つ‐ど【都度】例文一覧 18件

  1. ・・・落人のそれならで、そよと鳴る風鈴も、人は昼寝の夢にさえ、我名を呼んで、讃美し、歎賞する、微妙なる音響、と聞えて、その都度、ハッと隠れ忍んで、微笑み微笑み通ると思え。 深張の涼傘の影ながら、なお面影は透き、色香は仄めく……心地すれば、誰憚・・・<泉鏡花「伯爵の釵」青空文庫>
  2. ・・・畢竟するに戯作が好きではなかったが、馬琴に限って愛読して筆写の労をさえ惜しまず、『八犬伝』の如き浩澣のものを、さして買書家でもないのに長期にわたって出版の都度々々購読するを忘れなかったというは、当時馬琴が戯作を呪う間にさえ愛読というよりは熟・・・<内田魯庵「八犬伝談余」青空文庫>
  3. ・・・その嫁と比べて、お君の美しさはあらためて男湯で問題になった。露骨に俺の嫁になれと持ちかけるものもあったが、笑っていた。金助へ話をもって行くものもあった。その都度、金助がお君の意見を訊くと、例によって、「私はどないでも……」 いいが、・・・<織田作之助「雨」青空文庫>
  4. ・・・その都度せかせかとこの橋を渡らねばならなかった。近頃は、弓形になった橋の傾斜が苦痛でならない。疲れているのだ。一つ会社に十何年間かこつこつと勤め、しかも地位があがらず、依然として平社員のままでいる人にあり勝ちな疲労がしばしばだった。橋の上を・・・<織田作之助「馬地獄」青空文庫>
  5. ・・・欠伸をまじえても金銭に換算しても、やはり女の生理の秘密はその都度新鮮な驚きであった。私は深刻憂鬱な日々を送った。 阿部定の事件が起ったのは、丁度そんな時だ。妖艶な彼女が品川の旅館で逮捕された時、号外が出て、ニュースカメラマンが出動した。・・・<織田作之助「世相」青空文庫>
  6. ・・・を読み直すことがその都度の結論だが、僕は「ジュリアン・ソレル」という小説を書こうと思う。これは長いものになるが、今年中か来年のはじめには着手するつもりだ。僕の小説に思想がないとか、真実がないとか言っている連中も、これを読めば、僕が少くとも彼・・・<織田作之助「文学的饒舌」青空文庫>
  7. ・・・ と思い出したようにふっと言い、嘉七は、その都度、心弱く、困った。<太宰治「姥捨」青空文庫>
  8. ・・・私は不流行の、無名作家なのだから、その都度たいへん恐縮する。「病気は、もう、いいのですか?」必ず、まず、そうきかれる。私は馴れているので、「ええ、ふつうの人より丈夫です。」「どんな工合だったんですか?」「五年まえのことです。・・・<太宰治「鴎」青空文庫>
  9. ・・・三度、ながい手紙をさしあげて、その都度、あかるい御返事いただいた。私がその作家を好きであるのと丁度おなじくらいに、その作家もまた私を好きなのだ、といつのまにか、ひとりできめてしまっていた。のこり少い時間である。仕合せのことに用いなければいけ・・・<太宰治「狂言の神」青空文庫>
  10. ・・・君のれいの商売で、儲けるぶんくらいは、その都度きちんと支払う。」「ただ、あなたについて歩いていたら、いいの?」「まあ、そうだ。ただし、条件が二つある。よその女のひとの前では一言も、ものを言ってくれるな。たのむぜ。笑ったり、うなずいた・・・<太宰治「グッド・バイ」青空文庫>
  11. ・・・お母さんは、その都度、どんなに痛い苦しい思いをするか、そんなものは、てんで、はねつけている自分だ。お父さんがいなくなってからは、お母さんは、ほんとうにお弱くなっているのだ。私自身、くるしいの、やりきれないのと言ってお母さんに完全にぶらさがっ・・・<太宰治「女生徒」青空文庫>
  12. ・・・お葬式の翌る日、学校へ出たら、先生がたも、みんな私にお悔みを言って下さって、私はその都度、泣きました。お友達からも、意外のほどに同情され、私はおどおどしてしまいました。市ヶ谷の女学校に徒歩で通っていたのですが、あのころは、私は小さい女王のよ・・・<太宰治「誰も知らぬ」青空文庫>
  13. ・・・私は、そのようなむだな試みを幾度となく繰り返し、その都度、失敗した。私は絶望した。私は大作家になる素質を持っていないのだと思った。ああ、しかし、そんな内気な臆病者こそ、恐ろしい犯罪者になれるのだった。        二 私が・・・<太宰治「断崖の錯覚」青空文庫>
  14. ・・・こんな化け物みたいなものに、ついてこられて、たまるものか、とその都度、私は、だまってポチを見つめてやる。あざけりの笑いを口角にまざまざと浮べて、なんぼでも、ポチを見つめてやる。これは大へんききめがあった。ポチは、おのれの醜い姿にハッと思い当・・・<太宰治「畜犬談」青空文庫>
  15. ・・・お医者は、その都度、心を鬼にして、奥さまもうすこしのご辛棒ですよ、と言外に意味をふくめて叱咤するのだそうである。 八月のおわり、私は美しいものを見た。朝、お医者の家の縁側で新聞を読んでいると、私の傍に横坐りに坐っていた奥さんが、「あ・・・<太宰治「満願」青空文庫>
  16. ・・・ただいちばん面食らわされるのは、東京付近などで年々新しく開設される電鉄軌道や自動車道路がその都度記入されていないことだけである。 東京付近へドライヴに出るとき気のついたことは、たいていの運転手が陸地測量部地形図を利用しないでかえって坊間・・・<寺田寅彦「地図をながめて」青空文庫>
  17. ・・・ 一生の間には、事務的な用向ではあるが夥しい度数の旅行をして居りますから、その都度書いてよこした寸簡類がもし今日迄保存されていたら、恐らく大した数にのぼって居たことでしょう。 どういうわけか、父が家族に宛てて書いた手紙類は実に小部分・・・<宮本百合子「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」青空文庫>
  18. ・・・そしてその都度不愉快極まる反響を聞くのです。 昨今は私が何か云うと、愚痴とか厭味とか云ってからかわれることになっている。それだけで何の効果もない。何の役にも立たない。人に利益は与えずに、自分が不愉快な目に逢うのみです。そんなことは私だっ・・・<森鴎外「Resignation の説」青空文庫>