ちょろ‐ちょろ例文一覧 29件

  1. ・・・五軒目には人が住んでいたがうごめく人影の間に囲炉裡の根粗朶がちょろちょろと燃えるのが見えるだけだった。六軒目には蹄鉄屋があった。怪しげな煙筒からは風にこきおろされた煙の中にまじって火花が飛び散っていた。店は熔炉の火口を開いたように明るくて、・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  2. ・・・そして自分の家の方を見ると、さっきまで真暗だったのに、屋根の下の所あたりから火がちょろちょろと燃え出していた。ぱちぱちとたき火のような音も聞こえていた。ポチの鳴き声もよく聞こえていた。 ぼくの家は町からずっとはなれた高台にある官舎町にあ・・・<有島武郎「火事とポチ」青空文庫>
  3. ・・・と、鮹が真前にちょろちょろと松の木の天辺へ這って、脚をぶらりと、「藤の花とはどうだの、下り藤、上り藤。」と縮んだり伸びたり。 烏賊が枝へ上って、鰭を張った。「印半纏見てくんねえ。……鳶職のもの、鳶職のもの。」 そこで、蛤が貝・・・<泉鏡花「瓜の涙」青空文庫>
  4. ・・・谿河の水に枕なぞ流るるように、ちょろちょろと出て、山伏の裙に絡わると、あたかも毒茸が傘の轆轤を弾いて、驚破す、取て噛もう、とあるべき処を、――「焼き食おう!」 と、山伏の、いうと斉しく、手のしないで、数珠を振って、ぴしりと打って、不・・・<泉鏡花「木の子説法」青空文庫>
  5. ・・・走りもとの破れた芥箱の上下を、ちょろちょろと鼠が走って、豆洋燈が蜘蛛の巣の中に茫とある……「よう、買っとくれよ、お弁当は梅干で可いからさ。」 祖母は、顔を見て、しばらく黙って、「おお、どうにかして進ぜよう。」 と洗いさした茶・・・<泉鏡花「国貞えがく」青空文庫>
  6. ・・・ ゆるい、はけ水の小流の、一段ちょろちょろと落口を差覗いて、その翁の、また一息憩ろうた杖に寄って、私は言った。 翁は、頭なりに黄帽子を仰向け、髯のない円顔の、鼻の皺深く、すぐにむぐむぐと、日向に白い唇を動かして、「このの、私がい・・・<泉鏡花「小春の狐」青空文庫>
  7. ・・・ 私はこう下を向いて来かかったが、目の前をちょろちょろと小蛇が一条、彼岸過だったに、ぽかぽか暖かったせいか、植木屋の生垣の下から道を横に切って畠の草の中へ入った。大嫌だから身震をして立留ったが、また歩行き出そうとして見ると、蛇よりもっと・・・<泉鏡花「政談十二社」青空文庫>
  8. ・・・…… 山の根から湧いて流るる、ちょろちょろ水が、ちょうどここで堰を落ちて、湛えた底に、上の鐘楼の影が映るので、釣鐘の清水と言うのである。 町も場末の、細い道を、たらたらと下りて、ずッと低い処から、また山に向って径の坂を蜒って上る。そ・・・<泉鏡花「夫人利生記」青空文庫>
  9. ・・・ 椎の樹婆叉の話を聞くうちに、ふと見ると、天井の車麩に搦んで、ちょろちょろと首と尾が顕われた。その上下に巻いて廻るのを、蛇が伝う、と見るとともに、車麩がくるくると動くようで、因果車が畝って通る。……で悚気としたが、熟と視ると、鼠か、溝鼠・・・<泉鏡花「古狢」青空文庫>
  10. ・・・ばたばたと廊下へ続くと、洗面所の方へ落ち合ったらしい。ちょろちょろと水の音がまた響き出した。男の声も交じって聞こえる。それが止むと、お米が襖から円い顔を出して、「どうぞ、お風呂へ。」「大丈夫か。」「ほほほほ。」 とちとてれた・・・<泉鏡花「眉かくしの霊」青空文庫>
  11. ・・・ その近山の裾は半ば陰ったが、病院とは向う合せに、この畷から少し低く、下りめになって、陽の一杯に当る枯草の路が、ちょろちょろとついて、その径と、畷の交叉点がゆるく三角になって、十坪ばかりの畑が一枚。見霽の野山の中に一つある。一方が広々と・・・<泉鏡花「みさごの鮨」青空文庫>
  12. ・・・、内に入りますと貴方どうでございましょう、土間の上に台があって、荒筵を敷いてあるんでございますよ、そこらは一面に煤ぼって、土間も黴が生えるように、じくじくして、隅の方に、お神さんと同じ色の真蒼な灯が、ちょろちょろと点れておりました。とお・・・<泉鏡花「湯女の魂」青空文庫>
  13. ・・・「お京さん、いきなり内の祖母さんの背中を一つトンと敲いたと思うと、鉄鍋の蓋を取って覗いたっけ、勢のよくない湯気が上る。」 お米は軽く鬢を撫でた。「ちょろちょろと燃えてる、竈の薪木、その火だがね、何だか身を投げた女をあぶって暖めて・・・<泉鏡花「縷紅新草」青空文庫>
  14. ・・・ちょうどこのとき、太陽は、ちょろちょろと、白い煙をあげている煙突に向かって、「このごろは、なかなかお忙しいようだが、おもしろいことがありますか。」と、にこやかに笑って、太陽は聞きました。 煙突は、いつもは、黙って、陰気な顔をしてふさ・・・<小川未明「煙突と柳」青空文庫>
  15. ・・・ みけは かんがえながら おうちへ かえると、ちょうど ねずみが、まどの 上へ ちょろちょろと のぼりました。 これを みつけた みけは 目を まるく しました。 ねずみは といを つたって、えだに ついた 赤い かきを たべに・・・<小川未明「みけの ごうがいやさん」青空文庫>
  16. ・・・どそんな噂が立つのも無理はあるまいという想いにいきなり胸をつかれたが、同時に佐伯の生活にはもはや耳かきですくうほどの希望も感動も残っていず、今は全く青春に背中を向け、おまけにその背中を悔恨と焦躁の火でちょろちょろ焼かれているのではないかと思・・・<織田作之助「道」青空文庫>
  17. ・・・窪地には、泉からちょろちょろ流れ出す水がたまって、嘉七の背中から腰にかけて骨まで凍るほど冷たかった。 おれは、生きた。死ねなかったのだ。これは、厳粛の事実だ。このうえは、かず枝を死なせてはならない。ああ、生きているように、生きているよう・・・<太宰治「姥捨」青空文庫>
  18. ・・・君はまさしく安易な逃げ路を捜してちょろちょろ走り廻っている鼬のようです。実に醜い。君は作品の誠実を、人間の誠実と置き換えようとしています。作家で無くともいいから、誠実な人間でありたい。これはたいへん立派な言葉のように聞えますが、実は狡猾な醜・・・<太宰治「風の便り」青空文庫>
  19. ・・・こんな工合いに、耳朶をちょろちょろとくすぐりながら通るのは、南風の特徴である。 見渡したところ、郊外の家の屋根屋根は、不揃いだと思わないか。君はきっと、銀座か新宿のデパアトの屋上庭園の木柵によりかかり、頬杖ついて、巷の百万の屋根屋根をぼ・・・<太宰治「彼は昔の彼ならず」青空文庫>
  20. ・・・はじめ軒端を伝って、ちょろちょろ、まるで鼠のように、青白い焔が走って、のこぎりの歯の形で、三角の小さい焔が一列に並んでぽっと、ガス燈が灯るように軒端に灯って、それから、ふっと消える。軒端の材木から、熱のためにガスが噴き出て、それに一先ず点火・・・<太宰治「春の盗賊」青空文庫>
  21. ・・・捨てられた新聞紙が、風に吹かれて、広い道路の上を模型の軍艦のように、素早くちょろちょろ走っていました。道路は、川のように広いのです。電車のレエルが無いから、なおの事、白くだだっ広く見えるのでしょう。万代橋も渡りました。信濃川の河口です。別段・・・<太宰治「みみずく通信」青空文庫>
  22. ・・・悪事千里、というが、なまけ者の空想もまた、ちょろちょろ止めどなく流れ、走る。何を考えているのか。この男は、いま、旅行に就いて考えている。汽車の旅行は退屈だ。飛行機がいい。動揺がひどいだろう。飛行機の中で煙草を吸えるかしら。ゴルフパンツはいて・・・<太宰治「懶惰の歌留多」青空文庫>
  23. ・・・昼間でもちょろちょろ茶の間に顔を出したりした。ある日の夕方二階で仕事をしていると、不意に階下ではげしい物音や人々の騒ぐ声が聞こえだした。行って見ると、玄関の三畳の間へねずみを二匹追い込んで二人の下女が箒を振り回しているところであった。やっと・・・<寺田寅彦「ねずみと猫」青空文庫>
  24. ・・・暫くすると小さいながら尾を動かしてちょろちょろと駈け歩いた。お石が村を立ってから犬は太十の手に飼われた。太十は従来農家の附属物たる馬ととの外には動物は嫌いであった。猫も二三度飼ったけれど皆酷く窶れて鳴声も出せないように成って死んだ。猫がない・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  25. ・・・只春の波のちょろちょろと磯を洗う端だけが際限なく長い一条の白布と見える。丘には橄欖が深緑りの葉を暖かき日に洗われて、その葉裏には百千鳥をかくす。庭には黄な花、赤い花、紫の花、紅の花――凡ての春の花が、凡ての色を尽くして、咲きては乱れ、乱れて・・・<夏目漱石「幻影の盾」青空文庫>
  26. ・・・ その時向こうのにわとこの陰からりすが五疋ちょろちょろ出て参りました。そしてホモイの前にぴょこぴょこ頭を下げて申しました。 「ホモイさま、どうか私どもに鈴蘭の実をお採らせくださいませ」 ホモイが、 「いいとも。さあやってくれ・・・<宮沢賢治「貝の火」青空文庫>
  27. ・・・そして大へんちいさなこどもをつれてちょろちょろとゴーシュの前へ歩いてきました。そのまた野ねずみのこどもときたらまるでけしごむのくらいしかないのでゴーシュはおもわずわらいました。すると野ねずみは何をわらわれたろうというようにきょろきょろしなが・・・<宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」青空文庫>
  28. ・・・そこでねずみは巣からまたちょろちょろはい出して、木小屋の奥のいたちの家にやって参りました。 いたちはちょうど、とうもろこしのつぶを、歯でこつこつかんで粉にしていましたが、ツェねずみを見て言いました。「どうだ。金米糖がなかったかい。」・・・<宮沢賢治「ツェねずみ」青空文庫>
  29. ・・・それから川岸の細い野原に、ちょろちょろ赤い野火が這い、鷹によく似た白い鳥が、鋭く風を切って翔けた。楢ノ木大学士はそんなことには構わない。まだどこまでも川を溯って行こうとする。ところがとうとう夜になった。今はも・・・<宮沢賢治「楢ノ木大学士の野宿」青空文庫>