つう‐か〔‐クワ〕【通過】例文一覧 30件

  1. ・・・昨十八日午前八時四十分、奥羽線上り急行列車が田端駅附近の踏切を通過する際、踏切番人の過失に依り、田端一二三会社員柴山鉄太郎の長男実彦(四歳が列車の通る線路内に立ち入り、危く轢死を遂げようとした。その時逞しい黒犬が一匹、稲妻のように踏切へ飛び・・・<芥川竜之介「白」青空文庫>
  2. ・・・それでもじッと読みつづけていると、新らしい事件は出て来ないで、レオナドと吉弥とが僕の心をかわるがわる通過する。一方は溢れるばかりの思想と感情とを古典的な行動に包んだ老独身者のおもかげだ。また一方はその性情が全く非古典的である上に、無神経と思・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  3. ・・・ 世界の歴史に特筆されべき二大戦役を通過した日本の最近二十五ヵ年間は総てのものを全く一変して、恰も東京市内に於ける旧江戸の面影を尽く亡ぼして了ったと同様に、有らゆる思想にも亦大変革を来したが、生活に対する文人の自覚は其の重なる事象の一つ・・・<内田魯庵「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」青空文庫>
  4.  亜米利加の排日案通過が反動団体のヤッキ運動となって、その傍杖が帝国ホテルのダンス場の剣舞隊闖入となった。ダンスに夢中になってる善男善女が刃引の鈍刀に脅かされて、ホテルのダンス場は一時暫らく閉鎖された。今では余熱が冷めてホテルのダンス場・・・<内田魯庵「四十年前」青空文庫>
  5. ・・・アメリカの禁酒法案が通過して、あのように長く行なわれたのも、婦人の道徳性の内からの支配力がどんなに強いかの証拠であって、男子にとっては実はこれは容易でない克己がいるので、苦い顔をしながらも、どうも婦人のいうことをきかずにはおれぬのである。そ・・・<倉田百三「女性の諸問題」青空文庫>
  6. ・・・旱魃を免れた県には、米穀県外移出禁止というような城壁が築かれてはいるが、表門は閉っていても、裏のくゞり戸があいているので、四斗俵ならぬ三斗五升いりの袋ならその門を通過させてもらえるのだと笑っていた。 この頃好景気のある船会社の船長の細君・・・<黒島伝治「外米と農民」青空文庫>
  7. ・・・提燈行列の火の波が、幾組も幾組も、私たちの目の前を、ゆらゆら通過した。兄は、ついに、群集と共にバンザイを叫んだ。あんなに浮かれた兄を、見た事が無い。 あのように純一な、こだわらず、蒼穹にもとどく程の全国民の歓喜と感謝の声を聞く事は、これ・・・<太宰治「一燈」青空文庫>
  8. ・・・たったいま、電車が通過した跡の様子でございました。私は最後の一つの念願として、兄さあん! とできるだけの声を絞って呼んでみました。しんとしています。私は胸に両袖を合せて帰りました。途々、身なりを整えてお家へ戻り、静かにお部屋の障子をあけたら・・・<太宰治「誰も知らぬ」青空文庫>
  9. ・・・ポチは、れいによって上品ぶった態度を示し、何を騒いでいるのかね、とでも言いたげな蔑視をちらとその赤毛の犬にくれただけで、さっさとその面前を通過した。赤毛は、卑劣である。無法にもポチの背後から、風のごとく襲いかかり、ポチの寒しげな睾丸をねらっ・・・<太宰治「畜犬談」青空文庫>
  10. ・・・、輪郭の滲んだ満月が中空に浮び、洞庭湖はただ白く茫として空と水の境が無く、岸の平沙は昼のように明るく柳の枝は湖水の靄を含んで重く垂れ、遠くに見える桃畑の万朶の花は霰に似て、微風が時折、天地の溜息の如く通過し、いかにも静かな春の良夜、これがこ・・・<太宰治「竹青」青空文庫>
  11. ・・・聯合機は甲府の空をたびたび通過するが、しかし、投弾はほとんど一度も無かった。まちの雰囲気も東京ほど戦場化してはいなかった。私たちも久し振りで防空服装を解いて寝る事が出来た。私は三十七になっていた。妻は三十四、長女は五つ、長男はその前年の八月・・・<太宰治「薄明」青空文庫>
  12. ・・・遠い恒星の光が太陽の近くを通過する際に、それが重力の場の影響のために極めてわずか曲るだろうという、誰も思いもかけなかった事実を、彼の理論の必然の結果として鉛筆のさきで割り出し、それを予言した。それが云わば敵国の英国の学者の日蝕観測の結果から・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  13. ・・・その層の一番どん底を潜って喘ぎ喘ぎ北進する汽車が横川駅を通過して碓氷峠の第一トンネルにかかるころには、もうこの異常高温層の表面近く浮かみ上がって、乗客はそろそろ海抜五百メートルの空気を皮膚に鼻にまた唇に感じはじめる。そうして頂上の峠の海抜九・・・<寺田寅彦「浅間山麓より」青空文庫>
  14. ・・・しかし第一の扉を通過しないで第二の扉に達し得られたかどうかは疑問である。 この次の第三の扉はどこにあるだろう。これはわれわれには全然予想もつかない。しかしその未知の扉にぶつかってこれを開く人があるとすれば、その人はやはり案内者などのやっ・・・<寺田寅彦「案内者」青空文庫>
  15. ・・・これは言わば簡単なローラーであって、二つの反対に回る樫材の円筒の間隙に棉実を食い込ませると、綿の繊維の部分が食い込まれ食い取られて向こう側へ落ち、堅くてローラーの空隙を通過し得ない種子だけが裸にされて手前に落ちるのである。おもしろいのは、こ・・・<寺田寅彦「糸車」青空文庫>
  16. ・・・始めにヒロインとその保護者がこの行列を見送る場面ではヒロインと観客は静止していて行列はその向こう側を横に通過する。次にこの行列の帰還を迎える場面でも行列はやはりわれわれ観客の前を横に通過するのであるが、ここでは前と反対にヒロインがその行列の・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  17. ・・・即ち国民性を通過して然る後に現れ出たものである。 こういう点から見て、自分は維新前後における西洋文明の輸入には、甚だ敬服すべきものが多いように思っている。徳川幕府が仏蘭西の士官を招聘して練習させた歩兵の服装――陣笠に筒袖の打割羽織、それ・・・<永井荷風「銀座」青空文庫>
  18. ・・・足の地面に触れる所は十尺を通過するうちにわずか一尺ぐらいなもので、他の九尺は通らないのと一般である。私の外発的という意味はこれでほぼ御了解になったろうと思います。 そういう外発的の開化が心理的にどんな影響を吾人に与うるかと云うとちょっと・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  19. ・・・柩の門を出ようとする間際に駈けつけた余が、門側に佇んで、葬列の通過を待つべく余儀なくされた時、余と池辺君とは端なく目礼を取り換わしたのである。その時池辺君が帽を被らずに、草履のまま質素な服装をして柩の後に続いた姿を今見るように覚えている。余・・・<夏目漱石「三山居士」青空文庫>
  20. ・・・彼らが舟を捨ててひとたびこの門を通過するやいなや娑婆の太陽は再び彼らを照らさなかった。テームスは彼らにとっての三途の川でこの門は冥府に通ずる入口であった。彼らは涙の浪に揺られてこの洞窟のごとく薄暗きアーチの下まで漕ぎつけられる。口を開けて鰯・・・<夏目漱石「倫敦塔」青空文庫>
  21. ・・・ 投者の位置 短遮の位置 第一基人の位置 第二基人の位置 第三基人の位置 場右の位置 場中の位置 場左の位置○ベースボールの勝負 攻者は一人ずつ本基より発して各基を通過し再び本基に帰るを務めとす、かくして・・・<正岡子規「ベースボール」青空文庫>
  22. ・・・として通過した日本のインテリゲンツィアの諸問題は、今日一般において決して著者が通過したようにはとおりすぎられていない。日本の文学感覚はまだもろく弱くて、文学といえば、人は理性の視点と水平なものとしてそれを感じないくせがある。戦争は、客観的な・・・<宮本百合子「巖の花」青空文庫>
  23. ・・・まずさしあたり、日本の首相吉田が、再開の国会において、一般施政方針の演説もしないで、日本のタフト・ハートレー法を通過させようとしていることは、妙だ、ということである。政治一般の方針を示さず、検討せず、どうして公務員法案だけは通してよい法案で・・・<宮本百合子「新しい潮」青空文庫>
  24. ・・・鉄道線路も近いので、ボッボッボッボと次第に速く遠く消え去って行く汽車の響もきこえ、一日のうちに何度か貨車が通過するときには家が揺すぶれる。毎夜十一時すこし過ぎてから通るのが随分重いとみえて、いつもなかなかひどく揺れる。それから夜中の二時頃通・・・<宮本百合子「新しい婦人の職場と任務」青空文庫>
  25. ・・・ エカテリンブルグ=スウェルドロフスキーを通過。モスクワ時間と二時間の差。進んだのだ。列車は石造ステーションの二階にあたるような高いところに止る。駅の下、街に二台幌型フォードがあった。列車の中から見晴らせるだけのところにでも、いくつか新・・・<宮本百合子「新しきシベリアを横切る」青空文庫>
  26. ・・・一度出して通過しない書類は、なかなか二度目位で滞りなく通過するものではない。三度も四度も直させられる。そのうちには向うでも種々に考えて見るので、最初云った事とは多少違って来る。とうとう手が附けられなくなってしまう。それで一度で通過するのを喜・・・<森鴎外「あそび」青空文庫>
  27. ・・・     ―――――――――――――――― 綾小路は学習院を秀麿と同期で通過した男である。秀麿は大学に行くのに、綾小路は画かきになると云って、溜池の洋画研究所へ通い始めた。それから秀麿がまだ文科にいるうちに、綾小路は先へ洋行・・・<森鴎外「かのように」青空文庫>
  28. ・・・思いを殺し、腰蓑の鋭さに水滴を弾いて、夢、まぼろしのごとく闇から来り、闇に没してゆく鵜飼の灯の燃え流れる瞬間の美しさ、儚なさの通過する舞台で、私らの舟も舷舷相摩すきしみを立て、競り合い揺れ合い鵜飼の後を追う。目的を問う愚もなさず、過去を眺め・・・<横光利一「鵜飼」青空文庫>
  29. ・・・ しかし、何といっても、作家も人間である以上は、一人で一切の生活を通過するということは不可能なことであるから、何事をも正確に生き生きと書き得られるということは所詮それは夢想に同じであるが、私たちにしても作者の顔や過去を知っているときは、・・・<横光利一「作家の生活」青空文庫>
  30. ・・・栖方の学位論文通過の祝賀会を明日催したいから、梶に是非出席してほしい、場所は横須賀で少し遠方だが、栖方から是非とも梶だけは連れて来て貰いたいと依頼されたということで、会を句会にしたいという。句会の祝賀会なら出席することにして、梶は高田の誘い・・・<横光利一「微笑」青空文庫>