ちょっ‐かく〔チヨク‐〕【直覚】例文一覧 30件

  1. ・・・兵衛は甚太夫と立合いながら、そう云う心もちを直覚すると、急に相手が憎くなった。そこで甚太夫がわざと受太刀になった時、奮然と一本突きを入れた。甚太夫は強く喉を突かれて、仰向けにそこへ倒れてしまった。その容子がいかにも見苦しかった。綱利は彼の槍・・・<芥川竜之介「或敵打の話」青空文庫>
  2. ・・・達雄は妙子を愛している、――そう女主人公は直覚するのですね。のみならずこの不安は一日ましにだんだん高まるばかりなのです。 主筆 達雄はどう云う男なのですか? 保吉 達雄は音楽の天才です。ロオランの書いたジャン・クリストフとワッセルマ・・・<芥川竜之介「或恋愛小説」青空文庫>
  3. ・・・江口の批評家としての強味は、この微妙な関係を直覚出来る点に存していると思う。これは何でもない事のようだが、存外今の批評家に欠乏している強味なのだ。 最後に創作家としての江口は、大体として人間的興味を中心とした、心理よりも寧ろ事件を描く傾・・・<芥川竜之介「江口渙氏の事」青空文庫>
  4. ・・・ お蓮はそう尋ねながら、相手の正体を直覚していた。そうしてこの根の抜けた丸髷に、小紋の羽織の袖を合せた、どこか影の薄い女の顔へ、じっと眼を注いでいた。「私は――」 女はちょいとためらった後、やはり俯向き勝に話し続けた。「私は・・・<芥川竜之介「奇怪な再会」青空文庫>
  5. ・・・が、不思議に新らしい傾向を直覚する明敏な頭を持っていて、魯文門下の「江東みどり」から「正直正太夫」となると忽ち逍遥博士と交を訂し、続いて露伴、鴎外、万年、醒雪、臨風、嶺雲、洒竹、一葉、孤蝶、秋骨と、絶えず向上して若い新らしい知識に接触するに・・・<内田魯庵「斎藤緑雨」青空文庫>
  6. ・・・五十近い働き者の女の直覚から、「やっぱしだめだ。まだまだこんな人相をしてるようでは金なぞ儲けれはせん。生活を立てているという盛りの男の顔つきではない。やっぱしよたよたと酒ばかし喰らっては、悪遊びばかししていたに違いない」腹ではこう思っている・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  7. ・・・むずかしく言えば一種霊活な批評眼を備えていた人、ありていに言えば天稟の直覚力が鋭利である上に、郷党が不思議がればいよいよ自分もよけいに人の気質、人の運命などに注意して見るようになり、それがおもしろくなり、自慢になり、ついに熟練になったのであ・・・<国木田独歩「河霧」青空文庫>
  8. ・・・『彼人がどうしてまた東京に来たろう、』自分は自分の直覚を疑ってはまた確かめてその後、ある友人にもかれのことを話して見たが、友は小首を傾けたばかりであった。その後二週間ほどたって、自分は用談の客と三時間ばかり相談をつづけ、客が帰ったあとで、や・・・<国木田独歩「まぼろし」青空文庫>
  9. ・・・道徳価値の把握は知的作用によらず、情緒的な直覚によって価値感知されるのである。これがシェーラーのいわゆる情緒的直覚主義の立場である。シェーラーはさらに価値の等級を直観するアプリオリの等級感があるといい、ある意欲対象である価値が、他の意欲のそ・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  10. ・・・彼はその活きたくにへの愛護の本能によって、大蒙古の侵逼を直覚し、この厄難から、祖国を守らんがために、身の危険を忘れて、時の政権の把持者を警諫した。彼は国本を正しくすることによって、世を済い、人間の精神を建てなおすことによって国を建てなおそう・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  11. ・・・ 私は自分の運命を直覚した。これは、しまった。私は学生の姿である。三十二歳の酔詩人ではなかった。ちょっとのお詫びでは、ゆるされそうもない。絶体絶命。逃げようか。「おい、おい。」重ねて呼ばれて、はっと我に帰った。私は、草原の中・・・<太宰治「乞食学生」青空文庫>
  12. ・・・ながく躊躇をすればするほどこれはいよいよ薄気味わるいことになりそうだな、とそう直覚したので、私は自分にもなんのことやら意味の分らぬ微笑を無理して浮べながら、その男の坐っている縁台の端に腰をおろした。「けさ、とても固いするめを食ったものだ・・・<太宰治「ダス・ゲマイネ」青空文庫>
  13. ・・・智慧を伴わない直覚は、アクシデントに過ぎない。まぐれ当りさ。飲みましょう、乾杯。談じ合いましょう。我らの真の敵は無言だ。どうも、言えば言うほど不安になって来る。誰かが袖をひいている。そっと、うしろを振りかえってみたい気持。だめなんだなあ、や・・・<太宰治「渡り鳥」青空文庫>
  14. ・・・もっともこの空間論も大分難物のようで、ニュートンと云う人は空間は客観的に存在していると主張したそうですし、カントは直覚だとか云ったそうですから、私の云う事は、あまり当にはなりません。あなた方が当になさらんでも、私はたしかにそう思ってるんだか・・・<夏目漱石「文芸の哲学的基礎」青空文庫>
  15. ・・・真理は相対論者のいう如く相対的なものではなく、いわゆる直覚論者のいう如くに一度的に決定的なものでもない。問題は無限の解決を含み、解決は無限の問題を含んでいるのである。私がかつて歴史的世界は課題において自己同一を有つといったことも、此から理解・・・<西田幾多郎「デカルト哲学について」青空文庫>
  16. ・・・概念的体系に捕われて案外に内容の貧弱なものよりも、かえって直覚的な物の見方考え方において優れた所があるかと思う。私は考えるに、ギリシャ哲学には深い思索的な概念的な所と、美しい芸術的な、直感的な所があった。前者はドイツ人がこれを伝え、後者はフ・・・<西田幾多郎「フランス哲学についての感想」青空文庫>
  17. ・・・を感覚上の趣味によつて象徴し、色や、影や、気分や、紙質やの趣き深き暗示により、彼の敏感の読者にまで直接「思想の情感」を直覚させるであらうところの装幀――に関して、多少の行き届いた良心と智慧とをもつてゐる文学者たちは、決していつも冷淡であるこ・・・<萩原朔太郎「装幀の意義」青空文庫>
  18. ・・・彼がこの文章の形式を選んだのは、一つには彼の肉体が病弱で、体系を有する大論文を書くに適しなかつた為もあらうが、実にはこの形式の表現が、彼のユニイクな直覚的の詩想や哲学と適応して居り、それが唯一最善の方法であつたからである。アフォリズムとは、・・・<萩原朔太郎「ニイチェに就いての雑感」青空文庫>
  19. ・・・元来私は、磁石の方角を直覚する感官機能に、何かの著るしい欠陥をもった人間である。そのため道のおぼえが悪く、少し慣れない土地へ行くと、すぐ迷児になってしまった。その上私には、道を歩きながら瞑想に耽る癖があった。途中で知人に挨拶されても、少しも・・・<萩原朔太郎「猫町」青空文庫>
  20. ・・・そして宝石のある山へ行くと、奇体に足が動かない。直覚だねえ。いや、それだから、却って困ることもあるよ。たとえば僕は一千九百十九年の七月に、アメリカのジャイアントアーム会社の依嘱を受けて、紅宝玉を探しにビルマへ行ったがね、やっぱりいつか足は紅・・・<宮沢賢治「楢ノ木大学士の野宿」青空文庫>
  21. ・・・これらはみんな畜産の、その教師の語気について、豚が直覚したのである。(とにかくあいつら二人は、おれにたべものはよこすが、時々まるで北極の、空のような眼をして、おれのからだをじっと見る、実に何ともたまらない、とりつきばもないようなきびしいここ・・・<宮沢賢治「フランドン農学校の豚」青空文庫>
  22. ・・・ 有島さんは非常に人を観るの直覚力が鋭くあったようですが、従ってその死に対しても可なり深い理智の力によってそれを見通されたことではあろうが、人間の力は単に、人間の脳力によって肯定され否定され得る理智の力、即ち首から上の事だけで解決の出来・・・<宮本百合子「有島さんの死について」青空文庫>
  23. ・・・人情によって理解し、直覚し得たところを、理想に燃える知で文学にした。情と知とを二分別し得るものとすれば、彼は第一に情の人で、それを粗野に取扱われなかった情そのもののデリカシーと、後天的の品とがあったのだ。「此点は、私に性格の或類似からよ・・・<宮本百合子「有島武郎の死によせて」青空文庫>
  24. ・・・けれども、その動機に鋭い直覚を持つ者は、切角の施物も、苦々しく味わうことは無いだろうか。 反対の或る一部は、まるで無感覚な状態に在る。ぼんやりと、耳を掠める風聞。――然し、兎も角、自分達の口腹の慾は満たされて行くのだし……必要なら、誰か・・・<宮本百合子「アワァビット」青空文庫>
  25. ・・・ 結局は、栄蔵の顔を見た瞬間に直覚した通り金の融通で、毎月十円ずつ出してくれと云った。 凡そ一年も出してもらえたらと栄蔵は云ったけれ共病気の性をよくしって居る主婦は、とうていそれだけの間になおらない事を知って居たし、沢山の子供の学費・・・<宮本百合子「栄蔵の死」青空文庫>
  26. ・・・そんならと云って、教育のない、信仰のある人が、直覚的に神霊の存在を信じて、その間になんの疑をも挿まないのとも違うから、自分の祭をしているのは形式だけで、内容がない。よしや、在すが如く思おうと努力していても、それは空虚な努力である。いやいや。・・・<森鴎外「かのように」青空文庫>
  27. ・・・しかしその本能的な直覚においては内生の雑駁な統一の力の弱い文明人よりはるかに鋭いのである。恐らく美に対するその全存在的な感激において、当時の我々の祖先はその後のどの時代の子孫よりも優っていただろう。彼らを新しい運動に引き入れたのは、確かに芸・・・<和辻哲郎「偶像崇拝の心理」青空文庫>
  28. ・・・ 感受性が鋭く、内生が豊富で、象徴を解する強い直覚力を豊かに獲得しているものはさまざまな対象の生命の動きを自己の内に深く感じ得るだろう。彼らは外に現われたさまざまな現象を見るのみならず、その内部の生命に力強く没入し行く。彼らの感ずるのは・・・<和辻哲郎「「自然」を深めよ」青空文庫>
  29. ・・・先生は相手の心の純不純をかなり鋭く直覚する。そうして相手の心を細かい隅々にわたって感得する。先生の心臓は活発にそれに反応するが、しかし先生はそれだけを露骨に発表することを好まなかった。先生は親切を陰でする、そうして顔を合わせた時にその親切に・・・<和辻哲郎「夏目先生の追憶」青空文庫>
  30. ・・・人の世を超越して宇宙の神秘を直覚したる心霊は衆を化し群を悟らす時初めて完全である。吾人の心は安逸を貪るべきでない。真と義と愛と荘とのためにあらゆる必死の奮闘を要す。精神が「義」に猛烈なる執着をなせば犠牲の念は忽然として翼をのぶ。ニュウトンと・・・<和辻哲郎「霊的本能主義」青空文庫>