つう‐ねん【通念】例文一覧 28件

  1. ・・・そういう功利的通念は、今や、オイ、御新邸を背負って華族の娘さんが嫁に来るぜ、という例外の一例とはなるかもしれないが、この結合を、社会的な評価で新しい内容をもつものであるといい得ないことは自明である。 われわれ個人の恋愛や結婚の幸福を、か・・・<宮本百合子「新しい一夫一婦」青空文庫>
  2. ・・・結婚、家庭生活について日本の社会通念が枠づけている息ぐるしい家族制度のしがらみ、娘・妻としての女が、人間らしいひろやかさと発展をもって生きたい女性にとって、どんなに窒息的なものであるかを、夫婦の性格的な相剋の姿とともに描き出そうとしている。・・・<宮本百合子「あとがき(『伸子』)」青空文庫>
  3. ・・・ 新聞の小説というものには、一定の通念がある。一回ごとにヤマがなければいけないとか、文章の上に一種のひっぱる力が要求されるとか。わたしにはとてもそういう条件がみたせないと思った。それで、そのときは、ことわってお貰いするように宮原さんにた・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」青空文庫>
  4. ・・・流れ動き生成する男女の結合こそ愛とよばれるべきものだと信じている一人の生活的な女にとって、当時の日本の通念であった家庭の平和の観念や、夫婦愛家庭愛における女の無主張の立場は恐怖を与えた。結婚にからむ親たちとの相剋も非条理に思えた。二十歳の女・・・<宮本百合子「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」青空文庫>
  5. ・・・の主人公は少年であるけれども、どうしてあの小説が既成の社会通念――大人の世界のものの考えかたの俗悪な形式主義への抗議でないといえよう。 デュガールの「チボー家の人々」が、一九三〇年代より四〇年代の若い人々にとって、特に意味をもっているわ・・・<宮本百合子「生きつつある自意識」青空文庫>
  6. ・・・は、大正四年の作で、鴎外の歴史ものとしては、どれよりもはっきり、社会通念への疑問をテーマとしてかかれたものと思われる。「高瀬舟縁起」という文章で、鴎外は「翁草」によっているこの短い作の中に「二つの大きい問題が含まれていると思った」ことを述べ・・・<宮本百合子「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」青空文庫>
  7. ・・・そう呟く心持は、逆な方向と表現で、どうせ女は、という旧来の通念を我から肯定しているにほかならない。仕事の上で女として自分を守ったり主張したりするというのは、こういう、どうせに立脚した態度とは反対のものでなければならないと思う。女自身が女とし・・・<宮本百合子「女の歴史」青空文庫>
  8. ・・・女自身、ましてインテリゲンツィアの女のひとが、とかく抽象的に自己完成のための仕事を偏重して、それを正々堂々と職業として、それ相当な社会的評価を求めようとしなかった傾向はふるい社会の通念を計らずも裏から合せ鏡で照り返しているようなものだといえ・・・<宮本百合子「現実の道」青空文庫>
  9. ・・・ もう一つの理由は、ゴーリキイが偉大な作家であるということが一般の通念になっているために、そこから二つの態度が生じている。その一つは、ゴーリキイを無条件にプロレタリア作家の先達であり、父であると見る態度であり、他の一つは、それに対してや・・・<宮本百合子「「ゴーリキイ伝」の遅延について」青空文庫>
  10. ・・・人権尊重ということは、正当な思想を抑圧して小林多喜二のような卓抜な一個の社会人・作家を撲殺するようなことが決して在ってはならないという通念を意味する。同時に、それを主体的に云えば、一個の社会人・芸術家は、自分の理性がさし示す歴史の前進の方向・・・<宮本百合子「今日の生命」青空文庫>
  11. ・・・それにしろ、根本に於て、何となく自分の鑑別にたより切れないものを感じて常識、通念に従っていることでは、やはりつよく時代の空気にまといつかれているのである。 十日ばかり前、この文芸欄で尾崎士郎氏が「三十代の作家たち」の今日の在りようについ・・・<宮本百合子「今日の読者の性格」青空文庫>
  12. ・・・大人の文学と云う場合、一般の通念を、官吏、軍人、実業家とのみ限定することは困難である。人は、貧しき大人、苦しき大人、得意ならざる大人の現実の存在を念頭に泛べざるを得ない。古来文学は、まことに心かなしきものの友であったのであるから。―― ・・・<宮本百合子「今日の文学の展望」青空文庫>
  13. ・・・二葉亭の、当時の日本文学の通念より前進しすぎていた人生的教養は、逆に彼に文学は男子一生の事業に価するものかどうかという懐疑に陥れている。このことも、私たちに少なからず暗示するところがあると思う。 硯友社の文学的傾向に対して、作家は昔の戯・・・<宮本百合子「作家と教養の諸相」青空文庫>
  14. ・・・ば何も知らないに等しいが、暗示されている言葉によって想像されるような不幸な性的混錯、或は錯倒であると仮定して、私はやはりその生物学的な不幸事をも生む者と生れるものとの関係、その関係に対する真面目な社会通念への刺衝として、うけとるのである。・・・<宮本百合子「昨今の話題を」青空文庫>
  15. ・・・ 女の場合には男より一層それが社会の通念や常套と絡みあって来る。葛藤が女性を文学以前において消耗する力は、何とおそろしく執拗だろう。そのたたかいの間から漸々いくらかずつ自身の文学を成長させて来ている事実は、現在私たち同時代の婦人作家の殆・・・<宮本百合子「時代と人々」青空文庫>
  16. ・・・ 文学について、じっくりと生活に根ざし、痙攣的でない感覚と通念とがどんなに必要となっているかは、私たち皆の胆に銘じて来ていることだし、今日文学を読む千万人が感じている国民的真実の一つであると思う。〔一九四一年六月〕・・・<宮本百合子「実感への求め」青空文庫>
  17. ・・・では、この社会の世俗の通念でいい生活と思われている小市民風な生活設計を守るために、本能も馴致されなければならないものとされ、そのために文学がつかわれることとなった。文学がその作家の文学的性格の強靭さの故によるというよりは寧ろ、世間を渡る肺活・・・<宮本百合子「昭和の十四年間」青空文庫>
  18. ・・・「文学者や思想家が、既存の社会通念に無批判に服従することでのみ仕事をすべきだとする考えは、人類に進歩があるべきであるならば、有害な考えである。既存の社会通念を批評し訂正するという思想家や芸術家の働きが、現在の文化を形成して来たのである」と。・・・<宮本百合子「人間性・政治・文学(1)」青空文庫>
  19. ・・・自身にのしかかるそういう重荷の歴史性を、はっきり解剖し、根底から社会通念を人間が生きるに合理的な方面に導こうとする建設の道へ身を投じる者は、少数の、本当に強い心持の若者であろう。しかも、それらの勇敢な良心的な若い息子や娘等の努力をも、未だ打・・・<宮本百合子「花のたより」青空文庫>
  20. ・・・このことが稍々正常に理解されかかった時期に遺憾にも組織が崩されたので、今日でも、かつて左翼的な活動をした人々の通念と日常感情の中には、古い文化主義の根が除去され切れず、残されたままにある。今日の社会の情勢の中で、多くは個人的な事情から文学の・・・<宮本百合子「ヒューマニズムへの道」青空文庫>
  21. ・・・アンダスンの詩人らしい気象、アメリカの効用主義的社会通念に対する反抗が主題となっていて、文章もリズムを含んで感覚的で、一見主観的な独語のなかに客観的な批判をこめて表現する作風など、ドライサアとは全く異っていて、近代の心理的手法である。 ・・・<宮本百合子「文学の大陸的性格について」青空文庫>
  22. ・・・反対のことが、外国の通念の中に植えこまれている。ここにも見落すことの出来ない現実のひとこまがある。 日本の人民は、半封建的な当時の社会輿論のなかで、政府が宣伝する開戦理由をそのままのみこんでいたばかりだった。政府の大本営発表を信じたばか・・・<宮本百合子「平和への荷役」青空文庫>
  23. ・・・そういう要求を明言することさえ野暮であるというのが一般の通念である。山本有三氏の芸術を愛する者の心情は或は菊池寛氏の腰を据えた常識を愛する者の気分より現代の日本に貢献するところが多いかもしれないにかかわらず、山本氏は「一部の異論」で芸術院会・・・<宮本百合子「矛盾の一形態としての諸文化組織」青空文庫>
  24. ・・・ 文学が、神或は馬琴流の善玉悪玉の通念に対して、一般人間性を主張した時代は、日本でも逍遙の「小説神髄」以来のことである。私たちのきょうの生活感情はそこから相当に遠く歩み出して来ている。「主従は三世」と云って、夫婦は二世、親子は一世と当時・・・<宮本百合子「夜叉のなげき」青空文庫>
  25. ・・・また、作品の到るところに散在する敗残の美の描写も、一方にきわめて常識的な通念が人生における敗残の姿としている。それなりの形、動き、色調を、荷風もそのまま敗残の内容として自身の芸術の上に認めている。荷風にあっては、それに侮蔑の代りに歌を添える・・・<宮本百合子「歴史の落穂」青空文庫>
  26. ・・・若いころの恋愛なら、とまるで結婚はしたいことをしたあげくにすることのような通念にも我知らず屈して、唯そのひとの純粋さえ失われなければ、と出されている条件が人間生活の現実にはほとんど全く成り立たないものだということを知っていないほど、著者は人・・・<宮本百合子「若い婦人の著書二つ」青空文庫>
  27. ・・・そこで無視され、卑俗な大人の通念で誤解されたジャックの能動的な精神の発芽が、やがて封じこめられた「少年園」第二巻で経験する苦しみと危機との描写は、現代においても若い精神が教育とか陶冶とかいう名の下に蒙らなければならない戦慄的な桎梏と虚脱とを・・・<宮本百合子「若き精神の成長を描く文学」青空文庫>
  28. ・・・女房は便利な家庭常備品という位にしか考えていないという一般の通念が反映しているではありませんか。 現代社会の現実はそのように人間の愛情をも低下させ貧弱なものにしているから、私達は一つの例外な行為として松本氏の栄子さんに対する愛情の表現に・・・<宮本百合子「私も一人の女として」青空文庫>