つ‐ごう〔‐ガフ〕【都合】例文一覧 34件

  1. ・・・などと都合の好いことを主張していた。「そこを彼女のためにはいって来いよ。」「ふん、犠牲的精神を発揮してか?――だがあいつも見られていることはちゃんと意識しているんだからな。」「意識していたって好いじゃないか。」「いや、どうも・・・<芥川竜之介「海のほとり」青空文庫>
  2. ・・・「さよう、とうからこの際には土地はいただかないことにして、金でお願いができますれば結構だと存じていたのでございますが……しかし、なに、これとてもいわばわがままでございますから……御都合もございましょうし……」「とうから」と聞きかえし・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  3. ・・・なるほどひと晩のことだから一つに纏めて現した方が都合は可いかも知れないが、一時間は六十分で、一分は六十秒だよ。連続はしているが初めから全体になっているのではない。きれぎれに頭に浮んで来る感じを後から後からときれぎれに歌ったって何も差支えがな・・・<石川啄木「一利己主義者と友人との対話」青空文庫>
  4. ・・・ 先刻もいう通り、私の死んでしまった方が阿母のために都合よく、人が世話をしようと思ったほどで、またそれに違いはなかったんですもの。 実際私は、貴女のために活きていたんだ。 そして、お民さん。」 あるじが落着いて静にいうのを、・・・<泉鏡花「女客」青空文庫>
  5. ・・・ それですからって、あんな所へ牛を置いて届けても来ないのは不都合じゃないか。 無情冷酷……しかも横柄な駅員の態度である。精神興奮してる自分は、癪に障って堪らなくなった。 君たちいったいどこの国の役人か、この洪水が目に入らないのか・・・<伊藤左千夫「水害雑録」青空文庫>
  6. ・・・ それにしても、今、吉弥を紹介しておく方が、僕のいなくなった跡で、妻の便利でもあろうと思ったから、――また一つには、吉弥の跡の行動を監視させておくのに都合がよかろうと思ったから――吉弥の進まないのを無理に玉をつけて、晩酌の時に呼んだ。料・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  7. ・・・研究報告書は経費の都合上十分抱負が実現されなかったが、とにかく鴎外時代となって博物館から報告書が発行されるようになったのは日本の博物館の一進歩である。鴎外は各国博物館の業績に深く潜思して、就任後一、二回落合った偶然の咄のついでにも抱負の一端・・・<内田魯庵「鴎外博士の追憶」青空文庫>
  8. ・・・ この街は、この国の一番の都でありまして、人々はそのほりの中にすんでいる魚を捕ることができなく、また下りている鳥を撃つことができないおきてでありましたから、かもめには、このうえなく都合がよく、暮らしいいところでありました。 ほりの中・・・<小川未明「馬を殺したからす」青空文庫>
  9. ・・・「ええ、それは見せました、こないだ私がお宅から帰ると、都合よくちょうど先の人が来合わせたものですから」「それで、御覧なさいましてどんなお口振りでした?」「別にその時は……何しろ急いでいたものですからね、とにかく借してくれってその・・・<小栗風葉「深川女房」青空文庫>
  10. ・・・ あくる日、金助が軽部を訪れて、「ひとり娘のことでっさかい、養子ちゅうことにしてもらいましたら……」 都合がいいとは言わせず、軽部は、「それは困ります」 と、まるで金助は叱られに行ったみたいだった。 やがて、軽部は小・・・<織田作之助「雨」青空文庫>
  11. ・・・金の都合が出来んもんだから」「そいつあ不可んよ君。……」 横井は彼の訪ねて来た腹の底を視透かしたかのように、むずかしい顔をして、その角張った広い顔から外へと跳ねた長い鬚をぐい/\と引張って、飛び出た大きな眼を彼の額に据えた。彼は話題・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  12. ・・・そしてそれを機会にひとまず吉田も吉田の母も弟も、それまで外で家を持っていた吉田の兄の家の世話になることになり、その兄がそれまで住んでいた町から少し離れた田舎に、病人を住ますに都合のいい離れ家のあるいい家が見つかったのでそこへ引っ越したのがま・・・<梶井基次郎「のんきな患者」青空文庫>
  13. ・・・は、その法令を規定したすべての条件を具えたものには、早速払い下げを許可するが、そうでないものをば一斉に書面を却下することとし、また相当の条件を具えた書面が幾通もあるときは、第一着の願書を採用するという都合らしく、よっては今夜早速に、それらの・・・<川上眉山「書記官」青空文庫>
  14. ・・・よほど都合のいい日でないと白馬もろくろくは飲めない仲間らしい。けれどもせんの三人は、いくらかよかったと見えて、思い思いに飲っていた。「文公、そうだ君の名は文さんとか言ったね。からだはどうだね。」と角ばった顔の性質のよさそうな四十を越した・・・<国木田独歩「窮死」青空文庫>
  15. ・・・ 愛読した本と、作家は、まだほかに多々あるが紙数の都合でこれだけとする。<黒島伝治「愛読した本と作家から」青空文庫>
  16. ・・・帰る時も舟から直に本所側に上って、自分の屋敷へ行く、まことに都合好くなっておりました。そして潮の好い時には毎日のようにケイズを釣っておりました。ケイズと申しますと、私が江戸訛りを言うものとお思いになる方もありましょうが、今は皆様カイズカイズ・・・<幸田露伴「幻談」青空文庫>
  17. ・・・ 龍介は他にお客がなかったとき恵子に「Zの海岸へ行く」都合をきいた。言ってしまって、自分でドキまぎした。 恵子は「どうして?」とききかえした。「……遊びにさ」「そうねえ――考えておくわ」と言った。「考える?」「でも、・・・<小林多喜二「雪の夜」青空文庫>
  18. ・・・「なにしろ、日あたりがよくて、部屋の都合がよくて、庭もあって、それで安い家と来るんだから、むずかしいや。」と、三郎は混ぜ返すように笑い出した。「もっと大きい家ならある。」と次郎も私に言ってみせた。「五間か六間というちょうどいいところ・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  19. ・・・には、はいっていないのであるが、ほぼ同時代の作品ではあり、かつまたページ数の都合もあって、この第一巻にいれて置いた。 これらの作品はすべて、私自身にとっても思い出の深い作品ばかりであり、いまその目次を一つ一つ書き写していたら、世にめずら・・・<太宰治「『井伏鱒二選集』後記」青空文庫>
  20. ・・・白い襟首、黒い髪、鶯茶のリボン、白魚のようなきれいな指、宝石入りの金の指輪――乗客が混合っているのとガラス越しになっているのとを都合のよいことにして、かれは心ゆくまでその美しい姿に魂を打ち込んでしまった。 水道橋、飯田町、乗客はいよいよ・・・<田山花袋「少女病」青空文庫>
  21. ・・・ われわれ先生に親しかった人々はよほど用心していないととかく自分等だけの接触した先生の世界の一部分を、先生の全体の上に蔽い被せてしまって、そうして自分等の都合のいいような先生を勝手に作り上げようとする恐れがある。意識的には無我の真情から・・・<寺田寅彦「埋もれた漱石伝記資料」青空文庫>
  22. ・・・葬で、香奠は孰にしても公に下るのが十五円と、恁云う規則なんでござえんして…… それで、『大瀬、お前は晴二郎の死骸を、此まま引取って行くか、それとも此方で本葬をして骨にして持って行くか、孰でも其方の都合にするが可い』と、まあ恁う仰って下さ・・・<徳田秋声「躯」青空文庫>
  23. ・・・友達がかわいそうだから、急場のところ、何とか都合をしてくれと頼んで見たまえ。」「そうか。やって見よう。」とわたしは唖々子をその場に待たせて、まず冠っていた鳥打帽を懐中にかくし、いかにも狼狽した風で、煙草屋の店先へ駈付けるが否や、「今・・・<永井荷風「梅雨晴」青空文庫>
  24. ・・・御蔭で私もまだ見ない土地や名所などを捜る便宜を得ましたのは好都合です。そのついでに演説をする――のではない演説のついでに玉津島だの紀三井寺などを見た訳でありますからこれらの故跡や名勝に対しても空手では参れません。御話をする題目はちゃんと東京・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  25. ・・・特にまたこの旅行は、前に述べたような欠陥によって、私の目的に都合がよかった。だが普通の健全な方角知覚を持ってる人でも、時にはやはり私と同じく、こうした特殊の空間を、経験によって見たであろう。たとえば諸君は、夜おそく家に帰る汽車に乗ってる。始・・・<萩原朔太郎「猫町」青空文庫>
  26. ・・・それに、裁判はこちらの都合で、五年でも十年でも引っ張れる。その間、お前はどうして食う。裁判費用をどこから出す。ヘッヘッヘッ」と、吉武有と云う、鋳込まれたキャプスタン見たいな、あの船長奴、抜かしやがった。抜かしやがった。畜生!「どうして食う?・・・<葉山嘉樹「浚渫船」青空文庫>
  27. ・・・と、お熊は唐紙越しに、「花魁、こなたの御都合でねえ、よござんすか」「うるさいよッ」と、吉里も唐紙越しに睨んで、「人のことばッかし言わないで、自分も気をつけるがいいじゃアないか。ちッたアそこで燗番でもするがいいんさ。小万さんの働いておいで・・・<広津柳浪「今戸心中」青空文庫>
  28. ・・・然るに此悪性不能を牝犬の一方に持込み、牝犬の人をみ夜を守らざるは宜しからずとのみ言うは不都合ならん。牡犬なれば悪性にても不能にても苦しからずや。議論片落なりと言う可し。蓋し女大学の記者は有名なる大先生なれども、一切万事支那流より割出して立論・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  29. ・・・ただその時に、僕が何かの都合のために、たとえばひどく疲れているとか、狼に追われているとか、あるいはひどく神経が興奮しているとか、そんなような事情から、ふっとその引力を感じないというようなことはあるかもしれない。しかしとにかく行って来よう。二・・・<宮沢賢治「楢ノ木大学士の野宿」青空文庫>
  30. ・・・その、自分の家でありながら六畳の方へは踏み込まず、口数多い神さんが気に入らなかったが、座敷は最初からその目的で拵えられているだけ、借りるに都合よかった。戸棚もたっぷりあったし、東は相当広い縁側で、裏へ廻れるように成ってもいる。 陽子は最・・・<宮本百合子「明るい海浜」青空文庫>