つう‐やく【通訳】例文一覧 18件

  1. ・・・「ちょっとあの給仕に通訳してくれ給え。――誰でも五銭出す度に僕はきっと十銭出すから、グラノフォンの鳴るのをやめさせてくれって。」「そんなことは頼まれないよ。第一他人の聞きたがっている音楽を銭ずくでやめさせるのは悪趣味じゃないか?」・・・<芥川竜之介「彼 第二」青空文庫>
  2. ・・・ 譚はこう言う通訳をした後、もう一度含芳へ話しかけた。が、彼女は頬笑んだきり、子供のようにいやいやをしていた。「ふん、どうしても白状しない。誰の出迎いに行ったと尋いているんだが。……」 すると突然林大嬌は持っていた巻煙草に含芳を・・・<芥川竜之介「湖南の扇」青空文庫>
  3. ・・・これによると、大アルメニアの大僧正が、セント・アルバンスを訪れた時に、通訳の騎士が大僧正はアルメニアで屡々「さまよえる猶太人」と食卓を共にした事があると云ったそうである。次いでは、フランドルの歴史家、フィリップ・ムスクが千二百四十二年に書い・・・<芥川竜之介「さまよえる猶太人」青空文庫>
  4. ・・・ そこには旅団参謀のほかにも、副官が一人、通訳が一人、二人の支那人を囲んでいた。支那人は通訳の質問通り、何でも明瞭に返事をした。のみならずやや年嵩らしい、顔に短い髯のある男は、通訳がまだ尋ねない事さえ、進んで説明する風があった。が、その・・・<芥川竜之介「将軍」青空文庫>
  5. ・・・ 二人が話している傍へ、通訳が、顔の平べったい、眉尻の下っている一人の鮮人をつれて這入って来た。阿片の臭いが鼻にプンと来た。鰌髭をはやし、不潔な陋屋の臭いが肉体にしみこんでいる。垢に汚れた老人だ。通訳が、何か、朝鮮語で云って、手を動かし・・・<黒島伝治「穴」青空文庫>
  6. ・・・そこで通訳が向うからやって来た百姓の一人に何か口をきいているのが栗本の眼に映じた。その側に中隊長と中尉とが立っていた。顔が黒く日に焦げて皺がよっている百姓の嗄れた量のある声が何か答えているのがこっちまで聞えてきた。その声は、ほかの声を消して・・・<黒島伝治「パルチザン・ウォルコフ」青空文庫>
  7. ・・・それは、後の自然主義運動に於いて作家としての生長を示した徳田秋声の、この時の作品「通訳官」を見ても、また、小栗風葉の「決死兵」、広津柳浪の「天下一品」、泉鏡花の「外国軍事通信員」等を見ても、その水っぽさと、空想でこしらえあげたあとはかくすべ・・・<黒島伝治「明治の戦争文学」青空文庫>
  8. ・・・兄は私を通訳のかわりとしても、連れて行きたかったらしいのだが、私が断ったので、また考え直した様子で、それっきり外国の話を出さなくなった。 実は、このとき私は、まっかな嘘をついていたのである。当時、私に好きな女があったのである。そいつと別・・・<太宰治「如是我聞」青空文庫>
  9. ・・・そのとき私たちは、林が英語の本を読み、私が通訳するということであった。 読者諸君も、中学へあがられると、たぶん教わると思うが、ナショナルリーダーの三に「マンキィ、ブリッジ」という課がある。手の長い猿共が山から山へ、森から森へ遊びあるいて・・・<徳永直「こんにゃく売り」青空文庫>
  10. ・・・旧幕府の時開成所の教官となり、又外国奉行の通訳官となり、両度欧洲に渡航した。維新の後私塾を開いて生徒を教授し、後に東京学士会院会員に推挙せられ、ついで東京教育博物館長また東京図書館長に任ぜられ、明治十九年十二月三日享年六十三で歿した。秋坪は・・・<永井荷風「上野」青空文庫>
  11. ・・・ 私は通訳をしてくれる人もその席には持っていないのだから途方に暮れ、到頭立って、私はロシア語はまだ話せない、モスクへ三月前に来たばっかりです、私のいうこと、分りますか? そういう調子で十言か二十言話した。出来ない言葉を対手に分らせようと・・・<宮本百合子「打あけ話」青空文庫>
  12. ・・・英語の通訳、ドイツ語の通訳が玄関を飛び交うサヴォイやグランド・ホテルは例外である。そこは、ソヴェトのただ狭い客間である。一九二八年代、どこのホテルの廊下ででも給仕男が大きな盆に茶や食物やをのっけ、汗だくで運んで行く恰好を見ることが出来た。む・・・<宮本百合子「子供・子供・子供のモスクワ」青空文庫>
  13. ・・・片山潜がアムステルダムの大会で演説をしたとき、ドイツ語の通訳はクララ・ツェトキンがやり、フランス語へはローザが翻訳して大衆に伝えたという話をきいたことがあった。 片山潜は、ローザの熱情あふれた才能につよく心をひかれた様子で、うむ、あれは・・・<宮本百合子「生活の道より」青空文庫>
  14. ・・・キムという、日本語の達者な朝鮮人の東洋語学校の教授が、通訳だ。話すものはテーブルに向って演壇の上で椅子にかけて話す。わきで、大きな体のピリニャークが、煙草をふかしながら、彼の作文「日本の印象記」の中から朗読すべき部分を選んでいる。 開会・・・<宮本百合子「ソヴェト文壇の現状」青空文庫>
  15. ・・・のみであり、さすが古強者のシュール・レアリスト、ツァラアも「通訳を聞くとただ頷いて黙っていただけであった。」と云うのは、実に「笑わば笑え。正真正銘の悲劇喜劇」であると云うより外はない。 作家というものは、錯綜した社会関係の間にあって、種・・・<宮本百合子「「迷いの末は」」青空文庫>
  16. ・・・菅氏は通訳として、その限度の中での証人として、証人台に立ったのです。菅氏は、ロシア語の実際として、要請には、プロシェーニェという別の言葉があり、よりつよい意味での要請――ことわりにくいほど命令のニュアンスがふくまれた要請の場合には、はっきり・・・<宮本百合子「若き僚友に」青空文庫>
  17. ・・・支那語の通訳をしていた男である。「度胸だね」と今一人の客が合槌を打った。「鞍山站まで酒を運んだちゃん車の主を縛り上げて、道で拾った針金を懐に捩じ込んで、軍用電信を切った嫌疑者にして、正直な憲兵を騙して引き渡してしまうなんと云う為組は、外・・・<森鴎外「鼠坂」青空文庫>
  18. ・・・「こっちへ這入らせて下さい」とロダンはいった。椅子をも指さないのは、その暇がないからばかりではない。「通訳をする人が一しょに来ていますが。」機嫌を伺うように云うのである。「それは誰ですか。フランス人ですか。」「いいえ。日本人・・・<森鴎外「花子」青空文庫>