つう・じる【通じる】例文一覧 30件

  1. ・・・僕等より後の人間には、なおさら通じるとは思われません。……」 父と子とはしばらくの間、気まずい沈黙を続けていた。「時代の違いだね。」 少将はやっとつけ加えた。「ええ、まあ、――」 青年はこう云いかけたなり、ちょいと窓の外・・・<芥川竜之介「将軍」青空文庫>
  2. ・・・これは何もそうしなくとも、あの婆自身が神憑りになったらよさそうに思われますが、そう云う夢とも現ともつかない恍惚の境にはいったものは、その間こそ人の知らない世界の消息にも通じるものの、醒めたが最後、その間の事はすっかり忘れてしまいますから、仕・・・<芥川竜之介「妖婆」青空文庫>
  3. ・・・しかも世相は私のこれまでの作品の感覚に通じるものがあり、いわば私好みの風景に満ちている。横堀の話はそれを耳かきですくって集めたようなものである。けちくさい話だが、世相そのものがけちくさく、それがまた私の好みでもあろう。 ペンを取ると、何・・・<織田作之助「世相」青空文庫>
  4. ・・・人情にはむしろこの方が適し、小乗の宗教に通じる。性欲を満したいという意欲と、国君に殉死したいという意欲とに、そのものとしての価値等級を付さないことは人情には無理である。大乗の宗教はしかしそこまで徹しなければならないのであるが、倫理学が宗教な・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  5. ・・・彼女はあらゆる人々を見廻しました。通じる話は何処にもありません。彼女は、唖の娘の言葉が分って呉れた人々の子供の時から見馴れた顔をどんなに懐しく慕わしく思ったでしょう。彼女の物を言わない胸の裡には、只、心を見透おす神ばかりに聞える、無限の啜泣・・・<著:タゴールラビンドラナート 訳:宮本百合子「唖娘スバー」青空文庫>
  6. ・・・たちと共に、シロオテの携えて来た法衣や貨幣や刀やその他の品物を検査し、また、長崎からシロオテに附き添うて来た通事たちを招き寄せて、たとえばいま、長崎のひとをして陸奥の方言を聞かせたとしても、十に七八は通じるであろう、ましてイタリヤと阿蘭陀と・・・<太宰治「地球図」青空文庫>
  7.  山好きの友人から上高地行を勧められる度に、自動車が通じるようになったら行くつもりだといって遁げていた。その言質をいよいよ受け出さなければならない時節が到来した。昭和九年九月二十九日の早朝新宿駅中央線プラットフォームへ行って・・・<寺田寅彦「雨の上高地」青空文庫>
  8. ・・・たとえば風の音は衣ずれの音に似通い、ため息の声にも通じる。タイプライターの音は機関銃にも、鉄工場のリベットハマーの音にも類しうる可能性をもっている。これがためにたとえば鵞鳥の声から店の鎧戸の音へ移るような音のオーバーラップは映像のそれよりも・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  9. ・・・かと思うがこれは (Skt.)√has に通じる。一人称単数現在なら hasami だからよく似ている。hsita は笑うべき事で「はしたない」に通じる。「はしゃぐ」が笑い騒ぐ事で、「あさましい」も場合によると「笑ひ事」であるのもおもしろい・・・<寺田寅彦「言葉の不思議」青空文庫>
  10. ・・・などと一度も考えたことがないように、こっちが清らかでさえあれば、願いが通じるような気がする――。「ときにな――」 竹くずのなかにうずまって、母親は母親でさっきから考えていたらしく、きせるたばこを一服つけながら、いった。「こないだ・・・<徳永直「白い道」青空文庫>
  11. ・・・これを文芸の堕落というのは通じる。保護というに至ってはその意味を知るに苦しまざるを得ない。       中 一家の批判を、一家として最後最上の批判と信ずるのに、何人も喙を容れようがない。けれどもそれをして比較的普遍ならしめん・・・<夏目漱石「文芸委員は何をするか」青空文庫>
  12. ・・・ これは、ブルジョアジーと、プロレタリアートとの間にも通じる。 プロレタリアは「鰹節」だ。とブルジョアジーは考えている。 プロレタリアは、「俺達は人間」だ。「鰹節」じゃない。削って、出汁にして、食われて失くなってしまわねばならな・・・<葉山嘉樹「労働者の居ない船」青空文庫>
  13. ・・・こういう文章のたちと、こういうテーマの扱い方の小説は、今日めいめいの青春を生きている読者たちにとって、『白樺』の頃武者小路氏の文学が周囲につたえた新しい脈動とはおのずから性質の違った親愛、わかりよさに通じるようなものとして受けいれられるのだ・・・<宮本百合子「「愛と死」」青空文庫>
  14. ・・・だが、それには世界に通じることばがなければならない。「民主的日本の女性から」という生きたことばが確立されなければならない。〔一九四七年二月〕<宮本百合子「明日の知性」青空文庫>
  15. ・・・自分から俺は悪七兵衛景清と名のって、髪を乱して、妻子にわざとむごい言葉を与えて、自らを敵意のうちに破る景清の姿と、その若くない荒繩をひきずった犬の姿とには、何か印象のなかで通じるものをもっている。 おい、お前は景清のようだよ。知ってるか・・・<宮本百合子「犬三態」青空文庫>
  16. ・・・ 工場内へ通じる狭い柵の横に一人赤衛兵と、二三人の男がかたまっている。そこは一本の廊下だがその辺には工場委員会共産党青年ヤチェイカの札が見えるだけで、どこに新聞発行所があるかわからない。 自分は、柵のところに立ってる男に、「新聞発行・・・<宮本百合子「「鎌と鎚」工場の文学研究会」青空文庫>
  17. ・・・ローレンスの反抗は、フランスの自然主義の初期、その先駆者ゾラなどが、近代科学の成果、その発見を文学にうけ入れるべきだとして、科学書からの抜萃をそのまま小説へはめこんだ、その試みの精神と通じるところがある。 ローレンスは、一方でそのように・・・<宮本百合子「傷だらけの足」青空文庫>
  18. ・・・の線に近づいた傾きを示した作品であったが、ここでは、既に作者の習慣のようになった、あれこれを題材的に按配して書く、という大衆小説の手法に通じる外面的な方法がやはり消極の作用を示した。作品としての現実が渾然と読者の心を撃つというよりは、調査し・・・<宮本百合子「「結婚の生態」」青空文庫>
  19. ・・・山の彼方の空を眺め、山の頂をはるかに通じる一筋の道を眺めたものにとって、窓をしめ、地球の円さは村境できれているように思いこみ、この村ばかりの優秀を誇るというのは、不自然で息苦しく愚劣にたえがたいしまつであった。徳川時代の民が土下座したとき、・・・<宮本百合子「現代の主題」青空文庫>
  20. ・・・いに、ああと巻を閉じたとき、やがてまたもう一遍パラパラと頁をめくりかえさずにはいられない感動が心に鳴っているとき、アンナを通して印象された悲劇のなかにも輝く美の感じが、幸福と呼びならわされている感覚に通じる性質のものであることを感じとらない・・・<宮本百合子「幸福の感覚」青空文庫>
  21. ・・・が十六七歳の少女の心にも通じる女性の訴として日常生活のなかによまれはじめたとき、わたしの心は、歴史のすすみの手がたさをおどろく思いで波だった。きょうの若い少女たち――女性は「伸子」よりははるかに前進した社会性と、自分を生かす可能をもっている・・・<宮本百合子「心に疼く欲求がある」青空文庫>
  22. ・・・目標であり「『罪と罰』『ボァリー夫人』『女の一生』『凱旋門』に通じる道がひらけるにちがいないと確信する」人々である。これらの人々に新聞社は、講和問題に関するアンケートなどもおくっている。『読売新聞』の集めた範囲で作家たちの答えは全面講和の要・・・<宮本百合子「五〇年代の文学とそこにある問題」青空文庫>
  23. ・・・ いかにも農家の裏山へ通じると云うおもむきの、苔のついた石段をのぼると低い切りどおし道になった。温暖な地方は共通なものと見えてその小道にしげっている羊歯の生え工合などが伊豆の山道を思いおこさせた。季節であればこのこみちにもりんどうの花が・・・<宮本百合子「琴平」青空文庫>
  24. ・・・その点ではスーザンのそういう生活への感情は現代の多くの若い世代の気持と全く相通じるものをもっていると云えると思う。また、私はいつも私であっていいのだ、という確信をもって生きたい、そのようにして生きる条件を見出したいと思う願いも、今日私たちの・・・<宮本百合子「『この心の誇り』」青空文庫>
  25. ・・・ 煩瑣、無気力であった文学の袋小路は、やっと広く活々とした大路へ通じる一つの門を見出したかのようであったが、ここにも亦、複雑な日本の情勢は複雑な文学の諸問題を露出した。由来、舟橋氏等によって提唱されはじめた能動精神、行動主義文学という言・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  26. ・・・その作家の人生に通じるテーマを見いだしたとき、その作家の全存在を集中する精気のこった活動としてモティーヴがはっきり把えられ、労作がはじまるのであると思う。 世界観は、鋭く美しい活きた社会とその歴史にたいする眼として紹介されなかった。日本・・・<宮本百合子「作家の経験」青空文庫>
  27. ・・・そのこころに通じるものがあるようで、火野葦平、林房雄、今日出海、上田広、岩田豊雄など今回戦争協力による追放から解除された諸氏に共通な感懐でもあろうか。 東京新聞にのった火野の文章のどこの行をさがしても、「昔にかえった」出版界の事情「老舗・・・<宮本百合子「しかし昔にはかえらない」青空文庫>
  28. ・・・しかし仏語や独逸語も少しずつは通じるようになっている。この少壮者の間に新しい文芸が出来た。それは主として小説で、その小説は作者の口からも、作者の友達の口からも、自然主義の名を以て吹聴せられた。Zola が Le Roman expエクスペリ・・・<森鴎外「沈黙の塔」青空文庫>
  29. ・・・牛込柳町の電車停留場から、矢来下の方へ通じる広い通りを三、四町行くと、左側に、自動車がはいれるかどうかと思われるくらいの狭い横町があって、先は少しだらだら坂になっていた。その坂を一町ほどのぼりつめた右側が漱石山房であった。門をはいると右手に・・・<和辻哲郎「漱石の人物」青空文庫>
  30. ・・・一般の人にわかってもらえない淋しさが「美への奉仕」を理解することによって追い払われることを説く。「美術家は個人に奉仕するよりも、美に奉仕すればいいのだ。一般の人に通じると否とにかかわらず、ただ人類の美の事業に役に立つのか否かという事が大切な・・・<和辻哲郎「『劉生画集及芸術観』について」青空文庫>