つね‐に【常に】例文一覧 35件

  1. ・・・第一顔色も非常に悪い。のみならず苛立たしさに堪えないように長靴の脚を動かしている。彼女はそのためにいつものように微笑することも忘れたなり、一体細引を何にするつもりか、聞かしてくれと歎願した。しかし夫は苦しそうに額の汗を拭いながら、こう繰り返・・・<芥川竜之介「馬の脚」青空文庫>
  2. ・・・私は常に自分の実生活の状態についてくよくよしている。そして、その生活と芸術との間に、正しい関係を持ちきたしたいと苦慮している、これが私の心の実状である。こういう心事をもって、私はみずからを第一の種類の芸術家らしく装うことはできない。装うこと・・・<有島武郎「広津氏に答う」青空文庫>
  3. ・・・その時が過ぎてしまえば間もなく忘れるような、乃至は長く忘れずにいるにしても、それを言い出すには余り接穂がなくてとうとう一生言い出さずにしまうというような、内から外からの数限りなき感じを、後から後からと常に経験している。多くの人はそれを軽蔑し・・・<石川啄木「一利己主義者と友人との対話」青空文庫>
  4. ・・・その事をば、母上の御名にかけて誓えよと、常にミリヤアドのいえるなりき。 予は黙してうつむきぬ。「何もね、いまといっていま、あなたに迫るんじゃありません。どうぞ悪く思わないで下さいまし、しかしお考えなすッてね。」 また顔見たり。・・・<泉鏡花「誓之巻」青空文庫>
  5. ・・・幼ないもの共は茶室へ寝るのを非常に悦んだ。そうして間もなく無心に眠ってしまった。二人の姉共と彼らの母とは、この気味の悪い雨の夜に別れ別れに寝るのは心細いというて、雨を冒し水を渡って茶室へやって来た。 それでも、これだけの事で済んでくれれ・・・<伊藤左千夫「水害雑録」青空文庫>
  6. ・・・大河内家の先代輝音侯というは頗る風流の貴族で常に文墨の士を近づけた。就中、椿岳の恬淡洒落を愛して方外の友を以て遇していた。この大河内家の客座敷から横手に見える羽目板が目触りだというので、椿岳は工風をして廂を少し突出して、羽目板へ直接にパノラ・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  7. ・・・非常に面白い下女で、私のところに参りましてから、いろいろの世話をいたします。ある時はほとんど私の母のように私の世話をしてくれます。その女が手紙を書くのを側で見ていますと、非常な手紙です。筆を横に取って、仮名で、土佐言葉で書く。今あとで坂本さ・・・<内村鑑三「後世への最大遺物」青空文庫>
  8. ・・・ 此の新聞は午前の四時頃になると配達されるので常に家内のものが眠っているうちに戸の隙間から入れて行くのが例であった。私はもしこの時分に起きて家の外に出て道の上に立っていたなら、偶然にこの新聞配達夫が通り過ぎるのを見ないとは限らないと思っ・・・<小川未明「ある日の午後」青空文庫>
  9. ・・・なところへ女の来る道理がないから、不思議に思ってよく見ようとするが、奇妙に、その紫色の帯の処までは、辛うじて見えるが、それから上は、見ようとして、幾ら身を悶掻いても見る事が出来ない、しかもこの時は、非常に息苦しくて、眼は開いているが、如何し・・・<小山内薫「女の膝」青空文庫>
  10. ・・・ しかし、坂田の端の歩突きは、いかに阿呆な手であったにしろ、常に横紙破りの将棋をさして来た坂田の青春の手であった。一生一代の対局に二度も続けてこのような手を以て戦った坂田の自信のほどには呆れざるを得ないが、しかし、六十八歳の坂田が一生一・・・<織田作之助「可能性の文学」青空文庫>
  11. ・・・あの明確な頭脳の、旺盛な精力の、如何なる運命をも肯定して驀地らに未来の目標に向って突進しようという勇敢な人道主義者――、常に異常な注意力と打算力とを以て自己の周囲を視廻し、そして自己に不利益と見えたものは天上の星と雖も除き去らずには措かぬと・・・<葛西善蔵「子をつれて」青空文庫>
  12. ・・・から常に自分を守ってくれていた爪がもはやないからである。彼はよたよたと歩く別の動物になってしまう。遂にそれさえしなくなる。絶望! そして絶え間のない恐怖の夢を見ながら、物を食べる元気さえ失せて、遂には――死んでしまう。 爪のない猫! こ・・・<梶井基次郎「愛撫」青空文庫>
  13. ・・・すると樋口が帰って来て、非常に怒った様子でしたが、まもなく鸚鵡がひとりでにかごへ帰って来たので、それなりに納まったらしいのです。「けれども君は、かの後の事はよく知るまい、まもなく君は木村と二人で転宿してしまったから……なんでも君と木村が・・・<国木田独歩「あの時分」青空文庫>
  14. ・・・ 街頭の実践運動の背後には常に偉大なる思想がある。そして人間を実践的社会運動に駆る思想は倫理的思想である。共産主義の運動への情熱が日本の青年層を風靡し、犠牲的な行動にまで刺衝したのは、同主義の唯物的必然論にもかかわらず、依然として包蔵し・・・<倉田百三「学生と教養」青空文庫>
  15. ・・・そして、カッチリ纒りすぎる位いまとまっている。常に原始的な切ったり、はったり、殺し合いをやったりする、ロマンティックなことばかりを書いている。どんなことでも、かまわずにさっさと書いて行く、冷たい態度が僕はすきだった。燐光を放っている。短篇を・・・<黒島伝治「愛読した本と作家から」青空文庫>
  16. ・・・く理解し合うものであるから、中村の細君が一も二も無く若崎の細君の云う通りになってくれたのでもあろうが、一つには平常同じような身分の出というところからごくごく両家が心安くし合い、また一つには若崎が多くは常に中村の原型によってこれを鋳ることをす・・・<幸田露伴「鵞鳥」青空文庫>
  17. ・・・突は唯だ四囲の境遇の為めに余儀なくせられ、若くば養成せられたので、其本来の性質ではない、否な彼等は完全に一致・合同し得べき者、させねばならぬものである、動物の群集にもあれ、人間の社会にもあれ、此二者の常に矛盾・衝突すべき事情の下に在る者は衰・・・<幸徳秋水「死生」青空文庫>
  18. ・・・ 何かしら常に不満で、常にひとりぼっちで、自分のことしか考えないような顔つきをしている三郎が、そんな鶯のまねなぞを思いついて、寂しい少年の日をわずかに慰めているのか。そう思うと、私はこの子供を笑えなかった。「かあさんさえ達者でいたら・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  19.  本職の詩人ともなれば、いつどんな注文があるか、わからないから、常に詩材の準備をして置くのである。「秋について」という注文が来れば、よし来た、と「ア」の部の引き出しを開いて、愛、青、赤、アキ、いろいろのノオトがあって、そ・・・<太宰治「ア、秋」青空文庫>
  20. ・・・丈はすらりとしているし、眼は鈴を張ったようにぱっちりしているし、口は緊って肉は痩せず肥らず、晴れ晴れした顔には常に紅が漲っている。今日はあいにく乗客が多いので、そのまま扉のそばに立ったが、「こみ合いますから前の方へ詰めてください」と車掌の言・・・<田山花袋「少女病」青空文庫>
  21. ・・・ただ一つの逸話として伝えられているのは、彼が五歳の時に、父から一つの羅針盤を見せられた事がある、その時に、何ら直接に接触するもののない磁針が、見えざる力の作用で動くのを見て非常に強い印象を受けたという事である。その時の印象が彼の後年の仕事に・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  22. ・・・僕はかく思いつつ常に世田ヶ谷を過ぎていた。思っていたが、実に思いがけなく今明治四十四年の劈頭において、我々は早くもここに十二名の謀叛人を殺すこととなった。ただ一週間前の事である。 諸君、僕は幸徳君らと多少立場を異にする者である。僕は臆病・・・<徳冨蘆花「謀叛論(草稿)」青空文庫>
  23. ・・・モオリスは現代の装飾及工芸美術の堕落に対して常に、趣味 Got と贅沢 Luxe とを混同し、また美 Beaut と富貴 Richesse とを同一視せざらん事を説き、趣味を以て贅沢に代えよと叫んでいる。モオリスはその主義として芸術の専門的・・・<永井荷風「妾宅」青空文庫>
  24. ・・・女は尺に足らぬ紅絹の衝立に、花よりも美くしき顔をかくす。常に勝る豊頬の色は、湧く血潮の疾く流るるか、あざやかなる絹のたすけか。ただ隠しかねたる鬢の毛の肩に乱れて、頭には白き薔薇を輪に貫ぬきて三輪挿したり。 白き香りの鼻を撲って、絹の影な・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  25. ・・・本来の性質からは、それは幾何学のものよりも、一層明晰なものなのであるが、我々が感官から得た、幼時から馴された、種々なる先入見と一致せないかに見えるものから非常に注意深く、精神をできるだけ感官から引離そうと努力する人によってのみ理解せられるの・・・<西田幾多郎「デカルト哲学について」青空文庫>
  26. ・・・彼は常に、読者の一歩前を歩いて居る。彼は永遠に捉へ得ない。しかもただ一歩で、すぐ捉へることができるやうに、虚偽の影法師で欺きながら、結局あの恐ろしい狂気が棲む超人の森の中へ、読者を魔術しながら導いて行く。 ニイチェを理解することは、何よ・・・<萩原朔太郎「ニイチェに就いての雑感」青空文庫>
  27. ・・・実際の真面目を言えば、常に能く夜を守らずして内を外にし、動もすれば人を叱倒し人を虐待するが如き悪風は男子の方にこそ多けれども、其処を大目に看過して独り女子の不徳を咎むるは、所謂儒教主義の偏頗論と言う可きのみ。一 女子は稚時より男・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  28. ・・・というのは、文学に対する尊敬の念が強かったので、例えばツルゲーネフが其の作をする時の心持は、非常に神聖なものであるから、これを翻訳するにも同様に神聖でなければならぬ、就ては、一字一句と雖、大切にせなければならぬとように信じたのである。 ・・・<二葉亭四迷「余が翻訳の標準」青空文庫>
  29. ・・・しかれども赤貧洗うがごとく常に陋屋の中に住んで世と容れず。古書堆裏独破几に凭りて古を稽え道を楽む。詠歌のごときはもとよりその専攻せしところに非ざるべきも、胸中の不平は他に漏らすの方なく、凝りて三十一字となりて現れしものなるべく、その歌が塵気・・・<正岡子規「曙覧の歌」青空文庫>
  30. ・・・ 三通りの発展の段階があるにしても、唯一つ、最も基本的で共通な点は、民主社会においては、婦人が、全く人口の半分を占める男子の伴侶であって、婦人にかかわるあらゆる問題の起源と解決とは常に、男子女子をひっくるめた人民全体の生活課題として、理・・・<宮本百合子「合図の旗」青空文庫>