つう‐ゆう〔‐イウ〕【通有】例文一覧 23件

  1. ・・・屋台店や見世物小屋がかかって、祭礼に通有な香のむしむしする間を着飾った娘たちが、刺戟の強い色を振播いて歩いた。 競馬場の埒の周囲は人垣で埋った。三、四軒の農場の主人たちは決勝点の所に一段高く桟敷をしつらえてそこから見物した。松川場主の側・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  2. ・・・が、その頃に限らず富が足る時は名を欲するのが古今の金持の通有心理で、売名のためには随分馬鹿げた真似をする。殊に江戸文化の爛熟した幕末の富有の町家は大抵文雅風流を衒って下手な発句の一つも捻くり拙い画の一枚も描けば直ぐ得意になって本職を気取るも・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  3. ・・・最一つ二葉亭は洞察が余り鋭ど過ぎた、というよりも総てのものを畸形的立体式に、あるいは彎曲的螺旋式に見なければ気が済まない詩人哲学者通有の痼癖があった。尤もこういう痼癖がしばしば大きな詩や哲学を作り出すのであるが、二葉亭もまたこの通有癖に累い・・・<内田魯庵「二葉亭追録」青空文庫>
  4. ・・・食色の慾は限りがある、またそれは劣等の慾、牛や豚も通有する慾である。人間はそれだけでは済まぬ。食色の慾が足り、少しの閑暇があり、利益や権力の慾火は断えず燃ゆるにしてもそれが世態漸く安固ならんとする傾を示して来て、そうむやみに修羅心に任せても・・・<幸田露伴「骨董」青空文庫>
  5. ・・・三業純浄は何の修法にも通有の事である。今は言葉をも発せず、言わんともせず、意を動かしもせず、動かそうともせず、安詳に身を清くしていた。この間に日影の移る一寸一寸、一分一分、一厘一厘が、政元に取っては皆好ましい魔境の現前であったろう歟、業通自・・・<幸田露伴「魔法修行者」青空文庫>
  6. ・・・かれら大学教授たちは、こういうところで、ひそかに自慰しているのであって、これは、所謂学者連に通有のあわれな自尊心の表情のように思われる。また、その馬鹿先生の曰く、事ここに到っては、自分もペンを持つ手がふるえるくらい可笑しく馬鹿らしい思いがし・・・<太宰治「如是我聞」青空文庫>
  7. ・・・これは多くの読書家に通有な事であるが、これも一種の骨董趣味と名づけ得られない事はない。科学の方面で云えば、例えばある方則または事実の発見前幾年に誰が既にこれに類似の事を述べているといったような事を探索して楽しむのである。 次にもう少し類・・・<寺田寅彦「科学上の骨董趣味と温故知新」青空文庫>
  8. ・・・そうしてこれらに対する反応によってその問題の対象の本性を探知すると同時に、一方ではまたそれらの種々の環境因子に通有な性質と作用の帰納に必要な資料を収集するのである。ただ物質と物質的エネルギーの場合とちがって、対象のすべてが作者の中にあるので・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  9. ・・・これらの場合にはいずれも通有な一種の原理のようなものがあると思われる。「理由欠乏の原理」あるいは「無知の原理」からすれば、これらの伝播の前面は完全なる円形をなすはずであるが、実際の現象を注意して見ていると、円形になるほうがむしろ不思議な・・・<寺田寅彦「自然界の縞模様」青空文庫>
  10. ・・・そういう下地はしかしおそらく同時代の日本の少年の、皆まででなくとも大多数の中に、多少でも通有なものではなかったかと疑う。もしもそうであったとしたら、この『徒然草』が中学校の教科書として広く行われていたという事が、一時代の国民思想といったよう・・・<寺田寅彦「徒然草の鑑賞」青空文庫>
  11. ・・・こういう家に通有な、急勾配で踏めばギシギシ音のする階段であった。段を上がった処が六畳くらいの部屋で表の窓は往来に面していた。その背後に三畳くらいの小さな部屋があってそこには蚊帳が吊るして寝床が敷いたままになっていた。裏窓からその蚊帳を通して・・・<寺田寅彦「中村彝氏の追憶」青空文庫>
  12. ・・・そういう絵が院展に限らず日本画展覧会には通有である。一体日本画というものが本質的にそういうものなのか。つまり日本画というものはこいう展覧会などに陳列すべきものでないのかとも考えてみる。しかしここにもし光琳でも山楽でも一枚持ってくればやっぱり・・・<寺田寅彦「二科展院展急行瞥見記」青空文庫>
  13. ・・・ それからまた、もし以上の空想がいくぶん事実に近いということになったとしても、それは歌や俳句の力で人をどうするというわけではなくて、ただ歌をやる人と俳句をやる人とで本来の素質に多少の通有的相違があるということを暗示するに過ぎないであろう・・・<寺田寅彦「俳諧瑣談」青空文庫>
  14. ・・・という通有の誤解のために、あまり一般には了解されないようである。これも遺憾なことと思われる。こういう試みは、もっともっといろいろの方面に追求されるべきはずのものである。 これとは少し種類は違うが、細胞分裂の機構を説明する一つのモデルとし・・・<寺田寅彦「物質群として見た動物群」青空文庫>
  15. ・・・今仮りに更に一歩を譲ってこれらの困難を切り抜けられるとして見ても、まだ弾性体に通有な「履歴の影響」という厄介な事が残っている。 履歴の影響とは何ぞや。定まった弾条に定まった重量を吊し、定まった温度その他の同時的条件を一切一様にしても、そ・・・<寺田寅彦「方則について」青空文庫>
  16. ・・・もっともこのようなことは何も連句に限らず他の百般の事がらに通有ないわゆる「転機」の妙用に過ぎないので、われわれ人間の生涯の行路についても似よったことが言われるであろうが、そういう範疇の適切なる一例として見らるるという点に興味があるであろう。・・・<寺田寅彦「連句雑俎」青空文庫>
  17. ・・・ その日その日に忘れられて行く市井の事物を傍観して、走馬燈でも見るような興味を催すのは、都会に生れたものの通有する性癖であろう。されば古老の随筆にして行賈の風俗を記載せざるものは稀であるが、その中に就いて、曳尾庵がわが衣の如き、小川顕道・・・<永井荷風「巷の声」青空文庫>
  18. ・・・摂理なる観念は敢てキリスト教に限らずこれ一般宗教通有のものでありますがその解釈を誤ること我が神学博士のごときもの孰れの宗教に於ても又実に多々あるのであります。今一度博士の所説を繰り返すならば私は筆記して置きましたが、読んで見ます、その中の出・・・<宮沢賢治「ビジテリアン大祭」青空文庫>
  19. ・・・見てまわって、書かれた文章が見るにせわしい調子をつたえているばかりでなく、見るべき場所、事柄の社会的自然的事情について作家たちの科学的知識の欠如していることは今日までの戦線ルポルタージュに顕著な一つの通有性となっている。縦に突こんで、現実が・・・<宮本百合子「明日の言葉」青空文庫>
  20. ・・・を題材とするのは、何と興味ある一つの通有性であろう。『若菜集』の後に出た『一葉舟』で、藤村は「鷲の歌」を抒事詩風にうたっている。ここで藤村は雄渾な自然「削りて高き巖角にしばし身をよす二羽の鷲」の、若鷲の誇高き飛翔を描き「日影にうつる雲さして・・・<宮本百合子「藤村の文学にうつる自然」青空文庫>
  21. ・・・ 一人一人の作家がそれぞれにちがうという必然は、だが他面に何か通有な一つ二つの文学としての希望、願望、更につよくは意欲という風なものを持ってはいないだろうか。 どんな時代にも、作家は現実にたえるものとして自分の作品を生もうとして来た・・・<宮本百合子「日本の河童」青空文庫>
  22. ・・・こういう経歴の作家に通有な文学に於ける面白さが、やはりブルジョア文学の一部の作家がいう面白さと類似したもの或は卑俗さに於て何ら質的に異ったものではなくなって現れて来ているというのは何故であろう。 村山知義氏は一人の能才者である。彼は画を・・・<宮本百合子「ヒューマニズムへの道」青空文庫>
  23. ・・・これはあるいは漱石に限らず私たちの前の世代の人々に通有な傾向であったかもしれない。私の父親などもそういうふうであった。私は父親から愛情を現わす言葉などを一度も聞いたことはない。言葉だけを証拠とすれば、父親には愛がなかったということになるが、・・・<和辻哲郎「漱石の人物」青空文庫>