つらね【連ね/列ね】例文一覧 30件

  1. ・・・それは推古から明治に至る各時代の民を主人公にし、大体三十余りの短篇を時代順に連ねた長篇だった。僕は火の粉の舞い上るのを見ながら、ふと宮城の前にある或銅像を思い出した。この銅像は甲冑を着、忠義の心そのもののように高だかと馬の上に跨っていた。し・・・<芥川竜之介「歯車」青空文庫>
  2. ・・・とうたった詩人石せきたい翁をしてあの臼を連ねたような石がきを見せしめたら、はたしてなんと言うであろう。 自分は松江に対して同情と反感と二つながら感じている。ただ、幸いにしてこの市の川の水は、いっさいの反感に打勝つほど、強い愛惜を自分の心・・・<芥川竜之介「松江印象記」青空文庫>
  3. ・・・沖の船の燈が二つ三つ、星に似て、ただ町の屋根は音のない波を連ねた中に、森の雲に包まれつつ、その旅館――桂井の二階の欄干が、あたかも大船の甲板のように、浮いている。 が、鬼神の瞳に引寄せられて、社の境内なる足許に、切立の石段は、疾くその舷・・・<泉鏡花「貝の穴に河童の居る事」青空文庫>
  4. ・・・そこから斜に濃い藍の一線を曳いて、青い空と一刷に同じ色を連ねたのは、いう迄もなく田野と市街と城下を巻いた海である。荒海ながら、日和の穏かさに、渚の浪は白菊の花を敷流す……この友禅をうちかけて、雪国の町は薄霧を透して青白い。その袖と思う一端に・・・<泉鏡花「縷紅新草」青空文庫>
  5. ・・・ 例の玩具めいた感じのする小さな汽罐車は、礦石や石炭を積んだ長い貨車の後に客車を二つ列ねて、とことこと引張って行った。耕吉はこの春初めてこの汽車に乗った当時の気持を考え浮べなどしていたが、ふと、「俺はこの先きも幾度かこの玩具のような汽車・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  6. ・・・流れに渡したる掛橋は、小柴の上に黒木を連ねて、おぼつかなげに藤蔓をからみつけたり。橋を渡れば山を切り開きて、わざとならず落しかけたる小滝あり。杣の入るべき方とばかり、わずかに荊棘の露を払うて、ありのままにしつらいたる路を登り行けば、松と楓樹・・・<川上眉山「書記官」青空文庫>
  7. ・・・弁解の言葉連ねたもうな、二郎とてもわれとても貴嬢が弁解の言葉ききて何の用にかせん。二郎が深き悲しみは貴嬢がしきりに言い立てたもう理由のいかんによらで、貴嬢が心にたたえたまいし愛の泉の涸れし事実の故のみ。この事実は人知れず天が下にて行なわれし・・・<国木田独歩「おとずれ」青空文庫>
  8. ・・・を立て、二のたてじに棟を渡し、肘木を左右にはね出させて、肘木と肘木とを木竿で連ねて苫を受けさせます。苫一枚というのは凡そ畳一枚より少し大きいもの、贅沢にしますと尺長の苫は畳一枚のよりよほど長いのです。それを四枚、舟の表の間の屋根のように葺く・・・<幸田露伴「幻談」青空文庫>
  9. ・・・清水川という村よりまたまた野辺地まで海岸なり、野辺地の本町といえるは、御影石にやあらん幅三尺ばかりなるを三四丁の間敷き連ねたるは、いかなる心か知らねど立派なり。戸数は九百ばかりなり。とある家に入りて昼餉たべけるに羹の内に蕈あり。椎茸に似て香・・・<幸田露伴「突貫紀行」青空文庫>
  10. ・・・休茶屋の軒先には花やかな提灯などを掛け連ねさせ、食堂の旗を出す指図までして廻った。彼はまた、お三輪の見ている前で、食堂の内にある食卓の上までも拭いた。 そこへお力が顔を出した。「旦那さんはそんなことまでなさらなくてもようござんす。手・・・<島崎藤村「食堂」青空文庫>
  11. ・・・冬になって木々のこずえが、銀色の葉でも連ねたように霜で包まれますと、おばあさんはまくらの上で、ちょっと身動きしたばかりでそれを緑にしました。実際は灰色でも野は緑に空は蒼く、世の中はもう夏のとおりでした。おばあさんはこんなふうで、魔術でも使え・・・<著:ストリンドベリアウグスト 訳:有島武郎「真夏の夢」青空文庫>
  12. ・・・のこれから撃つべき相手の者たちの大半は、たとえばパリイに二十年前に留学し、或いは母ひとり子ひとり、家計のために、いまはフランス文学大受け、孝行息子、かせぐ夫、それだけのことで、やたらと仏人の名前を書き連ねて以て、所謂「文化人」の花形と、ご当・・・<太宰治「如是我聞」青空文庫>
  13. ・・・三銭切手二枚か三枚貼った恐ろしく重い分厚の手紙を読んでみると、それには夏目先生の幼少な頃の追憶が実に詳しく事細かに書き連ねてあるのであった。それによると、S先生は子供の頃夏目先生の近所に住まっていていわゆるいたずら仲間であったらしく、その当・・・<寺田寅彦「埋もれた漱石伝記資料」青空文庫>
  14. ・・・ はなはだ拙劣でしかも連句の格式を全然無視したものではあるがただエキスペリメントの一つとして試みにここに若干の駄句を連ねてみる。草を吹く風の果てなり雲の峰 娘十八向日葵の宿死んで行く人の片頬に残る笑 秋の実りは豊・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  15. ・・・それらの多くは科学の世界の表層に浮かぶ美しいシャボン玉を連ねた美しい詩であり、素人の好奇心を刺激するような文明の利器を陳列したおもしろい見世物ではあるが、科学の本質に対する世人の理解を深め、科学と人生との交渉の真に新しい可能性を暗示するよう・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  16. ・・・室には、人はたった一人居たきりであるが、壁には数え切れないほど沢山の外套と帽子が掛け列ねてあった。その帽子外套の列が、どういうものか自分にはよほど遠い世界の帽子外套の列であるような気がして、軽い圧迫を感じさせられた。 廊下から階段へ上が・・・<寺田寅彦「議会の印象」青空文庫>
  17. ・・・客観的にはどんな間違ったことを書き連ねていても、その人がそういうことを信じているという事実が読者には面白い場合があり得るからである。しかし本来はやはり客観的の真実の何かしら多少でも目新しい一つの相を提供しなければ随筆という読物としての存在理・・・<寺田寅彦「雑記帳より(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」青空文庫>
  18. ・・・四五輛の人力車を連ねて大きな玄関口へ乗付け宿の女中に出迎えられた時の光景は当世書生気質中の叙事と多く異る所がなかったであろう。根津の社前より不忍池の北端に出る陋巷は即宮永町である。電車線路のいまだ布設せられなかった頃、わたくしは此のあたりの・・・<永井荷風「上野」青空文庫>
  19. ・・・その鄰りに常夜燈と書いた灯を両側に立て連ね、斜に路地の奥深く、南無妙法蓮華経の赤い提灯をつるした堂と、満願稲荷とかいた祠があって、法華堂の方からカチカチカチと木魚を叩く音が聞える。 これと向合いになった車庫を見ると、さして広くもない構内・・・<永井荷風「寺じまの記」青空文庫>
  20. ・・・門の前には竹矢来が立てられて、本堂再建の寄附金を書連ねた生々しい木札が並べられてあった。本堂は間もなく寄附金によって、基督新教の会堂の如く半分西洋風に新築されるという話……ああ何たる進歩であろう。 私は記憶している。まだ六ツか七ツの時分・・・<永井荷風「伝通院」青空文庫>
  21. ・・・ピエール・ロチは欧洲人が多年土耳古を敵視し絶えずその領土を蚕食しつつある事を痛嘆して『苦悩する土耳古』と題する一書を著し悲痛の辞を連ねている。日本と仏蘭西とは国情を異にしている。大正改元の頃にはわたくしも年三十六、七歳に達したので、一時の西・・・<永井荷風「正宗谷崎両氏の批評に答う」青空文庫>
  22. ・・・帰れかしと念ずる人の便りは絶えて、思わぬもののくつわを連ねてカメロットに入るは、見るも益なし。一日には二日を数え、二日には三日を数え、遂に両手の指を悉く折り尽して十日に至る今日までなお帰るべしとの願を掛けたり。「遅き人のいずこに繋がれた・・・<夏目漱石「薤露行」青空文庫>
  23. ・・・と云った人の車と、顫えている余の車は長き轅を長く連ねて、狭く細い路を北へ北へと行く。静かな夜を、聞かざるかと輪を鳴らして行く。鳴る音は狭き路を左右に遮られて、高く空に響く。かんかららん、かんかららん、と云う。石に逢えばかかん、かからんと云う・・・<夏目漱石「京に着ける夕」青空文庫>
  24. ・・・ウウウウと云う音が丸い段落をいくつも連ねて家の周囲を二三度繞ると、いつしかその音がワワワワに変化する拍子、疾き風に吹き除けられて遥か向うに尻尾はンンンと化して闇の世界に入る。陽気な声を無理に圧迫して陰欝にしたのがこの遠吠である。躁狂な響を権・・・<夏目漱石「琴のそら音」青空文庫>
  25. ・・・もっとも危険の道具にして、一度びこれを握るときは人目を眩せしむるに足る目勇しき働きをなすものなり かく漆桶を抜くがごとく自転悟を開きたる余は今例の監督官及びその友なる貴公子某伯爵と共にくつわを連ねて「クラパムコンモン」を横ぎり鉄道馬・・・<夏目漱石「自転車日記」青空文庫>
  26. ・・・これを喩えば、大廈高楼の盛宴に山海の珍味を列ね、酒池肉林の豪、糸竹管絃の興、善尽し美尽して客を饗応するその中に、主人は独り袒裼裸体なるが如し。客たる者は礼の厚きを以てこの家に重きを置くべきや。饗礼は鄭重にして謝すべきに似たれども、何分にも主・・・<福沢諭吉「日本男子論」青空文庫>
  27. ・・・生れては死に、死んでは生れる人間共が、太古の森も見えない程建て連ねて行く城や寺院、繁華な都市が、皆、俺のおもちゃに植えて行くと思うと、身震いがしたッけ。ミーダ 俺がこれまでに作った悪徳の環もあれが頂上だったかな。ヴィンダー ――兎に・・・<宮本百合子「対話」青空文庫>
  28. ・・・けれども亦、私の書き連ねた一面も、動かすことの出来ない実相です。私共が箇性的差異として、各自の国民性を持ちながらも、世界人として生活し始めた今日、世界各処に発生し、発達した種々な生活意識、様式を、悉く、人の価値、人の理想と云う眼界にまで敷衍・・・<宮本百合子「男女交際より家庭生活へ」青空文庫>
  29. ・・・ 間が悪いほど、自分の娘の世話になって居る礼を書き連ねてから、縁が有って斯々の処へきめたから近々参上してくわしい事は申しあげ改めてお暇をいただきたいと云ってよこした。 その手紙が来てから六日ほどして父親はほんとうに千世子の家へ来た。・・・<宮本百合子「蛋白石」青空文庫>
  30. ・・・が出てから一躍有名になり有名になったことに絡んで又そこに別な荒っぽい波の打って来た前後のことをありのまま書き連ねたものである。 ここには、野沢富美子が、急に自分をとりかこんで天才だの作家だの人気商売だからと半ば嚇すように云ったりする人間・・・<宮本百合子「『長女』について」青空文庫>