つき‐だ・す【突(き)出す】例文一覧 14件

  1. ・・・ その時、間の四隅を籠めて、真中処に、のッしりと大胡坐でいたが、足を向うざまに突き出すと、膳はひしゃげたように音もなく覆った。「あれえ、」 と驚いて女房は腰を浮かして遁げさまに、裾を乱して、ハタと手を支き、「何ですねえ。」・・・<泉鏡花「海異記」青空文庫>
  2. ・・・ と天井抜けに、突出す腕で額を叩いて、「はっ、恐入ったね。東京仕込のお世辞は強い。人、可加減に願いますぜ。」 と前垂を横に刎ねて、肱を突張り、ぴたりと膝に手を支いて向直る。「何、串戯なものか。」と言う時、織次は巻莨を火鉢にさ・・・<泉鏡花「国貞えがく」青空文庫>
  3. ・・・とドス声を渋くかすめて、一つしゃくって、頬被りから突出す頤に凄味を見せた。が、一向に張合なし……対手は待てと云われたまま、破れた暖簾に、ソヨとの風も無いように、ぶら下った体に立停って待つのであるから。「どこへ行く、」 黙って、じろり・・・<泉鏡花「菎蒻本」青空文庫>
  4. ・・・ きょろんと立った連の男が、一歩返して、圧えるごとくに、握拳をぬっと突出すと、今度はその顔を屈み腰に仰向いて見て、それにも、したたかに笑ったが、またもや目を教授に向けた。 教授も堪えず、ひとり寂しくニヤニヤとしながら、半ば茫然として・・・<泉鏡花「みさごの鮨」青空文庫>
  5. ・・・格子戸外のその元気のいい声に、むっくり起きると、おっと来たりで、目は窪んでいる……額をさきへ、門口へ突出すと、顔色の青さをあぶられそうな、からりとした春爛な朝景色さ。お京さんは、結いたての銀杏返で、半襟の浅黄の冴えも、黒繻子の帯の艶も、霞を・・・<泉鏡花「縷紅新草」青空文庫>
  6. ・・・鳥渡でも頸を突き出すと直ぐ敵弾の的になってしまう。昼間はとても出ることが出来なかった、日が暮れるのを待ったんやけど、敵は始終光弾を発射して味方の挙動を探るんで、矢ッ張り出られんのは同じこと。」「鳥渡聴くが、光弾の破裂した時はどんなものだ・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  7. ・・・それに、不服があるなら、今すぐ警察へ突き出す。」 急に与助は、おど/\しだした。「いゝえ、もう積金も何もえいせに、その警察へ何するんだけは怺えておくんなされ!」「いや、怺えることはならん!」「いゝえ、どうぞ、その、警察へ何す・・・<黒島伝治「砂糖泥棒」青空文庫>
  8. ・・・老人は隠しの中の貨幣を勘定しながら、絶えず唇を動かして独言を言って、青い目であちこちを見て、折々手を隠しから出さずに肘を前の方へ突き出すのである。その様子が自分の前を歩いているものを跡からこづいて、立ち留らせて、振返えらせようとするようであ・・・<著:シュミットボンウィルヘルム 訳:森鴎外「鴉」青空文庫>
  9. ・・・ キヌ子は、おくめんも無く、右の手のひらを田島の鼻先に突き出す。 田島は、うんざりしたように口をゆがめて、「君のする事なす事を見ていると、まったく、人生がはかなくなるよ。その手は、ひっこめてくれ。カラスミなんて、要らねえや。あれ・・・<太宰治「グッド・バイ」青空文庫>
  10. ・・・りで貴族系譜の数十巻をしらみつぶしに調べ上げ、やっと目的を達したと思うと、ド・ヴァレーズのでたらめを鵜のみにする公爵のあほうのために苦心が水の泡になり、そのいまいましさを片手の鵞ペンといっしょに前方に突き出す瞬間の皮肉な心理描写であろう。・・・<寺田寅彦「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」青空文庫>
  11. ・・・と叫んで、忽ち窓の傍に馳け寄って蒼き顔を半ば世の中に突き出す。人と馬とは、高き台の下を、遠きに去る地震の如くに馳け抜ける。 ぴちりと音がして皓々たる鏡は忽ち真二つに割れる。割れたる面は再びぴちぴちと氷を砕くが如く粉微塵になって室の中に飛・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  12. ・・・え、おっとそう真ともに乗っては顛り返る、そら見たまえ、膝を打たろう、今度はそーっと尻をかけて両手でここを握って、よしか、僕が前へ押し出すからその勢で調子に乗って馳け出すんだよ、と怖がる者を面白半分前へ突き出す、然るにすべてこれらの準備すべて・・・<夏目漱石「自転車日記」青空文庫>
  13. ・・・ 濠を渡せば門も破ろう、門を破れば天主も抜こう、志ある方に道あり、道ある方に向えとルーファスは打ち壊したる扉の隙より、黒金につつめる狼の顔を会釈もなく突き出す。あとに続けと一人が従えば、尻を追えと又一人が進む。一人二人の後は只我先にと乱・・・<夏目漱石「幻影の盾」青空文庫>
  14. ・・・と、彼は持前の、唾のたまり易い口を突き出すようにして弁解した。「五月蠅いですからね」 藍子は悪意のない皮肉で心持大きい口を歪め、美しい笑いを洩した。五月蠅いのが嫌いな尾世川であろうか! 彼が生れた日の星座がそうだとでもいうのか、・・・<宮本百合子「帆」青空文庫>