つい‐ずい【追随】例文一覧 30件

  1. ・・・多い作の中には不快の感じを与えられるものもあるが、この不快は椿岳自身の性癖が禍いする不快であって、因襲の追随から生ずる不快ではない。この瑜瑕並び蔽わない特有の個性のありのままを少しも飾らずに暴露けた処に椿岳の画の尊さがある。 椿岳の画は・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  2. ・・・と筆を投じて憤りを示したほどであったが、当時は順逆乱れ、国民の自覚奮わず、世はおしなべて権勢と物益とに阿付し、追随しつつあった。荘園の争奪と、地頭の横暴とが最も顕著な時代相の徴候であった。 日蓮の父祖がすでに義しくして北条氏の奸譎のため・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  3. ・・・利休以外にも英俊は存在したが、少は差があっても、皆大体においては利休と相呼応し相追随した人であって、利休は衆星の中に月の如く輝き、群魚を率いる先頭魚となって悠然としていたのである。秀吉が利休を寵用したのはさすが秀吉である。足利氏の時にも相阿・・・<幸田露伴「骨董」青空文庫>
  4. ・・・一得一失こそ、ものの成長に追随するさだめではなかったか。永い眼で、ものを見る習性をこそ体得しよう。甲斐なく立たむ名こそ惜しけれ。なんじら断食するとき、かの偽善者のごとく、悲しき面容をすな。キリストだけは、知っていた。けれども神の子の苦悩に就・・・<太宰治「虚構の春」青空文庫>
  5. ・・・わたしは果してわたしの望むが如くに、唐桟縞の旧衣を脱して結城紬の新様に追随する事ができたであろうか。 現代思潮の変遷はその迅速なること奔流もただならない。旦に見て斬新となすもの夕には既に陳腐となっている。槿花の栄、秋扇の嘆、今は決して宮・・・<永井荷風「十日の菊」青空文庫>
  6. ・・・という考えかたなどについて、作者は、ひとつ、ひとつ、そこにひそめられているファシズム文化政策への追随の危険をえぐり出そうとしている。 日本民族文化の優位性を誇張し、妄想する超国家主義の考えかたから、真の民族生活の存在のありかたをはっきり・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」青空文庫>
  7. ・・・その理由を、今日の作家は文学青年の趣向に追随して、その作品の中で人間はいかに生きてゆくべきかという生きかたを示さず、小説の書きかたに工夫をこらしているからであると見る評論家作家たちによって、「大人の文学」論がいわれているのである。 従来・・・<宮本百合子「「大人の文学」論の現実性」青空文庫>
  8. ・・・ジャーナリズムの上での批評家の批評のとおりに見ることや所謂定評に自分の鑑賞をあてはめてゆく態度は、客観的とは反対の、常識追随である。 この判断ということは、いろいろ面白い。非常に生活的なもの、複雑なものということで面白い。私たちの生・・・<宮本百合子「女の歴史」青空文庫>
  9. ・・・しかし、六月号の批評では、大岡昇平がスタンダール研究者であるという文学的知識に煩わされて、その作者が誰の追随者であろうとも、作品の現実として現代の歴史の中に何を提出しているかという点が、力づよく見きわめられなかった。火野葦平の「悲しき兵隊」・・・<宮本百合子「現代文学の広場」青空文庫>
  10. ・・・伊藤整のように、ジェームズ・ジョイスの文学を深く理解した作家が、より若い世代のヨーロッパ文学の手法追随に対してむしろ警告的であるのも注目される。日本では、一九三三年以後の社会と文学の形相があまり非理性的で殺伐であったために、その時期に青年期・・・<宮本百合子「五〇年代の文学とそこにある問題」青空文庫>
  11. ・・・読者の要求に追随するという表現にしろ、作家としてはわが身にかかわることなのであるから、つまりは、自分の内の何かに追随しているということと全く等しい。 百円札を出して、これだけ本を下さいと云ったという若い職工さんの俤も、人生的な又文化の情・・・<宮本百合子「今日の読者の性格」青空文庫>
  12. ・・・権力というものに対する事大主義的な追随や、機械的な政治の文学に対する優位の承認を結果するであろうという危険は、誰の目にも明かである。プロレタリア文学が、方針に於て或る時期機械的な政治の優位を認めたと云って、文学を死滅さすものだと非難した人を・・・<宮本百合子「今日の文学の鳥瞰図」青空文庫>
  13. ・・・自分が日本の作家であればこそ、その日本の非人間的な権力の行動に追随してはならないということについて、新しく自分をはげまさねばならなかった。そのようなモティーフに立ってモスクワを背景とするこの短篇がかかれた。「広場」の題材は、今執筆中の「道標・・・<宮本百合子「作者のことば(『現代日本文学選集』第八巻)」青空文庫>
  14. ・・・の創作的実験であったが、その作品の世界は書生という姿に於て踏襲されている昔ながらの遊蕩の世界であり、その遊蕩というものに対する作者の態度も、戯作者的現実追随の域を脱していなかった。 こういう時代に、二葉亭四迷がロシア文学の教養から、人生・・・<宮本百合子「作家と教養の諸相」青空文庫>
  15. ・・・モチーフを整理の必要として感じているとき、作家は、「在るものへの追随によって世界像を求める傾向へ」と発展せざるを得ず、今日の生活のなかで、それが文学にどのような結果をもたらすかということは、察するに余りある。所謂純文学が或る面では、案外に文・・・<宮本百合子「作家に語りかける言葉」青空文庫>
  16. ・・・ 日本のきょうの文学、しかも西欧的なものを意欲していると云われる人々の文学にあるこの奇怪な顛倒と時代錯誤への屈従、追随こそ、批評家を無力にし、骨抜きにしている。別の云いかたをすると、戦後の批評家の多くは、その人自身、国内亡命をしていた人・・・<宮本百合子「「下じき」の問題」青空文庫>
  17. ・・・の発展的解消、単一なソヴェト作家同盟組織委員会の結成、および創作方法における社会主義的リアリズムの問題の提起は、一部の人々によって誤解されているように、インテリゲンチアへの追随でもなく、抽象化され超階級化された技術偏重論でもない。ましてや階・・・<宮本百合子「社会主義リアリズムの問題について」青空文庫>
  18. ・・・この気分は、例えば新感覚派や新興芸術派の無理論性となって現れたし、作家は何でも書きさえすればよいという当時のリアリズムの解釈法の底にも流れ入って、社会的な心理の傾向と綯い合され文学の現実追随への一条件となっているのであるが、今日顧みて興味あ・・・<宮本百合子「昭和の十四年間」青空文庫>
  19. ・・・自身がいわばすでに功成り名をとげた人々であるそれら大多数の婦人たちは、政治的に、すなわち客観的に現実的に社会現象を判断し対処してゆく能力は欠いていて、事大的な追随を政治的な態度と思いあやまって、結果としてはかえって、時局を漫画化する登場人物・・・<宮本百合子「女性の歴史の七十四年」青空文庫>
  20. ・・・ソヴェトの美術・音楽の上にあるフランス美術・音楽の影響は顕著で、ショスタコヴィッチのような現代の才能でさえ、初期には混乱したフランスの近代音楽に追随していた。シーモノフが日本へ来たとき、文学者の座談会で、ソヴェトでよまれている外国作家はどう・・・<宮本百合子「政治と作家の現実」青空文庫>
  21. ・・・の筆者が、近代の日本人が、日本の美を発見するために、いつも先ず外国人の評価をさきにしてそれに追随して来た態度に注目しているのは、まことに興味あるところと思う。それを不甲斐ないとしているのも、至極もっともなことである。だけれども、残念なことに・・・<宮本百合子「世代の価値」青空文庫>
  22. ・・・林房雄と自身とのけじめは一応明らかにしているようでありながら、本質的には同志林に追随している。作家同盟の指導部は中條のように考えてはいない、君を愛している、「中心指導部の強化」を計らなければ、「同盟の方向が誤りを犯し易い」から、君も「組織活・・・<宮本百合子「前進のために」青空文庫>
  23. ・・・その第一は、『文学界』の提案も谷川氏の思索も、どちらも民衆の今日の文化水準の低さ、貧しさというものを固定的にそれなりに肯定して、結果としては知識人をそれに追随させようとしていることである。民衆は今日の文化的貧困を自覚するとしないとにかかわら・・・<宮本百合子「全体主義への吟味」青空文庫>
  24. ・・・また同じことの別のあらわれとして、ある作品の民主的文学としての本質を理解し得ない働く人が、題材からだけみて、その世界は私たちの世界でない、と否定することまでしかできない場合、批評家がそのままその意見に追随して、だから働くものの文学は働くもの・・・<宮本百合子「その柵は必要か」青空文庫>
  25. ・・・職場からの出品は、この展覧会でも、他の場所に陳列された絵からうけた印象も、生活力には溢れているけれども、素人にわかる範囲での技法、ことに色彩の解釈や置きかたなどが、まだまだもとからあるものに支配され、追随していると感じます。そして何処やら、・・・<宮本百合子「第一回日本アンデパンダン展批評」青空文庫>
  26. ・・・火事と空襲とは別箇のものと十分知りながら、わたしも本郷安全説に追随していた。 ところが、一九四五年一月末日神田と本郷の一部が真先に空襲をうけた。それから五月下旬まで、毎月一回、きまって本郷の各部が爆撃をうけつづけた。丹念に、のこった部分・・・<宮本百合子「田端の汽車そのほか」青空文庫>
  27. ・・・大衆追随主義としてあらわれた自然成長性への屈伏など。右翼的偏向は、複雑な組合わせと多様と度合とをもって現れたのであった。「戦争と革命との新たなる周期」において、文化運動の内部に発生したこのような敵に対して、仮借なき闘争こそが必要である。・・・<宮本百合子「同志小林の業績の評価に寄せて」青空文庫>
  28. ・・・ 日本の芸術家が、いつしか外国人が目して日本的と称する範囲の中に一九三〇年代の複雑な日本を単純化して、外来客に見せる追随主義は、例えば、アメリカの戯曲家エルマー・ライスを山本有三氏邸に招待した饗応ぶりにも現れていたと思う。そこではすべて・・・<宮本百合子「日本の秋色」青空文庫>
  29. ・・・文学がジャーナリズム、出版企業に従属する面が多いから、戦争進行プラス企業の追随で益々低落した。劇壇の人々は自身の芸術的生涯と興行資本というものについて、どう考えるのだろうか。 手許にプログラムがなくて正確に云えないけれども、「プラー・・・<宮本百合子「俳優生活について」青空文庫>
  30. ・・・それは古人の跡を追随するなという意味、完成された芸術に屈服するな、今日の現実感覚に立て、という意味できわめて強調されているのである。芭蕉こそ真の芸術家として、古典というものが再びそこにそのままの姿で住むことは出来ない民族芸術の故郷だからこそ・・・<宮本百合子「芭蕉について」青空文庫>