ちょ‐ちく【貯蓄】例文一覧 18件

  1. ・・・資本家というものを仮借なく敵視した時代もあったが、これ等の欲深者も死ぬ時には枕許に山程の財宝を積みながら、身には僅かに一枚の経帷衣をつけて行くに過ぎざるのを考えると、おかしくなるばかりでなく、こうした貯蓄者があればこそ地上の富が保存されるの・・・<小川未明「春風遍し」青空文庫>
  2. ・・・ 父は私の躯についている薬の匂いをいやがったので、私は間もなく病院の雑役夫をよして、ある貯蓄会社の外交員になりました。貯金の宣伝は紙芝居でずいぶんやったし、それに私の経歴が経歴ですから、われながら苦笑するくらいの適任だと言えるわけですが・・・<織田作之助「アド・バルーン」青空文庫>
  3. ・・・ 役所は免められ、眼はとうとう片方が見えなくなり片方は少し見えても物の役には立たず、そのうち少しの貯蓄はなくなってしまいました。それから今の姿におちぶれたのでございますが、今ではこれを悲しいとも思いません、ただ自分で吹く尺八の音につれて・・・<国木田独歩「女難」青空文庫>
  4. ・・・三十円ばかり貯蓄しているから、往復の旅費と土産物とで二十円あったらよかろうと思う。三十円みんな費ってしまうと後で困るからね」というのを聞いて僕は今さらながら彼の用意のほどに感じ入った。彼の話によると二年前からすでに帰省の計画を立ててそのつも・・・<国木田独歩「非凡なる凡人」青空文庫>
  5. ・・・ 次郎や、末子をそばに置いて、私は若いさかりの子供らが知らない貯蓄の誘惑に気を腐らした。あるところにはあり過ぎるような金から見たら、おそらく二万円ぐらいはなんでもないかもしれない。しかし、ないところにはなさ過ぎる金から見たら、それだけま・・・<島崎藤村「分配」青空文庫>
  6. ・・・ベーアはできるだけエネルギーを節約し貯蓄しておいて、稀有な有利の瞬間をねらいすまして一ぺんに有りったけの力を集注するという作戦計画と見られた。十回目あたりからベーアのつけていた注文の時機が到来したと見えて猛烈をきわめた連発的打撃に今までたく・・・<寺田寅彦「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」青空文庫>
  7. ・・・五六人の女婢手を束ねて、ぼんやり客俟の誰彼時、たちまちガラ/\ツとひきこみしは、たしかに二人乗の人力車、根津の廓からの流丸ならずば権君御持参の高帽子、と女中はてん/″\に浮立つゝ、貯蓄のイラツシヤイを惜気もなく異韻一斉さらけだして、急ぎいで・・・<永井荷風「上野」青空文庫>
  8.  今日家庭というものを考える私たちの心持は、おのずから多面複雑だと思う。 家庭は今日大事とされている。貯蓄のことも、生めよ、殖せよということも、モラル粛正も、専ら家庭内の実行にかけられている。 昨夜の夕刊には、大蔵省・・・<宮本百合子「家庭と学生」青空文庫>
  9. ・・・ いくらかまとまった金が入ったにしろ、かねての借金にそれがまわると思えば貯蓄も現実に不可能である。生活の合理化ということも、その根本は、漁村生産方法の合理化と、最低限の生活の確保ということに、漁村の女の関心が向けられなければならないので・・・<宮本百合子「漁村の婦人の生活」青空文庫>
  10. ・・・本多式貯蓄法、林学博士本多静六。広告にそうかかれている。よほど以前にもこの博士の節倹貯蓄に関する法を語った文章を大衆的な雑誌でみたことがあったが、私は一種の感慨をもってその広告を眺めた。林学博士と云えば、農学の一部で、それは自然科学の分野に・・・<宮本百合子「市民の生活と科学」青空文庫>
  11. ・・・この作者が歴史の進歩的な面への共感によって生きようとしている限り、よしんば偶然によって貯蓄された経験であろうとも、真摯な芸術化の過程を通じて真に作者を発展せしめる社会的な必然の内容となし得るのであるから。真の収穫はいわばこれからともいい得る・・・<宮本百合子「十月の文芸時評」青空文庫>
  12. ・・・同時に、きょうの社会現象のあれこれが、未亡人の官製全国組織に、かつて軍時貯蓄勧誘に尽力した某女史が再登場しているということまでふくめて、細密に観察され評価されてゆくことも、必要である。そして、双方ともにそれぞれの意義をもっている二つの研究に・・・<宮本百合子「戦争はわたしたちからすべてを奪う」青空文庫>
  13. ・・・従って、貯蓄はない。 二人の分を合わせて三百円もあるだろうか。 朝、大抵八時半から九時半までに起る。朝飯後、一時頃まで書きつづけて食事にする。 それから髪を結い、日当ぼっこをし乍ら、読んだり、小さいものを書く。三四時頃Aが帰宅し・・・<宮本百合子「小さき家の生活」青空文庫>
  14. ・・・若し、それが幸一月や二月位の病患ならば自身の貯蓄を費し尽しても、或は幾分かが雇主の負担と成るにしろ、全然耐ゆべからざるほどのことではないかもしれません。けれども、それが、幾年も幾年も継続する種々な重い慢性病の一つだったら如何でしょう。 ・・・<宮本百合子「ひしがれた女性と語る」青空文庫>
  15. ・・・――永年の宿望を遂げて、貯蓄した金でさて一軒建てようという人々のように、騙されやしまいかと心配したり一円でも廉くていいものを使いたいとか、こせついて癪に触るようなさもしいところが、飯田の奥さんにはちっともなかった。――が、後見の手塚準之助が・・・<宮本百合子「牡丹」青空文庫>
  16. ・・・強制貯金をさせるという気はないという意味にとれる答えが、いくつかの答えの中にあったが、その朝、貯蓄組合加入の紙が市役所のビラと一緒に町会からまわって来て、各戸最低五十銭以上の貯蓄をすすめられているものには、では、あれはちがうのかしら、と思わ・・・<宮本百合子「待呆け議会風景」青空文庫>
  17. ・・・人民の貯蓄は、昨年末から、大干潮のように減少しつづけた。反対に、物価は、上へ、上へと、のぼりつめて、二本の線を、もすこしのばせば、其は完全な十の字となってぶっちがうところ迄来た。モラトリアムをしくしか、政府のうつべき手はなかったのである。・・・<宮本百合子「私たちの建設」青空文庫>
  18. ・・・彼と我れとの相違は、いわば十露盤の桁が違っているだけで、喜助のありがたがる二百文に相当する貯蓄だに、こっちはないのである。 さて桁を違えて考えてみれば、鳥目二百文をでも、喜助がそれを貯蓄と見て喜んでいるのに無理はない。その心持ちはこっち・・・<森鴎外「高瀬舟」青空文庫>