だいぶ古いことですが、イギリスの『タイムズ』という一流新聞の文芸附録に『乞食から国王まで』という本の紹介がのっていました。著者は四〇歳を越した一人の看護婦でした。二〇年余の看護婦としての経験と彼女の優秀な資格は、ロンドン市・・・<宮本百合子「生きるための協力者」青空文庫>
  27. ・・・もし佐橋甚五郎が事に就いて異説を知っている人があるなら、その出典と事蹟の大要とを書いて著者の許に投寄してもらいたい。大正二年三月記。<森鴎外「佐橋甚五郎」青空文庫>
  28. ・・・指せられた誤は著者訳者の不学無識から生じたものとして罪せられる。縦い正誤してから後に心附いていても罪せられることは同じである。翻訳の上では、世間が期待と興味とを以て歓迎する誤訳問題がここに成り立つ。最初文芸委員会がファウストを訳することを私・・・<森鴎外「訳本ファウストについて」青空文庫>
  29. ・・・りに成立したものであるならば、『多胡辰敬家訓』などと同じ古さのものとして取り扱われなくてはならないが、しかしそれに対する批判はすでに十八世紀の初め、宝永のころから行なわれているのであって、それによると著者は、江戸時代初期の軍学者小幡勘兵衛景・・・<和辻哲郎「埋もれた日本」青空文庫>
  30. 『青丘雑記』は安倍能成氏が最近六年間に書いた随筆の集である。朝鮮、満州、シナの風物記と、数人の故人の追憶記及び友人への消息とから成っている。今これをまとめて読んでみると、まず第一に著者の文章の円熟に打たれる。文章の極致は、透明無色なガラ・・・<和辻哲郎「『青丘雑記』を読む」青空文庫>