つけ‐もの【漬物】例文一覧 19件

  1. ・・・と立ったり、居たり、歩行いたり、果は胡坐かいて能代の膳の低いのを、毛脛へ引挟むがごとくにして、紫蘇の実に糖蝦の塩辛、畳み鰯を小皿にならべて菜ッ葉の漬物堆く、白々と立つ粥の湯気の中に、真赤な顔をして、熱いのを、大きな五郎八茶碗でさらさらと掻食・・・<泉鏡花「葛飾砂子」青空文庫>
  2. ・・・床下はどうやらその炊事場の地下室になっているらしく、漬物槽が置かれ、変な臭いが騰ってきてたまらぬと佐伯は言っていた。食堂の主人がことことその漬物槽の石を動かしている音が、毎朝枕元へ響いて来る。漆喰へ水を流す音もする。そのたびに湿気が部屋へ浸・・・<織田作之助「道」青空文庫>
  3. ・・・朝帰りの客を当て込んで味噌汁、煮豆、漬物、ご飯と都合四品で十八銭、細かい商売だと多寡をくくっていたところ、ビールなどをとる客もいて、結構商売になったから、少々眠さも我慢出来た。 秋めいて来て、やがて風が肌寒くなると、もう関東煮屋に「もっ・・・<織田作之助「夫婦善哉」青空文庫>
  4. ・・・僕らは漬物のような色をした太陽を描いてもよいわけではありませんか。 友田恭助を出したのが巧を奏したとおっしゃいますが、あそこは僕としては一番気になるところです。失敗ではなかったかと思っています。但し、理髪店から「友田……」の声がきこえて・・・<織田作之助「吉岡芳兼様へ」青空文庫>
  5. ・・・ 炊事場は、古い腐った漬物の臭いがした。それにバターと、南京袋の臭いがまざった。 調理台で、牛蒡を切っていた吉永が、南京袋の前掛けをかけたまま入口へやって来た。 武石は、ぺーチカに白樺の薪を放りこんでいた。ぺーチカの中で、白樺の・・・<黒島伝治「渦巻ける烏の群」青空文庫>
  6. ・・・そこには豚の脂肪や、キャベツや、焦げたパン、腐敗した漬物の臭いなどが、まざり合って、充満していた。そこで働いている炊事当番の皮膚の中へまでも、それ等の臭いはしみこんでいるようだった。「豚だって、鶏だってさ、徴発して来るのは俺達じゃないか・・・<黒島伝治「橇」青空文庫>
  7. ・・・おげんは小山の家の方で毎年漬物の用意をするように、病室の入口の部屋に近い台所に出ていた。彼女の心は山のように蕪菜を積み重ねた流し許の方へ行った。青々と洗われた新しい蕪菜が見えて来た。それを漬ける手伝いしていると、水道の栓から滝のように迸り出・・・<島崎藤村「ある女の生涯」青空文庫>
  8. ・・・お島は勝手口の方へ自慢の漬物を出しに行って来て、炉辺で夫に茶を進めながら、訪ねてくれた友達の話をして笑った。「私が面白い風俗をして張物をしていたもんですから、吃驚したような顔してましたよ……」「そんなに皆な田舎者に成っちゃったかナア・・・<島崎藤村「岩石の間」青空文庫>
  9. ・・・それでも私は、やっぱり弱くて、良夫さんにハムを切ってあげたり、奥さんにお漬物とってあげたり奉仕をするのだ。 ごはんがすんでから、私はすぐに台所へひっこんで、あと片附けをはじめた。早く独りになりたかったのだ。何も、お高くとまっているのでは・・・<太宰治「女生徒」青空文庫>
  10. ・・・ 何年来食ったことのなかった漬物などを、ばりばり音を立てて食うことが出来る。はなはだ不思議な心持がする。パンの皮や、らっきょうや、サラダや、独活や、そんなものでも、音を立てて食うことに異常な幸福を感じる。 歯のいい人は、おそらく、こ・・・<寺田寅彦「鑢屑」青空文庫>
  11. ・・・ちょうどおひろが高脚のお膳を出して、一人で御飯を食べているところで、これでよく生命が続くと思うほど、一と嘗めほどのお菜に茄子の漬物などで、しょんぼり食べていた。店の女たちも起きだして、掃除をしていた。「独りで食べてうまいかね」「わた・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  12. ・・・ わたくしは子供のころ、西瓜や真桑瓜のたぐいを食うことを堅く禁じられていたので、大方そのせいでもあるか、成人の後に至っても瓜の匂を好まないため、漬物にしても白瓜はたべるが、胡瓜は口にしない。西瓜は奈良漬にした鶏卵くらいの大きさのものを味・・・<永井荷風「西瓜」青空文庫>
  13. ・・・「おれのは漬物だよ。お前のうちじゃ蕈の漬物なんか喰べないだろうから茶いろのを持って行った方がいいやな。煮て食うんだろうから。」 私はなるほどと思いましたので少し理助を気の毒なような気もしながら茶いろのをたくさんとりました。羽織に包ま・・・<宮沢賢治「谷」青空文庫>
  14. ・・・それはなぜかと申しますと、女の方は家庭が仕事でございますので広い社会的な生活をいたしませんから、お婆さんは何十年となく漬物を漬けているから、菜葉はこれ位の塩をつけたらまず食べられるということをよく知っておりますが、若い人はもう少し科学的です・・・<宮本百合子「幸福の建設」青空文庫>
  15. ・・・○家じゅうに戸棚が三尺の一間の一間ぐらいしかない。板の間に長持、その上に布団や何かごたごたつみ上げてある。さらさ 大きい嫁入紋のついた布団など。○漬物がうまくつかっていない、うまいつけものをチビチビ食べるような暮しでない。激しくて。・・・<宮本百合子「Sketches for details Shima」青空文庫>
  16. ・・・   × 洗いざらしだが、さっぱりした半股引に袖なしの××君は、色のいい茄子の漬物をドッサリ盛った小鉢へ向って筵の上へ胡坐を掻き、凝っときいている。やがて静かな、明晰な口調で、「どうだ、今夜居られるかね?」と訊いた。「僕・・・<宮本百合子「飛行機の下の村」青空文庫>
  17. ・・・ またしばらくすると、経済逼迫のために、古橋その他の有名選手たちが夏休みのアルバイトとして、銀座辺で漬物屋の店をひらくとか、そういう店に働くとかいうニュースがでた。そのときとられた写真の中でも、古橋君たちはやっぱり、はっきりとこだわりの・・・<宮本百合子「ボン・ボヤージ!」青空文庫>
  18. ・・・「そんなら漬物で和えろ……」「でも魚スープか蒸焼を注文されたら?」「作れ。どうせ食う」 ゴーリキイには、こういう場合のスムールイの心持が通じた。スムールイを憐む感情が湧いた。ゴーリキイは自分の心にも似たような黒い、激しいもの・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイの伝記」青空文庫>
  19. ・・・いつも漬物を切らすので、あの日には茄子と胡瓜を沢山に漬けて置けと云ったのだ。」「それじゃあ自分の内へも沢山漬けたのだろう。」「はははは。しかしとにかく難有う。奥さんにも宜しく云ってくれ給え。」 話しながら京町の入口まで来たが、石・・・<森鴎外「鶏」青空文庫>