つり‐あげ【釣(り)上げ/×吊り上げ】例文一覧 22件

  1. ・・・これは空間を斜に横ぎって、吊り上げられたようにすっと消えた。 するとその次には妙なものが空をのたくって来た。よく見ると、燈夜に街をかついで歩く、あの大きな竜燈である。長さはおよそ四五間もあろうか。竹で造った骨組みの上へ紙を張って、それに・・・<芥川竜之介「首が落ちた話」青空文庫>
  2. ・・・すると眉を吊り上げた彼女は、年をとった木樵りの爺さんを引き据え、ぽかぽか白髪頭を擲っているのです。しかも木樵りの爺さんは顔中に涙を流したまま、平あやまりにあやまっているではありませんか!「これは一体どうしたのです? 何もこういう年よりを・・・<芥川竜之介「女仙」青空文庫>
  3. ・・・と、大宅太郎光国の恋女房が、滝夜叉姫の山寨に捕えられて、小賊どもの手に松葉燻となる処――樹の枝へ釣上げられ、後手の肱を空に、反返る髪を倒に落して、ヒイヒイと咽んで泣く。やがて夫の光国が来合わせて助けるというのが、明晩、とあったが、翌晩もその・・・<泉鏡花「国貞えがく」青空文庫>
  4. ・・・ふわりと、その婦の袖で抱き上げられたと思ったのは、そうでない、横に口に引き銜えられて、畳を空に釣り上げられたのである。 山が真黒になった。いや、庭が白いと、目に遮った時は、スッと窓を出たので、手足はいつか、尾鰭になり、我はぴちぴちと跳ね・・・<泉鏡花「眉かくしの霊」青空文庫>
  5. ・・・おまえは、針に引っかかって、人間のために、水の上へ釣り上げられて、やがて死んでしまうのです。だから、けっして、お母さんといっしょでなければ、水の上へは遊びにこられませんよ。」と、母親は、いいました。 子供は、なんという窮屈なことだろうと・・・<小川未明「魚と白鳥」青空文庫>
  6. ・・・と眼を釣上げて詰寄るだろう。「御気に触わったら御勘弁。一ツ差上げましょう」と杯を奉まつる。「草葉の蔭で父上が……」とそれからさわりで行くところだが、あの時はどうしてあの時分はあんなに野暮天だったろう。 浜を誰か唸って通る。あの節廻し・・・<国木田独歩「酒中日記」青空文庫>
  7. ・・・私は、さっぱりだめであった。私は釣り上げられたいもりの様にむなしく手足を泳がせた。かたちの間抜けにしんから閉口して居ると、私の中のちゃちな作家までが顔を出して、「人間のもっとも悲痛の表情は涙でもなければ白髪でもなし、まして、眉間の皺ではない・・・<太宰治「狂言の神」青空文庫>
  8. ・・・すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。メロスはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、・・・<太宰治「走れメロス」青空文庫>
  9. ・・・くつぶし扱いにして相談にも何も乗ってくれないし、仕事がないからよけいも無い貯金をおろして、お手伝いも出来ぬひけめから、少し奮発してお礼に差出すと、それがまた気にいらないらしく、都会の成金どもが闇値段を吊り上げて田舎の平和を乱すなんておっしゃ・・・<太宰治「やんぬる哉」青空文庫>
  10. ・・・柳の葉くらいの鮎を二匹、釣り上げて得意顔で宿に持って帰ったところ、宿の人たちに大いに笑われて、頗るまごついたそうである。その二匹は、それでもフライにしてもらって晩ごはんの時に食べたが、大きいお皿に小指くらいの「かけら」が二つころがっている様・・・<太宰治「令嬢アユ」青空文庫>
  11. ・・・人からは思われるものであっても、それが丁度、当該審査委員の正に求めている壷にはまり、その委員の刻下の疑団を氷解せしめるような要点に触れている場合には、その審査委員の眼にとっては、その仕事の価値が異常に釣り上げられて見えるのは人情の自然であろ・・・<寺田寅彦「学位について」青空文庫>
  12. ・・・自分の能力を計らないで六かしい学問に志していっぱしの騎士になったつもりで武者修行に出かけて、そうしてつまらない問題ととっ組み合って怪物のつもりでただの羊を仕とめてみたり、風車に突きかかって空中に釣り上げられるような目に会ったことはなかったか・・・<寺田寅彦「雑記帳より(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」青空文庫>
  13. ・・・ 子供の時分の正月の記憶で身に沁みた寒さに関するものは、着馴れぬ絹物の妙につめたい手ざわりと、穿きなれぬまちの高い袴に釣上げられた裾の冷え心地であった。その高い襠で擦れた内股にひびが切れて、風呂に入るとこれにひどくしみて痛むのもつらかっ・・・<寺田寅彦「新年雑俎」青空文庫>
  14. ・・・する中或日の事、学生の釣り上げた鮒かと思う大きな魚がわれわれのボートに飛び込んだ。学生は大きな声を出してわれわれを呼んだ。わたくしはその魚を押えて学生の立っている桟橋へ舟をつけたので、すっかり心安くなり、その後われわれが弁当なぞ食べているの・・・<永井荷風「向島」青空文庫>
  15. ・・・睨まれると凄いような、にッこりされると戦いつきたいような、清しい可愛らしい重縁眼が少し催涙で、一の字眉を癪だというあんばいに釣り上げている。纈り腮をわざと突き出したほど上を仰き、左の牙歯が上唇を噛んでいるので、高い美しい鼻は高慢らしくも見え・・・<広津柳浪「今戸心中」青空文庫>
  16. ・・・その句、行き/\てこゝに行き行く夏野かな朝霧や杭打つ音丁々たり帛を裂く琵琶の流れや秋の声釣り上げし鱸の巨口玉や吐く三径の十歩に尽きて蓼の花冬籠り燈下に書すと書かれたり侘禅師から鮭に白頭の吟を彫る秋風の呉人・・・<正岡子規「俳人蕪村」青空文庫>
  17. ・・・上へ上へと吊り上げられて行ったものが、禁止で、下へ下って一般生活の質の向上としてひろがって来るかといえば、どうもそういうことには行かなそうである。やすいもの、皆が買うもの、やっぱりこの価ではこれ位のものか、という状態に止まるらしい。そうだと・・・<宮本百合子「その先の問題」青空文庫>
  18. ・・・「どこんでしょうね、うちのは高い所に吊り上げてあるし、もっとずーっと長いしするから…… おとなりんじゃあないでしょうか。「そうかもしれない、 あ、ほらね此処が此那に折れてるでしょう。 向うから此方へ階子を下して、此れ・・・<宮本百合子「盗難」青空文庫>
  19. ・・・病人は釣り上げた鯉のように、煎餅布団の上で跳ね上がった。 花房は右の片足を敷居に踏み掛けたままで、はっと思って、左を床の上へ運ぶことを躊躇した。 横に三畳の畳を隔てて、花房が敷居に踏み掛けた足の撞突が、波動を病人の体に及ぼして、微細・・・<森鴎外「カズイスチカ」青空文庫>
  20. ・・・ 秋三は棺を一人で吊り上げてみた。「此奴、軽石みたいな奴や。」「そやそや、お前今頃から棺桶の中へ入れたらあかんがな。お医者さんの診断書貰うて、役場へ死亡届出さにゃ叱られるわして。」とお留は云った。「そんなら、もういっぺん打ち・・・<横光利一「南北」青空文庫>
  21. ・・・農婦は歩みを停めると、くるりと向き返ってその淡い眉毛を吊り上げた。「出るかの。直ぐ出るかの。悴が死にかけておるのじゃが、間に合わせておくれかの?」「桂馬と来たな。」「まアまア嬉しや。街までどれほどかかるじゃろ。いつ出しておくれる・・・<横光利一「蠅」青空文庫>
  22. ・・・祖国ギリシャの敗戦のとき、シラクサの城壁に迫るローマの大艦隊を、錨で釣り上げ投げつける起重機や、敵船体を焼きつける鏡の発明に夢中になったアルキメデスの姿を梶はその青年栖方の姿に似せて空想した。「それにはまた、物凄い青年が出てきたものだな・・・<横光利一「微笑」青空文庫>